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異無
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支配者リルの外交遊戯5


「れか……助けてくれ! カタリナ! 誰かいないのか!」

 

 目を開けたアグニは見知らぬ部屋のベットに寝かされていた。

 

 ただ寝かされていただけなら、わざわざ声をあげて助けを呼ぶ必要もない。

 

 そのまま自分の足で部屋を出ればいいのだから。

 

 問題はアグニの手足がまったく動かないことだった。

 

 と言うよりも首から下が痺れてまったく力が入らない。

 

 まるで軟体生物のようにグニャグニャにされた感覚で、まともに起き上がるとこも寝返りをうつこともできないほどだった。

 

 さらに衣服は全て没収され、全裸で部屋にいたのだ。

 

「あら、そんな叫んでも誰もここにはこないですよ?」

 

 そんなアグニを笑いながら見下ろすのは昨日と同じくアグニを拘束して弄んだミーシャだった。

 

「たかがメイドがこんなことをして許されると――」

 

「うるさいなぁ」

 

 ボス!

 

 苛ついた声音で呟いたミーシャは一瞬だけ眦をつり上げると、アグニの側に置いていた黒い布を、黙れと言わんばかりに口に捩じ込んだ。

 

「もぐぅごっふ!」

 

 口から溢れるほどの布地が気道を塞ぎかねないほどの勢いで捩じ込まれてアグニは思わず咳き込んでしまう。

 

「ほら、リル様の昨日お召しになっていたパンストですよ? 嬉しいですよね? 存分に味わっていいんですよ?」

 

 笑顔の仮面をはりつけたミーシャが言うまでもなく、アグニは口に詰められたものが何かはわかっていた。

 

 舌先に触れた瞬間、先ほど飲まされた汚水よりも遥かに濃厚な味がしたからだ。

 

 それに口から溢れた布地が鼻に触れ、臭いだけでもそれが誰が履いていたものかは予想できた。

 

 夢中で味わい、嗅ぎたくなりかけたアグニだが、理性を振り絞り、目の光は失わなかった。

 

「わたひをどうふるつもひでふか!?」

 

「フフ、まだ男と言うものが女性と対等とでも思っているのですか? 今からあなたの価値観を徹底的に破壊してさしあげるんですよ?」

 

 ゾッとするほど甘い声音で告げたミーシャは今度はロープを取り出すと、

 

「この国の男……いえ、雄と言うものを見せてさしあげます。そのためにはあなたにも雄の格好になってもらわないといけませんからね」

 

「ふざけぶな!」

 

 こんなことをしてただじゃおかないぞ! と必死に睨み付けるアグニだが、ミーシャにとっては、怯える小動物の精一杯の抵抗にしか思えず、むしろ嗜虐心が疼かされるだけだった。

 

(あ~、なんでこう年下の男の子って可愛いかな~🖤 リル様の命令じゃなかった私が奴隷にして調教してたのに!)

 

 内心はいますぐ食べたいのを堪えながらミーシャはアグニの右手をとると、

 

「そんな凄んでも抵抗ひとつできないですよね? ていうか、ご自分の姿を理解されてますか? 全裸で女のパンスト咥えて、勃起させてる変態がいきがってるようにしか見えないですよ?」

 

「~~~~~~!!」

  

 恥ずかしさで真っ赤になるアグニの手を曲げ、ロープで縛り上げていく。

 

 左腕、右腕を折り畳むように曲げられると、同じように両足も拘束された。

 

「まだ奴隷として自覚がないでしょうから、無理やり四つん這いで歩かせてさしあげますね」

 

 チャリン。

 

 最後に嵌められた首輪。

 

 それに繋がったリードが冷たい金属音をならす。

 

「犬なら当然これくらいできますよね? ただ歩くだけですし」

 

「んー!」

 

 屈辱的な体勢で固定され、それでもプライドを捨てきれず、アグニは顔を背けた。

 

「本当に強情なお方ですねぇ……。まぁ、その方が堕とし甲斐があるんですけど♪」

 

 嬉々としてリードを引っ張ったミーシャ。

 

 グン! と引っ張られ、前屈みの体勢になったアグニ。

 

 地面と接する膝と肘に体重がかかりかなり辛い。

 

「まずは散歩の仕方から教えて差し上げましょう。ほら、ワンちゃんなら鳴いてみて下さいよ」

 

「んん!」

 

「まったく、仕方ありませんね」

 

 ミーシャは呆れたようなため息を漏らすと、ポケットの中から小さなガラス瓶を取り出した。

 

「これを飲めば少しは素直になってくれるでしょうか?」

 

「!?」

 

「これは奴隷調教用の自白剤ですよ」

 

「っ!?」

 

「安心して下さい。効果は保証します。これであなたを従順な雌豚に変えてあげますから」

 

「んー! んん!」

 

「クス、何いってるかわかりませんよ。 ではさっそく……」

 

グイッと無理矢理上を開けさせられ、口にねじ込まれているパンストへとピンク色の液体を流し込まれる。

 

 薄い生地を通り抜け、舌先に感じる苦味と甘味。

 

 ドロリ、と喉の奥へ落ちていく感覚が気持ち悪い。

 

「どうですか? 美味しいですよね? もっともっと飲みたくなってきましたよね?」

 

「んんんんん!」

 

「あら? おかしいですね?」

 

 怪しく微笑んだミーシャは再びピンクの小瓶を取り出す。

 

「ほら、もう一本ありますよ? 飲んでみたいと思いませんか?」

 

「うぐぅ……」


 どんどん身体が彼女の思う通りに変えられてしまっているのが、わかるのに、何故かあれから目が離せない。

 

 だが、これ以上逆らうこともできない。

 仕方なくアグニはコクりと首を縦に振ってしまった。

 

「フフ、いい子ですね」

 

 再び流し込まれた薬は先ほどよりも甘かった。

 

「どうですか? 先ほどよりもっと飲みたくなりましたよね?」

 

「…………っ」

 

 悔しいが、否定できなかった。


 体が熱くなるのを感じる。


 頭がぼーっとする。

 

「フフフ、もう効いてきましたか」

 

「…………」

 

 フワフワと夢心地になって気持ちいい。

 

「さぁ、それでは会場に行きましょうか。リル様がお待ちですから🖤」

 

 リードを引かれ、四つん這いで歩き出す。


 床の冷たさが火照った体に心地よい。

 

 先ほどの痛みが消え、まるでこの状況が他人事のように思えてしまう。

 

「フフ、こんな簡単に堕ちるなんて……やっぱり男なんてどこもの国でも同じね」

 

 パンストを咥え、四つん這いの自分についてくるアグニを見下ろしながら、ミーシャは軽蔑の眼差しを向けながら微笑むのだった。

 

 そのままアグニは長い廊下を歩き、

地下の大きな扉を潜る。

 


支配者リルの外交遊戯5

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