「テオドール様、本日の決裁書類となります」
「あ、ああ」
あの夢を見てから変だ。
今まで気にしてなかったミリアの足をついつい追ってしまう。
黒く緩やかな傾斜を描く足の甲、細かい溝が刻まれた深紅のソール、槍の穂先の様な鋭さのヒール。
それを包まれたしなやかなミリアの脚。
スカート越しに見えるそれらを見ると不自然に胸が高鳴り、下腹部に血が集まるのがわかる。
あの夢のように踏まれたらどんな気持ちになるのだろうか?
あのブーツの中身はどんな香りがするのだろうか?
「テオドール様?」
「わっ! な、なに?」
心配そうにこちらを見つめるミリアの赤い瞳と目があってドキリ、とした。
「あまり仕事に集中されていなかった様なので。どうかなさいましたか?」
「あ、大丈夫だから」
テオドールは妄想を悟られまいと目を逸らして書類仕事へ取り組もうとする。
今月の通行税については……。
ダメだ。
頭に入ってこない。
「私は今から村に買い出しに出かけますので、半日ほど屋敷を空けますが、問題はないですか?」
その言葉にテオドールは弾かれたように顔をあげた。
まさかこんなに早いチャンスが。
「! あぁ、大丈夫! 大丈夫だ!」
テオドールはミリアの淹れてくれたマテ茶を飲み、うんうん、と頷いた。
今日もマテ茶は何故か少し苦く感じられる。
「では、行ってきますね」
テオドールの許可が出たからか、ミリアはにっこりと笑って見せた。
普段の仕事中なら見せないような妖しさを湛えた笑みを。
◆
ミリアが外履き用のブーツに履き替えて買い出しに出かけるのを見送ったテオドールは、さらに窓からミリアが屋敷の敷地の外まで出ていくのを確認する。
これで屋敷にいるのはテオドールただ一人になった。
さっそくとばかりに玄関に向かったテオドールは、
「これが」
少しくたびれたミリアのショートブーツを手に取る。
まだミリアの温かさが残るショートブーツを宝物の様に大切に抱き抱え、部屋へと走った。
部屋のドアに鍵をかけ、窓にカーテンを引いたテオドールは、ベッドの上に座り込むと、ゆっくりとブーツの紐を解き始めた。
顔を近づけると、ブーツ特有の革の匂いとは違うつ~んとした臭いが履き口から漂ってきた。
「ああ、これがミリア様の匂い……」
妄想とは違う本物のミリア様の香り。
脱ぎたてのミリアの靴の匂いはテオドールにとって麻薬のような効果があった。
鼻腔一杯に広がるミリアの甘い芳香。
それを肺いっぱいに取り込もうと、テオドールは履き口に顔を押し当てると、思い切り吸い込んだ。
「んっ!! んごっ! うぅ! すう~、はぁぁ、すう~、はぁぁ」
まるで媚薬でも嗅いだかのように身体が熱くなる。
鼻を指すようなチーズをさらに発酵させたような、さらに生乾きの服を混ぜ、それを酸っぱい臭いを足したような不衛生で不快な異臭。
本来なら顔を背けて噎せてしまうはずなのに、テオドールはこれがミリアの足の臭いだとわかっているためか、たまらなく芳しい香りに感じられた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
呼吸を荒げながら、テオドールはミリアのブーツを顔に押し当てたまま、もう片方の手を自らの股間へと伸ばす。
「あっ……あぁ!」
そこはすでに痛いくらいに張り詰めており、ズボンの上から軽く撫でただけで心地よい快感が身体を駆ける。
ズボンもシャツも脱ぎ捨て、全裸になった。
「ミリア様……ミリア様!」
テオドールはミリアの名前を叫びながら、一心不乱に自慰を始めた。
目を閉じると夢で出てきたあの夜の残酷なミリアがテオドールを蔑んだ表情で見下ろしていた。
『こんな臭いブーツの匂いでオナニーするなんて、なんて卑しい男なのかしら』
「申し訳ありません! 私は卑しい変態です! ミリア様ぁ」
ミリアのブーツに顔を突っ込みながら謝罪の言葉を叫んだ。
ミリア様に謝罪してると思うとさらに興奮が高まり、鼻を刺す臭いは呼吸するたびに肺にミリアの足臭が染み付いていく様だ。
『テオドール、私の足の臭いがそんなに好きならもっと爪先の臭いを嗅ぎなさい』
「はい!」
テオドールは肌に食い込むほどショートブーツを顔に押し付け、一番臭う場所――爪先へと少しでも鼻を近づける。
中敷きにはミリアの足形がはっきりお残り、相当蒸れていたらしく熱気がこもる爪先からは熟成した足臭が立ち上っているのだ。
「ああああ!」
『このマゾ! お前のような変態は私の足を舐めるのがお似合いよ? そのままブーツでも舐めて謝罪なさい』
妄想のミリアはテオドールを踏みつけ、冷酷な瞳には嗜虐的な喜びを宿していた。
「ミリア様、ミリア様!」
履き口から顔を離すと、今度はソール部分を顔に押し当てる。
ギザギザの細かい滑り止めが肌に食い込み、冷たく硬い感触と視界に広がる靴底を間近で見せつけられると、自分がものになったと実感できて激しく感じた。
「うっ! 出るぅ!!」
『顔を踏まれていくなんて最低の変態ね? テオドール、いくなら謝罪なさい! こんな変態として生まれてごめんなさい~、ミリア様、お許しください~、ってね?』
「あぁぁぁん! こんな変態として生まれてごめんなさい~! ミリア様、お許しください~、ってね?」
どぴゅ! びゅ! びゅ! ぴゅ!
テオドールはミリアのブーツに大量の精液を放出してしまった。
床に恭しくおかれていたブーツにべったりと精液がついて白く汚れてしまった。
「はぁ、はぁ、ミリアさまぁ……」
テオドールはベッドに仰向けになり、天井を見つめて息を整える。
まだ身体が火照っており、股間のモノは硬くそそり立ったままだ。
テオドールはミリアのブーツを手に取り、履き口の部分に舌を這わせた。
「んふっ、ちゅぱっ、ぺろっ」
ミリアの足の味がする。
塩辛くてでもほんのりと甘くて苦くて美味しい。
そう思うと、射精したばかりのペニスは再び硬度を増していった。
「んっ、くっ、あぁ、ミリア様、ミリア様!」
テオドールはミリアのブーツを片手に、もう片方の手で自分のものを慰め始める。
「はぁ、はぁ、はぁ」
テオドールはブーツの履き口に鼻を押し当てると、再び匂いを嗅いだ。
「ああ、ミリア様の臭い……」
まるで愛しい恋人を抱くように、大切に大切にブーツを抱きしめると、顔を埋め、匂いを嗅ぎながら自慰を続けた。
◆
テオドールはその後も何度も絶頂を迎え、気が付くと窓から差し込む光は夕焼け色に染まっていた。
「しまった、もう夕方か!?」
慌てて飛び起きたテオドールは部屋の窓をあけて換気する。
「ミリア様が帰ってくる前に片付けなければ」
テオドールはハンカチを出した。
これでブーツについた精液を拭い取るのだ。
テオドールは丁寧にブーツを磨き上げる。
全裸でこうやってメイドのブーツを磨いていると、惨めさでまたチンコが硬くなっていた。
そして、最後に消臭剤をふりかけて臭いを消す。
「よし、完璧だな」
テオドールは満足げに笑みを浮かべ、最後にもとの場所にブーツを戻す。
「ただいま帰りました!」
玄関の方で透き通る声が聞こえてきた。
どうやらミリアが帰ってきたようだ。
テオドールは急いで一階へと降りると、ちょうどミリアが居間へと入ってくるところだった。
「おかえりなさいませ、ミリア様」
「え? どうしたんですか? テオドール様?」
あ、しまった。
今目の前にいるのは妄想のミリアではなく、本物のミリアだった。
「いや、ちょっと仕事で疲れて変な言葉遣いになったね。おかえり、ミリア」
「ありがとうございます。すぐに夕食の用意をしますね?」
ミリアはブーツを履き替えるとメイド服に着替えるために寝室へと向かう。
テオドールは射精しまくった疲労感でぐったりしつつ、食堂にいった。
「お待たせいたしました」
しばらくして、ミリアがガラガラと夕食を乗せたワゴンを押してきた。
いつもの従順で優秀なメイドのミリアの姿だ。
「本日はパンとシチューとデザートは秘密となっております」
「へぇー秘密なんて珍しいね」
いつものミリアがそんな台詞を言うなんてなかったことだが、その分楽しみではある。
テオドールは食後のデザートを期待しながら、シチューとパンに舌鼓を打つのだった。
◆
「では最後はデザートです」
クローシュで覆われたお皿をテオドールの前に置いた。
銀色の冷たい蓋に覆われたお皿。
何が入っているのかな?
「では、本日の特性デザートです♪」
ミリアらしくないテンションで彼女はクローシュをつまみ、蓋をあける。
ワクワクするテオドールはクローシュの中身を見た瞬間、心臓が凍りついた。
なにしろ、皿に置かれていたのは――。