こんにちはこんばんは、ぱぱを🐼🐾です!
2月にご支援してくださった皆様、どうもありがとうございます!初めましての方はどうも、こんにちは。そこら辺にいっぱい居そうなケモおっさん物書き家が作ったオカズを見にきてくださっているとのことで、今月はSkebで納品した非公開依頼のお話をば。
レッサーパンダのおじさんと出会う人間くんのお話です。かなり甘めにしてあります。スケベもあります。1万7000字ほどですので、どうぞごゆっくりお楽しみください。レッサーパンダ獣人が出てくるお話なんて初めて書いた上、結構お歳を召した所謂おじいさんなので上手く表現できているかどうか……!
ではでは、私はこれにて失礼いたします。……あっ、こういう非公開依頼のヤツはpixivに一生アップする予定がないので、是非気に入っていただけたらメモ帳やら何やらにコピペしてローカルでの保存をおすすめいたします。
※以下、本編。
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物も人も、時間を経て変化していくものだ。ずっと同じなんてあり得ない。だから僕はその知らせを聞いた時、驚きのあまり何も言葉を発せないでいた。
……もうすぐ父が亡くなるらしい。職場の電話にかかってきた突然の電話、病院の人は物ごとを的確に伝えてくれる。人の命が消えようとしている時に、なんでそんな冷静でいられるんだ。仕事で日常的に人や獣人が亡くなるところを見ているからか、感覚が麻痺しているのかもしれない。父は元々持病があったのだが、道端で倒れているところを誰かが発見して病院で治療を受けているのだそうだ。だが助かる見込みは……。
それから僕が新幹線で帰省中、病院へ行く前に父は息を引き取った。最後に会話することは叶わなかったけれども、顔が見れたから良しとした。いや、良しとしておかないとずっと後悔する羽目になるから。葬式は身内だけの小さい規模で、それから――。
*
「うわっ……相変わらず長閑なところだな」
新幹線で二時間ちょい、それからバスで数十分。整備のされていない道を揺られながら、僕は山の少し入り組んだ場所へと足を運ぶ。山の方といっても意外に家やらコンビニ、何ならスーパーもあるようで。運転手曰く、ここ一年ほどでこの街も随分と発達したのだとか。もうすぐあそこに本屋ができる、それから曲がり角を曲がった場所で家電屋さんが――。そう聞いてみると、ここは意外と悪くない場所かもしれない。何せ僕はこれから……この街に住むのだから。
数年前、遺品整理に戻った時はそりゃもう大変だった。父の家は書物ばかりで、それも貴重なモノだったり自分で執筆したモノもたくさん飾られている。僕はあまり読んだことがないのだけど、父は一部の界隈で有名な小説家だった。故にどんなモノを書いているのかも知らないし、実は社会人になってからあまり会話もしていない。……もっと電話してあげればよかったかな、そんな風に後悔してももう遅いのだけれども。これだから残された者は後処理が大変なんだ。僕がいつまでも父の死を引きずるわけにはいかない。
相変わらず立派な家だ。父が住んでいた家は一軒家で、もう築年数的にはそこそこ経ってはいたもののまだ十分住める状態にあった。売り払うのも手続きやらが中々に面倒だし、それに都内に比べて家賃が必要ないというのは非常にありがたい。仕事は……まぁ、こっちで見つければいいかと思って前の仕事は退職してきた。こんな田舎に仕事があるのかと最初は不安だったが、最近新しい店が次々に建てられている所を見るとそう困らなそうだ。
「ちわーっ、ブルブル引っ越しセンターっす」
「あっ、もう?」
頼んでいた引っ越し業者は思いの外早くウチへ来てくれたようだ。既に準備万端と言いながらブモブモと鼻息を荒くしている牛獣人たちに、僕は次から次へと指示を出してやる。この段ボールは洗面所、この段ボールはリビング、テレビは角で斜めにして置いてもらい、勉強机は――。僕の指示がないと彼らもうまく動けないので、正直かなり面倒だ。僕の思想がそのまま彼らの頭の中に入ってくれればいいのに。そんな魔法が使えるようになるのにはあと何千年先の話だろうか。
それにしても仕事熱心な牛たちだ、どの牛獣人も体育会系の部活か何かやってたんじゃないかと思えるほどの強靭な肉体。きっとメスにもモテるに違いない。僕はそんなに体格も良くないし、現に恋人だって今までで一度も……。この話はやめよう、恋人だなんて考えるだけで疲れてしまう。そういや父がいつか前に、いい人が見つかったら挨拶しに来なさいとか言ってたよな。結局見せられなくてゴメン。……そしてこれからも僕に恋人ができるとは到底思えなかった。これはあの世でも詫びを入れる必要があるかもしれないな。
「……お? 誰か入居してきたのかの?」
「へ?」
牛たちを動かす総監督になっていた僕、突如後ろから声をかけられて。それも引っ越し業者たちのハキハキとしたような喋り方ではなく、少し優しめな温かい声。僕はパッと後ろを振り向くも、そこには誰もおらず。左右をキョロキョロしながら辺りを見渡すと、そこには僕より背丈の小さな……えっと、何だろう、これ何ていう種類の獣人さんだっけ……。
「おおすまんすまん。ワシ、獣人の中でも小こくてなぁ。はっはっはっは!」
「あっ……こ、こんにちは」
「おぉ、こんにちは。失礼じゃが、もしかしてこの家の新しい家主さんかの?」
思い出した――レッサーパンダだ。レッサーパンダ種、顔まわりに生えた茶色くて明るい体毛の、そして首から下の前部分は黒い毛で覆われた可愛らしい種族。毛並みからしてそこそこお年を召された獣人さんだ。
「ええ、今日からここに住むことになりました」
「ほほぉ。学生さんかな?」
「……い、いえ、残念ながら社会人です」
「そうかそうか、とても若く見えたもんじゃからつい。それにしてもここは人間さんが住むことが多くてええのぉ。前も、その前の前にも人間さんが住んどったところじゃ。きっと住みやすいんじゃの。ほっほっほ」
レッサーパンダのおじさんはこの家についてかなり詳しいようだった。それもそのはず、なんと今はこの一軒家の隣に住んでいたのだから。といってもこの山では家の一軒一軒がそこそこ離れているため、徒歩一分圏内の場所に住んでいると言った方が正しい表現ではあるのだが。
「おじさんは――」
「小熊(おぐま)、じゃ」
「おっ……小熊さんは、その、この家で前に住んでいた人とは仲良くされてたんですか?」
どうしても気になった。父のことをもしかして知っていたりするかもと思って。近所ということだし、このおじさんは相当前から住んでいそうだし。それから少し間が空いたあとで、小熊さんはこう話を始める。
「そこまで関わり合いがあったわけじゃないがな、何せワシは……先生を見守る一人のファンじゃったから。むふふふ」
「先生?」
「そうじゃ。ここに住む人間はよく本を書いとってな。だがファンだからといってあまりガツガツ交友を深めようとすれば迷惑かと思うてな、その、遠くで見守るような形でいつも見とったよ」
小熊さんは僕の父親のことを“先生”と呼んでいた。執筆をする小説家のことを、人はよく先生と呼ぶらしい。どんな話を書く人なのかと聞いてみたら、それは自分が思いもつかないような内容だったんだ。正直頭のいい政治家の話とか、成功論みたいな堅苦しい本とか、そういうのを書いていたんだと思っていたのに。……僕は父のことを、父が僕に見せなかった部分を、何も知らなかったんだ。
「先生はなぁ、獣人と人間の恋愛小説を書いとってな。それがもう、すっごくこう……心がギュッとなるような話で、うぅ……」
獣人と人間の――。それも恋愛小説だなんて、そんなのを書いてるとは一言も言っていなかったのに。僕が社会人になるまでは別の街で暮らしていたのだが、その時にも父の書斎には一度も入ったことはなかった。確かこの中古の一軒家に住むようになったのは……僕が実家を出て行った後からだったかな。ちょうどいい感じの家が見つかったからとか言って、その時の父はとても喜んでいたはずだ。風景もいいし、近くに住んでいる人もいい、仕事をするにはうってつけの場所だって。そう言ってたような記憶がある。
「……そう、なんですね」
「まぁそこまで本は売れんかったようじゃし、ワシのようなコアなファンが少しいるぐらいじゃろうて。ガッハッハッハ!」
そりゃそうだ、ベストセラーなんかになっていたらこんな中古の一軒家に住みやしないだろう。むしろ都会のタワーマンションなんかに住んでてもおかしくない。死後だというのに、僕は自分の父親のことをもっともっと知りたくなった。僕には見せない、父の別の姿が気になった。だから……また小熊さんに話を聞いてみるのも悪くない、かも。
「まぁ何かあれば是非尋ねてきなさい。すぐそこの家におるからの」
そう言うとレッサーパンダは尻尾をフリフリしながら踵を返し、僕の前から姿を消す。距離が離れていくと尚小さく見える彼、獣人とは思えないような背の低さ。……変わった人、だったな。でも温かみのあるいい人だと僕は思う。
「あのー、この荷物どこ置けばいいすか?」
「あーそれはですね! えーっと――」
牛のお兄さんに声をかけられ、僕は思想の中の世界から再び現実世界に引き戻される。小熊さん……か。今度引っ越しの挨拶がてら遊びに行ってみるのも悪くないかもしれない。
*
引っ越しというものは荷物の開封、それから市役所での手続き、本当にやることが山積みだ。仕事を探すのも大事だが、それ以上に事務作業が多すぎる。
「あ〜〜もう無理〜〜疲れる〜〜〜」
次から次へと出てくる荷物に嫌気がさし、僕は二階の奥にある書斎へと向かっていた。この部屋は父の死後から何一つ変わっちゃいない。少し埃が被ってしまった箇所はあるものの、本については一切触れていなかったから。
そういえば小熊さんが言っていた、父の書いていた恋愛小説の話。ふと急に気になって、僕は適当にそこら辺の本を一冊手に取ってみた。あまり活字を読まない僕でも読めるだろうか。そう思ってページをめくり、フカフカのソファへと腰を下ろす。
「……ふぅん」
本を読むのに飽きたら、また引っ越しの後片付けに戻るとしよう。そう念を押してから……僕はその小説を一冊読み切るまでソファから離れることはなかった。何だ、これ。すげぇ。父さんはこんな物語を書いていたのか。確かにその、一般受けはしないような内容だと思う。だって獣人は獣人同士、人間は人間同士、獣人の中でも種族が違う者同士が結婚する事例はあまりない現世。そんな中で獣人と人間をくっつけさせるなんて正気の沙汰ではない。それなのに僕は父の書いた物語の世界に引き込まれていた。父の本は基本的に獣人の方が男性、人間が女性で書かれていることが多い。そして……ちょっとスケベなシーンもある。
「……あっ」
読み終わった後で何とはなしにズボンの中へ手を突っ込むと、そこにはぬるぬるになった小さな肉棒がピクピク震えながら硬くなっていたのだ。母さんは、自分の夫がこんなもの書いていたことを知っていたのかな。僕の母さんは……父さんが亡くなる随分前に亡くなったから。本当のところはどうだったのか知らないけど、やっぱり生きているうちに色々聞いておくべきだったか。
本を読み漁っていたら当然時間は川の流れのようにあっという間に過ぎ去っていって、今日は引っ越しの後片付けなんてもう出来やしないだろう。陽も傾いてきて、そろそろ夕飯の準備をしなくちゃいけない。……いやぁ、もっと読みたいなぁ。どうして今まで気づかなかったのだろう、こんな小説を父が書いていると知っていたら僕はもっと……父と会話していただろうに。
そうだ、父のことで思い出した。小熊さん、小熊さんに話を聞いてみたかったんだ。そうと決まれば僕は予め準備しておいた引っ越しのご挨拶用ふかふかタオルが入った紙袋を用意し、足取り軽く外の世界へと飛び出していった。確か……ええと、そうだ。あの家だよな。手探り状態でゆっくりと、辺りをキョロキョロ見渡しながらたどり着いたその家。表札には”小熊“としっかり記されていたので間違いないだろう。
「ごめんくださ〜い」
インターフォンを鳴らすも、中から出てくる様子もない。声をかけても音ひとつ聞こえて来ないその部屋に、僕は少しだけゾワっとする。まさか……中で倒れてたりしないよな……。あの歳だから少し心配な部分もあるし、ええと。胸騒ぎがする。大丈夫だよな。だけどその保証はどこに? 一度しか会ったことがないのに、僕は心配で心配でたまらなくなる。何とか入る手段はないかと金属製のドアノブに手をかけると、何とロックもせずに開いているではないか。何と不用心な――だがこれで家の中に入れる。おじさん、おじさんっ……おじさん――。
「小熊さん! 小熊さん! いますか! 小熊さん!」
「なんじゃあいきなり大声上げよってからに」
「わっ⁉︎」
「尻餅をつきたいのはワシの方じゃというのに。ガッハッハッハ! どうしたんじゃそんなに慌てて」
玄関を通り抜け、リビングらしき場所へ抜ける廊下をドタドタと音を立てて走っていた時。傍にある分岐点から突如びしょ濡れになった小熊さんがヌッと姿を現した。気配を絶っていたのかと思うほどの突然の出現に僕は自分でもビックリするような辺な声を上げて、硬いフローリングの床へ尻をついてしまう。それを見た小熊さんは面白おかしく笑っていたが、こちとらおじさんのことが心配で心配でたまらなかったというのに。
「おっおじさん、ぶ、無事でしたか、はぁ……」
「無事も何も、ただ風呂に入っとっただけじゃわい」
フカフカそうなキレイ目のバスタオルで頭から拭き回す小熊さん。なんだ、ただの風呂か……ビックリさせないでくださいよまったく。まだ心臓がドクドク激しく鼓動している。動悸が収まるのはいつになることやら。
「それにしても不用心すぎますって! ちゃんと家の鍵はかけてくださいよ!」
「あー、すまん。ワシ、そういうところがダラしなくての。出かける時の鞄もいつもチャックが開いてしまうし、ズボンのチャックもよく開いとるんじゃ。まぁチャームポイントみたいなもんじゃな」
「…………」
おじさんが体をワシャワシャ拭き回している姿を見て、僕はどうしても視線を逸らせずにいた。さっき読んでいた父の恋愛小説でも獣人の毛皮の描写がとてもよく表現されていて、実際獣人の毛皮って触り心地はどんな感じなのだろうとどうしても気になってしまって。
それに股座のブツが……かなりデカい。人間の僕より小柄で、さらに横へ広い体格を持ち合わせているレッサーパンダの彼。そんなおじさんの股座にぶら下がっていたものは、そこらのキノコなんか目じゃないほどに太ましい立派なモノだった。年齢はよくわからないけれども、年老いている割にはいいモノすぎる。何なら羨ましい。
「……どこ見とるんじゃ」
「あっ、その」
「そう珍しいものでもないじゃろ。今は性欲も前に比べたらかなり落ちたし、あまり使わんからなぁ。ガハハハ!」
豪快にそう笑うと、おじさんはタンスから少し色のくすんだ布を取り出した。……褌だ。人間はあまり着用する者がいないと聞くが、獣人はパンツを履くと尻尾の締め付けがキツいので褌のような布を締めた方が楽らしい。さっき読んだ父の本にもそう書いてあった。……父さんはどうしてああも獣人の体についてよく知っていたのだろうか。それに描写もすごく上手で、僕のような活字をあまり読まない人でも頭の中に情景が浮かび上がってくるほどだった。
「すごく、その。毛深いんですね」
「大体の獣人はみんなこうじゃしな。それよりも何じゃ、ワシに用かの」
「ああ、えと、着替えてからで……いいです」
「ふむ。じゃけどもワシ、家では褌一丁だしのぉ」
「褌一丁⁉︎」
「少し毛が乾いたら行くからの、リビングのソファにでも座っててくれ」
……なんと心臓に悪い。同じ男性の体だというのに、なぜか女性の裸体を見ているかのような気分になる。心なしか体が熱くなってきたような気もするし、何なんだろう……暖房のせいかな。
それから十分もしない内に、小熊さんはなぜかお盆の上に瓶ビールとグラスを乗せてやってきた。……あれ、心なしかちょっと体型がシュッとしてるような。そう言ってみると、どうやら毛皮が生乾きのままで来てくれたらしい。そんなに急いで来てくれなくてもよかったのに。
「えっ、なんでグラスを二つ持って……」
「そりゃ一緒に飲むんじゃからな。社会人と言うとったが、その歳じゃとアルコールはもう飲めるんじゃろ?」
「飲めますけど! 飲めますけども……」
「すまんが注いでくれるか」
ただの引越しの挨拶で、なんでビールなんかご馳走になってるんだ僕は……。栓抜きで開けた瓶から、僕はおじさんの持つキンキンに冷えたグラスへ液体を注いでいく。会社の飲み会で上司に散々鍛え上げられたビールの上手な注ぎ方、それが今役に立った気がする。泡と液体の比率がいい感じになるよう高さを調節してやると、小熊さんは顔をニンマリさせてから瓶を奪い取ってきた。
「今度はワシが注いでやろう。ほれ、早くグラスを持たんか」
「はっはいっ」
「……おっとっとっと」
おぼつかない手つきで注がれたビールは、僕ほど上手くはいかなかったけれど。他人に注がれるビールは……何だかいつもより美味しそうな気がする。
「菓子はテーブルのモンを適当に摘んでくれていいからの。かんぱ〜い」
「……乾杯」
突如始まった宅飲み会。そしてさっきからずっと気になっていたテーブルのお菓子の山。どうやら小熊さんはこの菓子の山をいつも一人で食べ漁っているようだった。リビングのテーブル上に都合良く置かれたその籠の中には甘いお菓子から塩っぱいお菓子まで揃っており、そこからポテトチップスの入った筒を持ち去ると小熊さんはティッシュの上へ並べるようにして取りやすくしてくれた。
「んぐ、うまい、ふぅ……」
とても美味しそうにビールを喉へ流し込み、それからパリパリと音をさせてお菓子を貪る小熊さん。なるほど、こうして肥満体型のお腹が出来上がった……と。
「ところで、用件はなんじゃったかの」
「あっ、そうだ。これ、お引越しのご挨拶的な……」
「お〜〜タオルじゃないか! それもあの西の地方で有名な会社の品質が良いヤツ! 知っとるぞ、テレビ通販番組で見て注文しようか悩んどったヤツじゃからな」
ものすごく詳しい。ブランドもの、と言ったらちょっと聞こえはいいけれども。リーズナブルなお値段で質のいいタオルを作っている会社のものを差し上げたのだが、小熊さんは満面の笑みでタオルの袋を外側から揉みしだいて上機嫌そうだった。
「さっそく首にかけるとするか。まだ頭の部分にドライヤー当てとらんしのお」
袋から取り出した白タオルでワシワシと頭を擦り付けたあと、小熊さんはタオルのニオイをフンスフンスと嗅いでうっとりしていた。そんなにいいニオイがしたのかな、新品だから柔軟剤のニオイはついていなかったはずだけども。なんか鼻を寄せてスンスンしている姿を見るのもまた面白いな、獣人特有のマズルは人間と違ってグラスの飲み物が飲みにくそうだ。ふぅん……へぇ……。
「……それにしてもさっきからジロジロ見よってからに。ワシの体がそんなに気になるのか?」
「え゛っ、あー……ん……」
「ガハハハ! アンタは感情を隠すのが下手っぴじゃな。顔に出とるぞ」
ジッと小熊さんの様子を観察していると、当然のことながら指摘が入ってしまう。さっきも指摘されたせいで、これで二度目だ。もう僕の気持ちを隠すのは難しいだろう。それにこうなってしまったのは父の小説の影響だから。同じくして、いや僕よりも読み漁ってくれていた小熊さんにこの話をしてもきっと問題ない……はず。
「実は……その、さっき父の小説を初めて読みまして……」
「父? お前さん、あの先生の息子さんか」
「ええ、まぁ。といっても僕は文才がないので父のようには全然書けないし、書いたこともないんですけど」
「そうかそうか、おお……よく顔を見せておくれ」
小熊さんは僕の顔を拳二個分ぐらいの近さでまじまじと見つめたあと、視線をずらして少し遠くの方を眺めて……ニッと笑う。
「……うむ、よく似ておる。特に目元が、そしてもしやと思っとったが後ろ姿も先生を思わせるような外見じゃな」
「そっ……そうなんですか、自分ではよくわからなくて」
「それで話を戻すが、読んだんじゃろ? どうじゃった?」
「獣人の体や仕草についての描写とか、人間と獣人が愛し合ってお互いを触るシーンとか、そういうのを見てたら獣人の体に興味が出てしまって。ほら、僕が住んでた都会にはあまり見かけなかったものですから」
「ほぉほぉ、そうじゃな。今の時代は都会じゃと獣人も暮らしにくいじゃろうし」
都会には縦長のコンクリートで作られた建物ばかりが立ち並んでいて、獣人の好む緑というものは淘汰されている現状。そんな中で住みたいという者も、働きたいという者も少ないだろう。故に獣人は地方の会社で働き、森林などの自然豊かな場所で家を構える動きが一般化されていた。獣人は都心の電車だとたまに見かける程度だったのだけど、その時もかなりの体格差に圧倒されてしまったな。あんなにデカくて力も強そうな人がスーツを着ている現場を見てしまったら、萎縮してしまうのも無理はない。だから僕はなるべく獣人と目を合わせないようにして生きてきた。だから小熊さんのように、こんなにも近くで会話をしたり……何なら毛皮が触れそうになる距離にいるのは初めての体験だ。
「どれ、もっと触ってみるか。こんな老いぼれの体じゃと不満かもしれんがな」
「いっ、いえ、そんな……」
「ほれ、今ならワシも無防備じゃ。どこを触ってくれてもええぞ」
マズルの口角を上げながら、ソファで腕組みをしている小熊さん。僕より体格が小さいのに、なんか堂々としていて……カッコいいな。それに体を触ってもいいだって? どこでも? ど、どうしようか。まずは腕でも触ってみるか。腕組みをしている手を解くようにして、僕はおじさんの左手をギュッと握ってみる。わっ……肉球がある。そんなにプニプニしていないし、何ならガサついているけれども。自分の体にはない部位があると、僕は興味津々でそこを何度も触ってしまう。
「わっ、ひゃっ、くすぐったい‼︎ わははは!」
「……すみません、ついその、触り心地が気になって……」
「構わん構わん。それよりもっと他の部位も触ってみたらどうじゃ。そうじゃな、尻尾もええぞ」
「尻尾もですか⁉︎」
「……あまり力を入れすぎんようにな。強く握られるとワシもビックリしてしまうわい」
尻尾の方は念入りに水気を拭き取ってくれたのか、そこそこブワッと毛が広がっている。それに太くてデカくて……こんなものが尻の付け根に付いているのはどんな感覚なのだろう。邪魔で邪魔で仕方がないようにも思えるし、だから尻尾が楽になるよう褌を身に付けるのか。
「……わっ、おおっ」
揉み心地は正直、最高のレベルだと思う。ちょっと短めの抱き枕を思わせるようなフォルム、そして太さ。僕の身長並みに長ければ是非布団の中に入れておきたい逸品。そんなことを頭の中で考えながら揉んでいると、なぜか小熊さんは少し眉を寄せながら困ったような顔で斜め上の方を見上げていた。何かあったかな、痛いほど握っているわけでもないからそこは問題ないと思うのだけれど。
「…………な、なぁ」
「えっと、揉みすぎましたかね? すみません、つい」
「…………」
それからおじさんはふっと下を向く。なんと股座に巻きついている白い布から漏らしたような汁が溢れ出ているではないか。まさか……小便? そう思って聞いてみるも、膀胱の方は老いてないわいと怒られてしまった。
「なっ、なぁ、ワシの体に興味を持ってくれとるのは有難いんじゃが。……どうしても、その、尻尾は敏感でな、ははは」
我慢汁、カウパー液。そのように表現されるのは、興奮した時に雄の肉棒から勝手に溢れ出る体液だ。おじさんは僕に体を触られて、体毛を手の指先で掻き分けられて、握られて、興奮していた。他人の男性が興奮している様を見るのは僕も初めてで、尻尾を掴んでいた手を思わずパッと離すとなぜだか自分の心拍数が急上昇するのを感じてしまう。さっきみたく胸騒ぎがして動悸がしたのとは違うドキドキ。僕は……こんなことがあってもいいのかと自分自身に問いかけ続けた。
まさか男の体に、鼻息が荒くなってしまうほど興奮してしまうだなんて。
「なんじゃ、アンタもそういうのがイける口か」
「ひゃっ、ああっ! こっこれは、そのっ!」
「……よければワシが手伝うぞ?」
僕がおじさんの尻尾を握るように、おじさんは僕の股間をむんずと掴んで握りしめてきた。それも生易しい握り方ではなく、少し強めな握り方で。男同士だからこそ握る握力の加減がよくわかっている。おじさんは僕の竿と、それから玉袋も一緒に揉みしだくようにしてニヤニヤしていた。
「手伝うって、なっ何を……」
「男同士、発散し合わんといかんじゃろ。オンナを抱くのが手っ取り早いが、生憎そんな相手もおらんし今は野郎二人だけ。幸いお前さんもワシのことを気持ち悪いとは思っとらんようじゃしな」
ソファに座る僕の体の上へグッとのしかかり、おじさんはペロリと舌でマズル回りを舐めてからこう言った。
「二階のワシの部屋へ行こうか。引越しの挨拶と称して親睦会でも開こうじゃないか」
*
小熊さんの寝室は、そりゃもう僕の今住んでいる隣の家とは比べもにならないぐらい立派なもので。最初敷布団を愛用しているのかと思えば、立派などデカいベッドを設置していた。それもこの国のものではなく、海外で造られていそうなデザインのオシャレなベッドで。
枕元の棚に置かれていたのは芳香剤、そして……数冊の本。ついさっきも読んだ、僕の父さんが書いた本だった。イベントとやらでしか頒布されていない、通販でも買えない本らしい。同じ道を志す者、ないしは同じ趣向を持ち合わせている者だけがサークルとして参加するイベントに、父は何年も……実に連続で十年以上も出席し続けたようだった。確かに学生の頃にも休日に仕事があるから……とフラッと居なくなった事がある。そうか、あれはイベントへ出ていたからなんだ。
「ワシのお気に入りはなぁ、恥ずかしいんじゃが……男同士の恋愛モノが好きで好きで。あまり世間からはいい目で見られんし、そんな中で君のお父さんが書く小説本にハマったんじゃよ」
そう言うと小熊さんはコレが熊獣人と人間の恋愛もの、アレが梟獣人と人間、そっちのヤツが虎獣人と人間の……と事細かに説明をしてくれる。なぜ父さんは母さんと結婚したのに、男同士の恋愛にも詳しかったのだろうか。多様な性に対して需要のあるストーリーを考え、世に出すその素晴らしさ。僕は父のようにはなれないなと困り顔で照れ隠ししていると、おじさんは僕を抱くような形で布団の中へと引きずり込んできた。
「あっ……ああっ……」
「こんなにデカくしおってからに。それじゃあゆっくり、脱がすからな」
ただの部屋着でこんな人様の家へ来てしまったことを、僕は心底後悔した。それに何故僕は他人のベッドになんか……。展開が早すぎて、理性が追いつかない。獣人男性の裸体を見てから、僕の全てが狂ってしまったんだ。僕は引越し祝いのタオルを渡して、ついでに父のことについて軽く質問させてもらって、それから家に帰って一人夕食の準備をするはずだったのに。酒に酔ったせいもあるだろうか、でも酒に酔っているのは小熊さんも同じだ。据わったような目付きで僕に目で合図を送られると、彼は僕がトランクス一丁になるまで勢いよく服をひん剥いてきた。男からも女からもこのように無理矢理脱がされた経験がないため、僕はまた心臓の鼓動を早めておじさんの裸体を見上げる。体温で体毛が乾いてきたのか、心なしか体積が大きくなったように感じた。
「ええのお、ワシはもうそんなに勃たんから羨ましいわい」
「ひゃんっ、ひっ‼︎」
「手で簡単に握れるサイズなのも可愛くてたまらんぞ」
パンツの中へ躊躇なく手を突っ込んでくる小熊さんに、僕は身をよじらせながら何とか快感を逃そうと動き回る。その体を追いかけ回すようにして僕の体をいじり倒してくるおじさん。エロいオヤジと何ら変わりないその行動に、僕は嫌悪感どころか興奮を感じて止まない存在となっていた。男同士でこんなこと、ダメなはずなのに……。小熊さんが当然の如くやってのける愛撫、僕は父の書いた小説に出てきた人間のことをふと頭の中に思い浮かべていた。今日読んだ物の中で獣人のおじさんとまぐわうシーンもあったっけか。乱暴に組み敷かれて、それから形の違うマズルと口元で舌を絡ませあって……。
「……どうした、口をパクパクさせおって」
「…………なんでも、ない、う゛っ! ……です」
「そうかそうか。気持ちええじゃろ。ふふん」
僕が初めてエッチなことをされているというのに、小熊さんは本当に慣れた手つきで実力の差を感じてしまう。本当は若い僕がおじさんをリードしなければならない気がするのに、そんなことやれる余裕がまるでない。全てはおじさんの手のひらで踊らされている。僕は止まらない我慢汁をおじさんの手のひらにぶっかけながら、ニチャニチャ、グチュグチュと音を立ててちんちんを扱かれ続けた。
「あ゛っ、あっ、ああっ! あっ‼︎」
「そらそら、イキたくなってきたじゃろ。んん?」
「ひゃあっ、おじさっ、あっ、まだっダメっ、あっ!」
「そんなこと言うて、ビンビンでギンギンにさせながらぬるぬるの汁を出しとるのはどこの誰かのお」
「あっあああっ、あ゛〜〜〜っああああっ‼︎」
何とも情けない声だ、これが男が発する声なのだろうか。僕はおじさんのシワシワになった肉球の感触があまりにも気持ち良過ぎて、盛大に汁を撒き散らしてイッた。掛け布団は既に取り払われていて、僕は仰向けになりながらビクンビクンと体を痙攣させる。小熊さんはずっと舌なめずりをしながら僕の股の間に入ってニヤニヤしていた。心なしか彼の股座から生えたキノコが少し半勃ちになったような気がするが、まだ本調子ではないのか首を傾げながら逸物をニチャニチャ抜き上げる。
「ううむ……もう少し、もう少し興奮すればワシも……」
そう言うと今度は小熊さんがベッドに仰向けとなって、両脚を抱え込みながらこちらへ見せつけてきた。何だ、何をすればいいんだ。そうだ、父の小説には……男性と交尾をする時にはケツの穴を使うって……書いてあった。いやでもこれってただの抜き合いをする予定だったよな。なにのぼせ上がってるんだ僕は、小熊さんの肉穴に竿を埋めてみたいだなんてそんな……。
「もう洗ってある、ほれ。指を挿れてみろ、温かいぞぉ」
「ゆっ……指……」
「そうじゃ。ケツのまんこはしっかり指で拡張してなぁ、それから一思いに腰を突き出して挿入するのが筋ってもんじゃぞ。さぁさぁ早くしとくれ、ワシも久方ぶりにムラムラしてたまらんわい」
小熊さんの誘惑に、僕は何の抵抗感も抱かず吸い寄せられるようにして股座の間へと入りこむ。褌の布を横へずらしてからケツを見せつける行為はまさにグラビアアイドル並の破壊力があった。むちむちボディ、それにこの肉が乗り始めた胸元。……少し揉んでもいいだろうか。
「ひゃあっ!」
「あっ、ご、ごめんなさい」
「……何を謝っとる。ほれ、揉んでみんか。ワシのおっぱいの揉み心地はなかなかのもんじゃぞ、へへっ。最近ビールで肥えてきとるからの」
ぷっくりと膨れ上がった胸元の突起物、さっき風呂に入ったというのに汗ばんでいる体。端から端まで僕をムラつかせてくる淫らなボディに、僕はのしかかるようにしてダイブする。ボヨンと跳ね上がるお腹からはじっとりと汗が滲み出ていて、僕は男の汗の香りを嗅いで……なぜか股座を硬くしていた。こんなもので興奮するなど今までなかったのに、小熊さんを見ていればどんどん常識が改革されていく。
「わっ、おじさんの、ぬるっとしてる!」
「ふーっ、ふぅっ……お……勃ちそうじゃ、ふぅっ……早くここへ挿れるんじゃ。はよせえ」
「でも……」
「いいから、ほれ早く。老いぼれにいつまでも恥ずかしい格好で待たせるんじゃあない」
口では遠慮しているものの、僕の逸物は硬さが限界を超えていた。血管が切れそうなほどにガチガチとなった肉竿を、僕はしっかりと手のひらで握ってケツの穴へと当ててやる。小熊さんは一瞬だけ顔をしかめたが、それもカリが肉穴を通り過ぎた最初だけ。
「はっ、入った……あぁ……」
「お〜…………ええぞ、ドクンドクン言っとるわい」
自分の竿まで伝わった心臓の鼓動が、小熊さんの体内にまで伝わったようだ。これが一つになる、ということ。僕は生まれて初めての性行為、すなはち童貞卒業を知り合ったばかりの獣人おじさんで卒業して……。
「はっ、はぁっ、すごいっ、ぬるっとして、あっ!」
「どうじゃ、ワシの穴は中々の名器じゃろ。最近イジっとらんかったが、ふぅっ……お〜〜きたきた、そこじゃそこ、そのゴリッとしたところをもっと突いとくれ」
「ここっ、ですか、ここ?」
「ん゛おぉっ‼︎ くるっ! もっとじゃ、もっと腰を振れ!」
そんなに乱暴にしてもいいものかと控え気味になっていたところを、小熊さんの後押しによって僕はがむしゃらに腰を打ちつけた。パンパンとケツと股座がぶつかり合う音、毛皮から水飛沫のように飛び散る汗。交尾はスポーツ、何よりも激しい競技だと言える。それに肉竿へ絡みつく腸壁がとてつもなく気持ちが良くて、止めたいのに止められない。我慢汁が無限に湧き出て、おじさんの秘部を延々と濡らし続けては滑りを良くしてくれていた。
「がぁっ、ああっ、だめっ、出ちゃうっ、うっ」
「遠慮せんで中出ししろ! オンナのまんこに種付けする気持ちでスパートをかけるんじゃ! ほれ、漢気見せてみい‼︎」
「あっ、ああっ、あ゛〜〜〜っ‼︎」
出してはいけないような気がする、だって他人の体内にこんな……汚い汁を……。そういった理性はもうどこかへ置いてきてしまって。僕は小熊さんにギュッとしがみつきながらブルッと震えて小便を出すが如く、勢いよく子種を撒き散らした。具合のいいオナホのような感触、だが相手は生身の肉体を持った獣人。自分の身長よりも低く、横にデカいレッサーパンダ種のおじさんを、僕はぬいぐるみのように抱きしめてイキ続けた。その際一番気持ちがいいところに当たったのか、おじさんも同じように声を上げて――。
「…………うわっ」
「へへへ、中々やるじゃないか。一度も触っておらんワシの竿からもほれ、見てみい。ネバネバの汁がたっぷり出とるぞ」
抱き合う僕とおじさんの間には、黄ばんでネトネトのザー汁による架け橋が出来上がっていた。ケツを掘られてイく、それは父の書いた小説にもあった描写。排泄として使われる穴で、小熊さんは僕の腰振りでヨガって……イッてくれた。本当に掘られて気持ちが良かったのか、お世辞でも何でもなく本当に。相手をイカせ雄としての自覚が芽生えてきた中で、今度は逆におじさんがのしかかってくる。先ほどよりもかなり鼻息を荒くし、僕の首元をペロリと舐めながら甘い声で囁いてきた。
「ひゃんっ‼︎」
「……久方ぶりにガチガチになってしもうた。これは何かのご縁じゃな、ワシにもタチをさせとくれ」
「たっ、タチ? タチってなっ……」
「こんだけ硬くなったんじゃ、ワシにもお前さんの肉穴を堪能する権利がある。どうじゃ、掘られる側も気持ちがええぞ。きっとお主も気に入るはずじゃ」
さっきまで僕と大差ないサイズだと思っていた小熊さんのちんちん、それが今はどうだ。ワカメのような膨張率で大きく膨れ上がったその太短い竿、そして歳のわりには射精しても尚収まりがつかない性欲の強さ、僕は生まれて初めて……獣人の肉竿でケツを掘られたいと、そう思った。絶対痛いだろうに、もしかしたら気持ちよくないかもしれないし。だが小熊さんの甘い言葉に誘われ、僕は自分から両脚を抱えて仰向けに寝転がっていた。どんな気持ちなのだろう、父の小説に書かれていた人間たちは……こうやって獣人に組み敷かれて……。
「安心せえ。初めて使う穴はちゃんとじっくり、時間をかけてほぐすからの」
*
「あっ……はぁっ、んふぅっ……」
ケツを向けてからどれだけの時間が過ぎたのだろうか。僕は小熊さんに差し出された少し汗のニオイがキツいシャツを渡され、ずっと鼻に押し当てながら肉穴ほぐしが終わるのを待ち続けていた。早く、早くしてくれと言っても初モノは切れやすいからと念入りに指でほじくり回してくる。いきり勃ったおじさんの肉棒はまだ、僕の尻には当てられていない。
「こんなに淫らな穴は初めてじゃ。そしてワシも……ずっと興奮しっぱなしでのお、薬も何もキメとらんというのに。いやはや、人間というものはスケベすぎてたまらん……っ」
「あっ、ああっ‼︎」
「ここじゃ、ここがええんじゃな? さっきワシが言っておった、ゴリゴリする場所がここじゃぞ。これから肉竿で思い切り突いてやるからの、むふふふ」
おじさんの太い指が三本入ったところで、ようやく僕の穴にはピトリと熱された棒が押し当てられる。歳のせいか勃たないと言っていた彼の肉竿は本当に立派なもので、正直同い年の人たちの中では負け無しなのではないかと言えるほどバキバキな硬さだった。長さは控えめだが、僕の指では到底周りきらないぐらい太い。血液を流し込まれ、最大倍率まで膨張した小熊さんの肉竿に僕はメロメロだった。
「ぐっ……力を抜け、入らんじゃろが」
「あああっ、ぐっ‼︎」
幼い子供がタオルを好むように、僕はおじさんの汗が染み付いたシャツを軽く口で挟んで声を抑え込む。経験したことのない内臓を圧迫される感覚、そして容赦なく奥までねじ込まれる感覚。全ての経験が初めてである僕は、若干涙目になりながらおじさんの顔を見上げた。その仕草がトリガーになったのか、小熊さんは舌なめずりをしながら僕の胸を揉みしだく。さっき僕がやったのと同じように、そして体をペロペロ舐め回しながらゆっくりと腰を振り始めた。
「ええニオイじゃの、お主もワシのシャツが好きか。互いの体臭を受け入れ合っとるということは、相性抜群……じゃなっ、ぐっ」
「やっ、やだっ、早っ、あっ‼︎」
「ここからもっと激しくっ、ふぅっ、振るぞっ! しっかりしがみついとれよっ!」
豆タンクというイメージがピッタリの小柄で太っちょなおじさんに、僕はオンナのように扱われてヨがり狂っていた。生きている時間が違う分、経験はおじさんの方が豊富だ。何より腰の振り方、緩急の付け方が僕とは違う。やさしくねっとりと掻き回すように振ったかと思えば、今度は先ほど僕が見せたような荒々しく激しい腰付きをして僕をメロメロにしてくる。今までやってきた自慰行為が霞んで見えるほどの強い快感。これがセックス、一人では決して出来ない二人以上の性欲発散行為なのか。
「あっ、あっ、だめっ、出るっ、ううっ‼︎」
「そうかそうか、イキたいか! 潮を吹くぐらいココを突いてやる! たまらんじゃろう、ワシをただの老いぼれ爺さんと思っとったら大間違いじゃぞ!」
「ああ゛〜〜〜〜っ‼︎」
さっきは一緒にイッた仲、なのに次は僕が先にイカされてしまった。雄として負けた気持ちとなり、小熊さんは勝ち誇ったようにニイッと笑う。クソッ、若さでは敵わない魅力がおじさんにはありすぎる、見ているだけでまたイキそうだ……。
「ワシも種、付けちゃるけぇ。ケツ穴キュッと引き締めて待っとれよ、ぐっ、はぁっ、ふぅっ……イクッ出すぞっ、中に全部っ‼︎ う゛っ‼︎」
ケツの中へ湯を注がれているような、そして激しく震えながら振動する肉竿の刺激によって僕はまた汁をビュッと吐き出した。おじさんの腹と擦れ合い、またイッて……何度も何度も、気が遠くなるまでイキ狂って……。その度に小熊さんの体をギュッと抱きしめ、首元のニオイを嗅ぎ回る。変態的な行為だなと自分でもわかるけれど、父さんの小説にはこうやって相手のニオイを嗅ぎながらイク描写がいくつもあったから。自分も同じように体験して、実際はどんな気持ちになるのか知る必要があったから。
僕らはそれから繋がったままで、ずっと互いの背中に腕を回して抱き合った。ただ何も言わずに、ずっと鼻を体に押し当てながら。
*
「おもっ……重たっ……あ、あの、ちょっと、休憩、はぁっ……」
「…………いやぁ、本当にすまん。その、ハッスルしすぎじゃなこりゃ……」
僕らは今、一階にある浴室までようやく辿り着いたところだった。それも腰が抜けて立てなくなったという小熊さんを背中に抱えながら。掘られまくって腰が抜けかけたのはこちらのセリフだというのに、やはり歳には敵わないらしい。
「ふぅ……ようやく降ろせた……」
小熊さんを風呂場の椅子へと座らせてやった後で、僕は熱いシャワーを思い切りぶっかけてやる。あっちぃと声がしたような気がしたが、セックスによる体液で体が冷え切ってるのだからこれぐらい温度は高めにしておかないと。僕もおじさんも身体中もう何だかよくわからない体液でグショグショになってしまって、流石にこれでは寝られないということで息を切らしながら二人で一緒に湯浴みをしに来たというわけだ。当然おじさんは体を動かせず僕のシャワーを抵抗もせず受けてくれたが、獣人の体毛を指でワシワシ擦っているとまた僕の愚息が大きくなりかけてしまった。毛皮の感触がたまらなく気持ちよくて、さっきの性行為を鮮明に思い出してしまう。いかん……ダメだダメだ、邪念を捨てろ僕……。
「なんじゃ、まぁたスケベな体を見て興奮したか?」
「なっ、ちょ、握らないで!」
「まぁまぁ、もう腰は振れぬが……手コキぐらいなら付き合うぞ? ん? 若いからまだまだ出せるじゃろ、ほれ」
「いや待っ、ちょっ、体洗えないですからっ、動かないで!」
「むほほほほほ!」
結局体毛にこびり付いた汁を落としながら、僕はまたおじさんに手コキしてもらって……しかも真正面からザーメンをぶっかけてしまった。それをまたお湯で洗い流し、その間に股座をイジられて……。無限ループに入りかねない浴室でのやり取りに、僕らは声を出しながら笑い合った。自分の親よりも歳上で、しかも種族も異なる同性同士、友達のように接し合えるのはきっと父の……父が書いてくれた小説があったからだと思う。あのような世界観、現実には存在しないと思っていたのに。僕らは同じ小説家のファンとして、これからも長い付き合いとなるのだろう。
父の残してくれた小説は、後世に生きる僕のような人たちに勇気を与えてくれる。僕はあの小説たちを家宝にし、今後も次の世代へ伝えていこうと思った。獣人と人間が仲睦まじく暮らす、素敵なお話の小説を。
了