20■■年8月■3日■時■■分
比較的肉体の損傷の少ないゾンビを捕獲、体内にまだ食物が残っていたのか大人しく、大人しい内に襲われないように固定を開始。
20■■年8月2■日■時■■分
液状にした食料を口を一部開閉し定期的に経口摂取させると狂暴化しない事が判明、狂暴性は飢餓由来のものだと分かった。
20■■年8月■■日■■時■■分
ゾンビというものを間近で見た事は無かったが、生前の容姿を維持したままの個体は
そんな自分でも珍しく驚いたものだ。
この”ゾンビA”は生前はきっと多くの男性から獣欲の視線に晒されていたのだろう、
生前どんな性格をしていたが知らないが今は唯一液状化した食料を啜る為に開いた口を餌を待つ鯉のようにパクパクとさせ、定まらない虚ろな瞳を時折移動させながら情けなく漏れるガスの音と排泄を一人の男の前でさらけ出している。
そんな尊厳を全て失ったゾンビAの姿は閉じ籠り鬱屈した日々を送る自分に薄暗い満足感を与えてくれる。
20■■年9月■日■■時■■分
ゾンビAを捕獲して早数日、排泄物の処理と手入れが日課になったある日、ゾンビAの腹部が熱くなっている事に気付く、
この異常事態で麻痺していたがゾンビAの体温は生きている人間と比べると明かに低いが死んだ人のそれより高くその身体は柔軟な事に、
…考えてみればゾンビは生きている人間を襲うが死後硬直した固い身体ではそれは不可能であり、身体の細胞が死んだ後にそもそも捕食など意味がわからない。
「どうやって動いてる?」
「死んだのに生きている?」
「なぜ死んだままの姿を保てる?」
生き残る為に余計なモノとせき止めてきた思考が決壊し、濁流の如く押し寄せる。
思考の渦が頭をガンガンと揺らしどうにかして正気を保とうとした最中、突如チョロチョロ…と水音が耳に入る。
ゾンビAの排泄か…と思い近づいたらサラサラとした液体ではなく、それは指から秘部へ糸となって繋がっており、粘度が高く愛液のようだった。
腹部は他人の体温などとうに忘れた自分には熱く感じヒクヒクと蠢くソレは甘く香っていた。
気付いた時には無様に物言わぬ抵抗しないゾンビAに向かって腰を打ちつけていた。
身体全体を使って身を委ねるようにのしかかり、その都度ゾンビAの肺が圧迫され漏れる空気が歯を通り「ヒュッ…ヒュッ…」と音が漏れる。
劣情と久しぶりの激しい運動により火照った顔を豊満で冷えた胸に埋め、生物としての使命を生物として矛盾を孕んだゾンビAに放出する。
20■■年9月■■日■時■分
一度タガが外れてしまってからはA子(名前を付け始めた)で性欲処理する事が日課になっていた。
一度、経口摂取の時間を忘れてしまい飛び起きた時も性行為をし精液を注ぎ込んだ日から数日間は大人しかったので食料問題も一気に解決したのが大きかったし、
孤独で生きる羽目になった自分にとってA子を伴侶としてごっこ遊びに興じる事が人間性を保つ唯一の救いになっていた。
A子に感情があるのか分からないが、欲しくなったら「ヒュ…ヒュ…」と肺を使い音を漏らし愛液を垂らし準備が完了した事を自分に伝えるようになり、この頃から拘束を解き服を着せたりと好き勝手に出来る恋人として欲にまみれた毎日を送っていた。
20■■年10月■■日■■時■分
A子は精液を大量に出させる為に舐めるという行為を覚えた。
最初は顔を舐めはじめ正直食われるのではという恐怖の方が勝ったが唇、舌、歯茎と
舌を使って覚えるように舐めまわし行為中に此方の乳首を舐めると射精の量が増えるのが判明するとそれからは乳首を執拗に舐めるようになった。
A子が射精欲しさにやってる事とは自覚しつつもそれが嬉しくなり行為の回数は増していった。
ディープキスの時は舌の動きは生きている人間のそれよりは大人しいが執拗で這うようにねっとりと動き唇の動きを使って唾液まで吸い出そうとする。
本能に忠実なせいか相手の弱点を的確に探り当てそこばかり責めるその様は気持ちいいという点を除けば捕食そのものと言っても差し支えは無いだろう。
この時にはもうA子は寝室に居る様になっていた。
此方が寝てる時にA子本人は何を考えているかは皆目見当もつかないが自分以外の呼吸音が隣にあるという事実は思ってる以上に落ち着く。
20■■年■■月■■日■■時■■分
A子と夫婦のように過ごして何年経ったろうか…
最近は食事の回数も減ったが性欲だけは据え置きで少し気持ちが悪い…
「ついに感染したのか」と諦めたがA子と行為に及んだその日から覚悟はできていたので遂に来たのか…と意外とショックではない自分が居る。
ただ自分が自分じゃなくなるかも知れない恐怖よりも怖いものがある、
A子が孕んだのだ。
年単位で行為に及んでいたのだ、通常の人間同士なら寧ろ遅すぎる位かも知れないが
A子はどれだけ愛を注ごうがゾンビだ。生物としては死んでいる。
なのにA子の腹は年々大きくなり今は妊婦のソレだ。
手を自由にしているA子は本能からかお腹のソレを守ろうとお腹に手を置くことが多く表情はいつも通り何を考えているかは知る由もないが行動は正しく母親そのものだ。
生物としては死んでいる筈の生き物に毎日精を注ぎ込んで何が生まれるのか…
正直考えたくもない。
A子が今日も「ヒュッ…ヒュッ…」と空気を鳴らし自分を呼び求めてくる。
精はA子に注がれるのか、
中の”何か”の餌になるのか、
その”何か”は…人か、それ以外か、
それが分かる頃には自分もA子も居ないのだろうという予感を抱きながら、
今日も生きた証を注ぎ続ける。