リルに用意された館は正面に大きな館があり、門から館までの間には、小さいながらも綺麗な庭園まで備えている。
裏手に回れば木々が茂り、清涼な空気が静けさの中、流れ、暖炉や絵画なども飾られ、貴族の館の一つだったのだろうと思えた。
アグニとカタリナは与り知らぬことだが、リルが奴隷化した元貴族の屋敷の一つであり、彼女が接収したものの一つでもある。
「素晴らしいお屋敷ですね」
「手入れも行き届いていますし、アグニ様に不自由させることはないでしょう」
「必要なものがありましたら何でもお申し付け下さい」
案内役についてきたメイドの一人であるミーシャが鍵をあけ、屋敷を案内してくれる。
「護衛についてはいかがしますか? 女性騎士をつけますか?」
「そうですね……。男の騎士はいないのですか?」
「男の……ですか?」
「はい、できれば男性がよいのですが。女性騎士よりも強いですし」
「この国で男の騎士はリル様の近衛騎士団長だけですわ。他で男となる奴隷だけですわね」
リルから貸し出されただけあり、ミーシャと名乗ったメイドも男を見下した雰囲気をありありと放っている。
いや、この国全体がそうなのかもしれない。
この国で男は価値がない。
アグニはそう思わずには居られなかった。
ここに来るまで馬車で見かけた農地では働いているのは男だけで、女性は炎天下で鍬を振るう男がへばれば日傘を片手に容赦なく鞭を振るい、男は苦しさに顔を歪めながらも必死に農業に従事していた。
何故彼らは女性に一切反抗しないのだろう。
そして、鞭を振るう彼女は実に楽しそうに笑っていた。
男を痛めつけるのが楽しいと言わんばかりに……。
「……わかりました。じゃあ、男性の奴隷を連れてきてもらえますか?」
「かしこまりました。すぐに連れてきましょう」
「えぇ……」
アグニは思う。
男の価値は一体なんなのだ、と。
アグニの中で疑問は膨れ上がるばかりだった。
しばらくして、ミーシャに連れられて二人の男性がやってきた。
大きな檻に閉じ込められた屈強な男二人だ。
だが、目は死んでいる。
外の男性達以上の地獄を見て心が折れたのだろう。
(頼りにならなさそうですが、変えるのも申し訳ないですし)
「ありがとうございます。陛下のご好意に感謝いたします」
「アグニ様のお言葉、リル様もお喜びになりますわ」
ミーシャは華やぐような笑みを浮かべていた。
(フフフ、かかったわね。可愛そうな王子様)
その笑顔の下では腹黒い笑みが浮かんでいるのを知るよしもなく……。
◆
夜……。
「ふぅ……」
お風呂に入って個室で寛いでいるアグニはフカフカのベットに身体を沈めていた。
明日はカタリナとよりこの国を見て回るつもりだ。
なんとか彼らを救えないものか。
虐げられる男達を見ながらそんなことを考えるアグニだが、正直難しいと心の奥では思っていた。
国力差は明白なのだ。
どれだけ人道を説いても彼女は理解しないだろう。
彼女の倫理観の前では自分の話した倫理など紙屑のように踏み潰されると思えてしまった。
それほど、リルの考え方はアグニには異常と思えたのだ。
(早く寝よう)
いい考えが浮かばないまま、アグニは目を閉じた。
疲れていたのか、ベットの寝心地がよかったのか、それとも部屋全体に満ちたかすかな甘い香りのせいか、驚くほど深くアグニの意識は闇に沈んだのだった。
◆
ガタガタガタガタ!!
「………………」
アグニは激しい揺れ出玉目を覚ました。
「?」
おかしい。
手足の自由が聞かない。
真っ暗な空間な上、身体を起こすこともできなかった。
「んれかぁ!」
口にも猿轡が嵌められ、呻き声しかならない。
捕まった?
なぜ!?
どうやって!?
混乱する頭でアグニは必死に状況を把握しようとする。
ガチャリ…… 。
その時、扉が開く音がして部屋の明かりがついた。
眩しさに一瞬目がくらむが、すぐに慣れて入ってきた人物を捉える。
それはミーシャであった。
だが、先程までのメイド服ではなく、黒を基調とした露出の多い衣装に身を包んでいた。
足だけはブーツを履いて、それ以外は水着みたいな過激な服装だ。
まるで変質者のような過激な姿に、アグニは驚きに目を見開いた。
「んー! んんっ!!」
助けてくれと叫ぼうとするアグニだが、ミーシャが素早くアグニの元へ近づき、乱暴に足を胸に乗せた。
「うぐぅ!」
王子として人の上に立つアグニは女性に、それもメイドに踏まれることなど経験どころか想像もしたことがなかった。
こんなことをして只で済むと思っているのか!?
そう言いつけにミーシャを睨み付けたが、ミーシャは一切手を緩めない。
むしろ、胸に置いた足とは逆の足の荷重を徐々に緩め、つま先立ちになって体重をどんどんかけていく。
「静かにしなさい。貴方が悪いんですよ。まぁ、こんな簡単に事が運ぶなんてバカな王子様ですね」
ミーシャは蔑んだ瞳でアグニを見下ろす。
そこにはこの国で幾度も見た男をなぶる嗜虐的な色がありありと浮かんでいた。
「私達の言うことを素直に聞いていれば良かったんです。まぁ、もう手遅れですけど」
そう言ってミーシャは懐から小瓶を取り出した。
「これ、何か分かりますか?」
「……」
答えず無言を貫くアグニにミーシャはため息をつく。
「これはですね。女王陛下が開発させた媚薬です。これを飲めばたちまち理性が飛び、性欲に支配された獣となります」
「……」
「効果はこの国で実証済みですから安心して下さいね」
「んー!! んー!」
安心など欠片もできない。
むしろ、絶望しかない!
「ああ……あぁ……」
ゾクッとした感覚がアグニを襲う。
「フフ、怖いですか? それも一瞬ですから安心して下さいね」
ミーシャはポケットから薄い布を取り出した。
暗闇ではっきりとは見えないが、ミーシャがそれに媚薬を染み込ませたのははっきりと見える。
「さぁ、王子様も他の奴隷と同じ運命を辿りなさい」
口を塞ぐと、ミーシャは布の先を顔に押し付けてきた。
口呼吸を封じられたアグニは必然的に布の臭いを嗅ぐしかなく――。
「んぐ……ふぅ……」
脳髄まで突き抜けるようなねっとりとした発酵臭が貫く。
それに薬だけじゃなく湿っていて、不快感もたまらない。
平常なら臭すぎて間違いなく噎せていたはずなのに、なぜか身体が熱くなるのが感じられた。
ドクン!
なんの臭いかもわからないのに、アグニは激しく下腹部に熱がともったことに戸惑う。
自分の身体が違うものへと作り替えられていく様な恐怖すらあった。
だが、それも一瞬で、二吸い目には深呼吸して肺の奥まで、得体の知れない悪臭を取り込んでいた。
「フフフ、薬効きすぎました? トリップするほど、気持ちよくなってきましたか? まぁ、刺激が強すぎるのは認めますけどね。でもまだダメですよ。仕上げがありますから」
そう言いながら、ミーシャは指先でアグニの胸板をなぞっていく。
ビクビクと体を震わせるアグニだが、身体が動かないので抵抗できない。
やがてミーシャの指先は下腹部まで降りてきた。
ズボン越しに優しく撫でられる感触に腰が浮いてしまう。
その様子に満足したのか、ミーシャはクスっと笑った。
そして、 ぐちゅ!
「!?」
突然股間に走る衝撃。
アグニは信じられないといった表情で下半身を見た。
ミーシャの細い手がズボンの中に入り込み、男性器を握っていたのだ。
「あら、もう濡れてるじゃないですか。効果は絶大ですね……。いえ、もともと素質でもあったのですかね。マ・ゾの素質ったやつですかね~」
ミーシャの手が動くたびにグチュッグチュッと湿った音が聞こえる。
耳元で囁かれる言葉にも反論できず、アグニは顔を真っ赤にして俯いていた。
「あれ? どうしました? 顔が真っ赤ですよ? アハハハッ!!」
嘲笑するミーシャにアグニは何も言い返せない。
ただ黙って耐えるしかなかった。
その間もミーシャの手が容赦なくぺ●スをしごき続ける。
「いい子ですね。そうやって大人しくしてればもっと可愛がってあげますよ」
そう言ってミーシャは手を離すと、今度はアグニの男性器を弄び始めた。
最初はゆっくりと上下に動かして刺激を与えていたが、すぐに手の動きが激しくなり、まるで玩具を扱うようにアグニを責め立てる。
アグニは必死に耐えようとするが、薬のせいで意識が混濁し始め、声を抑えることもできなかった。
「ほら、ここ好きでしょう?」
そう言って、ミーシャはカリ首の部分を強く握り締めた。
「ひぃっ!」
あまりに強い刺激に悲鳴を上げてしまう。
同時に身体が大きく跳ね上がった。
ドピュ、ピュ、ビュルルルル!
「フフッ、イっちゃいましたね」
「な……なん……で……こんな……」
射精したばかりの敏感な亀頭を擦られ、再び腰が浮き上がる。
しかし、それだけでは終わらなかった。
「やめろぉおお! んあああああああ!」
精液まみれの手で、またも性器を掴まれる。
今度は乱暴にしごかれ、痛みと快感が入り混じって思考がまとまらない。
ミーシャの言う通り、アグニのペニスは再び勃起していた。
(刺激が……強すぎる!!)
びゅ! びゅ! びゅるるる!
先程までとは比べものにならない刺激にアグニは身体をビクビクと震わせながら気絶する。
「フフフフ……任務完了」
気絶したアグニを見下ろしながらミーシャは妖艶な笑みを浮かべる。
1人の少年の人生が奈落へ転がり始めたことを確認して――。