銀世界にて
Added 2020-12-31 21:30:00 +0000 UTC日暮れと共に降り出した雪は晩の内に街を白く染め上げた。明くる朝のいやに早い目覚めは子供らしい期待がそうさせたのだろう。少女は胸を弾ませながら、家人の誰よりも早く床を抜け出し、寝間着の上に綿入りの半纏を着込んで勝手口からそうっと外を覗いた。 庭は青白い光に満ちていた。水気を含んだ牡丹雪が、屋根に、垣根に、草木に、路地に、分厚い雪化粧を施している。軒から飛び出た正月飾りの南天も、濃緑の葉に六花を散らして重たげに枝を垂れていた。 白い溜め息が少女の口から音もなく零れた。まるでお伽噺に出てくる神様の国のようだと思った。 少女は今年十二になるが、歳の割には少しばかり夢見がちなところがあった。彼女のそうした無邪気な気性が、生来の端正で大人びた顔立ちを、いくぶん幼く、可愛らしく見せていた。 玄関に回ることすらもどかしく、少女はその場にあった下履きを突っ掛けて、白く煌めく足下にそっと踏み出した。 欠き氷を匙で突き崩すような小気味のよい音が鳴る。滑らかだった雪の肌に、くっきりとした靴跡が刻まれた。自ら残した足跡を振り返り、少女は喉を鳴らした。 点々と続く醜い窪み。 まだ誰にも汚されないでいる聖域を、土足で踏み荒らす快感。 いけない衝動に身を震わせながら、少女は一歩、また一歩と、厳かな足取りで雪を踏み抜いた。 庭の中ほどまで進んだところで、少女はふと足を止めた。 ────おしっこしたい。 昨日の晩、夜更かしをして、しこたま飲んだ甘酒が、小水となって少女の下腹にある水風船を膨らませていた。はち切れんばかりに膨張したその水風船は、激しく揺らしでもしたら途端に弾けて、溜めた水を一滴残らず溢してしまうだろうと思われた。 少女は自らの股に手を伸ばし、寝巻き越しにギュッと押さえた。 お手洗いまで、間に合わない。 少女はごくりと唾を飲み、塀の傍に植えてある柿の木に歩み寄った。 高まる尿意と緊張から、固く結ばれた品の良い唇。ズボンを下ろして尻を出した。 冷気がピリッと肌を刺したが、少女は形振り構わず地面にしゃがみこんだ。 今にも溢れんばかりの尿意が少女の股を疼かせている。 膝を折ると同時にシャーッと小気味良い音がして、小水が迸った。 股の間にもうもうと白い湯気が立ち上る。足下に積もった雪がにわかに溶け出し、白い肌に真っ黄色の穴を開けた。 「は、ふぅ…………」 放尿に合わせて、少女は大きく息を吐き出した。 ────おしっこ、気持ちいい……。 うっとりと目を瞑る少女の瞼の裏に、ふと近所の畦道で立ち小便をする男の子たちの姿が浮かんだ。道端で堂々と用を足す彼らの後ろ姿を見かける度に、どうしてお手洗いまで待てないんだろうと呆れすらしていたが、今ならその気持ちが少しわかる気がした。狭い便所に隠って用を足すのでは味わえない解放感が少女の心を弾ませた。 まだ少しの翳りも見受けられない滑らかな土手の谷間から滾々と湧き出す黄金色の温水。むき出しの尻にまとわりつく冷気すら、寝起きの火照った体には心地好かった。 白い小さな尻の真下に、黄色の水溜まりがじわりじわりと広がっていく。 ようやく小水の勢いが弱まったかという頃、不意に少女の尻のあわいでブウッと乾いた音が鳴った。 「あっ……、やだ……」 咄嗟に周囲を見回して人目がないか改めて確かめる。年端も行かない子供とはいえ、やはり女だ。放屁を人に聞き付けられるのは羞ずかしい。 幸い出歯亀の姿はなかった。少女は胸を撫で下ろし、再びブゥーッと放屁をした。搗いたばかりの餅のように柔らかな尻たぶの狭間で、薄桃色の小さな蕾が震えながら呼吸をしている。寒い日に口から吐く息がそうであるように、尻が吐き出す空気もまた白い靄となって宙を漂った。 ────あぁ……やっとおしっこが終わったのに……、わたし、まだ……。 股の筋から一粒、二粒と温い雫が染み出し、肌を伝い落ちる。下腹の水風船はすっかり空だ。しかし少女はその場を立ち上がろうとはしなかった。 寒い中、尻を出して体を冷やしたせいだろう。腹が鈍く痛んでいた。それも、ただ痛いだけではない。明らかな便意を伴う痛みだった。二度の放屁はその前兆だ。 ────どうしよう……。うんちもしたくなっちゃった……けど…………。 少女の瞳に映るのは磨き上げた宝石のように光り輝く一面の銀世界。目も眩むような美しいこの景色の片隅に、自分の糞が紛れ込むだなんて、あまりにも忍びない。 今からでもズボンを履いて家に戻って、真っ当に厠で用を足そうかとも考えた。しかし、下腹で渦巻く激しい便意がそれを許さない。少女は腹を決めかねて、その場にしゃがみ込んだまま、ブゥーッ、ブォーッ、と猛烈な放屁を何度も繰り返した。彼女なりの葛藤があってのことだったが、端から見れば庭先で尻を出し澄ました顔で屁を放る恥知らずの娘でしかない。 ────どうしよう、どうしよう、どうしよう……。お外でうんちなんて、そんなの絶対にいけないわよね……。と、とりあえず、今はおならをこけるだけこいて、お腹が楽になるのを待って、それから……。 しかし少女の当てはすぐに外れた。 ブゥッ、ブゥーッ、ブブゥーッ、と調子よく高らかに空砲を打ち上げていたその菊門は、何の前触れもなくいきなりブリッと身を放り出して少女の度肝を抜いた。 「あっ……、これ、うん……」 ち、と言いかけて思わず口を塞ぐ。言葉にするまでもなく、少女の尻は糞を出していた。焦げ茶の糞塊が肉の縁を目一杯押し拡げ、ぶりぶりと品のない音を立てながらゆっくりとその身を伸ばしていく。 ────うんち……っ、うんち出ちゃった……! おならだけのつもりだったのに……、お尻の穴……勝手に開いて……いきなりうんちが……! もとより林檎のような色をしていた頬っぺたが、羞恥と焦りのため、いっそう赤らむ。 勝手知ったる我が家の庭先とはいえ、これは紛れもなく野糞だった。もはや近所の悪餓鬼たちの立ち小便を笑うどころではない。道端でちょっと珍棒を引っ張り出して小用を足すだけならまだしも、彼女の場合、雪の降り積もった地面に剥き出しの尻を据え、小便を垂れながら屁をこき散らした挙げ句、尻の穴を思い切り広げて糞をひねり出しているのだ。 ────は、早く、出してしまわなくちゃ……。こんなところ、誰かに見られたら……。 少女は口に当てた手を今度は体の後ろに回した。自らの尻たぶを掴んで左右に開くと、菊門がわずかに拡がり糞が一回り太くなった。こんな格好で糞を垂れるのは初めてだったが、背に腹は変えられない。 ────あぁあぁ……太いうんち出てる……。太くて長いうんち、ぶりぶり出てる……。お外なのに、お尻の穴からうんちが出てる……。うんちが、ぶりぶり……、うんち….…、うんち、うんち……。 瑞々しい果物のような尻と、小さな花の蕾のような菊門。快感と苦悶、両方が滲んだ表情。降り積もる雪が地上の景色を白く塗り変えるかのように、夢見がちな少女の心は、今、自らの尻が咥え込む茶色の汚塊に支配されていた。 「……ん……、もう、ちょっと……」 糞棒の先端が地面に触れた。そこから更に一寸、二寸と長さを伸ばし、程なくして最後尾が少女の菊門を通り抜けた。 足下でぼとりと重たげな音がした。みっちりと身の詰まった糞塊が地面に落ちた音だった。 「……はぁ、あぁ……、……すっきりしたぁ……」 少女がほっと溜め息を吐くのに合わせて、尻からブフゥーと空気が抜けた。股の下に視線を落とすと、黄色い大きな水溜まりの中央に、まるまる肥えた薩摩芋のように太ましい大糞が横たわっていた。 「や、やだ……。わたし、こんな大きいのを……」 羞じらう少女だったが、実の所それは彼女が常日頃から便所でひねり出しているのと何ら変わりのない代物であった。汲み取り式の便壺では拝むことの叶わない自らの落し物を目の当たりにして、どういうわけか少女の胸はときめいていた。 隅から隅まで白く輝く雪景色に表れた茶色の染み。完璧なまでに美しかった世界は、もはや汚され見る影もない。神様の国のようだと感じたはずのその景色に、少女は自ら巨大な糞を垂れたのだ。その背徳感といったら、新雪を踏み荒らすなんてものじゃない。 ────すごく、気持ちよかった……。 大きく息を吐いてふと面を上げると、灰色の濁った色の空に雪の花がちらついているのが見えた。 いい加減に下を履いて尻を仕舞わなければ風邪をひいてしまう。とはいえ、濡れた股を拭こうにも紙がない。 少女は意を決して膝に引っかけていた下着を上げると、勝手口まで引き返してそのまま便所に駆け込んだ。 便壺を跨いで、再び尻を出し、下着の具合を確かめる。股に触れた布はやはり少し湿っていたが、気になる程ではない。 今度こそ尻を拭いて立ち上がろうとしたが、ふと思い留まって軽く腹に力を込める。すると案の定、泥のような軟便がブリブリィッとけたたましい音を立てて尻の穴から溢れ出した。 「ふぅ……。やっぱり……、まだうんち残ってた……」 糞を垂れながら窓を見やると、いつの間にか外は吹雪いていた。少女が庭に残して来た大きな落し物も、程なく雪に覆われて白い景色に溶け込んでしまうことだろう。 ────この分じゃ、お庭のうんち、すっかり隠れちゃうだろうな……。せっかくだから、雪が溶けない内に、もう一回くらい……。 いけないこととは思いつつも、野糞への期待から菊門が疼いた。そればかりか、絞り出している最中の軟便を押しのけるようにして、身の詰まった黄褐色の糞塊が頭を覗かせている。 少女は静かに目を瞑り、一面の銀世界を思い描いた。それから「うぅん」と力強く息み、空想上の雪に大きな糞を産み落とした。その口元に浮かぶ笑みは、明らかに官能の悦びに目覚めた女のそれに他ならなかった。 夢見がちな少女が胸に抱く夢は、今、その姿形を大きく変えようとしている。
Comments
いつもありがとうございます。そういって頂けると嬉しいです。 言われてみれば確かにそういう傾向にありますね笑 あまり意識していませんでしたが、年齢で分けるというよりも、色っぽいイメージのキャラにはうんこと言わせて可愛いイメージが先行する子にはうんちと言わせているような気がします。中学生以下の子は(作品数は少ないですが)だいたい可愛いらしいイメージで書くので実質的なラインは14-15歳ですかね。 出したブツの呼び方は書き手の好みが出るところですし、けっこう長く語れそうなテーマなので、また雑記でも触れたいと思います。面白いご指摘ありがとうございました。
さつま
2021-01-01 01:37:31 +0000 UTC更新お疲れ様です。 野外でしたという開放感から、野外での排泄の快感に目覚める女の子は良いですね。 さつまさんの小説に登場する人物は、女の子は「うんち」、大人の女性は「うんこ」という発言をしているイメージがありますが、どの年齢くらいから変化するといった考えはありますか? 今年も作品の更新を楽しみにしています。
れいん
2021-01-01 00:36:39 +0000 UTC