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異無
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ご主人様に分からせたいメスガキちゃん


 冒険者の街、ハレム。

 

 魔族、亜人、人間、様々な種族が共存する世界で俺-アル-は冒険者として、ダンジョンでとある魔族を退治した。

 

 ただ、殺すことはできなかった俺は力を抑え込み、とある子供の姿で家で面倒を見ていた。

 

「ご主人様ぁ、どうですか? ムラムラしませんかぁ? このネグリジェ♡」

 

 ヒラヒラと可愛らしいフリルのついたネグリジェを見せる可愛らしい美少女のレムはニヤニヤと俺に迫るが--。

 

「……うん、しないな」

 

 鉄の意志で却下してやる。

 

 レムは俺にバッサリと切られると、一瞬目をシバいてから、頬を膨らませ--。

 

「この私が! こんな薄着して誘惑してるのに!? こんな美少女に発情しないとかご主人様はEDですか!? 童帝のくせに!」

 

 なんつー風評被害だ!

 

 しかも、童貞じゃなくて童帝だと! 馬鹿にしとんのか!

 

「ぶっ殺すぞ? つーか、自分で美少女とか言うな。あと、上着ろ。夜は冷えるぞ?」

 

 この小生意気なサキュバスめ。

 

 退治するのは忍びなくて力を封印するのに留めたのだが、こいつはこうして俺から毎日、力を吸おうとしてくる。

 

 あわよくば封印解除を目論んで。

 

「ぅ、だって……」

「つーか、せめてもっとボンキュボンになってからにしろ。このまな板」

 

 俺はストンとした絶壁を眺めて言うと、レムは頭から湯気を出し、

 

「サイテー! 女は出てればいいわけじゃないの! 私みたいな儚げな妖精系に魅力を感じてくださいよ!!」

 

 むきー!と怒るがとんだ自惚れだ。

 

 妖精なんていいもんじゃない!

 

「てめぇ、淫魔だろが! そんないいもんと同列に語るな! まな板娘」

「キー! 淫魔バカにしないで下さい! あと、ちょっとはあります! ほら、揉んでみて下さい! ほらほら!」

「と、とにかく、お前には発情しない! だから。諦めろ」

「むきー! ご主人様の堅物! ご主人様が私と契約して身も心も捧げてくれたら、私は元の姿のボンキュボンに戻れるんですよ? 見たくありませんか? 見たいでしょ?」

「見たくないし、お前なんぞ身も心も捧げられるか。とっとと着替えて、飯を用意しろ」

 

 俺はしっし、と手を振ると怒り狂っていたレムは頬を膨らませたまま、

 

「ぶーー!! わかりました!」

 

 残念美少女丸出しの大股でズンズンとリビングを出ていく--。

 

「…………」

 

 扉が荒々しく閉じられたのを確認した俺は--。

 

「ぷは! あぶねぇ! あの野郎。なんて格好だ!」

 

 危うく発情するところだったじゃねぇか!

 

 --アルはロリコンだった!

 

 まさかあんなエロい服を着て誘惑してくるなんて。

 

 間近でレムの甘ったる香りを嗅がされて、結構クラクラ来ていた。

 

 アイツが鈍感のポンコツサキュバスだから気づかれなかったけど、勘のいいサキュバスなら俺が誘惑されかけていたのをあっさりと見抜いたろう。

 

 俺は戦闘もイマイチだが、精神力もイマイチなのだ!

 

「ごくごく、ぷはー!」

 

 レムの入れてくれた冷えた水を煽り、火照りかけた身体を冷ます。

 

 契約時の内容のおかげで、あいつは魔法も使えないし、俺に薬も漏れない。

 

 アイツが力を取り戻すには、俺が封印を解除するしかないのだ。

 

 なので、口にするものを気をつけなくていいのは気が楽だった。

 

 もし、契約時にちゃんとその辺も徹底してなかったら、今頃、媚薬を使われていただろう。

 

 --まさか、大人の姿の時よりも俺の好みにドストライクの姿になるなんて、反則もいい所だ。

 

 絶対にバレないようにしないと。

 

 少しでもアイツに気があるなんて知られたら、何してくるか知れたもんじゃないからな!

 

「ご主人様~ご飯できましたよー!」

 

 ご飯の準備が出来たらしく、レムが呼び鈴を鳴らしてきた。

 

 俺は頬を叩いて気合いを入れて部屋から出るのだった。

 

 ◆レム◆

 

 ご主人様の部屋から追い出された私は自室に戻って鏡を見ていた。

 

「もう! あの堅物! 服屋の店員さんもイチコロって太鼓判押してくれたのに!」

 

 なけなしのお小遣いで買ったネグリジェだが、空振りに終わった。

 

 私の計算では、この姿にケダモノになったご主人様が私をズコバコして、そのまま精力と魔力を絞り尽くして力を取り戻し、そのままご主人様を魅了しまくって骨抜きにして封印を解除させる予定だったのに!

 

「これだから朴念仁は! だから、彼女が出来ないのよ! 童貞はこれだから困るのよ!」

 

 私は鏡で自分の姿を眺めながらうんうん、と頷いた。

 

 街を歩けば、10人中、10人が振り向くはずだわ!

 

 毎日買い出しに行けばおじさん達がいっぱいオマケしてくれるし! おやつとかくれるもの!

 

 やっぱり私の美貌は完璧のはず!

 

 --自信満々のレムは知らない。

 

 買い出しにいくレムの店は高齢のお年寄りばかりのため、可愛い孫に色々あげる感覚でオマケやお菓子をくれていることを。

 

 --決してレムの美貌にクラクラしているわけてはないと言うことを!

 

「ふん! 童貞朴念仁にはこの私の魅力は伝わらないのね! 拗らせてるくせに! 生意気だわ!」

 

 私はあてがわれた部屋のクローゼットにしまってあるメイド服に着替えた。

 

 家では一応、メイド服が基本。

 

 ご主人様の趣味なのだ。

 

 あの変態。

 

 こんな服を私に着せていつも変な妄想してるはずなのに!!

 

「この服で誘惑してもいつもダメなのよね」

 

 私は仲のいい町娘から借りた『男を落とす手練手管100選』を捲る。

 

 昨日は『胸にパン屑が~♡ お口でとってくださ~い♡』作戦をやってみたが、ご主人様にゲンコツを貰うことになった。

 

 あれは刺激が強すぎたのね。

 

 相手は童貞朴念仁。

 

 もっとインパクトな少ない初めのページ辺りから責めるべきだったわ!

 

 私は後ろのページから一気に攻めようとしたことを反省した。

 

 人間の諺には『将を射んとする者はまず馬を射よ』ってものがあるみたいだし、まずは軽いジャブから攻めるわ!

 

 ぐっと握り拳を作るレムだが、諺の意味が若干違うことを知るのはずっと後になるのだった。

 

 ◆

 

「ご主人様~ご飯できましたよー!」

 

 私はコトコト煮込んだシチューをお皿によそいながらご主人様を呼ぶ。

 

 ご主人様に契約で連れてこられてわかったけど、ご主人様は自炊能力が残念な人だった。

 

「ああ、ありがとう」

「今日は愛情たっぷりのシチューです♡ 隠し味は私の♡♡♡♡ですよ?」

「髪の毛とか唾とか入れてないだろうな?」

 

 スプーンでシチューを掬ったご主人様はジッとそれを見聞していた!

 

 ぶん殴りたい!

 

「そんなキモイ事するわけないでしょ!

 頭沸いてるんですか!」

「悪い悪い。変なもの入れてそうで」

「失礼な! 自分が食べるのにそんなの入れるわけないでしょ!」


 私は憤慨しながら向かいの席に座る。

 

 そんな私を苦笑して眺めながらご主人様がシチューを口に運んだ。

 

 …………ついつい緊張しちゃうわ。

 

「悪い悪い…………うまっ!」

「っ! と、当然です!」

 

 ご主人様ったら、そんな大袈裟に喜んじゃって!

 

 そんな笑顔だなんて……明日も作ってあげてもよくってよ?

 

「レムって料理上手だよな?」

「契約内容に家事をこなすとありますからね。やる以上は本気でやらないと」

「はは、レムはいい子だな」

「っ! 子供扱いしないで下さい!」

 

 な、なんて褒められた位で顔が熱いのよ!

 

 私が照れてる?

 

 違うわよ!

 

 ご主人様を照れさせないといけないのよ!

 

 えっと、あのページにあったのは!

 

 そうだ!

 

「あ、ぱ、パン焼けましたので持ってきますね!」

「おう」

 

 私は逃げるように席を立ち、竈門からパンを出した。


 こんがりとした焼け目と小麦の焼けたいい匂いが鼻腔をくすぐる。

 

 ふふ、今度はご主人様を赤面にしてやるわ!

 

 私はニンマリと笑うとパンをザクザク切りながら勝利の笑みを浮かべたのだった。

 

「ご主人様~パンお持ちしましたよ~」

「ありがとう……ん?」

 

 さりげなく横に座る私にご主人様が首を捻る。

 

 ふふ! 私の作戦開始よ!

 

 ニコニコと私はパンを1口サイズに千切り、

 

「ご主人様! 召し上がれ♪ あ~んしてください。食べさせてあげます」

 

 どうよ! 私のあ~ん作戦は!

 

 こんな可愛い美少女にあーんされたら、ドキドキしちゃうよね?

 

 私に堕ちちゃったりしちゃうかしらぁ!


 ご主人様がチラリとパンを見て、そして私を見て、またシチューに視線を落とす。


(確信したわ! これはきたわ!)

 

 ふふっ! 恥ずかしがっちゃて!


「お腹空いたなら食べればいいじゃないですか。私があーんしてあげてるんですから」

「あ、ありがとう」


 ご主人様は私が差し出したパンをそのまま私の手から食べた。

 

「え? あれ?」

「美味いパンだな? レムは料理は本当に上手だな」


 ご主人様は普通に咀嚼してシチューを食べる。


 何故か私が恥ずかしくなってくる。

 

「~っ! な、あれ? 」

「レムもほら。美味しいぞ?」

「っ!? ご、ご主人様の手から!?」

「ほれ、あーん」


 私は震える唇を開けて、ご主人様のあーんを受けた。

 

「~~っ!?!?」


 なにこれ!?


 なんで私の方が顔真っ赤なの!?

 

 ご主人様はなんで平然としてるの!?

 

「美味しいだろ?」


 ご主人様は笑顔でそう尋ねてくるが、全然わからない!


 味なんて感じなかった!


「お代わりいる?」

「ひ、一人で食べます!」


 私は奪い取ったパンを食べる。


 なんでご主人様の方が余裕なの!?


 私の方が一枚上手だったのに!


 さっき、堕ちてたんじゃないの!

 

 私の勘違いなわけ!?

 

「おいしい?」

「……美味しいです」


 悔しい! 私が完全勝利なのに!


 ご主人様がニヤニヤしてる!


 なんで!? 悔しい!


 悔しい! 悔しい!


 私が心の中で悶絶しながら晩御飯を終えると、ご主人様は食器を下げてくれた。


 私はふん! と鼻息荒くして自室に向かったのだった。


◆アル◆


「ぷはーっ! 危なかった!」


 俺は急いで自分の部屋に籠もると机に突っ伏した。


「なんだあれ? パン持ってきてくれたんだけど? 一緒に食べようってこと?」


 あーんされてドギマギしてしまったぜ。


 確かにアイツ、めちゃくちゃ可愛かった。

 

 普段の口調とのギャップがあって妙にキュンとした。


 けど、アイツはあの憎たらしいサキュバスのレムだぞ?

 

 油断したら吸い尽くされる。いや、今も十分隙あらば吸おうとしてくるしな。


 あれも作戦の一つなんだろうけど。

 

「しかし……あーんとは思わなかったな」


 あの状況で普通に受け取ってしまう自分も大概だが。


 必死に平常心を装って、あーん、やり返してやったが危なかった。

 

 まぁ、レムはストレートに照れてたが。

 

 あれもまた可愛くて!

 

「……はぁ〜……」


 とりあえず落ち着こう。


 今日こそゆっくり風呂に入って疲れを癒したいところだ。


◆レム◆


「……悔しい……悔しいわ……!!」


 私は部屋の中をグルグル歩き回る。


 あんなに完璧な作戦だったのに!


 あーんという小悪魔可愛い武器を使ってもご主人様の反応は薄かった。


 く、この本、ガセなんじゃないの!?

 

 私は机で開いていたページを睨む。

 

 いえ、童貞朴念仁が鈍いだけね!

 

 微妙な作戦は失敗ね!

 

 この本の作者がヘボいのよ!

 

 私は失敗してない!

 

 私の魅力が通じないわけない!

 

 私は可愛いのよ!

 

「ふぅ、自信回復!」

 

 私は息を整え、

 

「ふん! これくらいで凹んだりしないもん!次こそは……次こそは必ず成功させて見せるわ!!」


 私は勢いよくベッドにダイブすると枕を抱えてゴロンゴロン。


 次は何を仕掛けるか考えないと!


 次のページは--。


「次はこれね!」


 思いついた名案に思わず声が出てしまった。

 

「よーし!早速実行よ!」


 私はベットから飛び起きると、次の作戦実行のために早速動くのだった。

 

オマケ


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