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けもケット13 サンプル⑥

こんにちは!!こんばんは!!ぱぱを🐼🐾です。


今回こそサンプル紹介、最終回です。アンコールみたいなのはありません。



というわけで会場限定のオカズカードなるものを頒布すると前回お伝えしたのですが……今回ちょこっとだけ絵の方を見せようと思います。私のエッチでスケベで臭そうな小説から絵を起こしてくださったのは、さるひこさんさんです!!


さるひこさんって誰やねん…というお方はこちらのpixivをチェックしてみてね↓

(frame embed)




今まで何度か色々とお世話にはなっていたのですが、今回オカズカードを作るに当たって快く承諾してくださいました。本当に頭が上がらなすぎて、頭が地面にめり込むぐらい下がっています。


キレイな作品も、汚めな作品も、そして人間も獣人も描けるし筆が早いというチートでも使っとんのかと思わしきさるひこさんに描いていただいた絵は、それはもう素晴らしいものでした……。正直、ちびりそうになりました。ええ。ホント、夢のようです。いいんですかね…こんなの描いていただいて……いや本当に今でも現実じゃないのではないかと疑ったりしています。いつか前の、小説書きじゃなかった頃の自分が見たら何て思うだろうか。いやぁ、本当に小説書いてて良かったですね……。

















はい。


作中のメインキャラである二人の顔の部分だけですが、こんなものが印刷されたエッチなポストカードが出ます。恐ろしい恐ろしい……。今まで健全絵のポストカードを頒布している人は何人も見てきましたが、こんなどエロい絵を印刷して出した人は今までほとんどいないんじゃないか……??そして裏面にはスケベしているシーンのセリフと文章がちょこっと書かれていて、全貌は各々のタブレットやPCで見られるという画期的なオカズです。


教育実習生としてとある高校へやって来たちょっとチビで幼い顔つきの人間くんと、その高校で用務員として働いている猪の臭そうなおっちゃんのエッチ。そんな全く接点のなさそうな彼らがなぜこんな風に汗だくになっているのでしょうか。人間くん、あまりの雄臭さに鼻水と涙を垂らしながら悦んでいますね。ふぅん……。


本編は実に4万字を超える作品となっており、甘み成分多めな新刊のあとに読む塩味強めのオカズとして相応しいと言えるでしょう。まぁデザートみたいなものです。雄クッセェ成分が足りねぇ!!と思った人が暴れないように押さえつけておくような、そんなカード。会場へ足を運んでくださる方々は是非このカードをゲットして帰宅していただきたいです🐼


また今まで頒布したオカズ券同様、そのうち忘れた頃にFANBOXへ投稿されると思います。大分先にはなると思いますけれども。なので遠方すぎるから東京なんて絶対に行けねぇわ!!という方もいつか読めるので大丈夫です。この作品が読めないと病気の息子が……!という方もいらっしゃるかもしれませんが、代わりに別のオカズをFANBOXで用意するのでどうかお許しを…お許しを……。




そして謝らなければならないことがあり、実はこのオカズカード……ちゃんと印刷できているか怪しいです。というのも結構な回数印刷所とやり取りして再入稿しまくってました。まぁその、色々あったんです。データの不備、データの不備、不備、不備……。文字切れますとか、文字ボヤけてますとか、その、全部私が担当した部分ですね。ええ。……んひぃ……。そういうのもあって先週一週間ぐらいちょっとイライラッとしていました。対人ゲームで負けてもぐっ……と落ち込むことの方が多い私でも、この印刷所とのやり取りは本当にストレスだったようです。おかげで全然執筆進まなかったし。多分執筆を邪魔されるのが一番ダメなんだと思います。


それだけじゃありません、実はちょっとこちらの不手際で表面に印刷された絵の端っこが切れている可能性があり……ひぃいい考えただけでも恐ろしい!実物はけもケットの一週間前ぐらいに自宅へ届くので、まだ完成品を拝めてないんですよねぇ。ちょっとドキドキしちゃう。あとはアレです、性器の修正がちゃんと通るかどうか。今回黒海苔で修正してもらっているのですが、審査が通らなかった場合は当日スペースで汗をかきながら黒マジックで修正している私が見られることでしょう。いや見なくていいです。今まで文字だけの作品しか作ったことないのでけもケットのスタッフにもドヤ顔で見本誌を提出していたのですが、今回ばかりはちょっとニコニコしながら怯えて待つしかないですね。HAHAHA。そんなこんなで頒布当日まで関門が多すぎて倒れそうです。はい。



色々ありましたが、たくさん失敗してもこうして何とか形に出来たのは自分が頑張ったからだと思います。えらい!さっき言ったようにちょっと粗があるオカズカードになるかもしれませんが、会場で手に取っていただける方は大目に見てやってください。あぁ、この人塗り足しのこと考えてなかったんだなぁとか、なんか裏面の文字の解像度が粗くね??とか思っても言わないでください。皆様の優しさに期待しています(?)。


次回以降もこんな感じで余力があったらオカズカードを作っていきますので、何回も作っているうちにデータを作るのも上達するはずですから🐼むふふん。一回作れるようになると、次も絵付きで作りたいなって思っちゃう。どうしよ……どっ、どうします?


というわけでサンプル紹介はこれで本当に終わり!終わりです!さようなら👋また次の記事でお会いしましょう!




※以下、サンプル本編。

****


 大学に入ってから、僕は自分を見失っていた。将来どうなりたいか、そんなことまだ子供の僕にわかるわけないじゃないか。ただ闇雲に勉強して、いい高校に受かって、それからいい大学へ受かって。


 僕は何をする? 何をすればいい?


 周りの人はみんな、成し遂げたい夢というものを必ず持っていた。その夢を恥ずかしげもなく掲げ、発表してしくカッコいい姿。僕はそれを見て羨ましいなと日々感じていた。僕には……何もなかったから。



 結局何の目的もないまま大学に入ってもひたすら勉強、勉強の毎日。友達はサークル活動とか飲み会とか、何なら旅行に行ったりと大学生らしい生活を送っているというのに。つまらない、つまらなすぎる。僕にはそんな娯楽、何もない。自分を変えたい――そう思ったのと、学費を出してくれている親に少しでも恩返しできるように。僕はサークルや部活動に入ることもなく、塾講師のアルバイトを始めた。そこが僕の人生の分岐点だったのだ。



 塾バイトのシフトに入るにつれ、僕には一つ大きな道が浮かび上がってきた。……教師、か。いいかもな。勉強が得意な僕にはピッタリの仕事だと思う。そう、僕には勉強の才能があった。自分が知らない未知なるものが書かれた教科書を読みながら要領よく覚え、内容を友達にわかりやすく説明できる力。それは全員が同じように持ち合わせているものではなかったらしい。僕が教師を目指したところでちょっと背丈が小さすぎてとても先生には見えないと思われそうだが、それは時間が解決してくれるだろう。……というかそろそろ僕にも成長期というものが来てもおかしくないと思うんだがな。もう成人男性だというのに百六十センチに届くか届かないかぐらいって……いくら何でも悲しすぎるだろう。もっと牛乳、飲んでおくべきだったかなぁ。




 大学四年の、ちょうど梅雨が明けるか明けないかという蒸し暑い時期。僕は都内のとある高校へ教育実習生として受け入れてもらう事となった。教員免許を取るためにはこの実習を必ず最後まで受け、修了させる必要があるらしい。工程は全部で三週間、最初一週間は実際の授業を見学する形で後ろから見学することが多い。自分が受け入れてもらった高校でもその一般的な例と同じようで、それから後半の二週間で今度は自分が授業を行う立場となって実習を終える事となる。


 なので最初の週は見学で暇をしている為生徒たちとコミュニケーションを取りながら過ごそうと、そう思っていたのだが……。僕はどうやらこの、老け顔で強面な熊獣人生徒からやけに気に入られてしまったようだ。一昨日も、昨日も、今日も話かけられてしまったし。


「なぁセンセー、あのクソ狸、何言ってっかわかんねぇんだけど」


「しーっ! 聞こえるよ!」


 生物科目が担当の白衣を着た狸先生を随分と嫌っているのか、マズルの上にシャーペンを乗せながら熊の彼はムスッとしていた。


「まぁあのクソ狸は置いといて、マウスも可哀想だよな。実験の為だけに何遍も交尾させられて、子まで産まされてさ」


「でもそのマウスのお陰で僕たちは長生きできてるんだよ。今まで治せなかった病気も、なぜこういう病気になるのかという原因も、全部こういった実験があったからこそ僕たち人間や獣人が理解できるようになったんだ」


「……ふぅん」


 そう、僕の担当科目は生物。小学校では担任が全科目の授業を担当するが、中学や高校ではそれぞれ専門の教師が教室へやってきて授業を行う。満遍なく教えられるのだから小学校の先生も良いかもしれないと思ったが、子供にめっちゃなめられそうだったし……それに僕は子供の扱いがそううまくなかったから。そんな理由で高校へと実習を受けにきたのだ。故に僕はあのちょっと小汚そうな狸先生について回る毎日を送っているのだが、彼の授業は専門の言葉を使いすぎて一般人にはわかりづらいことこの上ない。こんなおっちゃんが今、高校の生物科目を教えているのか……と思うと頭が痛くなる。彼の頭が良すぎるからか、周りの人が全然ついていけていないぞ。生徒たちもあまり授業に関心がないのか、寝ている生徒も多数見受けられる。


 もっと生徒たちに寄り添った授業をしてみては? なんて。そんなことを教育実習生の僕なんかが狸先生へ指摘したら一発でアウトだろう。単位がもらえなければ僕は大学を卒業できない。悔しいが、黙っているしかなかったんだ。だから僕は先生の授業を反面教師として、実習の後半に役立ててやろうと思っている。



「……ん、チャイムが鳴ったな。では今日の授業はこれで終わりとする。課題提出は来週の――」


「ええっ、この量の課題を来週までに⁉︎」


「ギャーギャーうるせぇなぁ、じゃあいい成績が欲しいヤツは出せ。そうじゃねぇヤツはもう知らん」


「うーわ……」


 ブーブー文句が飛び交う所からもまた、生徒たちが不満を爆発させている様子がよくわかる。こりゃ来週僕が先生側に立って授業をする時のプレッシャーが半端ないぞ。何はともあれ、今日も無事に実習が終わったな。こんな見学するだけの実習でいいのかと疑問に思うが、本番は後半二週間だから今は嵐の前の静けさというヤツだ。ここから気を引き締めて来週の準備に取り掛からねば。せめてこの二週間だけでも、生徒たちに生物学の楽しさというものを知ってもらえるように。


「なぁセンセー、課題一緒にやってくれよ。オレ全然わかんねぇからさ」


 教育実習生である僕のことをセンセーと呼ぶのは、このよく話しかけてくる熊の生徒だけだ。呼ばれ慣れないような感じで声をかけられる度、僕はほんの少し恥ずかしくなる。そうか、センセー……か。なれるかな。……いやそうじゃない、なるんだ。絶対に。



「……教えてもいいけど、部活あるんでしょ?」


「おう。だから部活後にさ、来てくれよ」


「僕も結構、やる事があって忙しいんだけどな……これでも実習生っていう立場だし……」


「頼むっ! センセーだけが頼りなんだ!」



 ガキ大将みたいな見た目のでっかい熊獣人生徒くん。名前を…。ああ、栗田くんだ。柔道着をギュッギュッと詰め込んだであろうちょっと薄汚れた白袋に栗田という名前が書いてある。僕が持ち上げたら重たくてよろけそうなほどのデカい袋を背負い、彼はフンッと鼻息を撒き散らしてやる気充分だった。そのやる気を是非、勉学の方にも出してもらいたいところなのだけども。


「柔道着、置いて帰らないんだね。重たいのに」


「あー、今部室に置いてるヤツがヤベェぐらい汗臭くなっちまってな。他のヤツと組み手やる時にすげぇイヤな顔されっから、予備のヤツ持ってきたんだ」


 確かに。栗田くん、熊獣人で結構体臭キツめだから人間の僕でさえも気になってしまう。だけどこう、悪臭とはまた違くて。爽やかな汗のニオイも混ざってるから、何というか……若々しくてスポーツマンって感じがして、嫌いじゃない。


「じゃ、センセーまた後でな!」


 尊敬しない先生の前では持ち前の怖い顔でガンを飛ばしながら反抗的な態度を見せる熊の彼。なぜか僕のような教育実習生にはとても優しく“センセー”と呼んでくれる。それがとてつもなく嬉しくて、来週彼の前で授業をするのがとても楽しみになっていた。これでは個人授業になってしまう、いつも塾でやっている事と何も変わらないじゃないか。僕は全員の生徒と平等に接して、教えて、そんな先生になりたいんだ。だから贔屓とか、そういう事をしちゃあいけないぞ僕。


 続々と教室から出ていく生徒たちを見送りながら、僕は一人ただ窓に映っていた雲ひとつない空をジッと見て。……放課後の教室って、なんか懐かしいな。そんなことを思いながら、自分の荷物をまとめて部屋を後にした。



 まだ外はうすら明かりが広がっているものの、あと三十分もすれば真っ暗になるだろう。そんな遅い時間に、僕は栗田くんが所属している柔道部の部室へと案内されていた。他の柔道部員たちはもう全員帰ったようで、彼は汗だくの柔道着をはだけさせながら床にゴロンと寝転がり、目の前にプリントを置いてうんうん唸っている。そんなうつ伏せの体勢で課題をやって疲れないのだろうか。あと栗田くんが度々左右へゴロンと体勢を変えるせいで木目の床が汗染みで濡れているのがちょっと気になる。まさかこうやって毎日部室でゴロ寝してたから今、部屋が全体的に汗臭いのだろうか。まぁ体育会系の部活なんだし、しょうがない……か。ロッカーに柔道着置いていってる人もたくさん居そうだし。


「えー……有性がコイツ、劣性と交配して……ここはヘテロ同士の交配だから……」


「そうそう、となると答えは?」


「…………あー、Cか! うっし終わった!」


 最後の問題もようやく自分自身の力で答えにありつけ、彼はガッツポーズをして飛び跳ねながら僕へと抱きついてきた。


「うわっ、わっ‼︎」


「あんがとなセンセー! オレ、ちっとも授業なんか聞いちゃいなかったけど、アンタのお陰で少しは理解できた気がするぜ!」


「ぐえぇぇっ、締まるっ締まる‼︎」


「んお? わりーわりー。センセーは貧弱だからよ、力加減間違えちまったぜ。ガハハハ! もっと筋肉つけろよな、チビで筋肉もねぇってそれオンナと同じだぞ」


「なっ……なかなか酷いこと、言うなぁ……ゲホッゲホッ! うぅ……」


 僕をぬいぐるみのように抱きしめて、彼は今まで見てきた中でも最高に眩しい笑顔を見せながら口角を上げていた。ゴワゴワの体毛とはまた違った太いヒゲが生え始め、これから大人になるにつれて更に男らしくなっていくのだろう。成長過程の生徒を見ていると、将来を想像するのが楽しくなる。やっぱ僕、この仕事……向いてるんだなぁ。


「なぁセンセー、ちょっと目ぇ瞑ってくれ」


「へ?」


「いーから」


 突然態度が豹変した彼にブン殴られたらどうしよう、なんて思っていたけれど。もちろんそんな事はなかった。……なかった、が。



「……ん?」


「へへっ、じゃあな。また明日。そろそろ帰んねぇと母ちゃんにメシ抜きだって怒られっからさ!」


 頬に突然ヌメッとした独特の感触。一瞬だけ強くなった彼の吐息の音。僕はその感触に驚いて目を開けるも、彼は少し離れた位置でニコッと笑って部室から去ろうとしているところだった。あれ今……何かされたかな。……しかも制服に着替えないんかい。汗臭い柔道着のままこの部屋を後にした彼は、その巨体に見合わず風のような早さで見えなくなっていた。


「というか部室の戸締りどうすんの? 鍵は? おーい、栗田くん、栗田くんって! ……行っちゃった」


 一人取り残された僕。他の人、部長さんとかどこかにいらっしゃらないです? ……いらっしゃらないですね。ああ、どうすればいいのだろう。他の教師も大多数は帰ってる時間だと思うし。このまま開けっ放しで朝まで放置していたら部室の大事なものが盗まれていたとか、そんなことになったら責任も取れないし。困った、困り果ててしまった。



「おい、もう部活動の下校時間過ぎてっぞー」


「……あ」


「ったく、体育教師の役目だよなこんなん。あー……めんど。……ん? なんだ、生徒かと思えば……よく見たら教育実習生のガキじゃねぇか」


「えっと、おじさんは……」


 どこかの組へ殴り込みにいくようにズカズカと入り込んできた人物。フシューッと大きく、激しく息を吐きながら入ってきた彼はこれまた見上げるほどデカい猪の獣人だった。おそらくこの高校の教師、いや教師じゃないな。モスグリーンの作業着を腕まくりして、頭にタオルをギュッと巻きつけているおっちゃん。ヤニか何かで黄ばんだ牙がとてもよく目につくし、髭のような体毛も顎から生えていて……親方と呼ばれる現場作業員がピッタリ合うような見て呉れだ。そんな獣人がこの高校に何の用かと思ったのも束の間。唐突に彼の自己紹介が始まり、僕はただ静かにその場で立ち尽くしながら聞いていた。


「おう、俺は猪尻(いじり)ってんだ。この高校で用務員をやっとる」


「あ、ども、初めまして」


「んで、教育実習は慣れたか? まぁせいぜい三週間ってとこだっけか。短い間だが、用務員の俺とも仲良くしようぜ。な? へへっ」


「……」


「なんだよ、挨拶の基本は握手からって、今のガキはそんなことも教師から教わってねぇのか?」


 軍手を着用した彼に握手を求められたが、正直その……彼の手が汚過ぎてあまり触る気になれなかった。土汚れか何なのか、元々は白地だった布が茶色く変色していたから。だがここは空気を読む力を試されているような気がして、イヤでも表情に出す事なく僕は握手を交わした。……ベチョッと音がしたのは気のせいではなかったと思う。それにギュッと握られてから、手のひらの表裏がかなり湿っていた。


「そんで坊主、仕事は終わったのか?」


「ええ、さっき終わりました。……終わりましたけど、来週の授業の準備とかもありますし、日報的なレポートも書かなきゃいけないですから仕事はまだまだありますね」


「へぇ、実習生も大変だな。大学の授業もまだあんだろ?」


「へへへ、まぁ。教員免許取るのにはやる事がいっぱいあって大変なんですよ」


「ご苦労なこって。毎年毎年ウチに何人か実習生が来っけどさ、坊主みたいなチビは初めてだ」


「チビ……」


「ん? ああ、気ぃ悪くしたらすまねぇな。これでも褒めてるんだぜ」


 チビを褒められたこと、二十一年生きていて一度もないのだけども。きっと僕を励ましてくれる為に言ってくれたのだろう、あまり気にしないことにしよう。早く帰れよと部室から締め出されるだけだと思えば、仕事が暇なのか猪尻さんは僕にやたらめったら話しかけてくる。そろそろ帰ろうかと背を向けようとしたらちょっと付き合えと言われ、他の部室の鍵閉めや戸締りなんかも手伝わされて。ただでさえ栗田くんの課題に付き合わされたし、早く帰りたいのだけど……。


「でもなんで僕が教育実習生だってわかったんですか? 背丈が低いから学生と間違えられてもおかしくないと思ったのに。まぁスーツはその、着てましたけど……」


「あ? そりゃ職員室とか俺の使ってる用務員室なんかに貼られてっからなぁ。教育実習生が来ました的な知らせの紙がよ」


 ああ、学校側はそのようなものまでわざわざ用意してくださったのか。確か実習前にプロフィールみたいなものを作って提出してくれと言われたが、まさかアレがそのまま使われている可能性が? 変なことは書いてないと思うのだけど、見られていると認識しただけでちょっとだけ恥ずかしくなる。確か最近ハマってることの欄に、牛乳を毎日飲んで身長を伸ばすことって書いたんだよな……。ちょっとウケ狙いで書いたのは失敗だったかもしれない。毎日あの紙を見てぷーっクスクスッ……て笑う先生方、そんな姿を想像しただけで悪寒が止まらなくなりそうだ。


「にしてもやっぱ歳のわりに随分と小せぇなお前。身長がオレの胸板にも届かねぇじゃねぇか。ちゃんとメシ食ってんのか?」


「う、うーん……人並みには」


「……よっと、これで部室と本校舎の施錠が済んだな。ありがとな、話し相手になってくれて助かったわ。こんな苦行、一人じゃやってられねぇって」


 輪っかのような金属が取り付けられた部室のマスターキーと思わしきものを指に引っ掛け、クルクルと回す用務員のおっちゃん。どうやら彼はこの後楽しみに待っていることがあるらしい。


「悪いな、本当は今日メシに連れて行ってやりてぇと思ってたのに。先約があって断れねぇんだわ」


「いっいや、そんな僕なんかに気を遣っていただかなくっても!」


「ガハハハ! なぁにガキが遠慮してんだよ。それに俺は毎年ウチへやってくる教育実習生に目ぇつ……いや、なんでもねぇ。まぁ未来ある若者にはこれからも頑張ってもらわねぇとな。おらっ気合い入れてけよ!」


「……あだぁっ‼︎」


 背中をバシンと叩かれ、僕はすっ転びそうになるところを何とか踏みとどまった。猪尻さん、バカみたいに腕力がある。獣人の人、全員力加減がバカすぎて人間の僕だと身がもたない。まぁあれだけ体がデカいんだからしょうがないのかもしれないが。一歩間違えれば今のも体罰案件だぞ、まったく気をつけていただきたい。


「じゃあな。若ぇんだからしっかりヤることヤッて寝るんだぞ〜」


「…………」


 手で何かを掴みながら上下に至極ジェスチャーを見せつけてくる猪尻さん。正直シモの話には疎い方ではあるのだが、妙に生々しい手つきとニヤリと笑うあの顔で僕はそれが自慰だということに一瞬で気がついた。経験はあるがそんな毎日するようなものでもないし、男はみんなアレをやりたがると思っているのだろうか。……そういう部分も含めて、僕は雄としてあまり魅力がないのかもしれない。身長も低いし、二十歳を超えているのにガキと言われるし、性欲もないし。そんな僕でもなれる職業、それが教師。だから僕はこの実習を乗り越えて、学校の教師として雇われるよう頑張るんだ。



 あとで自宅に帰ってから気づいた事なのだが、スーツの背中側には大きな手形のような跡がこびりついていて。僕はそれが用務員のおっちゃんにつけられたものだと知ってゾワッとなった。軍手、から滲み出た皮脂……かな。一回バンッと叩かれただけだぞ。それなのにこんな……。更には手洗いうがいをする前に自分の手のひらをスンスンと嗅いでみると、僕はこの世の終わりみたいな顔をしながら――。


「……う゛っ、臭っ‼︎」



 汗を何日も何日も放置させ、熟成したような酷く饐えた臭い。金輪際もうあの用務員猪とは握手なんてしないぞ、できればもう会いたくないなぁ……。別に悪気があって握手をしてきたような感じもしなかったし、そういうのもあって本気で怒れないことも厄介だ。来週から行われる初めての授業よりも不安になった僕。どうか来週も、再来週も、あの猪尻さんとかいう用務員のおっちゃんと廊下ですれ違うことがありませんようにと願いながら布団の中へと入りこんだ。……布団の中に頭を突っ込むと、手のひらから漂う強烈な汗のニオイが籠っていて思いきり咳き込んでしまった。もうちょっと石鹸で丁寧に洗わないとダメかもしれない。



〜つづく〜

けもケット13 サンプル⑥ けもケット13 サンプル⑥

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