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マンガの表紙に金が出ない件の話

2024年11月19日追記

2025年度から、小学館コミック局全体、全ての漫画で単行本の作業に対し、一定の協力費を支払うこととなりました。

今後も作家と出版社双方の話し合いを続け、互いの環境改善が図れる関係が続くこと、そして更なる発展を願っています。




はじめに、現代では作家の多くが編集部や編集者との関係は概ね良好とみられ、私もその例に漏れず良好です。

賃金交渉は「闘争」と言ったりもしますが、まあ闘ってるわけでもありません。

あくまでも交渉です。

言葉の応酬の中で半端な発言をすることを避けたかったので、時間をかけて整理させてもらいました。


ここでこれから話す内容について注意喚起しておくと、これは漫画家視点の話しであって、出版社の主張はまた別であるはずです。

出版社は多くがインターネット上で反論できませんので、告発のような事も一方的なものになりがちです。

かといって問題が起きた時の責任の所在はテレビ会社や出版社は有耶無耶になりやすいし、逆に言うとインターネットの存在で少しパワーバランスが変わってきているともいえるんだけど。

その辺り(一方からの主張であること)を思慮深く警戒しながら読んでいただければと思います。


〇結論

・現在の出版業界はマンガ表紙を描く労働に対価を払う方向へ進んでいます。


普通に表紙作業に金を払ってる出版社も多くあり(角川、スクエニ、双葉社とかかしら)、小学館もマンガワンをはじめ他の編集部でも、10年ほど前から表紙イラストなどの作業に対し金を払っています



主に「コミックス協力費」などの名称で、現状の表紙を含むオマケページなどの実作業に対し支払われるものが通常です。

(名目が表紙イラストの対価ではないってところも今後詰めていきたいけど)

・「印税率が下がる」ということも無い

現在小学館でも表紙のイラスト料を支払っている編集部から発行される漫画の印税率は一般的な印税率と変わらず、一般に言われている10%程度となっています。


普通に交渉と変化は起きてるので、現時点で払えない理由等には大きな議論の余地は無く、問題を恐れている作家も、表紙に金はいらないと言っている作家も、誰かの交渉をきっかけにそのうち貰えるようになるものと考えています。


「あっちの編集部では貰えるのに、こっちの編集部では貰えない」などと部署ごとに払う払えないの差が出ている状況は単純に作家の損失ですから、出版社として全体を統率して一気に変えてほしい。私が一貫して「出版社なんとかして」と発言を続けているのはそこであり、実際に交渉をしています。



・情報がこじれた原因


これは単純で、多くの人が全体を俯瞰せずに主観と憶測で思い思いに表紙イラストに金が支払われない理由を語っていたからではないかと感じています。


なぜ表紙にイラスト料が支払われないのか、またなぜそのような時代が続いたのかについては、様々な推測があるのですが「○○だから」と断定的に語りたがる人がかなり多かったものの、真摯に正確に言うと本当のところは不明です。


ただ、あまり触れられていない歴史的な話をすると、当たり前っちゃ当たり前ですが「単行本」という文化が出来始めた1960年代後半に起点があります。


後ほども触れますが、このころまで漫画家は雑誌連載や貸本で漫画を描くことだけで生計が建てられていた時代でした。

60年代後半に秋田書店や朝日ソノラマ等の出版社が、小学館や講談社などの他社でヒットした漫画を新書版コミックスという形で発行しはじめたところから始まると推測されます。

「他社の作品を?」と驚くかもしれません。


では作品の権利について解説していきます。


・作品は誰のものか①


出版の慣例として

「作家はあくまで独立していて、"作品"は作家のものである。出版社は出版や流通を請け負う。」

という考え方があります。

出版社が持つ雑誌という媒体に、漫画家のマンガを借りて掲載する、というわけですね。

こう考えると、作品をどこで売るかどうかは漫画家の判断次第であるということがわかるかと思います。


60年代後半から始まった"他社で連載された作品を単行本化する出版社"の視点では「あくまでも、持ち込み原稿を単行本化して販売することだけを請け負っているのだから、その周辺の作業には、つまり単行本の表紙を用意したりする事には口も出さないし金も出さない」ということでした。


では現在はどうでしょうか。

・専売契約の取り交わしが一般化

1960年代では、まだ雑誌などが出版社のメイン事業で、単行本化による稼ぎはさほど重要視されていなかったのですが、1970年代に入ると、雑誌の既存の読者層の入れ替わりなどにより雑誌の発行部数が激減、73年のオイルショックもあいまって出版不況となり、資金難を自社で連載している作品は自社で単行本化することで利益を出し突破しようとした流れがありました。

そこから時代を経て、より利益を分散させない形で専売契約へと進んだものと推測しています。

(90年代くらいまでは藤子不二雄作品が小学館ではなく中央公論社からも出てたりした『藤子不二雄ランド』シリーズ。ドラえもんも45巻あったよ。)


ここから作者は自身の作品をあまり自由には動かせなくなってゆきます。

・作品は誰のものか②

「作家はあくまで独立していて、"作品"は作家のものである。出版社は出版や流通を請け負う。」という建前があり、出版社は自社の雑誌という媒体に、漫画家のマンガを借りて掲載すると先ほど説明しましたが、このことが物事を複雑化させています。


出版社が持つ雑誌に漫画家の作品が掲載されると“掲載料”が支払われます。

これが俗にいう「原稿料」でありますが、出版社としてはあくまでも借りてるだけ、レンタル料名目なので、原稿を作る際に必要十分な額を払うわけではありません。



例えば、車を買うなら200万円、レンタルなら2万円。開発するなら何億円もかかる。

それと同じ考えで、物語のアイデアや構想などの作品開発も含めて原稿料に加えて少なくとも30万円〜数100万はかかってもおかしくない仕事内容で、企業のPR漫画などであれば、連載時の原稿料とは桁違いの数十万~数百万の報酬をいただいて仕事をすることもあります(値段は人によるけど)


出版社も自社のために漫画を描いてもらい、作品の権利を譲ってもらうなら高額となりますが、レンタルして漫画雑誌に載せるなら1ページ1万円くらいとされています。

(ちな何十年も前から物価が上がっても漫画家の原稿料は上がってない。業界標準が1p1万となっている根拠は私は知らない)


・漫画作品を出版社に貸して得られる収入は


漫画を1ページ描く為にはアシスタントなどへの支払いや電気代や資料代、消耗品費など含めて少なくとも3万円はかかるはずで、その経費を漫画家が節約するとなると、パソコンやペンをケチったりこまめに電気を消したり、アシスタントへの給料を安くするといったしわ寄せが発生することは多く、連載初期は借金をして始めることもざらです。(一方で連載準備金をくれる会社・編集部もあります。)

漫画家も当然ヒット作を出さない限り困窮しますが、アシスタントは漫画家の低収入のあおりを食らって困窮しがちです。


では出版社は安く済ませるために漫画家に「開発依頼」をせず、そのかわりに本当に自由に漫画を描かせているのかというと実態はそうではありません。


・商業漫画はどのように掲載されるか


漫画は出版社の編集者と2人で連載準備を開始しますが、この時点ですでに出版社は漫画家の作品に影響力を持っています


編集部内の連載会議を通過しない限り掲載はできず、やり取りをする中で「もう少しキャラクターを変えてほしい」とか「バトルをメインにしてはどうだろうか」などの意見が寄せられ、その提案を汲んだ形でうまくまとめ上げ連載へこぎつけるということも依然多くありますし、納品した原稿がボツと判断されることもある。

作品完成の決定は編集部が行うとも言えます。


注:編集者の提案は必ずしも直接的なものとは限らず、作品の性質を変えないまま改善に力をつくすやり取りも一般的です。売れ線を狙うように強く勧められるケースはそこまで多くはないのでは?とは思う。


編集者との共闘は勿論漫画を面白くする為に大事な要素なのですが、これから話す"金銭的な力関係について語る上では"無視できない。


もう一度言っておくと、私は編集部や編集者との関係は全くもって良好ですし、タッグを組んでやっていく手法に文句はない。


・嫌ならよそで描けば?


この辺りで読者は「編集者や出版社の提案が気にくわないなら突っぱねて、別の出版社に持ち込めば?」と発想するかもしれません。

勿論その手もあるのですが、一度論点を整理すると、ここで話すのは「はたして"作品は作者のもの"という建前はどこまで機能しているのか」であり、この業務形態と慣習の中で「どこに交渉の余地があるか」なのです。

(しかも別の出版社に持ち込んでも業界は同じですから、作品を自由にできるかという点において根本的解決にはなっていないという)



さて、ここまで「漫画が作られる際には出版社から一定の注文を受けることもザラで、真に自由に描けるわけではない」という話をしましたが、次です。


・描き上がった漫画は漫画家が自由に扱えるのか


「注文を受けたのだとしても、出版社の言い分的には作品・単行本は作家のものなのだから、連載しながら作品を作家自身がKindleで売ったり、他の雑誌にも掲載してもらって掲載料を二重に貰ったりして稼げばいいじゃないか」と思うかもしれませんが、先ほど歴史のなかで述べた通り、通常"専売契約"があるので、今連載している出版社を通さずに漫画を出版することはできないし、基本的に作者とて勝手にキャラクターグッズを売ったりすることもできず、もちろん専売契約の分、高額な対価があるわけでもない。


作る作品にはしっかり注文が入り、作りあがった作品の売り方や扱いは出版社のもの

これで果たして「作品は作者のもの」が成立しているのか、あるいは十分なのか。


歴史的には出版社に専売契約が必要になったタイミングや、多少注文を受けても余りある原稿料と物価のバランスなどがありましたが、現在では状況が大きく変化しています。


・実際印税率ってどれくらい?

 

作者が受け取れる印税は一般的に10%というところが多く、90%は出版にまつわるリスクを負う出版社や取次が持っていきます。


600円の漫画の場合1冊につき60円ですが、新人の場合発行部数は1万部程度。年間2冊出しても120万円。

月収に換算すると10万円ですし、先ほど述べた通り連載中は赤字の連続です。

ということは単行本が出たとてどうでしょうか。

・金について、苦しい作家はどういう気持ちになるか


「一般的に印税を引いた90%は出版社側が持ってく(会社によっては累進印税つって売れれば売れるほど印税率を上げてくれる会社もあるらしい)、流通と倉庫と書店の取り分をさっぴいても30%は出版社の取り分だそうじゃないか(この30%の中から出版社が負担した様々な経費が引かれて、残った部分が出版社の利益。出版社側は作家に対して発行部数分金を渡す《発行印税》を支払う一方で、出版社は売り上げから利益を得るので、実際に漫画が売れるまではリスクを背負う)、作者は10%だけ(作家はここから作画にかかった借金を返済したり経費を清算する)。好き勝手に描けないし注文は多いし(注文が無い場合もある)、出版社側には完成原稿をボツにして漫画家を困窮させるカードだってある、漫画も“雑誌掲載料”と言って本来かかるコストの三分の一くらいの値段(ジャンプはめっちゃ原稿料高くなってきてる)、そのうえ漫画の表紙イラストはかっこいい絵を欲しがる売り上げに直結するわりに金は払えんってかい!(払う編集部や出版社も増えてきてる)」となった時に人はどうなるか。


ここまで作品の専売や内容にも影響を与える出版社が「雑誌は出版社のものだから、作品を“借りる”時にお金を払うけど、単行本は作者のものだから表紙のイラストにはお金は払えません」と言われて素直に納得するには、どれほど対価が必要なのか、あるいはどれほど作品を自由にする権利を戻してもらえればいいのかと。


ここでやっと表紙にお金を払ってほしいという話に入ります。


・表紙にお金を払ってほしいという動き


かつてほどの十分な報酬や自由な契約が少なくなっている中で、「出版社というクライアントの要請を受けてクリエイターが漫画を提供している」という依頼構造の実態はにわかに色濃くなっています。


要請に沿って作品を製作する、あるいは作品を出版社に独占的に提供するとなれば、発生するあらゆるコストに対して対価を求めるという、ごく一般的な仕事と同じ構造でないと「納得感」が得られなくなっていきます。


この「納得感」が物事の起点であり、構造を見直すスタート地点となるわけです。


もはや実態は70年代の「作品は作家の物」というラインからかなり変容しており、作家のものに戻すか、もう少し十分な対価を要求するかというところに来ています。


これは00年代頃かすでに起きている事ですが、連載漫画の単行本表紙に対価が出ない事への対応として白紙になったりするケースは複数存在します。


・表紙白紙のリスクとパワーバランス

勿論白紙にはリスクが伴います。

書店で平積みにされる際やネット販売でのサムネイルで注目され辛いということは、売り上げに大きく影響します。

出版社にとってもですが、何よりその作品で食ってる作家にとっては大きな痛手で、かすり傷ではすみません。


また、作家は単行本の表紙を白紙にすることや、単行本を出版させないことを交渉材料にできるのでしょうか。


「出版社と作家は共同作業であってパワーバランスは無い、出版させない権利は漫画家にもある」という指摘は、明らかに、大型ヒット作を持たない多くの作家は長期間の仕事の結果が「タダ働き」となった時に生活が崩壊するという圧倒的な不利益を無視した机上の空論です。


・「嫌ならやめればいい」のか?否、交渉をしろ


とにかく「嫌ならやめればいいのに」「なんでそんな契約をしたんだ」「フリーランスなんだからしかたない」等の意見を見かけることはありますが、仕事を受ける者と仕事を依頼する者とには力のギャップがあり、時として搾取されかねない実態に対して、独占禁止法フリーランス保護新法などの法律まで存在するのだということは承知しておいてほしいところです。


例えば独占禁止法の「優越的地位の濫用」も重要なキーワードです。


「優越的地位の乱用」とは↓

”自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が,取引の相手方に対し,その地位を利用して,正常な商慣習に照らし不当に不利益を与える行為のことです。”

貼り付け元


ここでいう「正常な商慣習」とは要するに「仕事には正当な対価を」というものです。

結局ビジネスモデルが歪な状態になっていて端々で限界が来ている部分があるので、現状の契約の仕組みを一新する可能性までありますが、今は求められる正常な経済を目指して調整をしていこうという段階です。


多くの漫画家は漫画家になりたくて漫画家になるわけで、やはり優越的地位にあるクライアント・出版社と交渉するというのは「連載の話を振ってもらえなくなったらどうしよう」とか「単行本出してくれなくなったらどうしよう」といった不安がつきまとい、ビッグな作家にならないかぎりやりづらいことだろうと思います。

なんせ「最悪、作家がNOと言えば出版社に本を出させないことだってできる!」なんて手段は「自爆すれば相手にも少しダメージが入る」というカードですからね。


・どうして大童は交渉をするのか


私は漫画家になろうと思って漫画家になったわけではなく、就活してたら出版社からスカウトされた作家なので、初めから失うものがありませんでした。低所得者の家庭だったし失敗しても貧乏に戻るだけだった。


新人漫画家として『映像研』を描き始めて一年も経っていない頃、単行本第一集の表紙絵を描く段階で私は単行本の表紙に金が払われない問題を知っていたので、単刀直入ストレートに「お金ください」と言いいました。

新人でも交渉はできると思っていたし、アシスタントさんに手伝ってもらっている手前、業界の改善に形だけでも一石投じようとしました。

結果は「いや~それはちょっと難しくて」という返事で、当然私は「では白紙で」と切り返したのですが「そこは単行本の売れ行きにも影響しますし、なんとか描いてください」と言われ、知識を含めて交渉できる手札を使い切った私は一旦目の前の損得で表紙を描くこととしたわけです。


その結果「主人公の顔をカメラ目線にしてほしい」とか「キャラクターを大きく」等かなり注文を受けたので、風景と自然な人間の姿を描くことが好きな私はかなり苦しかったですが、まあなんとか次の交渉のことを考えながら進みました。


ここで浮き彫りになるのが、実態として暗に(明確にだが)表紙を描くことを求めている事実です。


・やはり表紙は発注されたに等しい

仕様まで詳細に求められているわけですから、ほとんど契約無しの発注といって差し支えないものであり、ここまで来ると実際に契約書を書いていないとしても、これはひょっとして法的に問題があるレベルではないのかなどという思いが頭をよぎります。


明らかに表紙を求めており、その絵の描き方にまで注文が入る場合があるにもかかわらず、発注していないかのように処理し、対価の支払いを免れている事になりますから、これは変わるべきです。



ここで実践交渉に入ります。

「流通や倉庫費用や印刷にコスト割いてるのは出版社だろ」などの指摘は事実ですが、作品は誰のものかという建前と実態が乖離していると感じたら交渉の余地があるという話なのです。

なんか「嫌ならやめちまえ」の人も一定数いるんですが、嫌なら交渉でなんとかするというのも基本です。


お互い商売なんでね。出版社とは共闘してるわけだし。繰り返すけどワシはどことも喧嘩してないんじゃよ。


「描いた方が作家も得なんだからタダでも描けよ。嫌なら描くな」と極端な損得だけが支配するのであれば「単行本出したら印税が入るんだから、原稿料なんていらないだろ。嫌ならやめろ」「ガソリンが高いとか文句言うな。嫌なら車を売れ」「ペットボトル飲料の値上げぐらいでガタガタ騒ぐな。嫌なら川の水を飲め」とでもできますから、そういう問題ではないんですな。


ここからの交渉は実は私は複数の手立てで進めていて、最初は「描かないよ」から「好きに描かせてくれ」の範囲だったわけですが、今は「単行本の表紙に金を払わないなら、表紙で描いたイラストを使って作家が自由に商売できるって契約への見直しはどうですか」とか「表紙に払う金を捻出する必要があるのであれば、こちらも柔軟に対応するので自社で各作品ごとにグッズを低リスクで販売するのはどうですか(手段は長くなるので省く)」という提案は実際にやってます。


そしてツイッターなどでの支持を集める事で交渉の材料としていますし、これは実際役に立っています。



「表紙の料金は、作者の出版物である単行本の印税に含まれる」という説もあり、先日NHKの番組内で漫画特集があった際にも、某編集者がそのように述べていたとか。

とはいえ、それも一部の出版社や編集者の主張で、全体の意見ではないことには注意が必要となります。


繰り返しますが漫画家に単行本表紙のイラスト料を支払う出版社や編集部もそれなりに存在しますし「カバーイラストに金を払う分印税率は低くなる」という実態も聞きません。


嘘とまでは言わないまでも、その論法も実態を反映していないのではと思うので、引っかかるところです。


依然として問題はある一方で、大きな流れとしては業界は日々健全化して行っています。



先日、ジャンプでは原稿料をモノクロ1ページ18,700円以上、カラー1ページ28,050円以上と、業界標準を大幅に引き上げる改革が行われました。《*2024年11月18日に、モノクロページ20,900円以上、カラーページ31,350円以上とさらに引き上げられました。》

勿論売れてる漫画が爆増してるからですが、下限を引き上げる大きな動きです。


マンガ表紙について「なぜ現状のシステムから動かないのか」を説明するブログやつぶやきも各所で見られましたが、実際に動いている現実を見ればどれも10年程度遅い議論に思えます。

本来はこの議論は、根本的解決の為に漫画業界の骨組みを変える事を主眼にして語られるものだと私は捉えています。


「このようなシステムだから金は貰えなくてもしょうがない」とか「漫画家は自身の仕事内容を誤解している」「出版社がそこにコストを割いたら印税率は下がる」といった指摘は、関係各所と直接協議したわけではなく契約と関係法を独自に解釈して書かれた文章である点は筆者自身も読者も承知のことと思います。


私は社内で話を進めている状況ですので、話せないことは話していませんが、見ている状況はおそらく他と違うものである点には注意していただければと思います。(このくらいの言い方なら平気)


私が一貫してこのような賃金の最低ライン上昇を求めて活動しているのは、アシスタントの地位向上新人漫画家の働きやすさがを改善させたいという動機からで、新人の頃から1人細々と活動しています。


私は漫画家になる以前からこの問題は知っていたので、私はアシスタントに対して漫画家が貰う一般的な原稿料と同額万円を一人ひとり払っているし、単行本が出たタイミングなどでは、業界ではまず聞かないボーナスも払うようにしているので勿論大赤字、さらに仕事が不定期な業態である点を鑑み「間に合わなくても全責任は大童が負うので大丈夫です」「休日もドタキャンも自由です(連絡だけよろしくお願いします!」としています。

加えて長期休載になる時は可能な限り休載中も賃金を出すようにしていますので原稿料では赤字どころの騒ぎではない。


ちなみに先日出した私の求人内容はこんな↓

(でも今までドタキャンは無いし、アシスタントさんが原稿間に合わなかったこととか一回も無い・・・ありがてえ)


とにかく業界をホワイトにするにはまず自分から!!!!!という強い気持ちを持っていて、自分の取り分は休日にイラストの仕事などを沢山こなすことで捻出しています。


給与は勿論契約形態によって変わりますが、これを後続の漫画家も続けられる様に、私は出版社から受け取れる賃金全体を底上げする事を目標に日々各種賃金交渉や契約内容の質問を編集部を通して行っています。


私がSNSで発信する理由は、一般の意見を可視化して上層部へ伝える際の材料とする為で、実際上層部とのやり取りは進んでいます。


経緯や背景を含めると、粗もあろうと思いますが、そんなところです。


そのうちみんな単行本作業で金がもらえるようになります。一人ではあるもののなんとか頑張っておりますので。


ここまで私は単独で交渉などを続けてきましたが、やはり作家やアシスタントが孤立し過ぎている現状を見、漫画家のハブとなる組織が円滑に業界の情報共有を続けていかないと、今回のように知識の分断による混乱が広がると痛感しました。

多分他にも単独で交渉してる人がいるんだろうけど、交渉ごとも共有できるハブ組織が無いから繋がれないのよ。

漫画家という職業人が主体となり、バックアップを受け、ある種の保護を受けることができ、より理想的な環境を獲得することを目標とし、交渉にも取り組める組織が必要だなと思い始めたところです。


他方、編集者の業務内容も過酷を極め、本来の仕事ではないはずの「作家のマネージャー業務」をすることが当たり前となっています。

こちらも賃金や人員の拡充など含めて適正になっていくと私は嬉しいと思う。



そんなです。

そのうちいい知らせができるといいな。

時間かかって、あんま上手くまとめられなくてすみません。

補足は増えていくかもしれません。


みんなで幸せになろうよ。出版社も漫画家も。

2024/11/17追記: 書店も読者もみんなで幸せになろう


2024/11/17修正: "一般的に印税90%は出版社側が持ってく"を"一般的に印税を引いた90%は"に調整し、出版社が支払う発行印税と売り上げから利益を得る立場の解説を追加しました。



2024/11/18追記


読んでいただきありがとうございます。

趣旨とは違うのですが、一点だけ気になった事を書き記しておきます。

できるだけわかりやすく書こうと努めたこともあり(うまく書けたわけではないが)「わかりやすい!」とのレビューを頂くこともあり嬉しいです。


一方で「わかりやすさ」と「正しさ」は別のものです。

わかりやすくすんなり入ってくる情報も、必ずしも正しいとは限りません。

今回この記事を書くに至った経緯もまさにそこにあり、一見すると簡潔でわかりやすい説明が実は事実誤認に基づいて書かれたものであったりと、表紙問題に関する情報が錯綜していたためキーを打ち始めました。


この記事もできるだけ正確かつ事実と主観を書き分けて記したつもりですが、歴史含め事実さえ更新されるものです(新しい証言とか、定説が覆る発見とか)。


何か情報に触れる時は気をつけよう。


2024/11/18加筆:ジャンプがまた原稿料を上げたので、その旨追加しました。


マンガの表紙に金が出ない件の話

Comments

Xの過去記事にもリンク貼ってもらうと、この件の状況を追うのがわかりやすいかと思います。 https://x.com/dennou319/status/1848544482658296314?s=46&t=KYHfuyd1Era3fT5UUmlZDQ

個人的に考えていた「昔の単行本オンリー時代からの慣習」に言及されてて興味深く読ませていただきました。 私はその慣習から離れて雑誌掲載と同じように出版社側からの依頼で単行本を作る、という形態になるべきだと考えています。 雑誌は出版社が作り出版社の依頼で原稿を借ります。 単行本は作者が原稿をもって出版社に単行本の製作を依頼する、というのが現状だと認識しています。 これを雑誌と同じように、出版社が単行本を作るので雑誌掲載分だけでは足りない要素、表紙やおまけなどを作者に依頼するという形態に変えていければ良いのではないかと考えます。 サンデー編集が表紙などに支払う金額の名目が「協力金」だということで上記内容がそれほど間違っていないと思いました。 大変難しい問題であり解決に時間もかかるとは思いますが、一読者として作家さんが作品を作り続けてくれる環境が整って欲しいと願っております。

k_taro4452

追記含めて全て読んでいます。 おつかれさまです!

み。

知らないことが多く勉強になりました ここまでの内容をあのやり取りの中で展開するのは困難だと考えるものの、このように理解しているのであればあのように断片的なやり取りに噛みつく必要は低かったのではないかなと思いました。 短い文章の中では度々行き違い、思い違いが発生しますし、思いは一つとはいかなくても、心境は共有できてるものと思います。 みんなで幸せになりたいものです。

締めにかの名言「みんなで幸せになろうよ」が引用されていて、いち読者として少し幸せになりました。 "「単行本の表紙に金を払わないなら、表紙で描いたイラストを使って作家が自由に商売できるって契約への見直しはどうですか」とか「表紙に払う金を捻出する必要があるのであれば、こちらも柔軟に対応するので自社で各作品ごとにグッズを低リスクで販売するのはどうですか(手段は長くなるので省く)」という提案" ←ここ!特に応援します!漫画版のグッズもっと出して欲しい!!!!!

み。

アシスタントをしています。こういう風に考えてくださる方がいることは、とても心強いです。ありがとうございます。

金田製作所【背景部】

支持します。契約、成果と報酬について大変筋が通った話であることは当然として、実際に行動に移していることが何より素晴らしいと考えます。

TRAX

とてもわかり易い説明で、業界不勉強の身には大変にありがたかったです(作家のマネージメントは編集の仕事じゃないけど、IP管理は編集の仕事になってそうなのも、またややこしそうですね……) どうか、四方丸く収まる方法が見つかりますように

kudann


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