§ 例えるならそれは、蜂蜜をまとった甘いマシュマロ。 柔く甘く優しく蕩ける、大きな大きなマシュマロだった。 「亜希さんは気を張り過ぎなんです♪ もっと、ゆる~く、ゆるゆる~って、甘えて良いんですよ~?」 気恥ずかしくなるほど甘い言葉を囁く、その声音も無論どこまでも優しい。大人びた、うららかで若い女性の声。ふわふわと、おっとりと、まるで子供に語り掛けているかのよう。それが耳をくすぐるだけで、その母性的な人となりが温かく胸に染み入る気分だった。 「ふふっ、そうです、そうですよ~♪ こんな風に私に包まれてぇ、ふわぁって、とろとろぉって、癒されちゃうんです♡」 琥珀色の瞳を柔和に緩め、その眼差しはどこか誘惑的なほど。髪色も、甘いミルクティーに似た、ゆったりとした柔和さだ。ふわふわのベージュの髪を大きな三つ編みに編んで、肩元に垂らしているの嫋やかで。 そんな女性が、俺を優しく抱きしめていたのだ。 「病気のおチ~ビさん♪ そんな子はぁ♡ 愛でられてぇ♡ ぎゅうぅ~って抱かれてぇ♡ お姉さんに包まれちゃえばいいんです♪」 若々しく成熟した女性は母性的で、同時にイタズラっぽかった。肩出しニットは大人っぽく、その肩元を輝かせて美しい。その胸元は驚くまでに豊満。そして何より、鼓膜を優しく撫でる、わずかに高く柔らかなその声音。透き通って大人びた声は、和三盆糖のように甘く上品だった。 けれど、そんな風に語り掛けられているというのに。 俺の声は必死。 いや、悲痛でさえある。 「穂乃果さん、やめてください、やめて、やめてぇ……ッ!!」 小男の悲鳴、喘ぐような苦しい息遣い。だがその中に、隠し切れない快感が滲んでいる。 当たり前だ。 3倍女体に抱きしめられ、愛でられ、トロトロに溶かされているのだから。 「ふふっ♪ 抱き締められたくないんですか? 恋人にハグされるのがイヤ? 優しく抱っこされるのがイヤ? もうやめて欲しいんですか~?」 「そうです、やめて、やめてええ!!」 一方の穂乃果さんはクスクス笑うばかり。身の丈60㎝の小男の頭を撫でながら、柔らかく笑うだけ。埋もれるほどニットおっぱいに押し付けて、深く深く自分の香りを吸わせるのだ。その媚薬アロマに、俺は涙目で溺れるだけ。見上げれば快楽に潤んだ視界の中、暖かい眼差しと目じりの泣きぼくろが柔和にこちらを見下ろしている。その優しいことと言ったら他にない。 そのせいで、余計に甘い快楽の苛烈さが際立つというのに。 片や穂乃果さんは優しく笑うだけ。そして、散々俺をヨシヨシしながら。 「ばぁか♡♡ 嘘ついちゃダメですよ~~? 声が気持ちいいって言ってます♪ “もっともっと~♡”ってねだってます♪ 女の子にこ~んな風に抱かれるのが好きなんですね♪ 赤ちゃんみたいに愛されるのが好きなんですね♪ あはっ♡ お姉さんは全部お見通しですよ~~?」 自分の力を誇示するように、 “むっぎゅうぅっ♡♡♡”と抱きしめる穂乃果さん。そうすれば縮小病者の体は、ずぶぶぶ……と女体の中にめり込んでいく、包み込まれていく。それだけで、頭の中には快楽が溢れかえった。成人すればまず体感することのない抱き潰し。それが、奇妙な性癖をこじ開けていく。 「~~~~~っ!!!!」 どたぷんおっぱいに押し付けられ、包み込まれ、挟み包まれて。そんなことをされて、悶えない男なんていない。おまけに肩出しニットからは谷間が半分覗いていて、しっとりもちもちの乳肌が俺に抱き着いてくるのだ。顔面に広がる、豊かな豊かなマシュマロおっぱい。そこからふわあぁっと香る、甘く優しい大人の香りと、脳内に染みつく乳アロマ。それを直接吸うなんて、敏感な小人の神経にとっては過剰摂取もいいところ。快哉の声は、もはや悲鳴も同然だった。 「やめてください穂乃果さんっ! ダメになります、おかしくなります!! だからやめてええぇっ!!!」 「ふふっ♪ 抱き着いてるのは亜希さんの方ですよ~? 亜希さん、私のことが大好きなんですね♪ そんなぁ、ちっちゃくてぇ、甘えんぼの子はぁ……♡ …………ぎゅううぅ~~~っ♡♡♡」 「~~~~~~ッ!!!」 若い女性の甘い抱擁が、全身を優しく包み込む。自分の優しさが有毒と知っている、甘い甘い抱き潰しだ。小人をダメにする甘い母性。母性責めは否応なく俺を苛み喜ばせた。優しさで壊される。ダメになるまで楽しまれる。恋人はこの矮躯を愉しみ、母性責めで俺を弄ぶばかり。 まるで、子供をからかう保母さんのように。 おかしい。こんなのってない。 相手は本来俺より小さかったはずなのに。 年下のはずなのに。 恋人のはずなのに……! けれど、想い人の甘やかし責めは止まらなかった。 「年下お姉さんに愛されて悦んじゃうんですね♡ 子ども扱いされて気持ちよくなっちゃうんですね♡ そんな亜希さん、と~っても可愛いですよ~? だ・か・ら♡ も~っと私で包んであげますね♡♡」 そう言って、服の裾を広げると。 「服の中、入っちゃいましょうね♡♡♡」 スポンッと、俺をニットセーターで呑み込んでしまったのだった。 「っ?!! ダメです、ダメ、や、やめてええぇっ!!!」 服の中、しばらく暴れる60㎝小男。それも、すぐ甘い香りにくたりと力を失う。肌から直接発散される香りは、むせかえるほどで。縮小病者が、その魔力に抗えるはずもなかった。 「もうイヤイヤごっこはおしまいですか~? 私の服の中が好きになっちゃいました?」 仄暗い陰影の中、女性の滑らかな肌がぼんやり輝く。乳白色の影をまとってむっちむち、マシュマロのような肌がどこまでも広がるのだ。そして、ドエロい色白おっぱいへと包まれればもう逃げられない。抱き着いたって半分も抱えきれない特大おっぱいが、俺を容赦ない優しさで包み込む。 「あはっ♪ 亜希さんはぁ、こうされるのがぁ、だ~い好きなんですよね~♡ エッチな小人さんですね♪ いいですよ~? そんなちっちゃな願い、お姉さんが叶えてあげます♪ 行きますよ~? …………むっぎゅう~~~~っ♡♡♡」 瞬間、押し寄せてきた、快楽の量たるや。 全方位から吸い付いてくる、女性の柔らかなマシュマロ肌。しっとりとした巨乳にお腹、服越しには腕が俺を抱きしめて、圧倒的な母性で俺を呑み尽くす。脳内では、スポンジを絞ったみたいに快楽が溢れ出した。まるで麻薬。ハグという薬物で、犯されている気分だ。 「やめっ、だ、あっ、ああああッ♡♡♡♡!!!」 「あはっ♡ “ぎゅうぅッ♡”ってされちゃうね♡♡ 柔らかおっぱいに食べられちゃうね♡ 頭にじわじわぁって気持ちよさが溢れてきて、何も考えられなくなっちゃってる♡ 気持ち良すぎて赤ちゃんにされちゃってる♡ あ~んなに強がってたのに負かされちゃったね♪ 悔しいね♡ 悔しいの気持ちいいね♡ 亜希さんはぁ、もう抵抗すら出来ないんです♡ 私に愛されちゃうんです♡ ダメになるまで私のオモチャにされちゃうんです♡♡」 さえずるようにぽそぽそ囁く、その声は慈愛でいっぱい。甘い声音は母性でたっぷり。そして快楽に泣き叫ぶ俺をねじ伏せて、自分のエロスに溺れる様を愛でるのだ。 「生おっぱいにくっついてぇ、裸の巨体に抱き着いてぇ、甘く、甘ぁ~~く抱き着かれちゃうね♡ 気持ちよすぎて泣いちゃうね♡ 泣きたい? おっぱいで“ギュッ♡”ってして泣かされたい? いいよ♡ 気持ちよすぎて泣かせてあげるね♡ こうしてぇ、直接おっぱいで挟んでぇ……、むっぎゅう~~~~ッ♡♡♡♡」 ダメ押しのように、“むんにゅうぅっ♡♡♡”とおっぱいを寄せつける年下お姉さん。俺ではたわませることすら困難なぎちみちおっぱいが、大きく形を変え、壁となって上半身を包み込む。後はもう、乳肉でプレスされるだけ。しっとりむちむち爆乳に、体を余すところなく愛されてしまう。 「ダメっ、おっぱい、押し付けないで、包み込まないでえええ♡♡♡♡!!」 「あはっ♡ 服の中で悶えてる♡ おっぱいに挟まれて悦んでる♡ かぁわい~♡ 恥ずかしくて悔しくてたまらないのに、頭とろとろにされちゃってますね♡ 気持ちいいね♪ あったかいね♡ お姉さんので~っかい体気持ちいいね♡ 頭バカになってる♡ お姉さんのこと好きにさせられてる♡ このままだとおかしくなっちゃいますよ? ダメになっちゃっていいんですか? 人間以下にされちゃってもいいんですか~?」 「そ、そんなの……っ」 けれど、穂乃果さんは答えを待たない。 「いいんです♡」 “むんにぃ……ッ♡”と巨乳を擦り込むと。 「いいんです♡ 愛されちゃっていいんです♡♡ コワされちゃっていいんです♡ 亜希さんはもう、愛されるしか能のないおもちゃ♡ 亜希さんはぁ、私の愛されペットなんです♡♡♡」 そのまま、おっぱいでデタラメに愛し始めたのだ。 「あ゜ッ!? ~~~~~~~~~~~ッ♡♡♡!!!」 小男が絶叫する。許容量以上の快と愛を注ぎ込まれ、深刻な多幸感に泣き叫ぶ。頭が割れる。脳が溶け出す。心の障壁を無理やり溶かして蜂蜜にしてしまうような、絶対的快楽。逃げ場のないその幸福に、俺はただもみくちゃにされるだけ。 「終わっちゃうね♡ 亜希さんの人生終わっちゃうね♡ で~っかい女の子のハグで犯されちゃってる♡ 愛されすぎてコワされちゃってる♡ 亜希さんは抵抗できないまま、大好きな私の甘ぁい匂い、吸っちゃうんです♪ むっちりおっぱいで、“ギュ~~~ッ♡”って、されちゃうんです♡ 理性じゅわじゅわぁって溶けちゃって、嫌なのに嬉しくなっちゃうおバ~カさんっ♡ そんな弱いチビペットちゃんなんかぁ、私でふわふわにしちゃいます♡ 今溶かしてあげますね♡ 今甘々にしてあげますね♡ その尊厳、女の子のおっぱいでコワされちゃおうね♡♡」 そして、また。 小男の切愛が、響き渡ったのだった。 ⁂ 遡れば、それはさほど昔のことではない。 縮小病になって、半年ほど。 あまりの激変に忘れられていた絶望も、徐々に心を蝕み始めた、そんな頃合いのことだった。 就職した矢先、もはや仕事もままならず、勤め先にしてみればこのような人間を雇う義理もない。それは社会にしても同じこと。幾らか金は下りたが、食費の軽さなどを名目に、握らされたのは結局二束三文だった。 人は現在に対してよりも、未来に対してより絶望する。そして死の恐怖を前にしては未来に終止符を打つことも出来ないと知った時、かえって絶望の色は深まった。生きられない。死ねもしない。八方塞がり。屠所の羊。絶望が死の恐怖を越える日を待つばかりだった。 もともと、自罰的な性格ではある。とはいえ奇妙な話だが、罰することで、自分を許している気がするのも事実だった。停滞する自分、どうしようもない自分。それらを罰する側になれば、罰されることはない。己を裁いている間は、赦されている気がしたのだ。これではいけない。自分を切り離してそれを苦しめ続けて、いつかよくないことも起こるだろう。そう思ううち俺は、気晴らしを求め、日に日に散歩に出る機会も増えていった。 「……そろそろ引っ越さないといけないかもな」 苦慮して玄関から出る。既に子供サイズのこの体。重すぎるドアも、その内開けられなくなるのだろうか。将来を思い暗澹として歩きだした、 その時。 ふと、玄関先に人影が揺れているのに気付いた。 隣人のようだった。 一見して、柔らかい雰囲気の立ち姿。 どうも、女性らしい。 「……あ、こんにちは♪」 こちらに気付き、その小柄さに一瞬驚く若い女性。けれどすぐに、ふわふわぁっと笑みかける。知らなかった。女性だったのか。うら若い、だのに大人びた雰囲気の立ち姿。オフショルダーのニットも、ロングスカートから覗くタイツも大人っぽい。包容力を感じさせる、ゆるふわとした感じのお姉さんだった。 「あ、ど、どうも……」 縮んで以来、どうも社交性が衰えていけない。あまりの美人にドギマギして、挨拶もぎこちないものだった。だって、その美しさは圧倒的。薄いベージュの髪に琥珀色の瞳、大きく豊かなふんわり三つ編み。だが何より目を引いたのは、ゆったり目の服装越しでも主張する、豊満な体つきだった。 それが、圧倒的な体格差で立ちそびえる。自分からすれば、250cmほどはある巨人だ。いや、元から160㎝以上はありそうなそのプロポーション。その姿に、どうも緊張を隠せないでいた。 見惚れる小男を、お姉さんもふんわり笑う。 それから一度、ジッとこちらを見返すと。 「では、失礼しますね♪」 柔和な笑みとともに、会釈するのだった。 鍵をしまい、踵を返し。 ……その拍子に、ハンカチを落としてしまうのにも気づかずに。 「あっ」 慌てて拾い上げれば、既に彼女は歩きだしている。おまけに、スタスタとした成人女性の歩みは速く、小人の足ではなかなか追いつけない。俺は半ば、走りながら後を追った。 「すみません! 落としてます、ハンカチ、落としてますよ……!」 いくらこの小躯とはいえ、歩く女性にすら苦労するなんて。一方のお姉さんもこちらに気付いたらしい。歩みを止め、こちらに振り返り── 張り出した大質量バストを、こちらへ振り向けたのだ。 「あの、…………わ゛っ!?」 息せき切って顔を上げた、その目前にはいつの間にか巨大な背中。その影から、豊満な乳房が顔を覗かせたと思えば一瞬だった。肩出しセーターに包まれた巨乳、それが、こちらに襲い掛かってくる。もう俺の頭よりずっと巨大な、お姉さん爆乳。柔らかそうなセーターさえパツパツになるそれが、甘い香りとともに視界を占領すると……。 “どむ゛ッッ♡♡♡”、と。 思いっきり、おっぱいビンタを叩き込んでしまう。 「ぎゃっ!?」 すさまじい感覚だった。 一瞬“むんにゅうぅ……ッ♡♡”と柔らかく顔面に広がった大質量おっぱい、その未知の感触に心が躍ったと思うと、奥から若々しい弾力が襲ってきてその全質量を小人に叩き込む。Gカップはありそうな爆乳は乳鈍器も同然、そんなもの、子供以下の体にぶち込んで良いものではない。 圧倒的体格差の鈍重な乳ビンタに、小人が吹っ飛ばされるのは当然だった。 「危ないっ!」 とっさにお姉さんが腕を掴み、ものすごい力で引き込む。だがここまで軽いとは思わず、力加減を誤ったらしい。反転、セーターおっぱいに引き戻される矮躯。そして、“ぼむっ!”と、柔らか巨乳へと埋もれるのだった。 「す、すみません! あの……、大丈夫ですか?」 “むんにゅうぅっ♡♡”としっかりバストで受け止めてから、ようやく小男を解放してくれるお姉さん。対する俺は、「え、ええ、まぁ……」などと煮え切らない答えを返すだけ。見知らぬ女性の胸なんて、触れることさえまずありえない。それがあろうことか、爆乳でぶん殴られるなんて。多幸感と絶望感の混じった感触が、今も顔面に刻み込まれている。あまりのことに、若干放心状態だ。 けれど、あまり迷惑をかけるわけにもいかない。何より、こんな状況恥ずかしすぎる。 そんなことを思い、自分の足で立とうとすると。 ふらっと体の力が抜けた。 「あ、あれ……?」 お姉さんの胸元にしがみつき、ズルズルとすがり落ちていく小人。脳震盪だろうか、乳鈍器に殴り倒され体がもたなかったらしい。女性の、おっぱいなんかに意識を粉砕されるなんて。情けなく思うけれど、事実は事実。すっかり俺は、どたぷんおっぱいでノックアウトされてしまったらしい。 「だっ、大丈夫ですか!?」 慌てた様子の声が聞こえるも、俺はへなへなと巨体に没入することしか出来ない。ああ、すごく安心する。柔らかくて暖かくて、自分にはない健康美だ。ぼんやりそう思いながら、薄い意識はお姉さんに支えられるだけ。 「すみません、持ち上げますね……」 そのまま、ヒョイと俺を抱き上げるお姉さん。より甘い圧迫感が身を包む。 そして、巨大女性は自室に俺を引き込むと。 パタンと、ドアを閉じたのだった。 ⁂ 衝撃的な逢い初めを経て。 ──穂乃果さんとの生活は、俄かに始まったのだった。 思ってもみないことだった。だって、それまで全く面識のなかった美少女と、突然の関係が始まったのだから。 あの後、部屋で看病された俺は頻繁に穂乃果さんの手を借りることになった。いや、こちらから頼んだわけではない。俺の身の上を知って、同情したのかどうか……。遠慮する俺は、けれど厚意をむげにはできなかった。 「穂乃果さんって、年下だったんですね……」 「ふふっ♪ 大きいから大人に見えるだけかもしれませんよ~?」 そう言いつつも、ほわほわと笑う彼女の態度は柔らかい。保母さんを彷彿とさせる雰囲気は暖かく、大人びて見えるのは間違いなかった。そんな風に思うのは、大きく結った太い三つ編みのせいか、その女性的な体つきのせいか。若い声もゆったりとして、雰囲気は母性的の一言だ。 「……俺は、人といてこんなに安心したことはありませんよ」 「なら、元気が出るまで一緒にいてあげますね♪」 遠慮がちに見上げる俺を、巨影は柔和に見下ろすだけ。それから巨大な手のひらをこちらに向けると、 「治すにはまず心からですよぉ~♪」 “いい子いい子♪”と、撫でたのだった。 大人になれば、女性に頭を撫でられることなどまずない。それも、この体格差。女性特有の柔らかな手のひらで触れられると、なんだか優しい日差しに包まれた気分だ。甘い優しさがじわぁっと脳をほぐす。どんどん心が解きほぐされていく。 「恥ずかしいですよ、穂乃果さん……」 赤面しぎこちなくなる俺。そんな小人の素振りを、彼女も気づいたに違いない。手をどけるとクスリと笑い、そのうぶさに微笑む。 「ごめんなさい♪ ちょっとクセで……。ふふっ、年上の人相手にいけませんね♪」 「いえ、あの、嬉しかったですが……。……やっぱり恥ずかしいので、ほどほどで」 「はぁい♡」 甘くふわふわ笑う年下お姉さん。本当に納得したのだろうか。ニコニコしたまま俺を見下ろすと、続けて、 「じゃあ、代わりといってはなんですけど」 “食事はどうですか”と、言うのだった。 まさかこれが、毎日のことになるなんて。 「あの、本当に、本当にありがたいのですが……。良いんですか?」 恐縮するのは当然だ。出会って間もないただの病人に、こんな厚意などそうそう与えるものではない。けれどそんな言葉に、決まって穂乃果さんは朗らかに笑って。 「私が好きでしてるだけですよぉ♪ 昔からこういうの憧れてたんです♪ だから、人助けと思って付き合ってくださいね♪」 のらりくらりと受け流すのだった。 「は、はぁ……」 「遠慮は“めっ!”、ですよ? たくさん遊びに来てくださいね? 私、待ってますから♪」 そんな風にして、いつの間にか。 俺は穂乃果さんの部屋に招かれ、その助けを受けているのだった。 いや、それどころではない。 「今日はいらっしゃらないんですか?」 「パンを焼いたんです♪」 「小人さん用の椅子も買ったんですよ~?」 穂乃果の心遣いはとどまるところを知らなかった。押し流されそうなほどの心遣い。返せない。到底返しきれない。気後れするのは当然だ。 だけれど、その存在に甘えてしまう自分もいて。 「……あの、何て言ったらいいかわからないですけど、…………久しぶりに元気が出ました」 驚くべきことだった。これだけしょぼくれている俺なのに、彼女が隣にいるだけで心が安らぐのだ。成熟と若々しさを併せ持った彼女は、包容力の権化だった。 それは一つには、日々出される健康的な料理のおかげだったかもしれない。消耗の激しい小人の体は、とにもかくにもエネルギーが要る。ハムスターがずっと食べている理由が分かった。そんな小動物に、穂乃果さんは餌付けを施していく。 食事、間食、ちょっとした栄養補給。一人でおざなりだった食事が、一気に華やかなものに変わったのだ。 「クッキーに、チョコレートに……。はい、これも飲んでくださいね♪」 こうなれば、間食も立派な食事だった。テキパキと配膳しながら、ミルクティーのようなものを渡す穂乃果さん。サプリか栄養剤でも溶かされているのだろうか。口をつけると、ほのかに甘い。 「……ッ! 美味しいですねこれ。何ですか?」 「お薬みたいなものです♪ ちゃんと飲んでくださいね? 絶対ですよ? 絶対です♡」 穂乃果さんの出すものは全て口に優しく心に優しい。甘い柔らかさに抱かれながらそれを飲んでいると、どうにも心が安らいでしまう。おまけに、ポカポカと体の内側から暖かくなっていく。 「なんだか体があったかくなってきます。好きですこれ。こんなものが美味しいものがあったなんて……」 小人の体は、病的に冷えやすい。それが気分に与える影響も甚だしかった。温められて、なんだか元気が湧いてくる。火照ったようにさえ感じるくらいだ。ほろ酔いに似た感覚に、気分もほぐれていった。 「ふふっ♪ これで元気出してくださいね♪」 毎日が、その調子だった。 「こんなに良くしてもらってるんだから、俺も早く元気にならないといけませんね」 思わずそんな言葉が口を突いた時も、亜希さんの笑顔はふわふわとしたものだった。 「亜希さんはえらいですね♪」 そう言って屈みこみ、ニコニコと俺を見下ろす穂乃果さん。膝に手を付けば、強調された谷間が至近距離でそのボリュームを主張する。肩出しニットなものだから、 “ずっしぃ……ッ♡♡”と重量感たっぷりに吊り下がる巨大な乳房。今にもまろび出てしまいそうなくらいだ。そして、“いいこいいこ♪”という風に小男の頭を撫でてくれる。ひどく気恥ずかしい。けれど、イヤだとは思わなかった。もう、それを受け入れられる程度には俺は癒されていたのかもしれない。 「あの、一応俺、年上……」 「ふふっ♪ そんなの関係ありませんよ~♪ 病気で頑張ってるんですから、多少こんなことがあってもいい、そうですよね? だ・か・ら♪ もうちょっと私に甘えてくださいね~?」 不思議だった。保母さんを思わせる包容力、その魔力は独特で、自然と気持ちを優しくさせる。生まれてこの方、初めて出会う幸いだったかもしれない。何より、それは目下得られる唯一の幸福だったのだ。 病状は癒えることなく進んでいく。段々大きく、女神へと変わっていく穂乃果さん。どんどん異世界的になっていく視界の中で、世界の中心は彼女だった。鋭敏になっていく感覚に、その香りは日増しに甘く誘惑的になっていく。 そして、3倍差へと差し掛かった時。 もはや彼女は女神そのものとなっていた。真っ暗な中でその母性は唯一の光であり、かつ、強烈。こんな巨大な善意を、俺は他に知らない。 惹かれるのは当然だし、必然だった。 当たり前だろう。ここまでされて惚れない人はいない。恐るべき包容力は、荒んだ心には甘すぎた。それでなくても、穂乃果さんの引力に抗えはしなかったはず。時々、少し抜けているのも可愛らしい。年相応の無邪気さと大人びた優しい色気が合わさって、穂乃果さんをこの上なく魅力的な女性へと高めていた。 だが、それは俺の話。彼女に、前途のない小男を相手にする道理はない。終わりかけの人生に付き合わせる訳にはいかないのだ。そもそも、今の状況が彼女の善意に甘え過ぎだ。身を引かねば。けれど、それでも……。 煩悶するばかりだった。 そんな、小さな生き物の堂々巡りを、彼女は微笑ましく見守っていたに違いない。 「悪い子ですね♪ 勝手に結論を急ぐからおチビさんなんですよ♡」 クスクス笑いながら、そう頭を撫でたのだった。 「……え?」 「私、結構露骨に誘ったつもりだったんですよ~? 私に恥をかかせるつもりですか? 小人さんは下ばっかり見てたら踏まれちゃいますよ~♪」 あとは柔らかく笑んで、俺の言葉を待つ巨大娘。 言うしかなかった。 「──穂乃果さん、あの、俺と……」 たどたどしい言葉に彼女は一言。 「はぁい♪」 ふわぁっと笑うと、イタズラっぽくこちらを見下ろした。 「遅いですよ? おそーいです♪」 それはからかうような、喜ぶような、不思議な声音だった。 不思議。 そう、それはひどく不思議としか言いようのない、その答え。 なぜ受け入れてくれたのだろう? 何の取り柄もない、ひどくしょぼくれた小男一匹を捕まえて、どうしようと言うのだろう。都合がよすぎる。ご都合主義だ。詐欺だと言われた方がまだ納得がいく。けれど、その様子もない。この大いなる謎が解けるまで、今しばらく時間を要することになる。 ともあれ。 俺は女神にOKをもらい、晴れてその胸にいだかれることになった。 幸福だった。 朝一緒に起き、夜一緒に寝る。食事を共にし、同じテレビを見る。そんなことを繰り返せば、ますます彼女の人柄に惹かれていった。彼女といるだけで心が安らぐ。甘くほどけていく。不自由なことは、何もない。 ……いや、正確には。 困ることが、全く無いでもなかった。むしろ、しばしばあると言っていい。何よりそれは、彼女との体格差。もとより縮小病が原因での同棲だから、或る意味当然のことではあった。が、問題はそこではない。 例えばそれは、ふとした瞬間。ついつい、居眠りをしてしまった時。こくりこくりと舟を漕いでいた巨体が、ドサリと俺へ覆い被さったりすれば。 「ちょ、ちょっと穂乃果さん! 潰れる、潰してます!!」 並んでソファに座っていた俺は、恐ろしいほど巨大な女性の下敷きになってしまうのだ。少し長身で、むっちりと豊満な穂乃果さん。その膨大な量の乳房が矮躯にのしかかる。3倍女性を前に俺は無力。だって彼女は乳房だけで成人男性を超え、その全体重は1000トンを軽く上回る巨人。押し返すなんて最初から無理な相談だ。後はただ、柔らかセーターをギッチギチに張りつめさせる爆乳に、その肉暴力を叩き込まれるだけ。重い、柔い、抗えない。こんな凶悪エッチな肉体で俺を接するのに、どれほど穂乃果さんが気遣っていたことか。思えばあの日、巨乳で張り倒されてから、さらに比べ物にならないまでに穂乃果さんは大きくなっていた。3倍美女神はもはや、愛ある性災害とすら言っていい。 そんな巨体と、寝食を共にするのだ。 煩悶しない、訳がない。 おまけに、一応、本当に一応だが今の俺たちは恋人同士。その肉体を意識しないではいられなかった。ただでさえ、その肉体に翻弄され倒しなのだ。それが静かに隣に身を横たえ、健やかに寝息を立てながら俺を温めている。無意識なその活動は却って存在感を際立たせた。巨体でテントのように大きく吊り上げた布団の中、充満する母性的な香りと衣擦れの音。けれど、穂乃果さんは恩人でもあった。第一、こんな体では穂乃果さんに何かを与えることはできないだろう。 またぞろイジイジと悩みながら、眠れない夜を過ごす俺。 そこに不意に、クスクス笑いが聞こえてくる。 「亜希さんはぁ、ほ~んとにおバカさんですね♪」 見上げれば、布団の中を覗き込む少女の姿。珍しくイタズラっぽく、穂乃果さんが笑っているのに気付いたのだった。 「ほ、穂乃果さん……!?」 「あはっ♪ 前言ったこと、もう忘れちゃったんですか~? 勝手に答えを決めちゃう権利なんてぇ、亜希さんにはとっくにないんですよ♪」 そして、俺を迎え入れると。 ──それからは、夢のような時間だった。 「今しておかないと、小っちゃくなりすぎて私の相手できなくなっちゃいますよ?」 気づけば俺はその巨体に跨り、悠然と広がる女体を見下ろしていた。くすみ一つない肌は滑らかで、起伏にとんだその造形美を輝かせている。服越しにさえ豊満だったその乳房は、全貌を明らかにすれば驚くまでに巨大だ。大粒の巨峰に似た重々しい爆乳、そのボリュームはスイカ同然。ましてこの体だから、もう俺が乗っかっても跨ぎきれないほどの大きさだった。 その3倍女体を、許されたのだ。 与えられた快楽は、俺など簡単に押し流されてしまいそうなほど。 「ゆっくりでいいです、大丈夫、……ッ♡ そう、です……ッ♡♡」 あまりに極端な体格差セックス、その探り探りのまぐわいを、それでも穂乃果さんは楽しんでいたようだった。俺の小さな手つきがくすぐったいのか、最初はクスクス笑って、けれどじきに柔肌を潤わせて。 敏感な穂乃果さんの体は、俺の矮小な奉仕にすら感じてくれたらしい。 気付けば、あの穂乃果さんが俺の下で乱れていたのだ。 「んッ♡♡ 好き、これ、好きですっ♡♡」 振り落とされまいと、搾り取られまいと必死に女体にしがみつく俺。けれど穂乃果さんの敏感な反応を見ていると、なんとか乗りこなしている気になってしまう。自分の下でシーツを掴み、必死に快楽に耐える巨大娘。小男の挿入が気持ちいいとは思えないが、演じているとしても嬉しかった。征服感さえ覚えるほどだ。乳房に触れれば手に“ずんにゅうぅっ♡♡”とたわむ乳房の感触。揉めば“だぷんっ♡ むにいぃッ♡”と重々しく揺れ、その圧倒的な重量を腕に伝えてくれた。 そして穂乃果さんが俺の手を包み、乳揉みをアシストすると。 「うゎ、ああぁ……っ!!」 “むんにいいぃッ♡♡♡”と、手がおっぱいに沈み込むのだ。一抱え以上ある爆乳は、俺にはバランスボールも同然、その中にたっぷり詰まった雌肉に包まれるのだから、その感覚は想像を絶していた。 果てるまで味わわせてもらう、その爆乳。全身で抱き着けば“とぷんっ♡ どぷぷんっ♡”と跳ね、ウォーターベッドのようにバウンドする。撫で回せば撫で回すほど感じるそのボリューム。その全てが強烈な快楽を植え付けた。 おまけに、体格差セックスの挿入感は強烈で。 「っ、ぐ、~~~~~~ッ!!!」 ねっちりとろとろの膣内は熱く甘く、ペニスを溶かして快楽と混ぜ合わせてきた。蕩けた性感帯は膣内で波打って、余すことなくその媚肉の感触にのたうち回る。巨体が俺の下でくねれば挿入の角度が変わり、余計に俺を揺さぶった。巨大なものにしがみつき、貪るようにその快楽に溺れていく俺。 「あッ♡ そう、です……ッ♡ ん、ッ、~~~~♡♡」 身をくねらせながら、優しく俺を励ます穂乃果さん。何倍も大きい自分に溺れる俺を、愛情たっぷりに感じてくれる。彼女が小さく反応するだけで跳ね飛ばされそうな小人を手で押さえ、不可能な体格差エッチへ導いてくれるのだ。 そして、時折。 「…………♡♡♡♡」 “ヨシヨシ♡“と。 頭を撫でるのだった。 そんな甘い体格差性戯、気持ちよくないはずがない。 「ッ、あ、~~~~~~~ッ!!!!」 翻弄されるままに俺は、何度も搾り取られた。何度も何度も、感じさせてもらった。 また、ある時には。 きっとすぐに出来なくなる体位にも、挑戦した。 対面座位で、抱き合いながらエッチしたり。 四つん這いになる穂乃果さんのお尻に抱き着き、必死につま先立ちになりながらバックをしたり。 「ふふっ、ッ♡ なんだかこの格好、恥ずかしいですね……♡」 その哀れなほどの体格差は、彼女の心遣いのおかげか共通の快楽になっていく。車のように大きな巨尻にしがみつき、熱々膣内を探るのだ。目の前には、汗ばむ穂乃果さんの嫋やかな背中。美しい背筋が俺の動きに合わせてくねったり、大きな三つ編みが揺れたりするのも煽情的だった。膝をついた年下彼女、その爆尻につま先立ちでへばりつき、必死に必死に腰を振る。飼い主に盛る小型犬の気分だったが、それでも気持ちよかった。 「んッ♡ これ、良いです、好きです、好きぃ……♡」 穂乃果さんが少しお尻を揺らすだけで、弾き飛ばされたり、持ち上げられたり。それだけじゃない。時には壁に押し付けられて、“ぐりぐりぐりぃッ♡”と最強の挿入を味わわされたりもした。俺を掬い上げ、“どむっ!”と壁に激突する桃尻。そのまま穂乃果さんがお尻を押し付ければ、“む゛んにいぃ……ッ♡♡”と俺を呑み尽くし圧し広がるのだ。その、ボリュームたっぷりな尻肉の弾力といったら。このまま、デカ尻に圧し潰されてしまいそうなほどだ。 そして、自力では到底不可能な深い挿入のまま尻を練りつけられ、舐り尽くされ、搾り取られる。その、繰り返しだった。 けれど、最後は決まって。 「んっ♡ 好きっ、亜希さん、大好きです♡♡」 あの母性的な抱擁で、むちゃくちゃに抱き潰されてしまうことになるのだが。 「可愛いです、好き、大好き♡♡♡」 “むんぎゅうぅっ♡♡”と抱き締めれば、汗だくおっぱいが顔をみっちり挟み込む。完全に俺を包み込むバランスボールおっぱいは、ぎちみちに密閉して呼吸さえ許さなかった。巨乳に押し付けられ包み込まれて、窒息させられる小人彼氏。その不釣り合いなまでにエッチで巨大な女体に愛されて、無意識に殺されかけるのだ。 「穂乃果さんっ! ダメです、窒息する、おっぱいで、死んじゃう……ッ!!」 でももう、年下お姉さんには聞こえない。体格差セックスでも満足してくれたのか、快感のあまり遠慮なく俺へハグ責めを食らわせる。 それが、穂乃果さんの暴力的なほどの母性の力を思わせて。 「ッ! くっ、あ、~~~~~~~~~ッ♡♡♡」 おっぱい窒息サイズ差セックスで、果ててしまうのだった。 §1蕩けるほど きっとその母性愛は、俺を癒したのだった。 いや、ここまでされて、“何も変わりませんでした”とは言えないだろう。その補助は、献身的とさえ言えたのだから。 「今日も一緒に頑張りましょうね♪」 食事、洗濯、それにとどまらない細々とした日常の風景。そのどれもに巨大な女性が映りこむ感覚は、不思議だった。俺は愛されている、よくわからないが。穂乃果さんの愛は戸惑うほどに甘く深い。普通はまず得られない幸福だった。 とはいえ、一つ。 一つだけ、頂けないのは穂乃果さんの扱い方。 優しい気遣い、甘い愛、それが行き過ぎて。 俺をまるで、子供のように扱うのだ。 「あの……穂乃果さん」 「はい、なんでしょう?」 「その……」 けれど俺は、次の言葉をまごまご探してしまう。なんだ、この先生に告白する園児みたいな気分は。 そんな素振りが面白いのか、 「大丈夫、急がなくていいですよ~♪」 例のごとく、頭を撫でるのだった。 「そっ、それですっ!! ヨシヨシしないでください!!」 「ふふっ、怒っちゃダメですよ~? もっとヨシヨシしたくなりますからね♪」 「穂乃果さんっ!!」 悲鳴のような怒声を上げる俺を、けれど穂乃果さんはニコニコ見下ろすだけだった。こう上から微笑まれると、キャンキャン叫んでいるのが恥ずかしくなる。 「でも、そうですね、今度からはもう少し気を付けます♪」 「……お願いします」 おまけに譲歩されれば、もう俺は言うべき言葉を持たなかった。 当然、その約束が果たされることはないというのに。 「……子ども扱いしないでくださいって、言いましたよね?」 「ごめんなさい、クセなんです♪ それにぃ、小人さんの恋人は皆こうしてるんですよ?」 「本当ですか?」 「…………うふふっ♪」 「穂乃果さん!!」 万事がこのとおりだった。 穂乃果さんの母性は暴走しがちなのだ。恋人関係を逸脱しそうなその扱いは、さすがに成人男性に耐えられるものではない。ヨシヨシに添い寝、甘い甘い抱擁は母親のよう。張った気を緩めるには良かったが、そのままの勢いで俺をダメにしかねないほどだ。人によっては屈辱的でさえある。怪物的な母性を前に、俺は翻弄されるばかりだった。 「小さい子がいると優しくしちゃうんです♪ お姉さんだからクセになってて……」 「そうなんですか? …………あれ、穂乃果さん弟いませんよね?」 「ふふっ♪ そんなことどうだっていいじゃないですかぁ♪」 気付かなかったが、彼女といると良くも悪くも調子が狂う。意固地にならずに済むが、同時に頭のネジがだんだん緩んでくる。そのせいで、“彼女なりの愛情表現を拒む方がおかしいんじゃないか?”と、妙なことさえ思ってしまう始末。巨大な存在の一言一言は、それだけで説得力ある魔術だった。 「……とにかく、恥ずかしいのでもう少し大人として接してください。一応年上なんですし……」 「じゃあ、“お兄さん”って呼ばなきゃいけませんね♪」 「そこまでは結構ですが……」 「それより、そろそろお薬のお時間ですよ♪」 話を逸らすように差し出されたカップ、その中から、紅茶と芳醇な甘い香りが漂ってくる。穂乃果さんに似た柔らかな香りだ。思えば、その髪色もどこかミルクティーに似ている。そう思うと、なんだかソワソワしてしまった。反発心も、休息に収まっていく。 「……これ、飲むとポカポカします。香辛料でも入ってるんですか?」 「ふふっ♡ 小人さんは体が冷えやすいですから、内側から温めませんと♪ おかわりはいりますか?」 「いえ、大丈夫です。これ、大好きですけど、飲み過ぎると胸がドキドキしたり、頭がぼぉっとしてしまって……」 “お薬が効いてる証拠ですね♪”と言いながら、コップを片付ける穂乃果さん。ヨシヨシしようと手を伸ばして、それから思い出したように引っ込める。こちらも完全に撫でられると思っていたものだから、なんだかお預けを食らった気分だ。 そんな様を見て彼女はふふふと笑うと、 「じゃあ大人扱い、しないとね♪」 そう言って、そっと頬に口づけをしたのだった。 まあ。 それが長続きするはずもなく。 「穂乃果さんっ!!!」 ついに堪忍袋の緒が切れたのは、それから少し経ってのこと。 「はぁい♪」 「“はぁい♪”じゃありません!! 僕は穂乃果さんの子供じゃないんです! 僕にだってプライドがあるっていうか……。穂乃果さんならわかるでしょう!?」 「“僕”になってますよ~♪」 「っ!?」 虚を突かれ、一瞬言葉を失う俺。優しく包み込むような物言いと、微妙に反らされ続ける話術のせいで、どうも怒気がそがれてしまう。なんだか最後には説得されてしまって、いつの間にかその優しさを受け入れているのだ。だが、今日ばかりははっきりさせないといけない。俺はキャンキャン叫んだ。 「と、とにかくっ! これ以上穂乃果さんに甘える訳にはいきません! 一応俺たちだって恋人なんです! いつまで経っても頼ってばかりでは……」 「いいんです♪ たっくさん甘えちゃえばいいんです♡ だって、私がしたいんですよ? 亜希さんは付き合ってるだけ、そうでしょう?」 「だったら自重してください! 恥ずかしいって言ってるんだから、抑えるのも優しさでしょう?!」 「なんだか亜希さん、反抗期の子みたいですね♪」 「なんてこと言うんですかっ?!」 のらりくらりとかわす穂乃果さんに、いよいよ悲鳴を上げる小男。 「それにぃ……」 そして、俺に特大の笑顔を向けると。 「亜希さんはもう、私のヨシヨシの虜じゃないですか♡♡」 「何を……」 そんな言葉に覆いをするように、ふわりと頭に降り立った大きな手のひら。優しい体温が頭全体を包み込み、他人に、大好きな人に触れられているという感覚が全身を駆け巡る。 そのまま、俺は、 「ふふっ、よしよし♪ いい子いい子♪ 言いにくいこと言えて、えらいえらい♪」 頭を、甘く、甘く、甘く、撫でられるのだ。脳の表面の、気持ちいいところを刺激するような優しい手つき。脳髄のシワにこびりついた悪感情やストレス物質が、溶けて洗い流されるみたいだ。感じてしまう。大きな存在に嘉されていると、大好きな人に愛されていると。その感情は、抗いがたいものだった。 「あはっ♡ 顔がとろぉってなってますよ♪ いつもエッチの時ヨシヨシしてるから、嬉しくなっちゃうんです♡ 気持ち良くなっちゃうんです♡ これだけで幸せになれるのに、嫌がるなんて贅沢ですよ~?」 半ば恍惚としながら、俺はその言葉を聞いてしまう。実際、その通りだった。愛してくれる人がいる。助けてくれて、肯定してくれさえする。それほどの僥倖、ありつける人などほとんどいない。 それでも最後の自立心が、違和感を叫んでいた。 「でもこのままじゃ、俺はダメになってしまいます……」 「あはっ♡ なぁに言ってるんですか亜希さん♪ ふふっ♪ 亜希さんのぉ……」 絞り出すように言う俺。 それに、ふわふわぁっと優しく笑うと穂乃果さんは、屈みこみ。 耳元にほわっと吐息がかかる距離まで、近づくと── 「ばあぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~か♡♡♡♡♡」 脳内に息を吹き込むように、そう言ったのだった。