本記事は「ずるい女(仮題)」の下書き段階の文章をそのまま投下したものになります。そのため、完成品とは内容が異なる場合がございます。
その点を理解した上でそれでも読みたいという方は、どうぞご覧になってください。
今回の二次創作の題材は、漫画「彼女、お借りします」のメインヒロイン・水原千鶴です。2023年の夏アニメに出ていますね。
前回書いたやつがとびっきり重くてドロドロな話だったので、今回は私の脳を休めるべく、「細かいことを考えずエロいことをしまくる話」にする予定です。
ちなみに執筆するにあたって、この絵をモチーフにしています。
この絵の格好をした水原が和也に迫ってくる、と考えていただければ幸い。
それでは、お楽しみください。
前回の続きからです。
一部始終を話し始めるとき、水原は声『だけ』はいつもの落ち着いた完璧美少女のものに戻っていた。
声『だけ』と強調したのは、俺は水原の表情を見ていないからだ。
話す間、水原は抱き合ったまま、顔を俺の肩口に乗せていた。頑なまでに、表情を見せようとしなかった。
「キスシーンの練習をするって流れになって、私も海君も断りきれなくて……本当にギリギリだった」
アクターズスクールで過ごす時間。
台風の中、帰れない人たちのためにスクール側は一時的な雨宿りの場として校内での待機を許可したらしい。
その中で起きたトラブル。
「数ある名作映画の中には濡れ場やラブシーンがあるものも当然ある。そしてそれらは、物語を盛り上げる上で欠かすことはできない」
脳裏に浮かぶ、周囲に言いくるめられ、悪い流れに乗せられる水原の姿。
以前、合コンに水原が参加させられたときのことを思い出す。あのときだって、初飲酒で水原はその場の勢いでイッキさせられて。
「女優業でキスシーンを求められることなんて珍しくない。割り切るのも仕事のうちだって、理解してた……つもりだった」
言葉尻で、水原の声が震えた。
「覚悟、できてた、つもりだった」
水原の、抱きしめてくる力が強まった。
「まっとうな貞操観念なんて、女優になると決めた時点で、レンカノをしている時点で、捨てた、つもりだった」
冷静を装う水原に、伝わってくる悔しさと辛さに、俺は言葉が出ない。
表情がこわばっているのを自覚する。
腕の中にある彼女の体を、いつになく弱々しいものに感じてしまう。
外から雨の音が響く中、俺は喉が渇く錯覚を味わった。
「ただ、想像以上にきつかった……ううん、違う」
弱気を恥じるように、水原は訂正する。
「私が未熟だった。覚悟が足りていなかった。……それだけの話よ」
最後は普段通りの、冷製で大人びた声で経緯の話は締めくくられた。
いつものように、『理想の彼女』を演じるような自然さで。
沈黙が始まる。
軽率に言葉を出せない。
水原と抱き合った状態のまま、俺は動くことができない。
腕の中にある彼女の体の心地よさとか、たわむ胸の柔らかさとか、濡れて冷えた体への心配とか――全部どこかに失せた。
なにを言えばいいか、わからない。
好きじゃない人とキスすることの苦痛、それが避けられない壁として立ちはだかる女優としての水原の苦悩。
気持ちはわかる、なんて軽率に言えない。
「その……なんて、言えばいいのか……」
俺はなにも言わないのも憚られて、ただただ生返事しか返せなかった。
じわじわと、焦りがつのる。
それとなく俺は水原の頭を撫でてしまう。
猫かっ! と俺は内心でセルフツッコミしたが、ナデナデは意外に効いたようで、水原は頭を預けてきた。多少は心の癒やしになっているようで安心する。
つくづく思う。いつもこうだと。
女優業のことで悩む水原に、門戸外の俺は助けになれない。
役者の世界は、俺にとって未知の領域。現場にいる水原や海君に比べて、俺は知識も実感も圧倒的に足りてない。
例外的に、クラファンで映画を作ったことに関しては、水原の助けになれたと断言できる。けどあれは瑠夏ちゃんや八重森さん、墨ちゃんといった支えがあって成せたことだ。
俺一人だけでは、水原の力になることはできない。
水原の助けになるには、俺一人の手は弱すぎて。
そんな無力感に俺が浸っていた、そんなときだった。
――突如、ヌッと。
水原が、顔を上げたのは。
「するわよ」
妙な圧をその美貌より発しながら、水原は言う。
猫みたいに瞳を細めて、こちらを見据える。
……なんか怖い! なんでだ!?
「するって、なにを」
「えっちなこと」
水原の目が据わっている!!
「えっちって、いつ、どこで……?」
「もちろん、今! すぐ! ここで!!」