本記事は、「冒色の性夢-05」の下書き段階の文章をそのまま投下したものになります。そのため、完成品とは内容が異なる場合がございます。
その点を理解した上でそれでも読みたいという方は、どうぞご覧になってください。
「う、うう……」
うめき声に似た声が、僕の口からこぼれた。
寒さから自分の肌を守るように腕をかかえながら、僕はプールサイドを歩いていく。
そのスピードはいつもの歩く速さの半分、いやそれ以上に遅い。歩幅は短く、足を出す間隔はかつてないほど遅い。
ここまでのスローペースの原因は、僕の体調不良にある。
思えばプールサイドステージ3番目に来てから違和感あった。
そこから体調は徐々に悪化し、ステージ4番目を歩く今に至って体調は無視できないレベルまで悪化したのだ。
結論を言ってしまうと。
僕は今、肌の感度が猛烈に上がっているのだ。
「んっ……んっ……!」
床を足で踏む一歩ごとに僕は我慢の食いしばりを行う。プールの湿った空気を肌で感じるだけで快感が走る。
まるで全身が性感帯だ。前のステージで受けたパイズリ攻撃の余韻、というだけではとても説明できないほどの敏感肌。
「んっ……お、おかしい……!」
なぜだ。どうしてこうなった。
自問しながらも答えが見つからないまま、いつしか僕は出口の自動ドアまでたどり着いた。
歩くのが遅かったせいでかなり時間がかかった。下手したら今まで通ったどの区画よりも時間がかかったかも。
そんな事を思いながら、僕は何気なしに自動ドアを開こうと足を上げて――
A. そのまま床を踏んだ。
B. いや待て! 今の体調で次のステージに行くのはまずい!
ひとりでに開いていく自動ドアを、僕はゆっくりと通りぬける。
黒ビキニのお姉さんの誘惑を突破してから、今までは運よく僕を誘惑する女の子は現れていない。
頼む、お願いだ。幸運よ、もう少しだけ長続きしてくれ……!
そんな僕のささやかな願いごとは、
「あっ……」
ドアのそばでたたずむ女の子を目にしたことで、たやすく打ち砕かれた。
妹みたい――これが彼女を目にして、まっさきに抱いた第一印象だ。
身長は僕より頭一つ低い。青味がかった黒髪はやや短く、ボブカットに整えられてた頭の両側面にヘアピンでアクセントを加えている。同じく深い墨色をした眉の下には勝ち気そうな瞳がついていて、兄に小言を言う妹というイメージがピッタリあう。
僕に妹はいないが、彼女を見て思わず「お兄ちゃんのバカ!」と罵倒してくる想像がなんとなく浮かび上がって、苦笑しかけたのだが。
「うっ……!」
何気なく目線を下げて、笑ってる場合じゃないと自覚する。
彼女が着ているのは、スクール水着だった。
……いや、別に僕はスク水フェチとかではない。
問題なのは水着の下、中身の肉体の方だ。
年下の妹というイメージに許されていい躰じゃない。
スク水に支えられた乳房は指が何本でも入りそうなほど豊満。鎖骨の下では谷間が深い線を描いている。水着のハイレグ部分に目を向けると、肉付きのいい腰回りと太ももがこちらの欲情をこれでもかと誘ってくる。
どうなってるんだ、この淫夢の世界は! ボン・キュッ・ボンしかいないのか!
心のなかでそんな八つ当たりめいた憤慨を抱えていると。
「――!」
ふいに、スク水妹が動き出した。
敏感肌で動きの鈍い僕のそばに近づいて、右手の指を股間に近づけてくる。
「やめっ――」
とっさに僕は両手で自分の勃起した肉棒を庇って、
「――ひゃあんっ!?」
首筋をさすられ、快感に変な声を上げてしまう。
フェイントだ。スク水妹は股間を撫でると見せかけ、実際は首筋を狙っていたのだ。
指先だけで翻弄された僕がよほどおかしかったのか、スク水妹の唇が嗜虐的につり上がる。
「うっ……く……!」
悔しさを噛みしめながらも、僕は危機感を抱いた。
まずい、感度上昇の影響が深刻すぎる! 股間を触られてもいないのにこの無様!
どうすればいいんだと頭を悩ませながら、それでも股間だけは触らせまいと腕を下げていると。
「……ん?」
スク水妹の予想外の動きに、僕は首をかしげた。
彼女は追撃してこなかった。僕に背を向けて離れたのだ。
どういうつもりなのか意図をはかりかねて僕がスク水妹を見ていると、彼女は僕に首だけ向けて視線を返し、壁を指差した。
指が指す先、壁には透明なビニールで守られた張り紙がある。
この張り紙を読め、と彼女は言いたいのだろうか?
僕が張り紙に目を向けた直後、スク水妹はプールサイドを歩いて離れていく。
とりあえず彼女は僕が張り紙を読むのを妨害しないようだ。
さっそく僕は文章に目を通してみると――
『警告!
このプールには男性の触覚に作用して、全身が性感帯になるかのごとく肉体の感度を倍増する成分が含まれています!
なので男性は、ぜえ~~~ったい、プールに入らないでください!
え? もう既にプールに入っちゃった?
ご愁傷様です♡
m9(^Д^)プギャーwwwwwwwwwwwwwwwww』
「…………………………」
口をあんぐり開けながら、脳裏に過去のいきさつがよみがえる。
プールステージ1番目と2番目で、僕は思いっきり泳いでしまった。
1番目に至っては「ひゃっほー」なんて言ってはしゃぎながら、おもっくそ水泳を楽しんでしまった。
罠だなんて、かけらも思わなかった。
「……お、の、れええぇ~~~ッッ!」
煽り全開の張り紙への怒り、自分のマヌケぶりへの呪い。
それらをない交ぜにした忸怩たる思いをのせて、僕は拳を壁に打ち付けた。