「足を舐めろ……だと……」
「嫌ならいいのよ? まぁ、その場合は捕虜2000人は自分のプライドが大事な勇者が見殺しにした、と伝えて処刑するだけだしね」
この悪魔め!
エリスの優越感を湛えた笑みにレオは歯噛みした。
勇者であるレオは人類最強の力を与えられている反面、弱者を見捨てられない呪いのような性質を与えられていた。
これは勇者としての力を授かってから自覚したので、勇者の特性なのだろう。
「本当に捕虜は助かるんだな」
「えぇ、魔王の名前に賭けて誓うわ。でもただ舐めるだけじゃダメよ? 命乞いしながら、足を綺麗にするの。その姿を見下してあげる🖤」
グリグリ。
エリスはレオの顔にヒールを突き立てるとグリグリと左右に足を捻る。
それだけでヒールは簡単にレオの顔に食い込んだ。
「うぐぅぅぅぅ」
(フフ、剣も槍も通じないはずなのに、痛いのかしら? 所詮、勇者の強さなんて女神の加護によるもの。それを封じる魔王城ではただの人間に過ぎないみたいね)
エリスはレオに屈辱を与えながら、観察するようにレオの反応を見ていた。
ただ踏みつけているだけで、ずいぶん苦しそうだった。
魔力を封じてしまえば他の女神の加護を受けた人間でも弱体化させられるのだ。
これは大きな収穫だった。
「フフ、人類最強の勇者が惨めな事ね……。アハハ!」
高笑いするエリスと足元で足蹴にされるレオ。
それは魔族と人間の勝敗をこれ以上なく物語っているのだった。
◆
ピチャピチャッ。
湿った唾液の音が静かに玉座の間に響く。
「どうかしら? 負け犬? 私のブーツなんて舐めて惨めね~」
「…………」
ピチャッ、ピチャッ。
レオは殺意の籠った眼でエリスを見上げるが、手足を折られ、力を奪われ、芋虫のように這いつくばり、ブーツを舐める人間の視線などまったく気にもならない。
むしろ、この状況で反抗的な眼差しを浮かべるレオが、心から負けを認め、下僕に下がる姿を想像するとエリスは激しく興奮した。
「ほ~ら~。勇者が魔王の足元でこんな惨めな姿を晒すなんて歴史上初めてでしょうね~🖤 ちゃんと記録しなきゃ」
「はい、エリス様」
エリスの部下は記録用の水晶玉で、あらゆる角度からこの光景を記録していた。
「ほら、もっと咥えなさい」
グッ!
「おごっ!?」
エリスは爪先を激しくそらして、爪先を咥えていたレオを宙吊りにする。
まるで魚が針に食い込み、釣り上げられたかのように爪先はレオの喉と上顎に食い込み、身体を無理やりそらさせていた。
「アハハ! 笑えるわ~。まるで、魚ね! ほら、そのまま靴底を舐めな!」
高笑いするエリスの命令に苦悶の表情で従うレオ。
ピチャッ、ピチャッ、ピチャッ。
(おぇ……くそ……なんでこんな目に……)
口を閉じることができないため、涎が顎を伝い、床に小さな水溜まりをいくつも作る。
汚れた靴底からこそぎ落とされた埃や砂利が浮かび、水溜まりは濁っていた。
(あ~あ、情けないわね~。こんな姿を晒されても、人間を見捨てられないなんて、勇者の肩書きなんて呪いよね~)
顔を真っ赤にしながら、舌を必死に動かすレオ。
もし舌を休めれば、1秒ごとを10人処刑すると脅してあるから、レオはどれだけ苦しくても舌を休めることは許されなかった。
だが、エリスにとってこれは娯楽であり、精神的な心地よさしか得られない。
(さぁ、勇者レオ。あなたが絶望するのはこれからよ? この私を気持ちよくしてもらうわ。そして、同時にお前の心を壊してあげる)
エリスは次の拷問を想像して股間をじんわりと湿らしていた。
◆
「そろそろ綺麗になったかしら?」
「ごほっ! ごほっ!」
エリスは宙吊り状態にしていたレオの口から爪先を乱暴に引っこ抜く。
咳き込むレオを優越感に浸りながら見下ろし、涎まみれのブーツを眺めて、ニヤニヤと笑った。
「うぅ」
(終わったか? これでみんな助かるのか?)
エリスがブーツを引き抜いたから、こ終わりかと思うレオ。
「あら、ずいぶん光沢が出たわね~。これからは靴磨きとして使ってあげようかしら?」
エリスの言葉に他の幹部達も笑っていた。
嘲笑を浴びせかけられるレオだが、エリスの次の言葉がさらに追い討ちをかける。
「じゃ、足を綺麗にしてくれる?」
「なっ?」
今舐めたばかりなのに、何を言ってるんだ?
混乱するレオだが、エリスは意地悪く口の端をあげ、
「お前が舐めたのは私の「ブーツ」よ? 私との契約は「足」を舐めろって言ったのよ? ブーツを脱がさずに舐め出したから、困ったわ~🖤 でも、契約はまだ続いてるから、早くしてくれる?」
ひどすぎる。
ブーツを履いた足を突き出したのはエリスだった。
あの状態なら誰でもブーツを舐めろ、だと思うだろう。
それを――。
「いやならいいのよ? でも、契約破棄したのは勇者であるお前になるから、私は遠慮なく捕虜を処刑するけどね」
「くそっ! 舐める! 舐めばいいんだろっ!」
もうプライドなどない。
レオは歯軋りしながら、吠えた。
「フフ、そうそう。ちゃんと今度は舐めるのよ」
勝ち誇るエリスは再びレオの前にブーツに包まれた足を突き出した。
レオの心を徹底的に踏みにじるために。