本記事は、「冒色の性夢-07」の下書き段階の文章をそのまま投下したものになります。そのため、完成品とは内容が異なる場合がございます。
その点を理解した上でそれでも読みたいという方は、どうぞご覧になってください。
ハァイ、人違いの勇者ちゃん♡
この手紙を読んでるということは、あなたはステージ2をすべて突破してきたということね?
まずは、おめでとうと言わせてもらうわね。
正直な話、かなり驚いたわよ!
やるじゃない!
ワタクシの予想じゃ5人目の誘惑あたりで堕ちると思ってたけど、見事に予想を裏切ってくれたわね。本気で感心したわ!
だけど、まだまだ油断は禁物よ。
これからの道のりはさらに厳しさを増していくことになるわ。
なぜならそろそろ、【媚薬ガスの副作用】が出てくるから。
最初にあなたが媚薬ガスを吸ってから禁欲してきた時間をかんがみるに、もういつあなたを副作用が襲ってもおかしくないわ。
しかもあなたは本物の勇者と違って、平和な世界の温室育ち。マヒや毒といった状態異常への耐性なんかもちろん無いわよね?
その前提で考えると、副作用が出てきたら間違いなくあなたにとって不利になるわ。
覚悟なさい。
あ、そうそう。
前の手紙で「この世界の女の子はあなたを直接的に射精させない」のルールに例外ができることについて話したわよね?
あの時は例外の条件がわからなかったけど、今なら断言できるわ。
条件は【あなたから女の子に口づけすること】。大体あなたの推測通りね。
ただ、【避けられるはずの口づけをわざと避けなかった】場合でも条件達成となる仕様だからそこは気をつけなさい!
さて、最後に蛇足になるけど伝えておくことがひとつ。
あなたはこれからステージ3に向かうわけだけど、その後に控えるステージ4と最終ステージの様子がちょっと変なのよ。
どうも、誘惑美女から感じる気配が妙に強すぎるのよ。
気になるから、この手紙を書き終えた後にワタクシが調べに行ってくるわね。
とりあえず、話しておくことはこんな所かしら。
それじゃあね、人違いの勇者ちゃん♡
割と本気で、健闘を祈っているわ♡
クイーンサキュバスの◆◆◆◆より
* * *
白い壁と白い天井しかない殺風景な個室の中、黙々と手紙を読む全裸の少年がいた。
僕だ。
プールサイドステージからの脱出後、床に落ちていたピンクの置き手紙を僕は拾って目を通していた。
「ふーむ」
あいかわらず差出人の名前がかすれているのは置いといて。
ステージ4と最終ステージについては、いま心配しても仕方ない。
とりあえず手紙の内容で重要度が高そうなのは次の2点。
①。女の子からの搾精解禁の条件は僕からのキスで確定。ただし女の子からのキスでも、わざと避けなかったら条件が満たされる仕様。
②。これから先、媚薬ガスの副作用が出てくる可能性が高い。マイナス要因となる可能性が高いこと以外、効果の詳細不明。
「副作用、かぁ」
読み終えた手紙を床にポイ捨てして、僕はため息。
人体に蓄積するダメージは、わかりやすく痛みが伴うものばかりではない。たとえば過剰睡眠による片頭痛は、ストレスや疲労の蓄積が引き起こすという。
同様のケースが、今回の媚薬ガスの副作用でも起こるのだろうか。
いままで女の子の誘惑に耐えてきたことが、ストレスや疲労を蓄積していたとしたら。
ここまで僕はその我慢強さで13人中6人の誘惑に勝ったわけだが、やはり無傷というわけにはいかなかったらしい。
時間をかけて僕の全身を蝕んだ媚薬ガス。その副作用は、今後どういった形で現れるのだろうか?
「とりあえず、進んでみないことにはわからない……か」
うーんと背伸びして深呼吸してから、僕は白い部屋の出口ドアに向かう。
あくまで自覚できる範囲の話だが、今の僕の体調は万全だ。
媚薬ガスの副作用が出ないうちに、できるだけ探索を進めておきたい。
「すぅーっ……んっ」
空気を吸って、息を止めてから僕は出口のドアノブを回した。
* * *
――ぷしゅううぅぅ!!
媚薬ガスが噴出音をたてて、視界一面をピンク色に染める、
僕はあらかじめ息を止めたのが功を奏し、ガスを吸い込まずに済んだ。
3度も同じ手を食うほどマヌケじゃない。
満員電車とプールサイド、過去2度もステージ開始時にガスをまかれたら警戒だってする。
僕はガスが晴れるまで息を止めて待っていた。数秒後、視界からモヤが無くなったところで呼吸を再開する。
「ふぅっ……ここは、どんな所だろう?」
とりあえず一番目につくのは、目の前にある大きなベッドだ。
清潔感のある白い色をした直方体状の敷布団に、木材の四本足がついていて布地の床に自立している。敷布団を覆う掛け布団は触ると指が沈むほど柔らかく、なおかつ反発して押し返してくる。寝心地は申し分なさそうだ。
まくらの数は2つ。どうやらダブルベッドのようだが、2人分にしてはサイズがやや小さい。せいぜい1.6人分といったところだ。
「ベッドがあるってことは、とりあえず寝室には違いないけど……」
頭を掻きながら、僕は歩いて周囲を見回しはじめた。
高級感のただよう雰囲気の部屋だ。
ベッドの脇の壁際には小さいサイドテーブルがあり、上に0:05と時間が表示されたデジタル時計が置かれている。
奥に進むと部屋がもうひとつあり、ドアを開けてみたらトイレと風呂が一緒のバスルームがあった。もちろんシャワーつきだ。
さらに奥に進むと玄関だ。靴置き場のようなものはなく、床は布地のまま。扉のドアノブに丸い穴のついたドアプレートが掛けられていて、取ってみると表と裏に英文が書かれてるのを見つけた。
――Please Don't Disturb.
――Clean Up Please.
「『起こさないでください』と『清掃おねがいします』……ホテルだこれ!」
和訳して、僕はこの舞台のテーマがなんなのか思い当たった。
間違いない。ここはホテルの一室を再現した部屋なのだ。高級感はあるが実家のような安心感の無いアウェイムードは、ホテルじゃないと出せない。
便宜上、今後このステージは『ホテルステージ』と呼ぶことにしよう。
名づけて早々ぶしつけになるが、僕は先を急ぐため玄関を開けようとした。
「あれ? 開かない!」
より厳密に言うと、ドアノブが回らない。回せない。
僕はドアプレートを玄関ドアに掛けなおして、きびすを返した。
あのドアには鍵が必要なのか? それとも鍵以外の開閉手段があるのか?
どちらにせよ、この部屋を探索してなんらかの手がかりを見つけないと、先に進むのは無理そうだ。
そう考え、まずベッドから調べることにした。
「まずはまくらの下からだ。どれどれ……? なにも無い。次は……」
――ピー!
――かちゃっ!
「ん?」
ベッドの上に乗りながら、僕は2つの音を聞いた。
アラームじみた電子音と、鍵が開くような金属音。
「……もしや」
僕は玄関まで歩いて、玄関ドアを開けてみる。
今度はドアノブが回せないなんて事は無かった。
ドアは外側に開いていき、次の部屋を僕に見せてくる。
どうやら自覚のないうちに、いつの間にかドアが開く条件を満たしたらしい。
「うーん。なんだかスッキリしないなぁ」
後味の悪いクリアに僕は嘆息した。
まだドアの開放条件がわかっていないのに、なんだかズルしたみたいでどうも気が滅入る。
マークシートの4択問題で、答えがわからず運頼みで選んだ選択肢がたまたま正解だったような、そんな感じ。
「とはいえクリアはクリアだから、先に進むけどさ」
不満な心情を押し殺しながら、僕は次の部屋へのドアをくぐった。