勇者--神に選ばれ特別な力を宿した存在。
ほとんどが世界に名を残すほどの偉業をなす存在だが、誰もがそうなる訳ではない。
何せ、特別な力がまともではないケースもごく稀だが、存在した。
勇者カミルも可哀想なことにその外れのケースだった。
他の勇者とは違う呪いとも呼べる能力。
それが判明したカミルは城の地下に幽閉されていた。
手足を鎖に繋がれ、自由を奪われたカミルは囚人にしか見えないだろう。
「へぇ~貴方が私と旅をすることになった勇者様? なんで地下室に監禁されちゃってるわけ?」
活発な声で尋ねてきた少女--ティファ。
武道家のジョブをもつ少女は真っ赤な髪とルビーのような赤い瞳をした勝気な少女だ。
王妃からカミルの能力を聞いていた彼女はニタニタと意地悪い笑みを浮かべ、地下室へと入ってくる。
「あ、やめ、て……」
カツカツ、とブーツを鳴らしながら近づくティファを見て、カミルは怯えの色を見せた。
「あは♪ 王妃様の言う通り、もうしっかり調教済なんだ~。なら、遠慮なくいくね?」
そんな様子にゾクゾクと征服感を覚えながら、ティファは無警戒にカミルヘ近づき--。
ドカっ!
「うっ!」
無造作に放たれた拳が拘束されたカミルの腹部へとめり込む。
衝撃にギシギシと鎖が鳴り、宙ずりにされているカミルの身体が揺れる。
「ふ~ん、普通の人間なら大男でも悶絶する角度だったけど、ダメージはあんまりないみたいだね? でも、効果は実感できなたかな?」
ティファは中空に浮かぶ数値の書かれていた半透明の板を見ていた。
「勇者様の能力って面白いね~。こうして攻撃してきた相手に経験値を与える能力でしょ? 施しの勇者なんだって? めっちゃ可哀想~。ボコられた相手を弱くするんじゃなくて強くしちゃうなんてさ~」
ドコっ!
ティファは笑いながらカミルの腹へとさらに拳を叩き込む。
まるでサンドバックでも殴るように躊躇も容赦もない。
ボコっ! バキッ!
「うぐっ、かはっ!」
手足の自由がきかず、防ぐことすら許されないカミルはただただティファに殴られるしかなかった。
ダメージこそ大幅に軽減されるものの、殴られている衝撃はある程度あるのだ。
「んふふ、また経験値ゲット♪ これ最高だね~。無抵抗の相手を痛めつけて、しかも経験値も大幅に貰えるとか、最高のサンドバッグだよ? 勇者様はさぁ~」
カラカラと笑うティファはカミルの身体に指をはわせ、
「ダメージが大きい方が経験値が多くはいるらしいけど、本当なの?」
「ひっ! いやっ……」
「その反応は本当みたいだね~。なら、次は足技でいこうかな? なかなか敵に当てるのも難しい大技だから、いい練習台になるよ」
ティファは泣きそうなカミルを見て、さらに残酷な笑みを浮かべた。
普通なら可哀想、手加減しないとと思うはずなのに、何故かカミルに対して、そんな思いが芽生え無かった。
むしろ、もっともっとこの顔を絶望で歪めてやりたいとすら思えるような、そんな衝動が心の底から湧き上がっていく。
「まずは~飛び膝蹴り!」
ティファの膝がカミルの顔面に叩き込まれる。
ドゴッ、と鈍い音と共にカミルの鼻から鮮血が吹き出した。
本来から頭蓋骨が陥没する威力だったのに、鼻血だけで済んだのは勇者の能力のおかげだろう。
「きゃはは!あ~鼻血出しちゃった……。ちょっと手加減しないといけないかな? あ、でももう治ってる!? これも勇者の能力なわけ? なら、手加減はいらないね~! 次は空中回し蹴り!」
ティファはあっという間に鼻血が止まったカミルを再び蹴りつける。
「うぎっ!」
今度は唇を切ったのか、血の味が口に広がる。
「あ~あ、唇も切れちゃったんだ? まぁ、勇者様ならすぐ治るよね?」
ティファはまた容赦なく今度は拳を振るう。
ドゴッ! バキッ! ゴキッ!
鈍い音が地下室に響き渡り、カミルの悲鳴も木霊する中、ティファはただ笑っていた。
「あははは! いい気味だよ、勇者様♪ ねぇ、今どんな気持ちなの? 私みたいな女の子に殴られてさ~。悔しいよね? 私は気分いいよ~? 弱者を踏み躙るのって快感だからね~」
ティファはカミルの前髪を掴み、強引に顔を上げさせる。
涙と血とヨダレと鼻水でグチャグチャになった汚らしい顔だが、それが自分がしてやったのだと思うと誇らしい様な達成感と言うか征服感と言うか、甘美な感覚があって、気分がいい。
「ううっ……ゆるして……」
カミルは涙と血で顔を汚し、かすかな声で許しを乞う。
しかも、その間もカミルの傷は癒えていくのだから、とんでもない治癒能力だ。
だが、回復してしまうため、ティファは手加減の必要がなく、飽きるまでカミルを責め続けれるため、逆にカミルには呪いの様な能力でもある。
(ああ、いいなぁ~。虐めがいがあるよ、勇者様は)
カミルの唇にティファの指が触れ、血がついた指をペロリと舐めた。
「んふふ~♪ 美味しいね」
妖艶に微笑むティファにカミルはゾクリと身体を震わせた。
(ああ、この勇者様なら、きっと私を楽しませてくれる……)
ティファはレベル1でも強かった。
道場にいた同年代の相手は勿論、年上の相手でも難なくこなし、倒してきた。
だが、倒しても倒しても心の飢えはみたされない。
道場では過剰な追撃はできないし、気の済むまでボコボコになんてできるわけがない。
だが、ここは違うのだ。
自分の中の欲望が満たされる。
そんな予感がしたティファはさらに笑みを深めるのだった。
「あはっ! いいねぇ~いいねぇ~! もっと私を楽しませてよ、勇者様!」
ティファの蹴りが拳がカミルを容赦なく襲う。
「うぐっ! あがっ!」
ティファはカミルを殴りながら、嗜虐的な笑みを浮かべる。
「あ~あ、もうすっかりボロボロだね~。ねぇ? 今どんな気持ちなの? 私にボコボコにされてさ。抵抗もできずに情けないね~」
「うっ……くっ……」
もう答える余裕もないのだろう。カミルはただ呻くだけだ。
何せ、カミルを攻撃している間、ティファの能力はあがり続け、攻撃力も増していっているのだ。
よりダメージを受けていくカミルは徐々に呻き声すら弱まっていく。
そんなカミルを見て、ティファはますます笑みを深めていく。
(ああ、本当にいい顔だよ。もっと、もっともっと見せて!)
「もっとボコボコにしてあげるね? 私が強くなるためにしっかり身体をはってよね?」
そう言ってティファはカミルを宙ずりにしていた鎖を外した。
「うわっ!」
いきなりの事に受け身すら取れなかったカミルは潰れたカエルよろしく無様に地面に落ちる。
間髪入れずにティファの蹴りが炸裂し、カミルを仰向けにひっくり返すと--。
「次は馬乗りにしてボコるね!」
ズン、とお腹にティファの尻が伸しかかる。
「んぎぃ!」
ティファの尻は見た目以上に重かった。
まるで、鉄球でも乗せられたかのように重く苦しい。
カミルが苦しげな声を上げると、ティファは嬉しそうに笑う。
「あははっ! 勇者様の苦しむ顔いいね~! もっと見たいなぁ~」
そう言うと、ティファは拳を握りしめ、
「馬乗りでボコボコにしてあげる? どうせすぐに治るからメチャクチャにしてあげるよ?」
「や、やめ……」
「あは! こんな楽しいこと、止められるわけないじゃない!」
カミルの制止の言葉も空しく、ティファは拳を振り落とす。
ドゴッ! ボコッ! グシャッ!
「うぐっ! ァァァ!」
ティファの拳が振り下ろされるたびに鈍い音が響き渡り、そのたびにカミルの身体はビクンと痙攣する。
鈍器で肉を殴打する音と時折乾いた薪を割るような音が鳴り響く。
お腹に感じる重い衝撃と痛みに息もできない。
そんなカミルを見下ろしながらティファは笑う。
「あはっ♪ もう言葉も出ないみたいだね~。いいよ、その調子でもっと私のサンドバッグになってよね?」
ティファは嗜虐的に笑いながら、さらに拳を振り上げる。
「まだまだ行くからね~」
何度も何度も振り下ろされる拳。
カミルが気を失っても殴るのをやめないティファはまさに鬼だった。
ただ殴る度にビクビクと震えるだけで、もうまともな反応はない。
「あはっ♪ もう完全に潰れちゃった? あははっ!」
カミルの顔は赤黒く変色していた。
治癒が追いついていないのか、原型すらわからない。
頭蓋骨も鼻も頬骨も顎もボロボロだった。
もしもカミルがただの人間ならとっくに絶命していただろう凄惨な有様だ。
だが、それでもティファは手を止めず、殴り続ける。
カミルが死んでいないのをティファは感じとっていたからだ。
中空に浮かぶ数値はとめどなく上昇し、わずかな時間でティファのレベルは1から10まで上がっていた。
「あははっ! 凄いよ、勇者様♪ 私のレベルが10も上がったよ? やっぱり、勇者様のサンドバッグは最高だね!」
この王都周辺でレベル10なら騎士団に入れるくらい強い。
少なくとも、周辺の魔物など敵ではないだろう。
肩で息をしながら、ティファはようやく手を止めた。
カミルが可哀想と言うからではなく、単純に疲れたからだ。
「んふ、ちょっと休憩~」
意識のないカミルを椅子代わりにするティファ。
健康的な肌には珠のような汗が輝く。
息を整えている間に原型を止めな程、破壊されていた顔は時を巻き戻したかのように整った可愛らしい顔へと戻っていく。
身体中につけた痣にしてもどうようで、ティファが息を整え終えた時には、綺麗さっぱり傷は癒えていた。
「うわ~、まるでゾンビだね。この治癒能力は……。いや、ゾンビ以上かな?」
ティファはやや呆れながらも、意識を失っているカミルの顔を興味津々に撫でる。
折れた鼻や歯も砕けた頬骨も、完治している。
勇者の能力ってやっぱり別格ね。
普通、あそこまで破壊された顔が元通りに戻るなんてありえない。
何処かしら顔が歪んで後遺症が残るものだ。
「また殴るのもありだけど、次はスキルの経験値もあげないとねぇ」
王妃から聞いていた勇者の能力。
それは肉体的な苦痛はレベルの経験値を、そして精神的な苦痛はスキルの経験値を得れる、と言うものだ。
つまり、屈辱的な行為をすることでスキルも成長する。
「破格の能力だわ。スキルの経験値なんて何百回技を使っても得れる量なんてしれてるもの」
基本的にスキルのレベルは5もあれば相当鍛えているとされているのだ。
「さてさて、どれくらい経験値をくれるのかしらねぇ? 勇者様は~」
気絶した勇者の髪を撫でながらティファは再び意地悪い笑みを浮かべたのだった。
◆
「起きなさい!」
「っはぁ!」
顔に冷水を浴びせかけられ、カミルは目を覚ました。
だが、起き上がることは許されず、足を拘束された状態で蓑虫の様に床に転がされていたのだった。
手こそ自由だったが、それは抵抗させるためではない。
今から肉体的な責めではなく精神を責める時間だからだ。
「ほら、勇者様。貴方をボコボコにしたせいで汗かいちゃった。ブーツ脱がしてもらえるかしら? お手手は使えるでしょ?」
床に寝転がるカミルに脚を突き出してティファが言い放つ。
「うっぅ、はい」
元々ここに連れてこられた時点で王妃達によって心を徹底的に折られているカミルは誰かに対して逆らうと言う行為ができなくなっていた。
まして、さっきまで自分を半殺しまで痛めつけたティファには恐怖心が何よりも先行し、まず逆らえないだろう。
「返事をする時は様をつけなさい、雑魚」
「はい……ティファ様」
ゾクッ!
泣きながら返事をしたカミルの言葉にティファは電流の様な衝撃を受けた。
あぁ、この呼ばせ方、気持ちよすぎ!
しかも、見下してバカにしてやっただけで経験値入ってる!
「これからは私のことはティファ様と呼びなさい。あんたは、雑魚でいいわよね? 戦うこともできない雑魚勇者だし?」
「は、はい、ティファ様」
「あはっ! 本当にいいわね、この呼び方。じゃあ、雑魚。ブーツ脱がしてくれるかしら?」
「か、かしこまりました、ティファ様」
這い蹲る形でカミルは命令されるままにティファのブーツを脱がせていく。
すごーい、ただバカにするだけでスキルが成長させられるとか最高!
もっともっと屈辱を味わわさないとね?
ブーツを脱いだティファは素足をカミルの顔面に押し当て、そのまま体重をかけていく。
「あはっ! どう? 私の足の匂い。臭いでしょ?」
ブーツの中に閉じ込められたティファの足からは汗とすえた様な匂いが漂い、カミルの鼻を刺激する。
身体1つで戦うティファの靴や篭手は防具でもあり武器でもある。
必然的に外では常に身につけているし、訓練時も使うため、とんでもない量の汗を吸っている。
何年も熟成された汗が生地に染み込み、中敷は変色してしまうほどのため、家ではブーツから臭いがしないように布を突っ込んでいるほどだった。
そんなブーツを履いていた足にはたっぷりと熟成した足汗の臭いが染みている。
「ほら、もっとしっかり嗅ぐのよ!」
(うぐっ……く、臭い……)
ガツン、と殴られた様な衝撃と鼻を刺す痛み。
あまりの臭さに目眩がする。
「あははっ♪ いい顔ね~雑魚。でも、まだまだこんなもんじゃないんだから」
ティファはそう言うと、今度は素足の指をカミルの鼻に突っ込んだ。
「ふごぉっ! おぇぇぇぇえ!」
「あははははっ! なにその声、面白~い♪」
ぐりぐりと足を動かし、まるでマーキングする様にティファは足の匂いを嗅がせ続ける。
かなり苦しいのか経験値を得れる数値が増えていた。
「ほら、雑魚。次はこっちの足の臭いも嗅がせてあげるわ! これも私が強くなるためなんだから、手加減はしないからね?」
ティファはカミルを仰向けにすると、もう片方のブーツも脱ぎ捨て、両足で顔を踏みつけた。
両足を揃えてカミルの顔を隠すように念入りに踏み潰す。
汗ばんだ素足がまるで吸いつくようにカミルの顔を捉えて逃がさなかった。
「あぁ~、足の臭い嗅がせながらグリグリすると気持ちいいわ~♪」
「うぇぁぁぁぁ! くしゃぃぃぃぃ!」
ティファはカミルを見下ろしながら恍惚とした表情を浮かべる。
「あはっ! ほ~ら、雑魚。私の足の匂いはどう? 臭くて堪らないでしょ? もっと苦しんでいいのよ? その方が私が強くなれないからね?」
(うぐっ……く、臭い……苦しいよぉ……やめて……)
「あははっ♪ そんな泣きそうな顔しないでよ~。もっと虐めたくなるじゃない!」
そう言ってティファはさらに体重をかけていく。
「ほらほらぁ~! どう?雑魚? ますます私の足のの臭いしか嗅げないでしょ?」
「うでぇぇぇぇ!」
「あはっ! もっと嗅ぎなさい!」
ぐりぐりとさらに踏みつけながらティファは笑う。
(うぅ……苦しいよ……)
もう鼻は潰れるんじゃないかというほどティファの足が押し付けられていて、辛うじて吸える空気もおぞましい異臭に汚染され、肺を犯していく。
そんなカミルの顔を嘲笑いながら見つめつつ、ティファはさらに責め立てる。
「あははっ♪ もう臭いなんて言葉じゃ言い表せないくらい強烈な匂いよね?」
(う、うん……)
これは毒と言えるのではないか?
それほどの強臭だった。
「あははっ! もう言葉も出ないみたいね。ほらほらぁ~もっと虐めてあげる!」
ぐりぐりとさらに体重をかけてティファは足を動かす。
もはやカミルの顔は潰れてしまっているかもしれない。
どれだけ責めても綺麗に治るのだから、ティファは手加減というものを忘れてしまっていた。
いや、覚えていても手加減しなかっただろう。
なにしろ、ティファはこの状況を心の底から楽しんでいたのだから……。
「ほらほら、雑魚の鼻が使い物にならなくなるまで徹底的に嗅がすからね~? ふふ、私の足の臭いを嗅ぎとるのが先か臭すぎて鼻が壊れるのが先か楽しみね~? あはははは!」
残酷なティファの高笑にカミルの呻き声はかき消され、彼女の許しが出るまでカミルは文字通りの床として彼女に踏みつけられ続けるのだった。
異無
2024-07-01 22:01:24 +0000 UTCおよよ
2024-07-01 14:12:57 +0000 UTC