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あいもと
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「先輩、弱すぎ…♡」

後輩の少女とのスパーリングが始まる 少女は相も変わらずきれいなフォームをしている 教本通りの、どこに出しても通用するお手本のようだ 少女がボクシング部の門をたたいてから半年、瞬く間に頭角を現していった だが、それも1年生の話、2つ上の先輩の俺からすればまだ粗が見える 試合を進めればわかることだが動きにも無駄が残っているだろう そう思いながらファイティングポーズをとる お互いがリング中央にゆっくり近づいていき、グローブを突き出してチョンと合わせる ついに試合開始だ 「パァンッ!!!」 刹那、はじけるような音がする。 「????」 俺は突き出したグローブを戻したところで聞こえてきたその音の音源に違和感を覚える 俺の鼻でなった 少女のジャブが俺の鼻を弾き飛ばしつぶした音だった 「この…!」 とっさのダメージに感情が抑えきれず一気に頭に血が上る 防衛本能が働いたのだろうか 俺のパンチは自分で言うのもなんだが凶器だ 今までの試合でいくつも失神KOを築いてきた さらにそのパンチ力だけじゃなく判断力、フットワークも部内で群を抜いている どこに行ってもどの試合でも負けなしだった 絶対の自信があるからこそ少女の誘いを快く受けたのだ まさか1年の少女相手に後れを取るはずがない それこそパンチをすべてよけきれるくらいには… そう考えていた想像が今、1つ崩れ去った とっさの感情に加え、さらに悔しさで咥えているマウスピースに力が入る だが俺も血は上っていても今までの経験が活きたのかアドレナリンの放出でとどまる 試合はあくまで冷静に進めるべきだ 激情に身をまかせたところでプラスに働くことはない 言うなれば先ほどの少女のジャブで目が覚めた 冷静に、真剣になりコンディションはより良くなったと言える 今は先輩として油断なく少女にスパーリングの手ほどきをすべきだ 俺もジャブを繰り出す 間合いをとるために構えた目前の少女の腕に数発拳を当てていく 「ん…」 少女のガードから声が漏れるのが聞こえる ジャブとはいえ女性同士での試合ではめったにない程の威力だ 狼狽えるの無理はない… 右のストレートを奮えば腕の上からでもスリップダウンくらいは狙える そう思い、ジャブのリズムを崩すように右を勢いよく突き出す ブォッッ!!! 次の瞬間思っていたものとは違う音、感触が伝わってくる 「えっ…」 あまりにも想像とは程遠い結果につい声が漏れてしまう 目の前に少女の姿はなく、俺の右拳は確かに空を切っていた 風を切る小気味のいい音だけが鳴る 少女はダッキングにより身をかがめながら前進していた 「(あのタイミングで避けれるのか…!)」 そう思う瞬間には少女の右拳が俺の顎を貫いていた パコォンッ!! 打ち上げ気味の右フック 狙いすましたように俺の顎にクリーンヒットする ぐらぐらと目の前の視界が揺れる 完全に脳を揺らされた 「あ…が…」 足が言うことを聞かない…早く体勢を立て直さねば…! そう思うが早いか少女の追撃が来る 「シュッ、シュッ!!」 ドボッ!バキィ!! 「おご…がっ!」 左ボディからの右ストレート 腹を抉られて鼻も完全に潰された 鼻から血がボタボタと垂れて白いリング上のキャンバスに赤色が足されていく 何が起こっているかわからない 頭の整理をしたい、息が苦しい、頭が痛い… そんなことを思っている間にも少女はこれとばかりにラッシュを仕掛けてくる 「先輩…♡……シシッ!!シィッ!」 グロッキーとなった俺は最早息をするサンドバッグと一緒だ 少女のいい的となる 少女は悪戯をするときのような意地の悪い微笑みを見せながらパンチを繰り出す 俺という人物が先輩から獲物として認識が変わったのだ バンッ!パァンッ!!!バシィッ!!バコッ!!ドゴォッ!!! 「あぐっ!があ!!ぎゃぼっ…おっ…ごぉ…」 俺は少女のパンチの嵐にたまらず悲鳴を上げてしまう パンチを受けるたびに体が前のめりになり、まるで亀のようになっていく 体を守るために、少女のパンチでこれ以上ダメージを負わないためにはこれしかなかった 「そんな体勢じゃこれはガードできないですよ?先輩♡フッ!」 ドボォォオッ!!! 「ぶふぅっ…!」 少女の拳が俺のボディに深々と刺さる 口からは血と涎の混ざった飛沫が噴き出される 間髪いれず少女は左右のボディの連打を浴びせてくる 「シッ!ふっ!シィッ!はっ!…はぁっ!!」 ボゴォッ!!ドシッ!!ドムッ!ボヂュッ! ボギィッ!!! 「ぐぇ…あぐ…あ…うっ…ぐぶぇ!?!?!」 連打の最後に少女の渾身のボディを放った 俺の脇腹をスポンジのように抉るその拳は肋骨を完全に持っていった さらに拳を押し込んでくる少女、折れた骨がさらにめちゃくちゃになる 確かな感覚をつかんだ少女はとどめといわんばかりにもう一度同じ箇所に強烈ばボディを叩き込む ドゴォォッッ!!!! 「ぐぎゃああああ……!!!!」 俺は情けなく激しい痛みのあまりに悲鳴をあげてしまう 骨が、内臓が、少女のパンチによって中で混ざり合いミンチになる 少女の渾身のパンチの威力に俺の体は一瞬浮き上がり、その拳によって体ごと持ち上げられる 口からは汚く紅に染まったマウスピースが飛び出し、カランカランとリングの上を転がっていく 俺はその場でリングにべちゃりと倒れ込み、満足に息もできずビクンビクンと痙攣を起こしながらダウンした 「あはは…♥あーあ…私の勝ちですかねぇ…♥」 「先輩弱すぎ…♥」 力なく見上げると少女はまるで自分に逆らった愚か者を処刑するときのように残酷に、そして優越感に浸った微笑みをこぼしながら俺を見下していた 「一応救急車呼んどいたんで。私はシャワーでも浴びてきますね♥」 「じゃあね、女の子に負けちゃう情けない弱虫の先輩…♥」 俺は激しい痛みに意識を朦朧とさせながらもリングを降りていく少女の背中を見て屈辱に涙を流していた 俺は情けなくも2つ下の女の子の後輩にボクシングで負け、選手生命を絶たれたのだった

「先輩、弱すぎ…♡」 「先輩、弱すぎ…♡」 「先輩、弱すぎ…♡」

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