SKIMAの募集にて執筆いただいた小説。
※キャラの容姿など一部以外は、世界観や設定など自由。
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土埃の舞う道をアンドロイドのビビは歩いていた。道の隅にはテントが張られ、様々な商品が売られている。しかし、ビビはその商品達には目もくれず、ただまっすぐに歩いていた。道行く人は主人がそばにいないアンドロイドを不思議そうに眺め、一定の距離を空けていた。
どうして一人なのか。それは単純だった。ビビは突如として主人に捨てられたのだ。主人の身の回りの世話係件護衛として買われたビビは、とても口が悪かった。開発者はそういう設定にした覚えはないと言っていた事から、ビビは不良品なのだろうと言われていた。そして遂に今日、ビビの毒舌に主人の堪忍袋の尾が切れたらしかった。新しい新型のアンドロイドを手に入れた主人はビビを簡単に手放す良い方法を思いついた。
「この道をただまっすぐに歩け」
ビビの元主人はビビに最後の命令を告げその場を去った。ビビは仕方なくその命令通りに道をまっすぐに歩いている。しかし、道はどこかで行き止まりになるものだ。
「お前の店、邪魔」
ビビは一人の商人のテントの前に立っていた。突然文句を言われた商人は困った顔でビビを見る。
「お前、アンドロイドか? 主人はどうした」
「アイツは家にいる」
主人を"アイツ"と呼ぶアンドロイドを見て商人が驚いて口を開けた時、一人の少年がビビの手を取った
「おいっ!」
突然手を取られたビビは咄嗟に少年の足を引っ掛け、掴まれた腕を掴み返し、地面に組み敷いていた。
「イタタタ!」
「お前、誰だ」
ビビに組み敷かれた少年は痛そうに顔を歪ませつつも、敵意がないのだと示すように力を緩めた。
「オレは刈間シズクだよ! 知らないのか!?」
「知らない」
無慈悲に告げられたビビの言葉に刈間は少しばかり目を見開いた。数秒の沈黙が降りる。
「……じゃあ、オマエはここで何してんだよ」
目を逸らしながら拗ねたように刈間は言う。
「知らない奴に教える義理はない」
ビビの言葉に刈間はムッとしたようだった。
「……そうかよ。ていうか、体重いから退けてくれない? オレ、何もしないからさ」
刈間にそう言われ、ビビはゆっくりと体を離した。
「坊主、頼むからそのアンドロイドを別のところに連れて行ってくれ。さっきから店の前に立たれて邪魔だったんだよ」
起き上がった刈間を見て商人は伝える。
「だって。ここは邪魔だから別のとこ行こうよ」
「イヤだ。ここをまっすぐに歩けというのがアイツの命令なんだから」
「は? なにその命令。そんな命令絶対意味がないって。ほら、行くよ」
刈間に腕を引っ張られ、ビビはついて行く。本当は抵抗しても良かったのだが、主人の命令に意味がなかったというのをビビは薄々知っていた。
刈間はビビがどうしてあの店の前で立っていたのかを聞いた。捨てられた、と告げるのは哀れに感じた刈間は一つの提案をすることにした。
「良かったらさ、オレの友達になってくれない?」
「……トモダチ?」
今まで主従の関係しか結んだことのなかったビビにとってそれは意外な言葉だった。
「そ、オレ友達いなくってさ」
「……考えておく」
「じゃあオレの家に来なよ。考えるのはそれからでもいいんじゃないかな」
そう言われ、ビビは刈間の家に行くことにした。
刈間の家は以前ビビがいた家からすると、馬小屋と大差ないようなボロ屋だった。トタン屋根で隙間風が酷く、ツギハギだらけの家だった。
「ボロい」
「ま、まあそんな事言わないでよ。住めば都って言うでしょ?」
刈間に案内され、家の中へと入る。刈間は機械をいじるのが好きらしく、古い大型のパソコンや小さな動かないロボット、どこから繋がっているのかわからない線、錆びた銅板、何に使うのか分からない歯車、もう使いようもなさそうな昔のゲーム機、などが沢山散らばっていた。
ふと、ビビの頭の中に知らない映像が流れ込む。それはこの家がまだもう少し整理されていた頃。今より少し小さい刈間が楽しげに、拾ってきたのであろうガラクタを床の上で広げているのが見えた。そして、刈間は嬉しそうにこちらを見る。まるで宝の地図を見つけた冒険家のような、そんな輝きに満ちた目がこちらを向いていた。
「……?」
視界がおかしいのかと思い目を擦れば、その映像はパチリと消えた。
「どうしたんだ?」
刈間が固まったビビに尋ねる。ビビは先の映像を不思議に思いながらも、そういえば自分は不良品なのだから、何かのバグなのだろうと思い直した。
家の中を見て回っていると、とあるものが目に入った。それは一枚の立てられた写真。その中には今より小さい刈間と自分によく似た人間が写っていた。
「これ……」
「あ、ああああ〜〜〜! それは!」
刈間は慌てて写真を倒し、ビビに見えないようにする。
「さっきの人間、ボクみたいだった」
「うーん、やっぱそう思う?」
刈間はガシガシと頭を掻きむしり、何かを悩んでいる様子だった。
「ん〜〜〜いつかはバレることだったと思うし……」
そういうと刈間は悩みつつも「よし……」と呟くと顔を上げ、ビビをまっすぐに見つめた。
「この写真の子、オレの友達だったんだ」
刈間はその友達との思い出を話してくれた。一人だった刈間に声をかけ、手を差し伸べてくれた事。刈間と一緒にゴミ山の中で使えるガラクタがないか探した事。何か見つけたら一緒に喜んでくれた事。家族のいない刈間のそばにいつもいてくれた事。口は悪かったけれど、いつも刈間の事を心配してくれていた事。どれもささやかだが、刈間にとっては大切な思い出だった。
「ある日、アイツが人攫いにあったんだ。オレが気づいた時にはもう遅くて、どこに連れて行かれたのかもわからなかった」
悔しそうに拳を握る刈間。それから一呼吸して、顔を上げた彼の表情は悲しそうであり、でもどこか希望を探しているような目をしていた。
「それで今日、アイツにそっくりなオマエが目の前に現れたんだ。驚いたよ。帰ってきたのかと思ったんだ」
ビビはただ黙って話を聞いていた。話を遮ってはいけないと思ったし、単純に何を言うべきか思案していた。
「ボクはこの子とは違う。機械だ」
口から出たその言葉は適切ではなかったかもしれないと、刈間の顔を見てビビは考えた。
「そんな事、ビビに知らないって言われた時に分かってたさ」
眉を下げ、刈間は肩を揺らして笑った。その笑いがどういう感情から来るものなのかはビビには分からなかった。
黙ったまま下を向いたビビを刈間はどう思ったのか、刈間はニッと口角を上げて笑った。
「でも……ビビはオレの友達になってくれるんでしょ?」
ビビは不思議な感覚を覚えた。刈間は今日初めて出会った少年のはずだ。なのに、見たことがある。そう感じた。刈間のいたずらっ子の様なその笑顔をビビは見たことがあった。それはいつの記憶だろうか。分からない。
「トモダチ、なってやってもいい」
咄嗟に肯定の言葉が口から出ていた。
「ほんとに!? やった!」
刈間はニッとと笑い、包んだビビの手を持ち上げた。嬉しそうに笑う刈間の顔を見ながら、ビビは胸が温かくなるのを感じていた。
あんたがあの時のキミじゃなくても、オレはもう一度キミと友達になりたい。そう思うんだ。
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執筆:レゴランタ丸様