「くそぉ……なんで俺がこんな……」
屈辱で震えるレオ。
それでも、契約は絶対だ。
ブーツまで舐めさせられたのに、ここで怒り狂えば、さっきの屈辱的な行為も人質も意味がなくなってしまう。
レオは怒りと憎しみで煮えたぎった瞳で、エリスの足を見つめると、ゆっくりと顔を寄せていった。
むわっ!
「うぅ……」
白く透き通るような肌とほっそりと芸術品めいた美しさすらある脚とは思えないひどくすえた臭いがレオの鼻をついた。
(なんて臭いだ。まるで大雨の日に何日も生乾きの雑巾……いや、もっと臭いぞ!)
美女とは思えない臭いにできるだけ鼻ではなく口で息をするレオに対し、エリスは嗜虐的に笑っていた。
「なに? 私の足が臭いのかしら? なら、臭いがなくなるまでピカピカにしてもらわないとね~」
圧倒的な立場の差。
絶対にレオが逆らわないのを理解しているからこそ、エリスはふざけた態度でおぞましい命令を下せるのだ。
それがますます屈辱感を与えるのを理解しているからこそ、その優位性をはっきりと見せつける。
「ぐっ……」
(こんな臭い……汚い足をなんで……くそ……)
レオは悔しげに唇を噛み締めながら、エリスのつま先に舌を這わせる。
舌先にビリビリとする辛さはエリスの足汗なのか……。
今すぐ吐き出したい。
だが、2000人の人質の顔が浮かぶせいで、レオはそれを拒否できない。
ピチャッ、ピチャリ。
「アハハ! 惨めね! 勇者が魔王の足元でこんな無様な姿を晒すなんて! ほら、もっと舐めて、綺麗にしなさい!」
エリスは勝ち誇った笑いをあげながら、レオを思い切り見下し、命令する。
また1つ勇者のプライドを壊してやった達成感が実に心地よい。
「ぐっそ!」
顔を真っ赤にして足を舐めるレオ。
歯を突き立てて一矢報いたいとすら思うのを勇者としての意志が必死にとどめていた。
(人質さえいなければ、殺されても噛みつくのに!)
ピチャッ、ピチュ。
「あ~ん。汚いわね~」
レオは必死に舌を動かして、エリスの足を舐め続ける。
舐めるたびに舌先にシャリシャリと汗が結晶となった塩やヌチャリ、とした垢や汗で汗で張りついた砂などが当たり凄まじい不快感がレオを苛む。
そんな不快感が顔に出てたのか、舌先の動きが鈍ったのか、エリスは眦を吊り上げると、いきなり足を動かし、
「ほら、ちゃんと舐めないとダメでしょ~」
グイッ。
「うぐぅ!?」
エリスは足の指で、レオの鼻を押し潰し、
「アハハ! 豚みたいね! ほら、しっかり綺麗にしないと!」
グリッ、グリッ。
エリスは足の親指でレオの顔を踏みつけるように動かした。
痛み以上に屈辱感で頭がおかしくなりそうだ。
「あ~ぁ、豚の鼻なんか踏んで、汚れちゃったじゃない。綺麗にして」
「うぅ……」
ひどい言われようなのに逆らえなかった。
レオは勇者の立場をこれほど疎ましいと思ったことはない。
人質と言う枷は呪いの要にレオを縛っているからだ。
ピチャ、ペロ、レロ。
(ちくしょう……)
屈辱的な命令に従うしかないレオ。
涙を浮かべながら、懸命にエリスの足を舐め続けた。
そんな様子を嗤うのはエリスだけではない。
「うわ~、こいつ泣きながら魔王様の足を舐めてるよ」
「情けない男ね。所詮は下等生物だわ」
「あの勇者の間抜けな姿。これは記録して歴史にのこさないとね」
魔王の配下達は口々にレオの姿を嘲り、罵りっていた。
衆目に晒されていると、さらに屈辱感が増して、一刻も早くこの地獄から解放されたいと、レオは願う。
そんなレオの心を抉るようにエリスは頭上から嗤いながら、罵声を浴びせる。
「アハハ! そんなに必死になって舐めちゃって、可愛いわね~。まるで犬みたい。ねぇ、どんな気持ち? 勇者がこんな姿晒して、舐めさせられてるなんて、恥ずかしいと思わないの?」
「くっ……」
(俺は勇者なんだぞ? どうして、こんな目に……。勇者なのに、何で魔王なんかに……)
涙で視界が霞む。
もう辛い。
嫌だ。
生まれてから勇者としての育てられてきたレオは、こんな屈辱的な行為も辱しめも受けたことがない。
ましてや敵であり、人間でもなく、天敵の魔族――その王である人類最大の敵の足を舐めさせられるなんて……。
「う、う、う」
嗚咽を洩らしながらも、なんとか足を舐めるレオ。
それを脚を組み、高みから見下ろすエリスの関係はまさに主と奴隷の姿だった。
「くくくっ! 勇者ったら、もう涙で顔がビショビショね。でも、残念🖤 お前が奉仕する足はまだあるのよ?」
おもむろに脚を動かしたエリスはレオの顔を蹴り飛ばす。
「うごっ!?」
絶望し、もはやまともな力すら入っていないレオは蹴り飛ばされて無様に床に転がった。
「!?」
(なに……なんで蹴られたんだ?)
混乱するレオの前でエリスは脚を優雅に組み替える。
まだブーツに包まれた左足。
先程よりも長時間履いた足はさらに臭いも汗もひどいだろう。
そんな足をレオの前に突きだしたエリスは特大の依美を浮かべて命令する。
「次はこっちの足を綺麗にしなさい♪」