どうも、田村サブロウです。
本記事は「アマゾネス達から逃げたその先で_STAGE・4(仮題)」の下書き段階の文章をそのまま投下したものになります。そのため、完成品とは内容が異なる場合がございます。
その点を理解した上でそれでも読みたいという方は、どうぞご覧になってください。
今回の二次創作の題材は、ライトノベル「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」の7巻でメインに出てくる、イシュタル・ファミリアです。
アニメ2期でベルが体験したような「捕まれば犯されるアマゾネス達との鬼ごっこ」を読者の方々に追体験してもらうのがコンセプトだったんですが。
そのイシュタル・ファミリアのホームから逃げ切った後のお話ということで、今回のメインはイシュタル・ファミリアの構成員ではなくなります。
今回は女神フレイヤがメイン。
イシュタルの対となる『美』の女神で、pixivの絵的にはこんな感じ。
彼女のキャラを深堀りするために今まで色々と手間暇かけましたぞ。
それでは、ごゆるりと。
冷気でスースーする剥き出しの肌を、薄い上衣で覆い隠す。
深夜の繁華街の路地裏。
酔いつぶれて意識のない無法者たちがたむろするこの場所で、僕は泥酔者の一人から衣服を拝借していた。
丈の長い浴衣を着て、下半身の恥部を含む自分の裸体を隠す。
「っ……くさい……」
酒と汗の悪臭に鼻が曲がるも、そこは我慢するしかない。
ちなみに脚衣を着るのは諦めた。意識の無い泥酔者から、そこまで身ぐるみを剥ぐ度胸は無い。どの酔っぱらいも僕より筋肉質な大男だから尚更だ。
上の衣服を無断で拝借するだけでも、十分に危ない綱渡り。
そこに、脚衣まで盗んで下半身露出の恥までかかせたら、報復が怖すぎる。
僕は浴衣を纏ってすぐに、だけど足音を立てないよう意識して、なるべく静かに路地裏を後にした。
娼館の立ち並ぶ『夜の町』に出る。
むせ返るような淫靡な空気に構わず、僕は街路を突っ走る。
横手に見える艶めかしい桃色の燐光を通過し、次々と横切る娼婦たちの勧誘を無視する。
この時間帯、ここら近辺では身ぐるみ剥がされて文無しになった男は珍しくないようで、脚衣が無い僕を見て騒ぐ人はいなかった。
それについては好都合なのだが……代わりに憐れんだ目で見てくる通行人が多く、これはこれで気まずい。
と、僕の意識が周囲の視線に向いたそのとき、突如としてその考えは現れた。
(ああっ! 財布が無い!!)
イシュタル・ファミリアのホームに財布を落としてしまった。
その推測に、敵陣から逃げ切った今になってようやく思考が及ぶ。
必死にポケットの中をまさぐって、だけどすぐに諦める。
元々、この浴衣は僕のものじゃない。自分の財布などあるはずもない。
そして、攫われたところを必死に逃げてきたイシュタル・ファミリアのホームに、今さら戻って財布を取りに行く選択肢も、当然ボツだ。
男を貪り食う牝豹の虎穴に、「ごめんください財布落としました」?
「はいどうぞ、次から失くさないでね」なんてあり得ない。戻れば今度こそ犯される。
そして財布が無い今、懸念点がひとつ出てくる。
もし――通行料の類でもあったら、非常に困る。
攫われてここに来た僕は、繁華街の事情についてまったく詳しくないので、本当にそんなものがあるかどうかは知らない。
だけどもし通行料の支払いがあるのなら、財布が無い今、間違いなく対処が困難となる。
「っ……!」
起こって欲しくない可能性に思い悩みながら、それでも僕は足を前へ。
やはりイシュタル・ファミリアのホームに戻るのは嫌だ。
通行料の類については僕の杞憂である――頭の中でその可能性に縋りながら、また一人の他者を横切った。
――とさっ。
「ん?」
なにか、軽い物が落ちたような音を耳にする。
すぐ傍で聞こえたその音に無視しがたい感覚を覚えて、僕は周囲に目線を向ける。
見つけた。自分の真下の地面。
「えっ? ……財布?」
何枚かのお札がはみ出た、懐に収まる大きさの革嚢。
ほのかに高級感が漂うそれを僕は拾い上げる。どこからどう見ても財布で、ただしそれは本来、僕の所有物じゃない。
困っている所に天の助けのように現れた、他人の金。
それを手にした後の、僕の行動は早かった。
「あの、すいません! これ落としましたか?」
後ろに振り返って、先ほど横切った人に声をかける。
呼び止められた人の背中が止まった。全身を黒いローブで覆っている人だ。
地面に落ちていた財布を見つけたタイミング的に、あのときすれ違ったこの人が落とした物だと僕は踏んだ。違うなら、あとでギルドに遺失物として出すだけだ。
いくら困っているからって、他人の金に手をつけるほど落ちぶれていない。
その辺り、摩耗した僕の精神にも『品性』というものが残っていたらしい。
だけど、同時に湧き上がる自己嫌悪。
我ながら、『品性』とかどの口で。
浴衣だけ着て下着の無い不健全な僕の格好。そもそもその浴衣も、酔いつぶれた人から無断で拝借したもの。
そして何より――僕の視線。
(……っ!?)
女性的に突き出た腰の曲線を、黒い外套越しに捉えた。
下半身の輪郭から、相手が女性とわかった。ただそれだけ。
それだけなのに、下腹部に疼きが生じて僕は愕然とする。
(まさか、イシュタルの『魅了』が尾を引いて……!?)
脳裏に推測が閃くのと同時。
目の前の、黒いローブを着た女性が振り返っていく。
横姿が露わになっていくのと共に、大きな膨らみを持つ乳房の輪郭が存在感を表していく。全身を覆うローブの裾から柔そうな腿がちらと覗いて、ただでさえ突然の劣情に苛まれる僕に悩ましい眺めを直撃させる。
かなりの美人だと、推察するには十分な視覚情報の断片。
そこまでで、僕の精神は限界だった。
「あら、ありがとう。確かに私の財布――」
「そうですか! じゃ、僕はこれで!!」
「え? ちょっ――」
財布を押し付けて、すぐに走り去る。
相手の顔を見ない。そんな余裕は無い。
見境を失っている自分の股間を叱咤する。素直にお礼を受け取るだけの猶予も今の僕には許されなかった。
肉を揉みしだきたい。唇を重ねたい。柔い肢体と抱き合いたい。下半身に鬱屈する淫らな熱をなんとかしたい。
ちらつく淫らな欲求が、ほんの僅かなきっかけ一つで暴走しかねない。
女神に魅惑された経験の甘味が、今でも僕の体に巻きついていた。
(~~~~っっっ♡♡♡♡♡ 帰らないと、帰らないと!!)
僕は目を細めて、走る支障のない範囲まで視界を狭めながら走った。
一歩間違えたら行きずりの通行人を襲いかねない所までキている、末期状態の自分の心を理性の鎖で縛り上げる。
今夜を境に女性恐怖症になるんじゃないかと、頭の中で戦々恐々としながら、遮二無二に僕は前に進み続ける。
とまぁ、こんな感じに、当時の僕はそれはそれは酷い状態だったので。
逃げるように遠ざかる僕の背中を眺める、財布を受け取ったその女の、美しいソプラノの声を僕は知る由もなかった。
「あの子……」