どうも、田村サブロウです。
本記事は「アマゾネス達から逃げたその先で_STAGE・4(仮題)」の下書き段階の文章をそのまま投下したものになります。そのため、完成品とは内容が異なる場合がございます。
その点を理解した上でそれでも読みたいという方は、どうぞご覧になってください。
今回の二次創作の題材は、ライトノベル「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」の7巻でメインに出てくる、イシュタル・ファミリアです。
アニメ2期でベルが体験したような「捕まれば犯されるアマゾネス達との鬼ごっこ」を読者の方々に追体験してもらうのがコンセプトだったんですが。
そのイシュタル・ファミリアのホームから逃げ切った後のお話ということで、今回のメインはイシュタル・ファミリアの構成員ではなくなります。
今回は女神フレイヤがメイン。
イシュタルの対となる『美』の女神で、pixivの絵的にはこんな感じ。
前回の続きからです。
それでは、ごゆるりと。
イシュタル・ファミリアのホームに攫われてからのいきさつを話し始めて数分。
僕の寝台には、なにが面白かったのか、笑いのツボに刺さった女神が、腹をかかえて爆笑する光景が繰り広げれていた。
「あははははははっ! 顔を見ただけで危険って! 確かに、『美』の女神に対する評価として間違ってはないけれどっ! あってるけどっ! 流石にイシュタルがかわいそ……ふふふ、あははははははっ!」
寝台に拳を叩きながら、呵々大笑する麗しい美神。
心底面白そうに、目尻に涙を浮かべて大笑いする女神に、隣で眺める僕はたいそう返す表情に困らされた。
災難を実体験した僕としては、今の話のどこに笑える点があったのか不可解だ。
まぁ、相手の気分を害したわけでもなし、とりあえず愛想笑いを浮かべておく。
「それで……あとは、扉を開けてすかさず僕は走りました。もう走ることしか考えず、背後からの声とか匂いとか、全部無視して、がむしゃらに」
「逃げる途中で『魅了』はされなかったのかしら?」
「されませんでした」
「じゃあ、イシュタルは面食らったのでしょうね。己の美貌を見もせず、振り返りもしない、そんな子供に唖然とするイシュタルが目に浮かぶようだわ」
「彼女の声を聞かないよう、僕が耳をふさいで叫びながら走っていたのも効いたのかもしれません。こう、『あああああああ』って」
「ぶっ、あはははははははは!! やめて~! また笑っちゃ、あはははっ!!」
当時の状況を再現しながらの叫ぶマネに、また女神が抱腹絶倒する。
もしかしたら、僕はとんでもないものを見ているんじゃないだろうか。
度を越して麗しい容姿と超然とした雰囲気からして、目の前の女神はかなり高名な神物だと僕は予想する。都市最強と名高い『フレイヤ・ファミリア』の主神フレイヤ本人だ、と自己紹介されても納得するほどに。
詮索を禁じられていることが惜しい。と僕は一瞬思い――
「――――っ」
首の裏を寒気が掠めて、すぐにその考えを撤回した。
笑いの余韻に肩を震わせる美神。
もし本当に彼女が女神フレイヤなら……私室で密会していることや、何事にも動じないであろう彼女の爆笑する醜態を見てしまったことが、フレイヤ・ファミリアの屈強な団員たちに知られたら?
「――――」
この想像は中断するべきだ。嫌な予感がする。
深く考えないほうがいいと、僕の中で直感と理性の見解が一致した。
「ふふふ、笑わせてもらったわ……続きは?」
「あとの話は、山場になるようなところは特に無いですよ? イシュタル・ファミリアのホームを出たら路地裏に行って、ほぼ裸同然の格好はまずいので酔いつぶれた男の一人から浴衣を盗みました」
「ああ、それで財布を拾ったときのあなたは浴衣姿だったのね。悪い子」
コツンと、指で軽く額を小突かれる。
「あいた。……後は自分のホームに大急ぎで戻って、終わりです」
話が一段落した所で、いったん僕は一呼吸の間を置いた。
「――振り返ってみると、イシュタルに魅惑された際の後遺症、それを自覚したのは、あなたと会ったその時が始まりだったと思います」
「私もその意見に賛成よ。貴方の魂を『観た』限り、本来なら輝いていたであろう魂の光は、あのとき既に曇りはじめていた」
「……?」
見解の一致と、一致に至るまでの過程の相違に、僕は首をかしげる。
神と人の価値観に相違が生じるのは別に珍しくないが……『魂』という曖昧なものに言及されるのは、あまり慣れない。
困惑する僕を、目の前の美神はじっと見つめると、唇に小さく笑みを浮かべる。
ひとまず信じて大丈夫――揺るがぬ価値観を伺わせる銀瞳が、僕にそう思わせた。
あと顔が近い。
「え、と。元の状態に……イシュタルの魅惑の後遺症を治す方法って、あるんですか?」
「そこで、最初の方に話が戻るわ。貴方が私を抱けばいいのよ」
「あの、待ってください。ちょっと頭痛がしてきました」
額を抑えて、隙あらば再燃しようとする淫らな欲望を僕は縛り上げる。
話に集中していたときは煩悩を忘れていられたのに。
「あの、僕のかかっている欲情……もとい後遺症って、より厳密に言うと、どうすれば治るんですか?」
「いっそ、ムラムラするって直球で言えばいいのに」
「淑女がそんな下品な言葉遣いをしてはいけません(棒)」
あんた、さては確信犯だな。
わざと、こちらの欲情を煽って遊んでるだろ!
流し目でなにかを匂わせたり、柔らかな腿を何気なくくっつけてきたりするいたずら好きな女神に、僕はしかめっ面を向けた。「真面目に話せ」と目で訴える。
が、目の前の美神は小首をかしげて微笑んで、麗しい相貌から眼差しを倍返ししてきたので、僕はかあっと頬を熱くして目をそらしてしまった。ちくしょう可愛い!
「さて、詳細に言うと、貴方の状態をイシュタルの影響から解き放つには、魂と記憶の両側面から穢れを洗い落とす必要があるわ」
遊び心の矛を収め、女神は指を立てて教師のように語り始める。
「魂と、記憶……記憶ですか」
「ええ。魂を縛って肉体に影響を与える主体をイシュタルからイシュタル以外に書き換えて、その上で、貴方のここ数日の記憶を消す必要がある」
「……トンカチとかあったかな」
「待ちなさい。貴方なにをしようとしているの」
「え? 記憶を消すなら、こう、頭をガツンと」
「やめなさい。早まったことをしちゃ駄目」
珍しく、女神の方から僕の行動を制してくる。
しなやかな手に手首を掴まれて、僕は思いとどまった。
「その方法じゃ、百歩譲って記憶は消せても、魂の悪影響までは取り除けないから無意味よ。……イシュタルも、厄介なことをしてくれたものだわ」
この場にいないもう一人の美神を想起し、呆れたような遠い目をする銀髪の女神。
その横顔に隣で見惚れるのとともに……次第に、僕は鼓動を強く意識するようになる。どきどき、どきどきと。
再燃していく、女神の肢体の柔らかさへの好奇心。
下腹部に集まる熱。ごくりと鳴る喉。滲む汗。
ドレスからまろび出る乳房や肉厚な腿に、吸い寄せられるように視線が向く。
目の前の美神いわく、物理的にイシュタルの記憶を脳内から叩き出しただけでは、彼女に魅惑された後遺症は拭えない。
それならば、もう――
「じゃあ……僕が貴方を、抱く以外に、治る方法は無いんですか? ……本当に」
わなわなと震える自分の声。
畏れ多さがにじみ出ているのを、僕は自覚した。
「魂までこびりついた女神の枷を外せる治療師が、貴方の手の届く範囲にいるのなら、話は別だけど」
そんなコネ、僕にあるはずもない。
Lv.2に到達したとはいえ、所詮、僕は無名の冒険者にすぎないのだから。
「貴方なら……できると言うんですか?」
横顔を向けたまま座る美神に、僕は彼女の力量を尋ねた。
彼女の提案通りに彼女を抱くことと、魂からイシュタルの悪影響を取り除くことの、手段の関連性に実感が湧かないゆえに。
そんな、悪く言えば彼女の力を疑うような、僕の問いかけに対して女神は――
「造作もないことよ」
手短に、自信を覗かせた。そして――
「要は、イシュタルより私の方にあなたを惚れさせればいい」
ぞわっ!! と。
眼差しから、津波のような色香が押し寄せて、僕の身動きは奪い尽くされた。
「っっっ!!?」
「もっと強い『魅了』によって上書きを行い、肉体に影響を与える主体を、イシュタルから私へと『寝取る』」
「~~~~~~っっっ♡♡♡♡♡」
「その上で、泣き喚くあなたをドロドロに溶かして、ここ数日の記憶を奪えばいい」
妖しく細められながらこちらに向けられた瞳に、戦慄する僕の顔が映り込む。
彼女の目が孕むのは、嗜虐、愉悦、そして昏い欲望だ。
この女神はイシュタルとは違うのかもしれない――と無意識に思っていた僕の甘い考えを粉砕する、『美』の女神の負の側面。
今まで考えないようにしていた欲情がぶり返し、僕は身を焼かれる。
全身の細胞が産毛に至るまで眼前の女神と抱き合いたがっている。
甘い匂いが脳に直撃する。下腹部が疼く。手の平が甘い人肌を欲する。
やばい! 彼女、下手したらイシュタル以上に――!?
「さぁ、そろそろ始めましょう」
「っ!?」
気がつくと、僕は押し倒されていた。
優しい力で、なのにいとも容易く。
こちらを見下ろす女神は銀色の髪を耳の裏にすくうと、ゆっくりと、僕に覆いかぶさろうと迫ってくる。
「ま、待った待った!」
「遠慮しなくていいのよ。今まで必死に頑張った分のご褒美をもらえると思えばいい」
「貴方は大丈夫なんですかっ!?」
「大丈夫よ。私はフレ……愛と美の女神だから」
「今、自分の名前を言いかけましたよねっ!?」
詮索を禁じておいて、うっかり自分から名乗りかけた性悪な女神。
彼女は一瞬、テヘペロと可愛く微笑んだ後、目を細めてその微笑みに妖艶さを纏い直す。
麗しすぎる美貌が顔同士の距離を狭めてきて、僕の脳内は桃色にかき乱されていた。
迫りくる女神の唇に、雄の本能が期待を抑えられない――!
「ふふっ――可愛い♡」
間近に美貌が迫ったところで、首筋を撫でられる。
「ひゃっ♡」
ぞぞぞ、と悪寒に似た快感が走り、僕はびくんっと身体を跳ねさせた。
――いいのか!?
――このままでいいのか!?
――このまま、流れに身を委ねたままで、本当にいいのか!?
麗しい女神の『美』に呑まれつつある中、僕の意識に閃光が走り抜けた。
急激に研ぎ澄まされる感性。遅延する体感時間。
それは、ろうそくが燃え尽きる寸前に一瞬見せる炎の輝きのような、後が無いことを本能で理解させる警告でもあった。
僅かな吐息すら届きかねない、間近にある女神の美貌。
視界全域を美貌に占領されてしまった、この瞬間が――目の前の美神に、女神フレイヤに、なんらかの行動を起こす最後の機会。
なにをすればいい? なにを言えばいい?
僕の判断補助スキル、【操りたい運命の糸(ONE IN TWO)】は残念ながら今回は二択を提示してくれないだろう。
イシュタル・ファミリアの構成員と対峙した時と違い、彼女は敵ではないからだ。
目の前の美神は、彼女なりの手段で僕をイシュタルの呪縛から解き放とうとしている。
考えようによっては味方だ。
だけど、親しき仲にも礼儀あり、という言葉がある。
財布を拾った恩返しなんて、そんな口実、真に受けるほど僕はおめでたくない。
僕に身体を捧げようとまでしている美神に、口実じゃない、もっとちゃんとした形で恩に報いなければ、冒険者以前に人としての品性が損なわれる。
そうでなくても、あまりにダサすぎる!
ああ、でも。
「~~~~~~~~~~っっっ♡♡♡♡♡」
湧き上がる煩悩が、どこまでも僕の理性の邪魔をする。
豊かに実った乳房と、それに反してくびれた魅惑的な腰つき、ほどよく肉厚で柔そうな太腿、新雪のように白い肌。ほんの僅かでもこちらから近づけばすぐにでも抱きしめられる至近距離に、豊満で理想的な極上の女体がある。
揉みしだきたい。擦り合わせたい。唇を奪ってしまいたい。
抱きつきたい。密着したい。邪な欲望の昂ぶりが抑えられない!
これほどまでにいやらしく、それでいて神々しい、理性の抵抗を圧倒する究極の『美』を前に。
対価として僕が返せるものなんて、とても――
――あの女の品のない残滓が、魂にまで侵食して、影響を及ぼしているわ。
――要は、イシュタルより私の方にあなたを惚れさせればいい。
ふいに僕の脳裏によぎったのは、この部屋で銀髪の美神が言った発言、そのうち2つ。
手がかり――になるかどうかは知らないが、脈絡なく思い出した女神の言葉を最後に。
僕の中で凍てついていた体感時間が解凍される。
考える猶予が、終わる。
「一夜の夢を楽しみましょう?」
「――!」
両手で頬に触れられ、掴まれる。
いよいよ本格的に僕を『美』に呑み込もうと、その手始めに唇を重ねようと銀髪の美神が目を閉じる、その寸前で。
僕は脳内の準備を完了し、言い放った。
「打算的な感情で貴方を抱くのは嫌です!」
「――!」
女神の銀瞳が見開かれる。
「身体にかかった後遺症を治すため、とか。……言い方は悪いけど、イシュタルよりマシ、とか。そんな後ろ向きな感情で貴方と触れ合うのは嫌です」
「……」
「そんなの、貴方に対して失礼だ。……僕は、ちゃんと貴方の人となりを知った上で、貴方を本当に好きになった上で……貴方を抱くなら、そういった正当な手順を踏みたかった」
「……」
「貴方が尊敬できる女神だというのは、なんとなく、わかります。けど……なんとなくのまま……なあなあのまま貴方を抱くのは……『違う』」
心臓の鼓動がうるさく落ち着かない中、それでも僕は自分のできうる限りの誠意を眼前の美神に対してぶつけた。
女神の極上の肢体を前に、対等に返せるものなんて何も無い。
だったらもう精一杯、誠意を示す。それが僕にできる最低限の礼儀。
イシュタルの魅惑の後遺症を治す手段が他に無い以上、それを唯一治せるという目の前の美神に溺れるのは、もはや避けて通れないのかもしれない。
それでも僕は、この尊敬と畏怖を向けるべき美しい女神には、肉欲に抗いもせず溺れる醜態を見せたくないと、そう思った。
待ち受ける結末が変わらないのだとしても、最後の最後まで矜持を固持し、自分なりに気高くありたいと、僕はそう思ったのだ。
「貴方を抱くのなら、もっと、ちゃんと……」
「――十分よ」
唇に指を添えられる。
言葉を遮られた僕の瞳に、女神の美貌が微笑みかけた。
視線が絡み合う。
「私も貴方とは、もっと違った形で会ってみたかった」
ソプラノの声色に感慨が混じる。
僕が僕なりに礼儀を示した前と後で、美神の笑みが孕む感情に変化が生じていた。
細められた銀瞳には、笑みの眩しさに隠れて、なにかを惜しむような物悲しさが潜んでいる――そんな気がしたのは、僕の錯覚だろうか。
僕は彼女に、少しでも報いることができたのだろうか。
「でも……ごめんね。貴方の心身が危うい状態なのは本当なの」
その言葉を皮切りに、女神の美貌が迫る。
一度は僕の礼儀に前進を中断した女神の唇が、再び距離を狭めていく。
そして、今度は止められない。
成すすべがない。
「~~~~っっっ♡」
この世に二つとない天上の官能に毅然と抗えた奇跡は、一度切りで売り切れだった。
覆いかぶさる肢体を、今度は僕は拒めなかった。
――ちゅっ♡
――ぎゅっ♡
「ん♡」
「っっっ♡」
思いの外、静かに接吻と密着が始まる。
ゆったりとした心地の中で、静かに浸透させるように、女神の柔肌は僕との接触面積を増やしていった。
同時に両手が恋人のように絡み合い、かける体重が少しずつ増やされていき、気がついたら――
「――!」
びゅっ、と。
知らぬ間に、僕は放出していた。
薄い寝衣の裏側で、じわっと、僕の下着に染みができる。
思いっきり抱き合うのと大差ないほど女神の柔肌と密着していたことに、彼女の腹部で押し潰れていた肉棒の痙攣から、僕はやっと気づいた。
瑞々しい唇に塞がれた口の中で、舌先の触れ合うざらついた感触がこそばゆい。
理知と艶が入り交じる銀瞳が僕を間近で見つめて、見透かすような視線にゾクゾクする。
口づけと密着だけで昇天させられた。それはわかる。
だけど……こんなに穏やかに達したのは初体験で、困惑する。
「もう、我慢しなくて良いのよ。……今までよく頑張ったわね」
唇が離れ、母性と妖艶さが同居する微笑みがこちらを見下ろした。
「――――」
美しい。途方もなく。
ぼーっと呆けて見惚れてしまう。
「貴方の鬱屈した欲望……ぜんぶ、私が受け止めてあげる」
髪をかきあげてから、広げられた美神の両手。
その誘惑に抗えない。どんな穢れも浄化してしまうような美神の歓迎を前に、今度こそ僕は抵抗をやめてしまう。
この女神に、馬鹿正直に、自分の抱えるあらん限りの淫らな欲望をぶつけ抜くことを、僕は実行に移してしまう――