「あはは」
「うふふ」
悪辣な哂い声が聞こえる。
知っている、このふざけた笑い声は妖精の声だ。
翅の氏族、その中でも屈指の悪辣さを持ちムリアンにすら追い出された"なりかけ"の妖精達。
その妖精が何時の間にかモルガンの寝室に入り込みしかも彼女を拘束している。
一体何故、どうやってここまで、内通者がいたのだろう、と歯がゆさに歯を食いしばる。
「……なんの、つもりだ」
「女王様がお怒りだ~」
「気にくわないから私達を狩り始めた牙の氏族見たいだ~」
妖精達の言っている事には心当たりがある、翅の氏族と牙の氏族と小競り合いが起こっていると確かに聞いた。
しかしそれとこの状況になんの関係があるのだろうか。
今モルガンは体中を糸の様な物で縛られている、足の裏だけを露出させて身動きができない状況になっている。
「女王様が悪いんだよ~?」
「牙の氏族に襲われて私達み~んな殺されちゃったよ~?」
「……それで、こんな大掛かりな事を?」
翅の氏族とは思えない大掛かりな仕掛け、今この部屋は誰も居ないし体は動かせなく不自然な程になんの音も響かない。
消音の魔術か、それともこの部屋が一時的に別の場所に飛ばされたか、なんにせよこれでは人を呼ぶ事もできないだろう。
「これで女王様に復讐するんだ~」
「あはは、いっぱい苦しませるぞ~」
(何を、馬鹿な事を……)
翅の氏族の力ではモルガンに傷一つ付けられないだろう。
どの様に、どうやってここまで来たのかは解らないが気にする必要もない、拘束している糸はかなり強靭な様だが触れているお陰でこの糸の特性が解る。
後三十分もすればこの糸は自然に解けてそうすればこの妖精達を一瞬で灰にしてしまえる。
その間にモルガンを殺したりする予定なのだろうが相手と自分の力量差すら理解してなく、刹那的な妖精の思考が色濃く出ている。
「その言葉の意味を解っているのか? 今ここで非力なお前たちに何ができると?」
「あはは、解ってないのは女王様の方だよ?」
「相手を傷付ける事だけが、苦しませる攻撃だけじゃないんだよ?」
にやにやと見下してくるその姿が鬱陶しい。
一体何を考えているのだろう、視点の定まっていないその目がモルガンの足の裏を見つめているのがとても不気味だ。
「あの領域では暴力は使えないんだよ?」
「だから暴力以外の方法で女王様を苦しませるんだよ?」
「何を……くひぃ!?」
妖精国の女王とは思えない様な声が出て身体が自然と跳ねて声が出てしまう。
何が起きたのか、と確認するより前に二人の悪辣な哂い声が聞こえてくる。
「女王様は足の裏がよわよわだぁ~」
「こんな敏感な足の裏ムリアンくらいしか知らないなぁ~」
妖精達の小馬鹿にしたような言葉にふつふつと怒りが湧いて出てくる。
手のひら程度の大きさしかない矮小な妖精に見下されている。
本来なら小指一つで捻り潰せるような戦力差なのに、この糸がそれを許さない。
結局モルガンは何をされたのか、という真相の解明より自分が弄ばれている事への怒りで染まってしまった。
「お前達……この様な狼藉をして後にどうなるか解っているのか?」
「この状態で何言っているのぉ?」
「私達にかかれば女王様だってすぐへろへろになっちゃうんだから」
「馬鹿な事――んはぁ!?」
解った、今度こそ完全に何をされたのかを理解した。
足だ、足の裏だ。
足の裏を妖精の小さな指がモルガンの足の裏をすすーと撫でたのだ。
くすぐられるなんて考えもしなかったモルガンはまるで初めて快楽を感じた生娘の様にびくりと震えてしまう。
「こ、この……馬鹿にしんあぁ!?」
「んじゃそろそろやっちゃおうか♪」
「そうだね、やったおうね♪」
二人の妖精がそれぞれ左右の足の裏に陣取る。
これから何をされるか、というのは解った。
しかしそれをどう対応すればいいのか、それはモルガンですら解らなかった。
「せ~の。こちょこちょこちょこちょ~」
「こちょこちょこちょこちょ~」
「く、うぅー……!? んひ、ひぐ、んぐぐぐぐ……くひひ、んああっひひひひひひひ……!!」
歯を食いしばって妖精の指から送られてくる刺激に耐える。
こんな妖精の、児戯の様な攻撃で笑い悶えるなど彼女のプライドが許さなかった。
だから体に力を込めて足の裏をくすぐられる刺激に耐える、その耐えている姿すら妖精達から見れば滑稽なのを彼女は気が付いていないが妖精達はそれを教える理由などは無い。
「んぐふぅ、ふふふふふふふ……! くひひ、んひぃ、くく……ふひ、ひひひひ……!」
「こちょこちょ~、耐えてる耐えてる」
「こちょこちょ~、何時まで持つかなぁ?」
何時まで、何時まで耐えればいいのだろう。
糸の拘束が無くなりさえすれば、この力関係は直ぐにでも逆転するだろう。
しかしその間に弄ばれるのは許されない、少しでも思い通りにならないで一矢報いてやろう。
そう思って少しでも体に力を入れ歯を食いしばる。
そうすればこの責めも耐えられる、耐えれば糸が切れて自由に動ける。
「ほらほら~ちゃんと耐えられる~?」
「女王様の足の裏大きくてくすぐりやすいから"本気"を出してもよさそうだねぇ~」
「はひ、ひぃひひひひひ……!? な、なん、んひぃく、くくくくくくくく……く、ひひ、は、あくぅひひひひひひ……」
(本、気……? 今、今なんて……!?)
妖精達の言葉に思考が一瞬止まる。
本気、本気と言われた、今のこの状態が本気ではないということなのだろうか。
くすぐるという行為その物に、こんな児戯としか言えない行為に本気もなにも無い筈なのに。
「んぁ、は、ひひひ……いい、加減に、やめっくぅ、ひひひひひ……こんな、事をっ……!」
「女王様何言ってるの~? こんなの只のお遊びだよぉ?」
「本番はここから、本当にこちょこちょの刑にしちゃうよ~?」
「く、ん……んひぃ!? ふひゃ、ああああっはははははははははは!? なん、これはぁひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!?」
妖精達の指の動きが完全に変わった。
我慢しようと必死に力を込め耐えていた体は一瞬で弛緩し足の裏から送られてくる刺激に耐えられなくなる。
何が起きたのか、何か魔術でも使われたのかと錯覚するぐらいモルガンは笑いをこらえる事ができなくなった。
「ふざあっっっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! やめ、こんな、ぶれいなぁっはははははっひゃははははははっはっはっはっはっはっ!?」
「女王様笑っちゃったね♪」
「笑っちゃったらここから大変だよ? ほらほら~こちょこちょこちょ~」
妖精達はモルガンを小馬鹿にしながらくすぐっている。
こんな侮辱、勿論モルガンが許すはずもない、妖精達が小馬鹿にすればするほどモルガンは体に力を入れてこの糸を引きちぎろうとする。
しかし動くのは首から上と足の指のみ、モルガン自身がどれだけ怒り狂おうとも傍から見ればくすぐられ笑い悶えるだけの女性にしか見えない。
それを妖精達も解っているのだろう、にやにやと嫌らしい微笑みを向けつつ自分たちの身体よりも大きな足の裏をくすぐり回している。
「んはあっはははははっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! こんな、きさまらぁはははははは!! こんな、ことをっひひひひひひひひひひ!!」
「怒ってる怒ってる~女王様が笑いながら怒ってる~」
「変なの変なの~笑うのか怒るのかどっちかにした方がいいよ~?」
「ふひゃあっはっはっはっはっはっはっはっ!? だ、だまれぇへへへへへへへへへへ!!」
妖精達の煽る言葉が彼女のプライドを削いでいく。
そんな侮辱到底許される物ではない、異聞帯の王でありこのブリテンを治める女王である自分が小さな翅の氏族の指如きに悶えさせられている。
情けない姿を晒している自分自身に怒りが湧く、しかし今のモルガンには抵抗する術がない。
耐えるしかない、耐えるしか今を乗り切る方法が無い。
翅の氏族にくすぐられ無様に笑い悶えるその状況を怒りと共に飲み込むしかない。
「ああああっあああひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! いい、かげんにぃひひひひひひひひひひ、やめ、ろぉおおおおおお!!」
「あはは、やめないやめない、やめないよ? 翅の氏族はもう女王様を許さないって決めたんだよ?」
「力ない私達の拷問法でトラウマになって靴が履けなくなっちゃうくらいくすぐり犯してあげちゃうよ?」
「いや、なああああひゃっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! そんなぁ、ばかなことがあってたまるかぁっひゃひゃひゃひゃはははははははは!!」
妖精達は楽しそうに指を動かし続ける。
指でこちょこちょと足の裏全体を這い回り、踵や土踏まずをカリカリと爪で引っ掻いたり、指の間を撫でる様に責め立てたり、子供の様に楽しそうに責める中でその指の動きは児戯の領域をはるかに飛び越えており単純なくすぐるという行為にしっかりとした意味を持たせている。
(こんな、翅の氏族はこんな事を拷問に使っているの……!? 笑わされているだけなのに段々苦しくなって、でも笑うのを止められなくて……確かに、拷問と言われればそうだろう、けど……!)
「ひひぃひひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! こんな、こんああああはははははははっはっはっはっはっはっ!! いつまで、こんにゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
「何時まで? 何時までかなぁ? 女王様がやめてくださいって懇願するまでやっちゃおうかなぁ?」
「そろそろ本気の本気を出してもいい気がするしねぇ? これ以上の本気があるって女王様は思っても無いでしょ~?」
これ以上の本気。
その言葉に背筋が凍りそうになった。
今でも十分耐えがたいくすぐったさを与えてくるのにこれ以上があるというのだろうか。
そんな筈は無い、くすぐるなんて行為これ以上何をするというのだろうか。
モルガンの知識を総動員させても彼女からはそれ以上の行為を想像する事は出来なかった。
「それじゃぶんし~ん」
「これ以上の責めは無いって思ってる~? 女王様まだまだ甘いよぉ?」
「ふひゃっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!? ふ、増えぇ!? ふえっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!? んな、んあああああああ!?」
増えた、急に妖精が増えた。
影が形を取り全く同じ姿の翅の氏族が作られて本体と同じようにモルガンの足の裏をくすぐり始める。
自らの自我の使ってない部分を切り離し分身を作る魔術、だというのは解るが翅の氏族がそんな高等な魔術を使えるなど聞いたことは無い。
「こちょこちょこちょこちょ~」
「こちょこちょこちょこちょ~」
「こちょこちょこちょこちょ~」
「こちょこちょこちょこちょ~」
「くひゃひゃっんあああああはっはっはっはっはっはっ!? ふひぃひぃぃぃひひひひひひひひ!! く、くすぅっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!?」
合計40本の指がそれぞれ別の動きでモルガンの足の裏をくすぐっている。
何時の間にか妖精達が本人も自覚してないモルガンの足の裏の弱点を把握しておりその弱点にそってモルガンをくすぐっている。
モルガンからすれば急に責めが激しくなっている様な感じだろう、そんな状況を妖精達はにやにやと見ている。
「んぎゃあっはははははははははははは!! こんなああああははははははは、ふひゃあっひっひっひっひっひっひっ!! やめ、やめぇへへへへへへへへへへへへへへ!!」
「やめないよ~? 勿論やめないよぉ~?」
「女王様が笑い狂っちゃうまでこちょこちょは止めないよぉ~?」
「もっともっと激しくしちゃおうか~?」
「もっともっとくすぐっちゃおうかぁ~?」
「ああああああっははははははは。ひひぃっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! くすぐるなぁっひゃひゃひゃははははははははははは!! もう、もういいかげんにぃひひひひひひひひひひひ!!」
激しく首を左右に振っても、足の指をもじもじさせても妖精達の指は正確にモルガンの足の裏を責め立てている。
あまりのくすぐったさにどんどんパニックの様に思考がくすぐったさに染められ行く。
この妖精達を灰にする事よりも今すぐにでもこのくすぐりを止めて欲しい。
このままではおかしくなってしまう、笑い狂っておかしくなってしまう。
「そろそろトドメ刺しちゃおうかぁ~?」
「拷問用の特別な責めをしちゃうよ~?」
「んっはああああははははははははははは!? な、なにをいってぇへへへへへへへへへ!? これ、いじょうなにをおおおおお!?」
「今までは"尋問用"のこちょこちょだったんだよぉ?」
「これからは本当にきっつい拷問用、ムリアンに試しにやってみたらトラウマになって数日間夢に見ちゃった様な責めなんだよぉ?」
無理だ、そんな責め耐えられない。
どんなくすぐり責めが来るかも解っていないのにモルガンは本能的に無理だと察した。
今でもギリギリなのにこれ以上があると考えただけでも解ってしまう、この妖精達のくすぐり責めはモルガンの許容範囲を完全に超えている。
「それじゃあいっくよ~? こちょこちょこちょこちょ~?」
「ぺろぺろこちょこちょぺろぺろ~」
「こちょこちょこちょ~こちょこちょこちょこちょ~」
「ぺろぺろぺろ~こちょこちょっぺろぺろぺろ~」
「あぎゃあっはははははははははははは!! く、くす、くすぐぅひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! やめ、こんなああああああっはははっはっはっはっはっはっはっはっ!? んぎぃぃぃぃいいいいいいい!?」
頭の中が一瞬でくすぐったいに染まった。
妖精達の指の動きだけでなく小さな舌を利用して的確にモルガンの弱い場所を責めていく。
足の裏を舐めまわされ唾液まみれにされるという今までに無い経験がモルガンの思考を全てくすぐったいに染め上げていく。
(無理だ、無理だ無理だ無理だ!! こんな責め耐えられる筈がない!! くすぐったすぎて何も考えられない!! 死んでしまう、このままでは死んでしまう!?)
「やめぇぇぇひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! しんで、しまあっひひひひひひひひひひ、わらいじんでじまぁうぅぅぅへへへへへへへへへへへへへへへ!?」
「死なないよ! こんな程度じゃ死ねないよ~!」
「気絶だってできないんだよ!」
「まぁ気絶してもくすぐって無理矢理起こしちゃうけどね!」
「そしたら何回もこちょこちょで気絶させちゃうからね!」
もう逃げられない、もう逃がさない、そういう現実を突きつけられる。
どの位くすぐられたかもう数えて何ていられない。
くすぐりが終わって欲しい。
くすぐってくる指が動かなくなって欲しい。
足の舌を舐める舌が無くなって欲しい。
それが、それが無理ならば私の足の裏を切り落として欲しい。
「んぎひぃいいいひひひひひひ、もう、もうころせぇひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! くするぐるくらいなら、ころせぇひゃはっはっはっはっはっはっ!!」
「殺せない殺せない、私達は女王様に傷一つ付けられない!」
「だからくすぐるの! くすぐってくすぐって狂わせちゃうの!」
「笑ってるから楽しいんだよね! 女王様も楽しんでいるんだよね!」
妖精達は焦点のあって無い目のまま狂ったようにモルガンをくすぐり続けている。
既に"なりかけ"の妖精達はその体が呪いの塊になる最後の最後までモルガンをくすぐり指と舌を動かし続ける。
「は、あああっあははははは、ふぐぅ、うぎぃひひひひひひひひ!! くすぐっ、たあっっっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! あひ、ひひひぃひひへへへへへへへへへへ!!!」
「こちょこちょ、こちょこちょ」
「こちょこちょ、こちょこちょ」
「こちょこちょ、こちょこちょ」
「こちょこちょ、こちょこちょ」
お互いに理性は無くなっている、くすぐるだけの妖精達と笑い悶えるだけの冬の女王。
終わりのない地獄、永遠に続き脳を焼き続けるくすぐったいという刺激。
いっそ死んでしまいたい、死んでしまいたいのにモルガンの体はこの程度では死んでくれない。
「あがあっあはひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!! ひぎぃ――いいいいっひひひひひひひ――はへ、へへへへへえへへへへへへへ――じ、ぬうぅぅぅ、こんな、しんでしまぁっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ――」
意識が途切れては消えていく、その間にも妖精達は黒紫の呪いのモースに変容していき蠢き始める。
モルガンの意識は既に点いたり消えたりを繰り返していたが自動的に発動している魔術がモースの動きを抑え込んでいるのだ。
「は、はひ……ひゃ、はへへへ……ん、ひぃ……ひぃ……ん、ぁあ……」
目の焦点が合って無いままぼんやりと天井を見つめてくすぐったさの余韻に体をびくびくと震わせる。
何時の間にか己を拘束していた糸は千切れて自由になっているのにモースを倒す余裕すら既に無かった。
モルガンはこれより数日間、この時の事を夢に見て寝言で微かにくぐもった笑い声を漏らす事になるが、それはまだ別の話し。
次回作がんばります🎮️🐧
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2024-10-28 15:14:48 +0000 UTCDDDindustry
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