今回のイラストに付属させた短編が、文字数が多すぎてエラーを起こしてたので別記事に出させていただきました下よりどうぞ ---------------------------------------- 蛇楽はケーゼの住まいである、元アパレルショップでいつものように化かし合いをしていた。 ここは、ケーゼが誰かと面と向かって戦う際に用意されたバトルフィールドである。 屋上の周囲一帯には、網目の厚い柵が四方に施されており、それ以外には、最低限防音を伴う簡素な結界が施されていた。 「うらぁっ!!」 蛇楽はケーゼの背後に回り込み、瞬時に以前ケーゼに掛けた異国のペンダントを掛けようとした。 しかし、掛けようとしたペンダントは、頭にかけたと思った瞬間に、ケーゼの花リボンから瞬発的に伸びた蔦によって弾かれてしまった。 「くぅっ!」 せっかくの切り札が。悔しい気持ちを飲みこみつつ、すぐにバク転を数回かまし背後へと撤退した。 さすがはケーゼである。前回、次回には対処されているだろうと恐れていた通りに、すぐに対処をされてしまっていた。 こちらの姿を見失い、気配を背後に感じたのならばこうしようと、反応レベルで体に染み込ませていたのだろう。 だから油断ならない。 お互いがお互いを官能的に捕食しようといわんばかりの、欲に満ちた戦いだ。 しかしそれと同じぐらいに、過程であるケーゼとの戦いは楽しくて仕方がなかった。 「こっちを見ろ!!」 そう言って、蛇楽は普段サングラスに隠している、その石化眼をケーゼに放ってきた。 「テンプレートよ!くだらない!」 ケーゼはいつものように視線を反らした。 だが、反らしたところでケーゼは目を見開く事になった。 「っ!鏡!?」 そう。柵の足元に、割れた鏡が立てかけてあったのだ。 「っ~~!」 急いで、ケーゼは蔦を自分の視線の前に向ける。 だが、蛇楽の視線はレーザーのようにやはり早く、防ぐよりも前に、少しケーゼの目に入ってしまった! それに呼応するかのように、ケーゼの両腕が真っ白な石へと変わり果てた。 まるで毒だ。目に届いた蛇楽の目の光の量だけ、部分的に石に変えられる。 「ぐぅ…!腕が、これは…」 「驚きだろう?ずいぶんアナログな手で攻めさせてもらったが。勝ちの決め手になるのが、アーティファクトみたいなたいそうなものだけだと思ったか?」 「まさか…。気づかなかっただけよ。何年生きてると思ってるのよ」 ケーゼは蛇楽の目を見ないまでに、いつも通り強がった。 やはり、ケーゼは負けん気が強い。いくら強がろうと、それに見合った分だけに強くなればいいというのは、ケーゼの本分だ。 自分は弱いから控えようだとか、下手だから屈しようだとか、これだけ言われるからには、自分が間違ってるにちがいないから、何が悪いか分からなくとも、謝るべきだとか。 馬鹿らしい、全て納得もしてないのに馬鹿らしい。それがこの数十年を生きたケーゼの気持ちだ。 いくら上手く行かなかろうと、いくら攻められようと。 『自分が納得できるまで引き下がってたまる物か』 それだけを大事にしてきた。 ゆえに強がる、ゆえにひがまない。 それゆえに、当たりの強い振る舞いをしても、ライバルとして歯を向けてくる蛇楽との闘いで、悔しい気持ちを味わった。 「………ふふ、あははは」 つまり…。楽しかった。 アナログだろうが、超常的だろうが。蛇楽の戦い方には、この方向に一点集中という戦い方はない。 ただこちらに勝つためだけに、毎回違う戦いをしてくるのだ。 だから、なんだかんだ言いつつ、厳格で落ち着きあるような振る舞いをする、正反対のような性格の蛇楽に、惹かれていた。 だから…。ケーゼは自分の両腕を見返しつつ、歯を食いしばる。 新しい手を使って勝ち伏せないと、蛇楽に失礼だ。 「うおおぉぉぉ!!!」 「ん!?」 蛇楽はたじろいだ。 ケーゼが顔を伏せつつ、蛇楽めがけてまっすぐ走り込んできた。 何をしたいのか分からない。そう思いたじろいだ。 『(両腕は…ああ、どう見ても腕の内側まで石に変わり切っている。 あれじゃあ、もう魔法弾もあのややこしいシャボン玉も作り出せない)』 遠距離な攻撃を得意とするケーゼは、メインの戦闘スタイルはその手から放たれる魔法の数々だ。 あの手じゃ、もう手から魔法は放てない。 つまり、想像できることに次の事がある。 あの頭の花リボンだ。あれはケーゼの耳でもあり、もう一つの腕でもある。 突進すると同時に蔦でこちらを巻き取り、そこから魔力を流すんだ。 以前、出会って数回目かの頃に、住宅街の塀に穴を開け、裏へ回り込ませたトリックだ。 『それのバリュエーションに違いない。蔦でこちらに何かをするんだ。フェイントをかましてくるのかもしれない…!』 目の前の突発的なケーゼの行動に対し、蛇楽の想像がまとまった。 そうしたところで、ケーゼは間もなく蛇楽の目前に到着する瞬間となった。 『ケーゼの顔を持ち上げ、直視して石化させる前に、蔦の攻撃を防ぐ! さあこい、ケーゼ。…そろそろ、こっちの勝ち回数を偏らせてもらう!!』 蛇楽は身構えた。ケーゼの足が、蛇楽の目の前を踏んだ。 シュパァッ!! 「!?」 蛇楽の想像は当たっていた。踏み込むと同時にケーゼの蔦が飛び出したのだ。 だが、『蔦が自分に襲い掛かる』と言う部分で外した。 蔦は大きく、蛇楽の左右後方へと向かって伸びていったのだ。 ジャキャッ!と言う音をして、コンクリートの地面にそれぞれの蔦が食い込んだ。 「地面…?」 このまま背後から包み込む形で自分を捕まえるのか? そう身構えると。ケーゼがつぶやいた。 「開け…迷宮結界『お菓子』…!」 グアァァン。そう次元が歪むような音が響くと、ケーゼが刺した蔦と蔦の間の地面に『迷宮結界への入り口』が開いた。 「なっ!!?」 予想外だ。迷宮結界を地上での戦い中に開くなんて。 そうたじろぐと、次の瞬間、ケーゼがそのまま跳びあがり、蛇楽にタックルをかました。 げほっと肺の空気がこぼれる音と共に、蛇楽はケーゼ共々、蛇楽の背後に広がる迷宮結界の入り口へ倒れた。 「アナログな方法でしょ?迷宮結界にひきずりこんだあとは、好き勝手させてもらうけど」 ケーゼがそう一言言うと、二人はそのまま結界に落ちた。 「ぐぅ、ううぅ…こんな…」 蛇楽は地面にうずくまっていた。 辺り一帯はクッキーの床に、遠くの方に見えるは巨大なお菓子に、振り続けるカラフルなトッピング。 言葉だけを聞けば、トロトロとしてそうなイメージだが。乾いたクッキーの地面に、吹き荒れる砂糖と思われる砂糖嵐を見るに、どことなく砂漠を想像させる光景だった。 あたりには、いつも迷宮結界にいるだろう使い魔の大群がいない。 しかし、迷宮結界において、使い魔が階層をうろついていない、または少ないという事は、余計にまずい事態だった。 階層試練『チョコ像』 そう頭の中に響く声がする。 蛇楽の身体は、少しずつ足の方からチョコに変わりだしていた。 迷宮結界には、そういうトリッキーな階層がいくつかあるのだ。 階に入ると、まず相手に『姿が変わる呪い』がふりかかるのだ。 その上で、不自由な体で敵に捕まったり、物の変わりきらないうちに次の階層へ移るのだ。 だが…今回は、もう手遅れだ。 自分の眼前には、両手が石になりながらも、平気とした目でこちらを眺めるケーゼの姿があった。 「今回は、私の勝ちね」 そう言って、蔦を伸ばしてきて、こちらの身体に蔦が触れた。 そうして、こちらの呪いの浸食を早める魔力が、流れ込んできた。 「今回は、完敗だ…」 だんだんと、服さえもが破けて来て、チョコになっていった。 「……………でも、予想外でなかなか上手かったと思うが、自分の有利な迷宮結界に戦いの途中で引きづりこむのって、ルール的にいいのか?」 「あ、やっぱりそう思う?次のバトルまでに話しあおうかしら?」 「それがいいな」 と、等身大のチョコ像になる瞬間に、蛇楽とケーゼは冷静な会話を交わした。 ケーゼは迷宮結界の最下層に居た。 そこは、マシュマロや綿菓子を初めとした、ふわふわで柔らかい物で包まれた、ほのかに月明かりのような明るさで包まれた柔らかい空間だった。 空間全体がゆっくりと寝れるベッドのような所であり、パジャマを着たケーゼはなにかをゆっくりと舐めている。 「んふふ…甘いわ。……ていうか、こんだけでかい胸があって憎いわねぇ… こんど、戦うのが辛いだろうとかなじろうかしら」 そう言って舐めているのは、蛇楽のうつぶせのチョコ像だった。 蛇楽の生まれたままな姿がまじまじと出ており、おまけに、少し顔を上げてる前の方は、地面に押しつぶされてたゆんだ巨乳がはっきりと見えていた。 「ま、しばらく楽しませてもらおうかしらねぇ…中はホワイトチョコみたいね、ふふふ…」 蛇楽の胸をつーっと舐めつつ、ケーゼは微笑んだ。