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短編小説:誰にも気づかれずに誘拐された女子高生


 

緑に生い茂っていた木々も段々と色を落ち着かせ、日が落ちるのも早いと感じるようになった。

さらに日が傾く時間帯になると暖かい昼間とは違って寒いとすら感じ始める。

7限あった授業も終わり今年17歳になる女の子、石川美佑(いしかわみゆう)は一人帰路についていた。

普段はバス通学なのだが、学生や通勤帰りの人でバスが混み合うこの時間帯などは家までの道のりを歩いて帰っていた。

バスであれば家まで10分くらいの距離だが、歩けば早くても30分から40分くらいはかかる。ましてや、7限もある授業で疲れも溜まり普通はバスを使う。

だけど、美佑にはそれでも混み合うバスに乗りたくない理由があった。


それは、美佑の身長や体格から見ても不釣合いでその大きな胸。

あまり目立つ事の好きじゃない性格の美佑の意思とは裏腹に、男ならばその大きな胸をジロジロと視姦し、女ならばその豊満な胸を見るや否やクスクスと笑い小声で馬鹿にしていた。

それが嫌でバス通学の美佑はバスが混み合うこの時間帯などは家まであえて人混みの少ない道を通って歩いて帰っていた。

帰り道も半分を越え、美佑は民家が立ち並んでいる道から少し外れた所にある雑木林に差し掛かった。



ここは裏道のようなもので、この時期は虫もほとんどおらず少しだけ早く帰ることができる為、美佑はよくこの道を使っていた。

いつもと何変わらず雑木林に足を踏み入れると、ふと後方から人の気配を感じた。

美佑は毎週この裏道を歩いて帰っているがこの時間帯はほとんど人とすれ違うこともない。この時間帯でも日の明るい夏場だとたまに小学生くらいの子ども達が虫取りをしていたりするが、今はもう11月の上旬。

こんな整備されていないような道を人が通るとは思えない。

美佑は気になり振り返るが、そこには風で静かに草木が揺れている景色が広がっているだけだった。


(気のせい……かな)


少し不気味に感じた美佑は少し遠回りをして民家のある道で帰ろうかと考えた。

だけど、遠回りすれば倍近い時間がかかる。自分が選んだ事とはいえ、七限の授業終わりで疲れていた美佑は考えすぎだと自分にいいように理由をつけて、いつも利用しているこの道を通ることにした。

雑木林を抜けた先には団地がある。そこまで行けば人も住んでるしそれに歩く距離も二、三分程度だし大丈夫。


そう思っていても、一度気になり始めると不安はなかなか拭えないもので、後ろからついてきているように感じる足音に10秒感覚で振り返りながら歩いた。

だが、そこには誰もおらず結局はただ自分の足音が何かに当たって反響しているだけ…美佑はそう思い込むことにした。


早足で息が少し荒れ始めた頃、ようやく団地が見えるところまで差し掛かった。

美佑は一息つくとちょっとした安堵に包まれた。

家までもう少し。帰ったらお風呂にゆっくり浸かって疲れを癒そう…そんな事を考える余裕も出てきた。

息を整えるようにゆっくり歩きながら雑木林が終わりに差し掛かると、団地の駐車場とは違った所に不自然に横付けされたシルバーの車が目に入った。

遠目から見て、後部座席はブラックシートで中の様子が見えないが、運転席と助手席には人が乗っておらず人の乗っている気配もなかった。

過去に何回か団地の駐車場に違法駐車して揉めているの見たことがあったので、また違法駐車している車だと余り気にしなかった。

残りの帰り道、息も整った美佑は少しでも気分を上げようと鼻歌を歌いながら歩いた。


雑木林を抜けた先の道はそんなに広い道ではなく、その車の横を通らないと行けなかったが美佑は特に気にする事もなく、その車を横切ろうとした。

ちょうど後部座席の扉の前を横切るところ、美佑は流し目で車の中の様子を軽く伺っていると、ブラックシートで隠された窓ガラスの奥にうっすらと顔のような輪郭が透けて見えその白い瞳と目があった。

その瞬間、ガラッと横開きの車の扉が勢い良く開き中から長身の男が飛び出してきた。


「え、な、何……ッ?」


美佑は突然の事に驚き声を上げる。

すると、男は美佑の体を羽交い締めにし後方にある車の中に引きずり込もうとした。

この予期せぬ状況に美佑は危険を感じ、助けを求める為に大声を上げた。


「だ、だれか!!た……たすけッ…ムゥウウッ」


がその声は最後まで発せられることはなく、

男は片腕で美佑の身体を巻くようにして、もう片方の手で口を塞いだ。




美佑は覆われた手の所為で叫び声にならないくぐもった声を上げ続け、男の腕を振り解くように暴れた。


「ん、んぅむんんんッ」


「くそっコイツ!!おとなしくろ」


男の力に敵わない美佑は引きずられないように前に体重をかけ前屈みに抵抗した。

時間にして10秒も経っていないであろうが、男が手こずっていると、車の中から怒号するような女の声が聞こえてきた。


「ちょっと、誰かに見られたらどうするのよ!早くしなさいッ」


「うるせぇ、だったらお前も手伝えッ!くそ、暴れやがって」


女はもたもたしている男に苛立ちを感じたのか、周りに見られたらマズいと思ったのか、文句を言いながら車から降りてきて、美佑の両足を救い上げるように脇に抱えた。


「ンッ?!ンゥゥ!!」


足が地から離れ、踏ん張る事ができなくなってしまった美佑は最後の抵抗とばかりに体を捻るように暴れたがその抵抗は虚しく車の中に押し込まれてしまった。



美佑の身体が完全に車に入ると女は勢い良く扉を閉め、あらかじめ用意していたガムテープで美佑の腕を使えないようにそのか細い手首に無造作にぐるぐると巻きつけた。


「んッッんーぅぅッッ」



美佑は抵抗しようにも体を押さえつけている二人の力には抗えず、なす術もなく腕の自由は奪われてしまった。

手首をくねらせたり、力の限り引っ張ってみるが女の子である美佑の力では当然ガムテープを引きちぎることができなかった。


なんとかしようと四苦八苦している美佑を尻目に女は男に目配せをすると男は何かを理解したように両手で美佑の顔を覆い隠すように力いっぱい鼻の穴とあごをくっつけるように押さえつけた。


「ンゥ?!」



「ウウウ……、ンムゥウウッ!」


塞がれた呼吸器官は、鼻で息をするのはもちろん、口を開けることも許されず、息を吸おうとしても吸えない苦しさに耐えられず振り解こうと美佑は首を大きく振るが、男の力には敵わなかった。

息ができない中、暴れれば暴れるほど体力は無くなっていき、時間も過ぎてだんだん抵抗する力がなくなり意識が少し遠のいていく。

酸素不足で視界が一瞬白くなったかと思ったその瞬間、男の手が美佑の鼻だけは塞いだまま口を塞いでいた手の力を緩めた。


「んぅぅう・・・ッ、ぷはぁぁっ!!」


美佑は開ける事を許された口で酸素を取り入れようと大きく口を開け一息入れた瞬間、その口の中に女が手にしていた布切れが詰め込まれた。


「ンッ?!・・ンムゥウウ!ンッ!ンゥウ!」


女は美佑の口の中に指を押し込み、まるで頬袋を作るように布切れを次々と押し込んでいく。

布切れが入り終わると、どこから新しい布切れを取り出し、同じ容量で美佑の小さな口が閉じれなくなるまで詰め込まれた。


「ンゥゥ……ンゥ…ッェ」


美佑は次々に布切れが押し込まれていく不快感に舌が反射的に吐き出そうとするが、女の押し込まれた指に妨げられてしまっていた。


「ゥゥゥ・・・」


そして口いっぱいに詰め込まれた布切れを吐き出せないように抑えていた女の代わりに男の手が美佑の口を覆う。

その間に女はガムテープを手に取るとビィーっと言う生々しい音を立てて15cmほどの長さに千切るとそれを美佑の口に貼り付けた。

美佑の可愛らしい口は歪むほどの詰め物が施され、それを吐き出せないように2枚、3枚と何重にもガムテープが貼られた。


「う……うぅ、ング」


美佑は口の中の汚物を吐き出そうと必死に口を動かすが、大量の詰め物に舌を上手く動かせず、強力なテープの粘着力で剥がれる気配はなかった。


「これくらい貼れば大丈夫でしょ」


口に貼られたガムテープは美佑の口に入りきらずに溢れていた詰め物の形を映し出すようにテープの上から盛り上がっていた。

そして手と口の自由が奪われた美佑の自由をさらに制限するように両足が縛られ、そして胴体にもその大きな胸を避けるように胸上と胸下にガムテープが巻きつけられた。



「言っておくけど逃げようなんて考えないことね。」


「ンゥゥ・・・」


身動きが取れなくなった美佑は苦しさと共に掻き消えるような呻き声を上げた。


「後は……念には念を」


そう言った女の手には白い大きなマスクが握られていた。

美佑はそれがいったい何なのか意味なのかわからなかったが、それはすぐに分かった。

だけど、縛られて身動きが取れない美佑は逃げることができず、

女はガムテープで覆われた美佑の口にそのマスクを当てがいゴム紐を目一杯引っ張り後頭部に結びつけた。


「ンッ・・・ンゥゥムゥウウウ!!」



そのマスクは女の子が着用するには大きすぎて異常さこそあったが、美佑に施されたガムテープをカモフラージュして、外からは分からなくなくなっていた。

さらに手術用のマスクのように後頭部で結べるようになっており、張り付くように当てがわれたそのマスクは首を振ったり顔を壁に擦り付けても外れる気配がなかった。


「少しの間、大人しくしててもらうわよ。」


「んンムゥウン・・ンゥゥウ・・・」


女は投げ出すように置かれていたトレンチコートを手に取るとそれを美佑に羽織らせ腰に備え付けられていたトレンチコートのベルトをキツく乱雑に結んだ。


車内の窓にうっすらと写り込んだ自分のその姿は、自由を奪っているガムテープがその大きなマスクとコートでカモフラージュされ、外から見てもじっくり確認しないと縛られている事は気づけないだろう。


「ふぅ・・ふぅむぅぅ・・・ぅぅ」



マスクは美佑の口を塞いだガムテープをカモフラージュするためのものだったが、満足に息ができずに呼吸するたびに体力が奪われていった。

車の中では美佑の息苦しそうな鼻息が響き渡り、自由を奪われた美佑はただ呻き声を上げることしかできなかった。


女はそんな美佑を放り出すように助手席に移動するや否や男に運転の指示を出し、

やがて美佑の呻き声をかき消すようにアクセルが踏み込まれ車が走り出した・・・。


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