本記事は、「冒色の性夢-11」の下書き段階の文章をそのまま投下したものになります。そのため、完成品とは内容が異なる場合がございます。
その点を理解した上でそれでも読みたいという方は、どうぞご覧になってください。
淫夢の世界の女の子は、逃げることが物理的に不可能な誘惑はしない。
僕が言い訳の余地なく自発的に女に溺れる展開を狙うゆえか、一見ピンチのような状況に陥っても、必ずどこかに脱出の余地がある。
誘惑に勝てる選択肢が存在する状況下で、それでもなお僕が堕落を選ぶ展開を淫夢の世界はお望みなのだ。
これは今までの経験から僕が感じた誘惑攻撃の傾向だ。
女に溺れるか、否か。二択を秤にかけるタイミングが必ずある。
このタイミングを付け入るスキとして見逃さず突いてきたからこそ、僕は今まで生き残ることができた。
前回の誘惑は二人がかりだったが、人数が増えても要領は同じだ。誘惑に流されず、相手が用意した脱出ルートをなぞるだけ。
まぁとどのつまり、自分から女の子に溺れさえしなければ勝てるのだ。
言葉にすれば実に単純明快な勝利の前提。
しかし、なかなかどうして今の僕にとってこれがかなり難しい。
まず、ここまで生き残った以上は当然だが、僕は誘惑美女を自分から抱いて射精まで至ったことは一度も無い。
加えて『女の子は僕を能動的に射精させてはならない』ルールが、僕にラッキースケベでの暴発みたいな不可抗力の射精をできなくしている。
なにより、最初の満員電車ステージで確認した自慰行為による射精の無効化は、とうとうラストダンジョンであるこの学校ステージに着いても変わらなかった。
結果、この淫夢の世界で一度も射精していない僕の肉茎は、性欲が溜まりに溜まって、硬く勃ちあがってしまっている。
こんな隆起した肉棒で、どいつもこいつもナイスバディの出揃う誘惑美女に鉢合わせたら、当然ながら大ピンチに陥ってしまう。
なので、少なくともどこかの教室に隠れて休むなりして、勃起を少しでも収めてから次の誘惑美女に会うのが望ましい。
の、だが。
十分な休みを取る前に、僕は出会ってしまった。
片手に鍵をつまみ、これみよがしに見せつけながら手招きする誘惑美女に。
「……ついてこい、ってこと?」
僕の確認に、目の前の彼女は艷やかな流し目を魅せつつうなずいた。
こちらが万全でない状況下で、敵との遭遇。
窮地への怖気と快楽への期待がない交ぜになり、股間が震える。
* * *
前回の誘惑美女との攻防を終えたところまで時は遡る。
屋上から階段を二階分降り、五階へ。適当な教室に入り、席に座る。
「……はは。毎度、こんなのばっかだなぁ」
今までの窮地だらけの経緯を振り返って僕が自分を笑った、そのおよそ三秒後。
突然だった。
ダカダカダカダカッ!
「ッ、足音!?」
慌ただしい響きを耳にして、とっさに僕は机の下に隠れた。
その判断は正解だった。机に隠れてから間もなく、何者かが教室に入ってきたのだ。
「ッ――!」
机の下からの眺めゆえ、招かれざる客の正体は足元しか見えない。
ただ、ふくらはぎの肉のつきかた、着ている靴下のデザインから、侵入者は女の子だということはわかる。
そして、この校舎には僕と誘惑美女たちしかいないという前提で考えれば、必然的に彼女は次の誘惑美女であることになる。
となるとここで一つ、僕に大きな問題が立ちはだかってしまう。
「ひどいな。会うタイミングが早すぎる……!」
前回の誘惑との戦いを終えてから、体感で二分弱。間隔が短いのだ。
ホテルステージのときには一戦ごとに十分前後の休憩がもらえたものだが、今回はたったの二分。五分の一とは恐れ入る!
僕の肉棒は前回の誘惑に耐えたばかりで硬く隆起していた。当然ながらわずか二分の休憩で静まるはずもなし。
今の状態で誘惑美女と邂逅するのは危険だ。
そう判断して逃げの一手を打つことにした僕は、誘惑美女に見つからぬようほふく前進で進みはじめた。
物音をたてないように。姿勢を低くして、あわてないで。
廊下につづく教室の引き戸は二つある。片方は僕から遠く、しかも誘惑美女が近いからそちらに行くのは論外。
一方、僕に近い方の出入り口は開けたままにしてある。引き戸の開閉で音を立てる心配は無用だ。
僕はほふく前進でゆっくりと、教室内の誘惑美女に見つからないまま、無事に教室の中から廊下に出ることができた。
なんとか逃げ切れた。あとは教室から少しでも遠くに離れるだけ。
そう安堵して、僕は逃げ続けたのだろう――もしこの場にいる誘惑美女が、たった一人だけだったのなら。
だが、残念ながらそうはいかない。
「……!」
ほふく前進で教室を出た直後。
すぐ左にスカートを履いた乙女の両脚があるのを僕は見つけてしまった。
「待ち構えていたのか……」
逃げることをあきらめ、僕は立ち上がり、左を向く。
教室の出入り口は二つ。うち一つは誘惑美女が閉鎖ずみ。
となれば、目の前のもうひとりの誘惑美女にとって先回りなどたやすかったろう。彼女には僕の逃げる先がわかっていたのだから。
「――――」
高貴な雰囲気を漂わせる西洋の美少女だ。
毛先を縦ロールに整えた、腰まで届く長い金髪。頭に付けた青いカチューシャが彼女の碧眼と同色でよく似合う。柔らかな面差しには余裕と気品が同居していて、英国貴族だと名乗られても普通に納得しそうな高貴さが伺える。
着ている服は白を基調としたワンピースジャケットの変わった学生服。スカートに付加されたフリルが高貴な魅力を二割増しにしている。体型はやや小柄ながらも豊満な丸みを帯びていて、美少女なルックスも相まって蠱惑的なものを感じざるを得なかった。
「……うぅ」
眼前の少女に見惚れてしまったのを恥じ、僕は目をそらす。
どうやら誘惑美女が二人なのは前回が特別だったのではなく、この学校ステージにおける普遍的な仕様のようだ。
目の前の貴族っ娘は立ち姿だけで僕に抱きしめたくなる衝動を与えてくる。となれば、僕を追って教室に入ってきた慌ただしい娘も彼女と同等、あるいはそれ以上に官能的であることが予想できる。
そんな二人に、欲情が抜けていない固い肉棒でどう立ち向かうか。
難題に頭を悩ませる僕に、貴族っ娘は首をかしげると。
「――ッ!」
彼女は懐から銀の鍵を左手に取り出し、右手で僕を手招きしてきた。
鍵には『第一体育館 #2』と書かれたシールが貼られている。
ラスボスに続く第一体育館の三つの鍵、その二つ目。
僕がシールの文字列を目にした後、彼女はきびすを返して歩きだした。
三歩だけ歩いて振り返り、再び鍵を見せて手招きをもう一度。
「……ついてこい、ってこと?」
僕の問いに、貴族っ娘は肯定の意がこもったまなざしで返答した。
そして彼女は再び歩きだす。今度は振り返らない。
僕は誘いに乗ることにした。ここに居ても、もう一人の誘惑美女に見つかるだけだ。
今ならもう一人はまだ教室内にいる。気づかれないよう、静かに歩く。
「それにしても。……やばいなぁ。欲情が今までで一番ひどい」
下を見ると、硬く勃ちあがったペニスが女体を求めて疼いている。
貴族っ娘の後ろを歩く今も、僕は彼女を襲いたい衝動に駆られないよう必死だ。
今は精神の均衡を保てているが、もし誘惑美女の豊満な躰と密着でもしようものなら、一巻の終わりと考えたほうがいいかもしれない。