【漁師として働く猪獣人:猪波さんの番外編】
聞いてください、今僕はお寿司が食べたいです。なんでかと聞かれても理由はわかりません。急に食欲が湧いてきたんですから仕方ないですね。
だが大学生にとってお寿司は高級品。……いや、社会人にとっても高級品か? それでもどうしても食べたいという時がみなさんにもありますよね。そんな日にはこちらのお寿司屋さんがおススメです。僕の家からそこそこ近い位置にある、鰐獣人の鰐塚さんという方が経営してらっしゃるこのお寿司屋さん。なんと学生へのサービスが手厚い! そしてこの鰐のおっさんがカッコいい! そしてうまい! もう行く理由以外何もないですよね。わかる。
とりあえず千円握りしめていれば間違いなくお寿司は食べられるので、必要最低限の小さな財布を持って目的地へと向かいます。……そこまでは良かったんですけどね。
「……ん」
おや、お店に行くと入り口に白い太眉と白いタンクトップの猪獣人さんがいらっしゃるじゃありませんか。しかも知らない人かと思えば、いつか前にお世話になった漁師さんの――猪波さんですね。あらお久しぶりです。おやおや、いきなり両肩を掴まれましたね。一体何事ですか?
「暇か? 暇だよな? よし、来い」
「あっ、え? あ、あのあの」
いや僕暇だけど今お寿司食べに来たんです。そう、お寿司! ……僕のお寿司ーー‼︎
なぜか僕は猪波さんに手を引かれて軽トラックに連れ込まれる。あれ、これ拉致なのでは? 本来なら警察に相談する所ではあるけど、猪波さんだから許しちゃう。ケモおっさんは拉致と誘拐が得意そうだもんね、僕はこれぐらいじゃ驚きませんぞ。
バタンと閉められたドア、運転席には猪波さん、そして助手席には僕。これから一体どうなってしまうのか。ブオオオンッとアクセルを入れ、動き出した軽トラックは細い道をゆっくりと進んでいった。
「おめえに頼みがある。今からお店について来てくれ」
「お店ってどこのですか⁉︎」
唐突に始まった猪波さんとのドライブ。いきなりお店とは言われたが、店の種類が全くと言っていいほど想像がつかない。もしや危ないお店なのでは? いやいや、猪波さんがそんな事するわけがないじゃないですか。何せ一度お会いしてご飯を奢ってもらっている上に、寝泊まりまでさせていただいたんですからね。そう簡単に疑えはしませんよ!
「……携帯ショップ」
「おお、機種変でもするんですか?」
「オイは携帯持っとらんから、新規だ」
そういや猪波さん、携帯電話を持っていなかったんだった。前来た時に何となく聞いた気がするけど、それをみんなにバカにされていたような光景も見た気がする。そんな猪波さんがついに携帯電話を買ってくれる決心をしてくれたか、ああ、私は嬉しいです。最初に僕の連絡先登録させちゃお。
「ついに買うんですね! で、どんなのを買う予定なんですか?」
「……おめえが決めてくれ」
その返答を聞いた時、僕は確信した――携帯を買いに行くのは、猪波さんが自分で決めた事ではないと。つまりは、無理矢理買いに行かされたというわけか。ははぁ、なるほどなるほど。
「へへへ、この僕に任せてください。携帯ショップ店員勤続五年目のこの僕が、猪波さんに合う携帯電話を探させていただきますぜ」
「おめえ、まだ学生だど?」
二秒でバレる嘘に的確に突っ込んでくる猪波さん、流石ですな。どうやら漁師達の連絡ツールで携帯電話が使えないという事に従業員が腹を立てた事件があったらしく、仕方なく今買いに来ているのだとかなんとか。うん、そりゃ猪波さんが悪いですよね。今時携帯電話を持っていないおじさんなんて、山奥に住んでいる人ぐらいじゃないかな。
「猪波さんはどんな携帯が欲しいんです? やっぱ老人向けに操作しやすいスマートフ……」
と言いかけたところでなんか車内の空気がピリッとしたような感覚がして、僕は意識しなくとも勝手に口を閉じてしまう。そういえばあの老人向けのでっかいボタンが表示されるスマホは老人向けに作られた操作が簡単なやつなのに、いざ老人に薦めると「ワシが老人だと言いてぇのか!」なんて喧嘩が勃発して中々携帯を買いに行けない事案があちこちで発生しているらしい。猪波さんも例に漏れずそういうタイプらしい。ここは言葉選びに気をつけねば。
「うーんそうだなぁ、そういやこの前新機種が出たし今旧型は安くなってるかもな……うん、あれにしよう」
「じじい向けのスマホじゃなけりゃ、オイは何でもええ」
……こりゃ選ぶのを放棄してるな。そこまで気乗りしないのに、わざわざちゃんと携帯を買いに行く所を見ると深刻な問題だと自覚はあるのだろう。だったらここは僕が手取り足取り教えてやろうじゃないの。こういうのは若者の方が得意なんだ、何ならSNSも使いこなせるように僕が手を加えてあげよう。こんなイカした男臭い猪おっさんがSNSなんて始めたらそりゃもうみんなフォローとかしちゃうよね。一番は僕が譲らないけど。
――――
さて、やってきました。お昼のお寿司が食べられなかったのは残念だけど、こうして猪波さんとショッピングモールに来れるなんて夢なんじゃないでしょうか。軽トラから降りた僕たちは並んで歩き始めるものの、まるで親戚のおじいちゃんと孫が二人で歩いているような気分だ。周りの人にもそう思われているかもしれない。
この前は漁師たちの寮でご飯食べて寝泊まりしただけだから、こうやって二人きりでお出かけするのは初めてだ。心なしか猪波さんも嬉しそうに見える。ああ、普通の人はわからないかもしれないけど、僕は猪おっさんマスターだからそれぐらいの些細な顔の表情の変化も見逃しませんよ。
携帯ショップは三階にあるようで、僕たちはエスカレーターを使って上へと登っていく。猪波さんって縦にも横にもデカいから、エスカレーターの幅でギリギリぐらいなのである。そうなると自分が乗ってる反対側の所を駆け上がる人が居なくてわりと助かるのだ。都会ではエスカレーターを走って登る人が多いから、ポスターで「ちゃんと止まって乗りましょう」的なメッセージ付きの絵が描かれるぐらいこの問題は深刻なのである。
つまりは猪波さんがたくさんエスカレーターに乗っていれば危険な事故も起こらずに済むのでは? おお、我ながら恐ろしい発想力だ、自分が怖い。猪波さんがたくさん乗ってるエスカレーター……そして間にこっそり僕が挟まっておけば、猪波さんのお腹と背中に押しつぶされながら登れるという素晴らしいケモおっさんスポットになるわけですな。ひゃー‼︎ ……ああ、自分の妄想力の高さに驚くと同時に悲しくなってくる。お、そんなくだらない妄想をしていたら着きましたよ携帯ショップ。
「んで、どれにすんだ」
早く買ってさっさと帰りたいのか、随分と急かしてくる。この野郎……ふふっ、そんな嫌がってられるのも今のうちだぜ。僕がちゃんと楽しい使い方を教えてあげますからね。んで僕が考えてたスマホは……お、あったあった。流石、次の機種がもう出ているから当初価格の半額ぐらいになっている。これだ、これにしよう。
「この携帯、型落ちなんですけど性能がすごいんですよ。それに安い、もうこれしかないっす!」
自信ありげに僕はサンプル台に置いてあったスマホを渡すと、猪波さんは物珍しそうにスマホを上から下から横から舐め回すように観察する。今まで見たことがないのかってぐらいにスマホを目に焼き付けると、いよいよ画面に指を置いて使い心地をチェックだ。……おや? なんか指が震えていますよ猪波さん。病院に連れて行ったほうがいいかな? お、なぜか小指を乗せましたね。ああっと、うまく画面が反応しなくてスライドが出来ないようですな。
こうして猪波さんはロックを解除出来ず、一分ほどで根を上げて僕の方をじっと見る。ああ……よしよし、安心してください。僕は今まで一度もスマホを使ったことない人にも優しく教えられる男です。ただし相手はケモおっさんに限る。猪波さんのためならもう泊まり込みで毎日毛むくじゃらな手を上から包み込んで、こうやるんですよって手取り足取り教……あっ痺れを切らしたのか僕の胸の前にスマホを突き出しましたね。すみません、早く教えてあげます。
「猪波さん、もしかしてスマホの画面が割れるのを恐れて小指使ってるんです?」
「……んなことはねぇど」
ぷいっと後ろを向き始める猪波さん。へへへ、図星なのがバレバレですよ。かわいいなぁ。お尻をぷにぷに触りたい。……あ、失礼致しました。本心を包み隠さずに言うと、両手で思い切り揉みしだきたい。
「大丈夫ですよ、最近のスマホは画面も丈夫に出来てますし。落としたら割れる事もありますけど、猪波さんの指ぐらいだったらへっちゃらです」
「ほ……ほんとか? この前オイの指で冷蔵庫の卵を触ったら割れちまってよ。それから機械ものが怖くてな……壊れるととんでもない金が必要になるからよぉ……」
もう、いつもの迫力はどこへやらって感じですよ猪波さん。男ならドーンと一本指だけじゃなく二本でも三本でもいじっていきましょうよ! うん、自分で言っててちょっと意味わからなかったな今のは。
「いいですか、こうやって優しく撫でるようにスッと……ほら。これでロックが解除できますよ。はいどうぞ」
「……お、おう」
スマホを持つ手も、画面に触ろうとする指も震えている。両方震えてたら狙いが定まるはずないじゃないか。そんな僕はとっさに両手を使って猪波さんのサポートをする。右手はスマホを持つ猪波さんの手の下へ、左手はスマホを触ろうとして人差し指を伸ばした手の上へ。本当は後ろから包み込むように手を添えて教えてあげたかったんだけど、あまりに体格差がありすぎてそんな事は出来るはずもなく。
「こうやってスッと……ほら」
猪波さんの指だけ触れたスマホの画面は、ロックが解除されて明るいお空の背景をしたホーム画面へと遷移する。実績が解除されましたよ猪波さん! これでいつでもスマホのロックを解除できますね!
「ね? これさえ出来るようになれば、猪波さんもスマホユーザーの一員ですよ。大丈夫、僕がついてますから、ね?」
自分でもスマホを弄れるんだと自信をつけてやれば、あとは僕の一声で万事解決。そのままスマホの手続きに進んでもらいました。その後手続きが終わるまでショッピングモール内をウロウロしようかと思っていたら、手続きであたふたして少し悲しい顔をしていた猪波さんを見てしまったので、僕は隣の席に座って一緒に手続きを進めていくのであった。これじゃまるで親子じゃないか。でも悪い気はしなかった。
「ふぅ……肩凝っちまった。オイ一人じゃ買えねえからどうしようかと思っとったが、おめえがいて助かったど。あんがとな」
これには普段仏頂面の猪波さんもニッコリです。ありがとうございます。じゃあお礼に是非その笑顔を一枚写真撮っていいですか、とお願いするのもあれなので、まずは自撮りのやり方を教えました。
「ん……最近の若モンはみんなこんな事すんのか?」
「そうですよ、若者だけじゃなくて大人もみんな自撮りの時代ですよ。さ、撮りましょ撮りましょ」
僕は隣でピースしていたのだけど、猪波さんは男らしく手をグーにして親指を上へ突き立てるナイスガイのポーズで写真を撮る。やば、惚れるわ。この写真をSNSにアップなんてしたらそりゃもう凄まじい勢いでいいねの数が伸びていくのは間違いないであろう。あ、僕の顔は勿論スタンプで隠してくださいね。
お寿司を食べ損ねた代わりに何か奢ってくれると言うので、僕はお寿司屋――ではなく、女の子がよく行くようなスイーツのお店を選択する。そんな僕の選択に猪波さんは目をまん丸にしてとても帰りたそうにしていたが、僕がそれを許すわけがないじゃないですか。いつも堂々としていてカッコいいのに、今日は何だか挙動不審ですよ? 大丈夫、僕が手を引っ張ってやればほら、ね、安心したでしょ。……って口で言えたらいいですけどねー‼︎
お店に入ったらかわいいお姉さんが何名様ですか? とお伺いを立ててくる。何だかお姉さんの視線が猪波さんにいっているような気がするぞ、まさか「こんなおっさんが女子向けのスイーツのお店に……?」なんて思ってるのだろうか。こんの……ぶち殺……おっといけないいけない、僕の人生に汚い血をつけるわけにはいかないんだ。ここは穏便にいこうじゃないか。
「で、猪波さんは何にしま……」
テーブルに座ってから早十分。白い眉毛を見たことのない角度でハの字にしてらっしゃいますね。やはりこういう店には来たことがないご様子、へへへ……連れてきてよかったぜ。何事も経験ですぜ先生。ここは僕の助言でしっかりと決めてもらおうじゃありませんか。
「猪波さんって甘いものだと何が好きなんですか?」
「……甘いもんは好かん」
しまった、本当に甘いもの食べない系おっさんだったか。これはやらかした、ああ……せっかくの機会だと思って良かれと連れてきた僕が悪かったんだ。テンションがみるみる落ちていく。つらい。しんどい。
「お、思い出したど。オイはあれがいい。……ん……何と言ったか、ンンンンッ……」
甘いものはそんなに好きじゃない猪波さんが、唯一食べられるらしいそのフルーツとは一体何だろう。今のところそれだけじゃ何もわからないので、もうちょっとヒントをもらえるよう誘導してやろう。
「なんか一文字でも思い出せませんか? そしたら僕が当ててあげます!」
「ンン……確か……」
おっ、いい感じですよ猪波さん。そう、もっと力んで! いや、力みすぎるとアレがケツから出ちゃうから程々でお願いします。もう少し、もう少しです。そんな実況をしていると、目の前の猪は手のひらにポンっとグーにした手を置いて思い出したアピールをしてくる。さぁ、そのフルーツとは一体何なのか!
「そうだ思い出したど! マンコだマンコ! やらしい名前しとるなと思っとったが、意外とうめえんだよなあれが。侮れんやつだど」
……今、猪波さんの低くて野太い声がお店全体に響き渡りました。周りはみんな女性客です。一瞬しんと静まったかと思えば、皆さんヒソヒソ声で何か話しているようです。……やばい、これほどに他人のフリをしたいと思った事は人生で一度もないであろう。僕は机に突っ伏しながら顔が赤くなるのを隠す事しかできないのであった。
「おう、どうした。具合でも悪くなったか?」
そんな猪波さんの心配の声も全く耳に入る事なく、僕は静かに店員さんを読んで注文する。ああ、どうしてこうなった。
それから時間が経つにつれて先ほどの失態はどこへやらと言う感じで話が弾む僕らの前に現れたのは、そこそこ大きいフルーツパフェ達だ。猪波さんのはマンゴーパフェで、僕のはチョコレートパフェ。さ、これを食べて元気を出そうじゃないか。
「んじゃまずは、はい、猪波さん。早速スマホの出番ですよ」
「お? 自撮りってやつだな。オイに任せとけ」
スマホを握って一番目にロックの解除、二番目に覚えたのが自撮りだった為か、猪波さんは自信ありげに携帯を上に向けてインカメラに設定する。この短期間でこれだけスムーズにできるようになったのは流石である。
なぜか写真を撮られ慣れてるのか、猪波さんの表情のバリエーションが豊富で驚かされる。何だろう、もしやSNSで自撮りを載せるのに向いているのかもしれない。だがそうやって全国にあの男臭い猪波さんの顔写真を拡散するのは個人的にはいただけない。彼の笑顔は僕のものだ、なんて言うと相方って感じがしてちょっと恥ずかしいですね。別にお付き合いはしてませんよ! 勿論出来ることならお付き合いして一緒のお部屋で抱き合ってお昼寝したりしたいですよほんと。
細長いスプーンでマンゴーのカケラをちょこっと乗っけて食べるその仕草に、僕は鼻血を吹き出しそうになる。なんでいつもは豪快な海の男なのに、この場ではすごく繊細なの? そういうギャップ萌えを狙っているのかという程にこのおっさんは僕のことを魅了してくる。まったく恐ろしい存在だ。
一切れ食べただけでこの笑顔、もう毎日マンゴー食べましょう。ちょっとお高いけど、猪波さんの笑顔が見られるなら僕毎日でも買ってきますよ。
パフェを大層気に入った猪波さんはもう鼻歌を歌うほどに上機嫌で、それが帰りの軽トラの運転にも現れていたようである。……ってちょっとスピード出し過ぎです! あのいつもの落ち着いた猪波さんはどこへ?
そのまま自宅へ送られるかと思えば、着いた先は猪波さんが住んでいる漁師の寮。何やらやりたい事があるらしく、そのまま手を引かれて猪波さんの部屋へと引きずりこまれるのであった。
……なぜ引きずりこまれるという表現を使ったかと言うと、僕はそのまま力づくで布団へと押し倒されてしまったからだ。
「んで、今日はオイにどうして欲しんだ? 今日は出会った時からずうっと人の股間ジロジロ見てよお、そんなに見てえなら見せてやるよ」
そう言うと、ベルトを取り払ってズボンを下までずり下ろす。通気性の悪いズボンの中で蒸らされていたのは、少し黄ばみの強いブリーフだった。オスの匂いを堂々と放つそのブリーフに目が釘付けになるものの、頑張って視線を逸らしてみる。
「逃がさんど」
「んんっ!」
それはケダモノのように激しく、ねっとりとした接吻であった。口にヌルッと入り込むのは大蛇のように動き回る太い舌。猪のマズルの中でしっかりと唾液塗れになるまで熟成させた舌を、僕の口の中を満たすようにねじ込む。さっき食べた甘いマンゴーの匂いがほんのりと香るが、奥底深くにあるのは猪波さんの匂い。唾液はそれを物語るような甘くもあり苦くもある味が僕を誘惑してきた。
少しだけマズルをズラすように舌をねじ込む猪波さんは、より深くまで僕の中を探索しようと顔を更に横に傾ける。すると十字のように重なり合った僕の口は全て猪波さんのマズルに吸い込まれ、ムワッと熱気の篭る体内へ顔を埋めるような形となった。まるで顔に噛み付かれているような僕の頬にフンスフンスと洗い鼻息が当たるとそれがくすぐったくて逃げたくなるのだが、背中から日々漁師の仕事で鍛え上げられた逞しい腕が僕を離すことなく抱きしめていた。
僕の口から舌を抜き出しても依然と猪波さんのマズルの中に顔の半分が埋まっている僕は、そのまま口や鼻辺りを念入りに舐め回される。口でもやっとの太さと長さを誇る猪波さんの舌は、僕の鼻穴をグイグイ広げて侵入しようと何度も何度も鼻に唾液を擦り付けていった。中も外も猪波さんにたっぷりとマーキングされれば、満足げに鼻息を荒くした猪は僕をマズルから解放してくれる。
いつやっても大人のおっさんの接吻は慣れることがない。余裕がありそうながらも実際はガツガツ来る積極的なキスは、いつも僕を興奮させてくれるのだ。
「……へへ、もっかいやるど」
「んなっ、あっ!」
猪波さんの激しい接吻は止むことなく僕を楽しませる。湧き出る唾液は一滴もこぼすことなく僕に注がれ、それを飲み込むまで猪波さんは遠慮なく僕の口を塞ぎながら唾液を流し続けた。人間と違って粘度の高いこの唾液を口の中で転がすのも大変なのに、それを舌でグイグイと押されて喉奥へと落ちていく。食道や胃袋の中まで猪波さんの匂いでいっぱいにされれば、準備は完了だ。
「今日はたっぷり礼してやるからな」
僕の何倍も太い腕で抱っこされた僕は、猪波さんの掻く胡座の上に乗せられて後ろからガッシリと腕を回された。目の前には今日買ったばかりのスマホが僕たちをくっきりと映しているのがよくわかる。インカメラに設定されたそのスマホは僕たちからも撮影の様子がよくわかり、自分たちの体格差に改めて驚くほかなかった。そんな猪波さんに、僕はこれからたっぷり礼を受けることが決定されている。一体何をされるのか考えようとすれば、肩の横からぬっと猪の頭が顔を出してきた。
「オイのチンポが当たってるのがわかるか? 今日は塗らさんでもいいぐらいグチョグチョだど。そのちっせえ口でしゃぶってもらうのもいいんだが、今日はこっちにたっぷりくれてやる」
ブリーフ越しからでもわかる熱量と湿り気、その太い棍棒が僕のケツにしっかりと当てられているのがよくわかる。そのブリーフを器用にずらして脱ぎ捨てれば、僕の尻にはヌルヌルの巨大チンポがしっかりと狙いを定めて待機をしていた。
「……あああっ‼︎ んんっ……!」
「ぐおおっ、根元まで咥えこみやがって。へへへ、猪チンポがそんなに好きか」
ケツの上部分にもっさりとした毛の感触を感じ、猪波さんのチンポがしっかりと根元まで入っていることがわかると僕の逸物はググッと硬さを増していった。だが猪波さんは一切動くことはなく、僕の様子をジッと見ている。いつもならここで容赦ない腰振りが始まるのだが、調子でも悪いのだろうか。
「オイは何もせんど。気持ちよくなりてえなら、自分でなんとかするんだな」
挑戦的な態度を取りながらニヤニヤする猪波さんに、僕は顔を赤くして腰を浮かそうと試みる。だが猪波さんの胡座の上で立ち上がるのは非常に難しく、僕はどうすることもできずに悶えることしかできない。
「いいもんやろうか、ほれ」
「ふぐっ‼︎ ゲホゲホッ!」
顔に押し当てられたのは、まさに今脱いだばかりの猪波さんの特大サイズのブリーフだ。一日中ズボンの中で玉裏と逸物が当てられていた部分はオスの匂いが強くてつい顔をしかめてしまうが、このおっさんは僕がこういうのを好んでいる事を十分に知っている。
「ケツも鼻もしっかり準備してやったんだ、あとは抜くしかねぇど? へへへ……おめえは本当に変態だな。ちゃんとみんなに見てもらえ」
こんな状態にされながらも大きな茶色い手のひらが、人間である僕の小さめのチンポを包み込む。まるで太いディルドをケツで咥えながら下着を嗅いでオナニーをしているのと何ら変わりない。ただ、ディルドも下着も本物のケモおっさんに変わっただけだ。それだけで、興奮と感度はいつもの何倍にも膨れ上がる。
「ん……この辺りか? グッと押してやりゃオイのチンポが外から中から前立腺を――」
「がああああっ‼︎」
手コキでまだほとんど刺激されずとも、僕は目の前のスマホに向けてザーメンをぶっ放す。せっかく買ったスマホを僕の精液なんかでベトベトにするなんてとんでもない、そう思った瞬間に僕は無意識に猪波さんの手を借りてそこに全力で射精を始めてしまった。おっさんの手を自分の精子で汚している、そう思った瞬間にまたキンタマからたっぷりと静止が運び込まれるのを強く感じ、強く、何度もそこに打ち付けていった。
「オイの手にこんなにぶっかけやがって。……んっ、おお、味は悪くねぇど。だが量が足りねえ。もっとだ、もっと出せ」
出し終わったばかりのチンポに再び猪波さんの手が当てられ、ガシガシと力強く扱きあげられれば数秒経たずに僕のチンポはビンビンに勃ち上がった。まるで自分の体じゃないみたいに発情していて、しかも買ったばかりのスマホで撮影されているのがとても恥ずかしい。恥ずかしいのに反り立つチンポは収まることなく天を向き続けるのだ。
「漁師で鍛えた腕で扱かれる気分はどうだ。今日はオイの手をオナホみてえに使ってくれていいんだど? ああ、オイのブリーフだけじゃ足りんか。ガハハハ! 今脱いでやるからな」
何を勘違いしたのか猪波さんは左足の黒い靴下を脱ぎ捨て、ブリーフを被っている僕の頭部の中にそれを突っ込む。突っ込むだけでなく、僕の鼻を見つけるとそこを摘んで口を開けさせねじ込むのだ。吐き出さずに咥えこんだのを確認すると、次は右足の靴下を脱ぎ捨てる。
それを見た僕は首を左右に振るが、猪波さんはまるで見ていないかのように再び僕の口にねじ込む。入り切らずに外に出ている部分を何度も何度も指で押し込み、最後に僕の口内スッポリと二足分の靴下で埋まってしまった。
「よおしよおし、いい子だ。いつまでもブリーフだと飽きるだろ。こっちは塩気がきいてうまいぞ。噛むと出汁が出て……ってそりゃ豚汁か。ガハハ!」
言われずとも口の大きさに限界のある人間の僕は、すでにたっぷり汗を吸った靴下から猪の出汁を味わっている。そんな変態的な僕の姿を録画されている、頼むから止めてくれ。こんな事をしてもらうためにスマホの使い方を教えたわけじゃないのに……。なんとか停止ボタンを押そうと前のめりになっても、それを阻止するものが僕のケツ穴に入っている限りは手が届く事はない。
「おめえのケツはがっしりとオイのチンポを掴んで離さんやらしい穴だな。……おおっ、引っ張るんじゃねえど、うっかりイっちまったら大変だからよお」
ケツにチンポを突っ込まれているのを無視してスマホの方へと前進していると、何だか不穏な事を言われてしまった気がする。猪は一度射精するとかなり面倒な事が起きることはよく知っている。猪獣人は最初にとんでもない量のドロドロザーメン、そして次は蓋をするようなゲル状のザーメンを注ぐのである。一度注がれれば最後、孕むまでチンポが抜ける事はないとはよく噂で聞いたものだ。……ぼくはそれを一度経験済みだ、しかもオスだというのに。
「前のめりになってて丁度いいから、このままオイのオナホになってもらうか。……いくど」
「ンンンッ‼︎ ンンッ!」
四つん這いになった僕の上には、二倍も三倍も体重がありそうなおっさんが太鼓腹を背中に当てるぐらいにまで腰を前後してピストンを開始する。張りの強いエラ部分が腸壁を引っ掻き回し、何度も中に入った精子を出そうとするのがよくわかる。別に中に誰かの精液が入っているわけではないが、こうして自分の精子で孕みやすくするのだ。本当にこのおっさんに襲われたらメスはもう諦めたほうがいいだろう、そう言える。
おっさんの腹が背中に当たる度に、体を伝う汗が全て僕の方へと降り注ぐ。ブリーフと靴下でさえ強烈であるのに、体でたっぷりかいた汗によって最後のとどめと言わんばかりのオス臭さが部屋に充満していった。もう限界だと伝えたいものの、手は床について口は靴下で塞がれ、もはやどうする事もできずにただ猪波さんが射精して満足するまで耐えるしかなかった。
「ッ‼︎」
「おお、二発目も随分と出したな。ならオイもドロッドロのザーメン仕込んでやるか。喜べ、今日はいっぱい出そうだど。……ふんっ、ふんっ、出すぞっ、オイ専用の肉便器にしてやる。ぐおおおっ、ふごおおっ‼︎」
顔を地面につけてヨダレを垂らしていた僕は無理矢理上を向かされ、スマホのカメラを見ろと無言で圧をかけられる。するとケツ穴にじんわりと熱を感じ、次第にケツ穴を満たし始める猪のザーメンの存在を感じて僕は床にそのまま三発目の子種も吐き出したのだった。
猪の厄介な点の二つ目――それは一発目の射精の時間に個人差があり、調節できる人もいるらしい。短時間で濃いのを出してすぐにゲル状のザーメンで蓋をする輩もいれば、十五分ほどずっと射精し続ける輩もいるとのことだ。そして猪波さんはどちらのタイプかと言うと――
「この前はすぐ終わりにしちまったからな、今日は限界までザーメンぶっ込んでみるど。しっかり腸ん中広げとけよ、オイが全部ザーメンで満たしてやるど」
「んっ……んぐうっ……んんっ」
口の中の靴下はもう猪の出汁が出ることがないほどに噛み締められ、強烈すぎるオス臭さに酔いながら僕は涙を垂らしながら地面に頬を擦り付けていた。ケツ穴に入ったチンポが脈を打つ度、中にビュッとザーメンが仕込まれているのがよくわかる。引き抜かれることなく中出しされ続ければ、容量的に限界を迎えてそのまま奥の入ってはいけない領域まで汚い豚汁で満たされていくのだ。それがとても気持ちよくて――これだから猪のおっさんとの交尾はクセになるのだ。
「今日こそオイのガキが孕むまでチンポ抜かんからな、ゲヘヘ。なら妊娠するまでスマホで撮影してみるのも悪くねぇ」
S状結腸までねじ込まれたザーメン、そして最後にゲル状のザーメンで蓋をされた僕の腹は赤子を孕んだかのように膨らみ、そのまま抱き上げられた僕は猪波さんと一緒にスマホのカメラへ向かってピースする。
その日はスマホの充電が切れるまで交尾が行われ、最後は一日付き合ってくれた礼だとか何だとか言われて種付プレスでフィニッシュだ。……と思われたのだが、撮影の角度が気に入らなかったのか、その後二回も種付プレスされるなんて思ってもみなかったぞ。おかげで腰もケツもしばらく使い物にならないぐらいにボロボロだ。
こうしてスマホの間違った使い方を覚えた猪波さんは、度々僕と一緒に交尾しながら撮影を楽しむ事が日課となるのであった。後から聞いた話だが、この動画は漁師たちの間でオカズとして回され大変役立ってるのだとか何とか。……嬉しいような嬉しくないような、複雑な気分だ。
挙句の果てにはスマホで配信したいだの言い始めて、この人にネットを教えたのは失敗だと頭を抱える。ネットを使いこなせないおっさんも厄介だが、こうやって変な使い方と楽しみ方を覚えてしまうおっさんの方がもっと大変だという事を身をもって学んだ僕であった。
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☆FANBOX支援者限定おまけ☆
猪波 玄一(いなみ げんいち)
種族:猪
主人公の呼び方:おめえ
自分のことを「オイ」と言い、語尾に「ど」が付くことがある。
好きなもの:マンゴー
テーマ:軽く田舎っぽさを含むおっさん
街のちょっと外れにある港の漁師さん。周りからは親方と慕われていて、面倒臭そうにしながらも実は周りの面倒見は良い方。
携帯電話はこれで三度目の購入で、一度目はボタンを押す力でなく握る方の力が強すぎて潰してしまい、二度目はケツのポケットに入れてたらそのまま尻でプレスして以来若干トラウマになったらしい。
甘いものが好きな男は女々しい、そう前の親方に教えられてきたからか甘いものは好まない。……が、寮に住む他の下っ端漁師達がおいしそうにお菓子を食べているのを見て若干羨ましそうにしているが顔には絶対出さない。マンゴーは昔食べたことがあって味を知っていたが、もしかしたら他のフルーツやお菓子を食べさせれば好きになる可能性を秘めている。つまりはこの太鼓腹をもっと成長させられる要素がここにはあるわけで……あとは君たち次第だ‼︎
体格差があればあるほど燃えるタイプで、主人公ぐらいの人間が漁師として働きに来てくれないかなと思う反面、こんな力仕事をヒョロヒョロの人間に頼んだら心配すぎて仕事が手につかないのではないかと思ってしまうのでやはり力自慢の獣人に来てもらうのが一番だと思っているようである。
パンツはブリーフ派。なぜか猪獣人の間ではブリーフが流行っているらしく、その波に乗ってからブリーフ愛好家となった。白ブリーフを何着も持っているが、あまり買いに行くことがないのでゴムがヨレて中央部分の黄ばみが落ちづらくなっている。誰か一緒に買いに行ってあげて!
リクエストしてくれた支援者に一言:
「ああ、おめえか。こんなおっさんを選ぶなんざ、あいつと同じぐれえ変わりモンだな。いつもはうるせぇ男が騒ぎっぱなしの寮だがよ、意外とあいつらも面白ぇとこあるんだど? ……何、オイと一緒に遊びたい? ガハハハ! いいぜ、じゃあ今度オイが軽トラ出してやっからよお、どっかブラブラしてみっか。あんま若ぇ奴らが行くようなとこは全然わかんねぇからよ、おめえが教えてくれ。……礼は弾むど? オイが教えられるのは、魚の知識と子作りの方法ぐらいだ。お? なんだおめえ、子作りに興味あるのか。なら今度オイの部屋に来い。猪の絶倫さとザーメンの濃さ、こいつを忘れられねえぐらいに体に叩き込んでやっからよ。逃げたら承知しねえぞ」