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fanbox


けもケット13 サンプル①

こんにちは〜こんばんは〜ぱぱを🐼🐾です。


原稿の入稿を終えたということで、4月中はちょくちょくFANBOX支援者向けとして先にサンプルを公開していきます。一部のお話は通販予約開始前ぐらいにpixivでも公開予定です。今回の新刊では新規書き下ろし作品を5作品収録しましたので、たくさんの人に楽しんでもらえたらいいな……!


とここで一つ、ご了承いただきたい点が。実は自分、原稿をですね……。


iPadのソフトで執筆

推敲

PCのWordへと移す

フォントの変換(いつも濁点は濁点として打ってるのですが、Wordでは平仮名と濁点が一緒になった文字を使うのでそれにする作業)

推敲


こんな感じでやっているのですが、一部のフォントを変更する関係でFANBOXにそのままコピペできないんですよね。なのでサンプルでお出しするものは一度推敲しただけのめっちゃ荒い文章になっちゃうんですけど、大体の内容は同じなのでまぁあまり気にしないでください🐼


一作目は熊おっさんです。そして作中唯一の犬獣人が主人公。さてはて、どうなることやら🐻ああ、ちなみに今回の本に収録されたお話は全部比較的優しめでヤラしめです。汗クッセェ熊おっさん、いいですよね。むふぅ…。


本の表紙が出来上がったらまた別で告知あげます〜〜。ではでは、イベント前までの短い間ですがどうぞサンプルをお楽しみください!



ぱぱを🐼🐾


※以下、サンプル本編。


****

新生活はくまさん引越サービスで

****


 引っ越しの時、みんなはどのようにして業者を決めているだろうか。大体の人は複数社見積もりを出してもらって、一番待遇や値段が納得できる所を選ぶだろう。かく言う僕もその一般的なやり方で選ぼうと、最初はそう思っていた。


「ブル引越センターはっすね、ぶもっ……家や物を傷つけない優しく丁寧な仕事を心がけておりまして、ぶるるるっ……」


 随分とこの営業の牛獣人は鼻息が荒い人だなぁ、まるで内容が頭に入ってこない。この会社は……ちょっと避けておいた方が無難かも。そう思って申し訳なさそうに断ってから次の二社目を呼び出したのだが、こっちはこっちで別の心配事が多くなってしまって。



「タイガー運送はスピード重視! お客様を待たせるなんてとんでもない! 段ボール、家電、一人暮らしの部屋の物でしたら十分もかからず全て運び出せます! ですから是非ウチの会社で!」


「えーと、あの、まだ他の見積もりもあ――」


「それはいけない! こういうのはスピード感が命ですから! さぁ、是非タイガー運送であなたの新生活スタートを応援させてください!」


「ちっ、近いっ! ちょっと顔近いんですけど‼︎」


 随分と勢いのある虎の営業さんだ、はぁ……。僕が求めているのはここでもない気がする。確かに値段はさっきのブル引越センターよりもリーズナブルではあるものの、この虎たちに任せて壁紙が擦り減ったりしないか心配だ。従業員は全員虎獣人で構成されているとのことだし、せっかちそうな人が多そうだし……。


 僕と同じイヌ科の獣人社員で構成されている壱壱(わんわん)引越しサポートという会社は大手すぎるのかとにかく大人気で、あそこは見積もりすら予約できないほどだった。というわけで最後である三社目の見積もりを受けた僕だったが、ここでようやく僕の求めていた理想の会社に出会えたのだ。



「そうですねぇ、ではこのぐらいで。二十代の人は新生活応援キャンペーンが適用されますので、こちらから更にお値引きさせていただいて……」


 思わずおぉ……と声を上げてしまうほどのお値段、そして仕事に対する丁寧そうな姿勢。僕が最終的に心を惹かれた引越し会社、それは――。


「では、こちらの日程で承りましたので。当日は弊社“くまさん引越サービス”で働く選りすぐりの人材を派遣させていただきます故、どうぞよろしくお願いいたします」


「ああ……ども、ご丁寧にそんな。値引きとかわかりやすい説明とか、すごく助かりました」


「いえいえ、これが営業の役目ですから」


 そう言うと太眉が真っ白に染まった丸メガネをかけている熊の営業おじさんは、ニッコリと笑って帰っていった。スーツで、紳士的で、ちょっとドキドキしたけれども何とか耐えたぞ……ふぅ。当日は営業の人ではなく作業員が来るので、あの熊とはここでお別れだ。熊、いいな……やっぱ熊って丸っこくてかわいいよなぁ。



「うす‼︎ くまさん引越サービス、到着しました‼︎」


 前言撤回、熊ってめっちゃイカつい。極道の世界で名を馳せていそうな人相の熊獣人がドアの前で全員横並びに待機していて、僕はあまりの威圧感に押されて一歩後ろへ引き下がってしまう。少しだけ開いたマズルの端でキラリと光る歯がちょっとカッコいい。もしかしてわざと見せびらかしているのだろうか。何でもよく噛み砕けそうな立派な歯だ。


「五分ほど予定時刻を遅れてしまい、大変申し訳ございません‼︎」


「いっいや、そんな頭を下げていただかなくても…。午後の引越しなんて予定がズレるのが普通ですから、ほら、ね?」


「……かたじけない。お客様のご好意には我々社員一同、大変身に沁みる想いです」


 何か堅苦しいなぁ……大丈夫かなこの熊のおっちゃん。この業者を選んで今更ながら少し不安になってしまった。僕の引越し、ちゃんと今日中に終わるんだろうな……?



「わたくし、本日担当させていただく熊越(くまこし)と申します」


「あ……ども」


 くまさん引越サービスという会社名、それからポップな絵柄で描かれた段ボールを抱えている熊の絵が印刷されている名刺を受け取った僕。ふぅん、熊越さんかぁ。人間で言うラウンド髭のような黒い体毛がもっさり生えていて、帽子のツバを指でつまみながら礼儀正しく挨拶してくれた。僕はこちらこそよろしくお願いしますと言いながら四十五度の角度でお辞儀をし、彼らを出迎えてやる。社会人生活が始まる前に死ぬほど練習した渾身のお辞儀芸は彼らの胸にしかと響いただろうか。……あっ、特に何も言われることなく搬出作業を始められてしまった。そうか、まだまだお辞儀の修行が足らなかったのだな。精進します。結構いい角度でお辞儀が決まったと思ったんだがな。


「よしおめぇら‼︎ 家財に少しでも傷つけたら命の保証はねぇと思え! いいな、心してかかれよ‼︎」


『うす‼︎』


 そんな、命を取ろうだなんて思っちゃいないのに……なかなか独特な掛け声だ。さっきまで笑顔がよく似合うカッコいい漢という表現がしっくりくる熊越さんが、キリッと目付きを変えて一気に仕事モードへと移行していらっしゃった。もし僕の持ち物や家の壁に一つでも傷がついたら従業員一人の命と引き換えにどうか許してくださいなどと謝罪が来るのだろうか。それはそれでシュールすぎるし、その場に居合わせたら笑わずにはいられないと思う。


 時刻はもう夕方を回る直前。というのも営業の熊さんの話では午後の方が安く受けられるとのことで、それも夕方前のあまり人気のない時間帯を選ぶとさらに割引が……と勧められてしまった結果こうなったというわけだ。そのせいか従業員が総じて汗臭い。部屋の中の空気がどんどん悪くなっているような気がして、僕は思わずゲホゲホと咳き込んでしまった。


「……しっ、失礼しました! 埃を立ててしまい大変申し訳ございません!」


「あっ、いや、これは、だっ大丈夫です、ただの持病なので……ゲホッ」


 喘息持ちでも何でもないというのに、いらぬ心配をかけさせてしまった。では窓を開けさせていただきますと言われたので幾分かはマシになったものの、熊ってこんなに雄臭い生き物だったんだな。……その、正直アガる。雄の汗のニオイってこう、咽せるほど酷い臭気なのになぜかずっと嗅いでいたくなるよな。特に知り合いの同性愛者犬獣人友達との間では意見が一致している。酷く臭い立つ男の汗のフェロモンを、鼻が痛いのにずっと嗅ぎたくなるような相手こそが一番相性のいいパートナーになるという話もよく挙がっていたっけ。じゃあこの従業員の中に僕の趣味と合うようなおっちゃんがいるということだろうか。


「……スン……スンスン……」


 臭う、臭うぞ。屈強な雄熊の、たまらなくいいニオイがする。今は何とか咳き込まないように我慢しているが、肺の中をこのフェロモン混じりの雄臭さで満たすと体温が急上昇しそうだ。鼻や肺には悪影響であるこの雄臭さが、むしろ良い影響の方が上回って最終的に自分の栄養剤となっているらしい。股間は少し硬さレベルがアップしたらしく、半ズボンの中で元気にビクンビクンと跳ねている。何なら今にも汁が出てきそうなムラムラ度合いだ。……この部屋は危険極まりない。今は熊の毒ガスで充満しているのだから。


「コラッ、こっそり軍手外してんじゃねぇ! 怪我したらどうなる! 会社にもお客さんにも迷惑がかかるんだぞ!」


「あだぁっ‼︎ すっすんません!」


 そして僕は一つの答えに辿り着いた。今、目の前で比較的若い熊獣人従業員を叱りつけた人物――熊越さん。彼だ、彼から漂うニオイが一番いい。表現の仕方がおかしいけど、ニオイは全然良くないんだ。何かが発酵したような饐えたニオイが彼の体の周りで常に漂っているし、嗅げば嗅ぐほど気分が悪くなりそうなキツいニオイだと思う。なのに新鮮な空気を吸ったあとでまたあのニオイが嗅ぎたくなって、体が言うことを聞かなくなる。視界に入り込んだ彼のインナー白シャツはビッチョリと濡れているのか色が濃くなっていて、そこから断続的に雄臭さを撒き散らしているのは一目見て明らかだ。


「……ん、どうかしましたか。ははぁ、少し言い過ぎなんじゃないかと、あなたはそう思ったんですね?」


「えっ、えと、は、はい」


 勢いに押されてテキトーな返事をしてしまったが、熊越さんは何か納得した様子でウンウンと首を上下に振っていた。ごめんなさい、本当はこんなこと全然思ってないのに。むしろ仕事熱心な熊越さん、カッコいいなぐらいの温度感で眺めていただけなので。


「あなたはお優しいですね。ですがこれでは大きな事故に繋がりかねない。怪我をしたらお客さんにも、会社にも、そして自分自身にも迷惑がかかる。特に今日はこの前に四件もの引越し依頼をこなしてきましたからね、気が抜けるのは当然。だがそこで気を抜かずにやれるかどうかで、その社員の力量というものが決まってくるのです」


「ははぁ……」


 途中何を言っているのかよくわからなかったので、また適当に返事をしてしまいました。心の声を聞かれていたらめちゃくちゃ怒鳴られてたかも、なんて。夏場暑いからと軍手を外して作業したくなる気持ちは僕もよくわかる。獣人の手は蒸れやすいし、きっと軍手の中は汗のサウナ状態となっているだろうし。頭を摩りながら再び薄汚れた軍手を纏った若熊作業員、それから熊越さんの喝によって再びこの現場の空気がピリッと張りつめたように変わっていった。


「よし、最後は家電だ! 一人で持てるからって無茶するヤツがいたら減給だかんな! 精密機械は筋肉バカのヤツほど複数人で持って運べ!」


 くまさん引越サービスの従業員は全員力自慢の熊獣人であるからか、どの荷物も軽々とトラックへ運んでしまう傾向にある。それ故一人暮らし用の冷蔵庫なら一人で持っていけるし、洗濯機も持っていこうと思えば一人で運べちゃうほどの力持ちさんだ。その油断が命取りとなって怪我や事故に繋がると、熊越さんは腕を組みながら坦々と説明してくれた。


「……うむ、いいだろう。これで全てだな」


「ありがとうございました! とても手際が良くて……その……凄かったです」


「うむ。では次は新居での作業だな。お前も来い。乗せてやるから」


「へ? な、何?」


「次の新居まで徒歩で行くつもりか? そんなものでは日が暮れてしまう。さぁさぁ乗った乗った」


「わっ、あっ!」


 荷物を運び終え、部屋の鍵を閉めてからほんの僅かの時間で。僕は米俵を抱えるように熊越さんの腋へと抱え込まれてしまった。じっとりと背中側を湿らせる要素、それは……彼の腋汗だろうか。そして横腹から香る汗のニオイ、間違いない。さっき僕の鼻をガンガンに刺激して主張してきた雄熊の臭気はこれだ。他の従業員のニオイも少しずつ嗅いでみたけれども、ここまでガツンとくる男らしいニオイは感じなかった。若めの熊獣人たちだったからというのもあったのだろう、爽やかなこう……スポーツ系の汗のニオイを纏った者が大半だったと思う。


 その中で異質なほど濃厚な熊の雄臭さを放っている人物はやはり彼で間違いない。それはトラックの中へと連れ込まれた時も同じことを感じた。



つづく

けもケット13 サンプル①

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