親戚や、その子供達からまでエロい目で見られている事にうすうす感じ始めていた頃にプロデューサーと出会い、アイドルとして歩んでいこうと決めたのは、やはりベタベタ触ってくる人たちから逃げ出そうとした気持ちもあったのかもしれない。学校でも男子からはからかい半分に触れられ、しかしその顔は笑ってはおらず、言いようのない恐怖を感じる時があった。教員に相談していても、やはり胸元にじっとりとした視線を浴びていて、心が安らぐ場所は無かった。
しかし事務所に入ってからは周りは同性の大人ばかりで、久々に気兼ねなく生活が出来る開放感を感じていた。
プロデューサーに裏切られた。プールでも見かけることがないような、まだ身につけたことのないブラジャーよりも小さい水着を着るよう強い口調で命じられ、特別な宣材だからと事務所の物置で、動画を体の隅々まで撮られていた。信じていたプロデューサーの口の端に寄った笑みは、厭らしい目で見てくる男たちのそれで、果穂が嫌悪していたものと一緒になっていた。
まだ辛うじて触られていない生肌、そして発達し始めの女性器を侵されたが、乱暴、とまでには行かなかった。拍子抜けしたが、緊張で体が固まっていたぶん、終わったた途端に崩れ落ち、何十分そうしていたか分からなくなり、膝に伝わる事務所の床の冷たさで覚めた頃、果穂は泣き崩れた。
後日、「仕事だ」と聞かされていないスケジュールを下校前の校門で聞かされ、車で連れ回された。初めてまともに見る六本木の絢爛な街並みに不安を感じ、革にしわが寄るほど強くランドセルを抱きしめていた。
車が停まったところはそのビル群には不釣り合いな寂びれた雑居ビル。エレベーターも無く、階段のコンクリートも欠けたりめくれ上がったりしている。何の張り紙もない鋼鉄のドアの前に立たされ、プロデューサーはノックをする。やけに特徴的なリズムで。
「じゃあ二時間後に迎えに来るからな」
プロデューサーが階段を降りていく音が遠ざかるのに反比例して、その部屋の中からは乾いたスリッパの音が近づいてきた。
やっと見つけた居場所を、アイドル活動を応援してくれた両親の気持ちを。
それを守るかどうかは、まだ幼い彼女のみに委ねられてしまった。
ちょこ
2023-03-13 14:53:08 +0000 UTC