ガタン!
「うわっ!?」
「うっ!?」
テムズとアルトは激しい揺れで目が覚めた。
「いつまでも寝てるのかしら? 虫けらの癖にご主人様より寝ているなんていい身分ね?」
見上げると、巨大な顔がこちらを見下ろしている。
瞬間、アルトとテムズの全身が昨日の拷問を思い出して硬直した。
あの痛みも臭いも身体は簡単には忘れられない。
「フフフ、洗礼は効果抜群だったみたいね♪」
硬直して怯えた二人に美琴は満足気な表情を浮かべ、
「今日はどうやってお前達で楽しませてもらおうかしらね?」
悪魔の囁きとともに甘い吐息を二人に吹きかけるのだった。
◆
美琴が出ていった後、アルトとテムズは床にへたりこんだ。
衣服を剥がされ、全裸で過ごすことを強要されている二人は寒さで身を寄せあっていた。
美琴は自分が部屋にいない時間は暖房をつけないので、窓際の冷気が容赦なく虫かごを冷やす。
一応、寒さを凌ぐための布もあるが、あれに入るのは二人とも御免だ。
なにしろ、虫かご内にあるのは紺色の布切れ--靴下なのだ。
それも美琴が履き潰して穴の空いた--。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「私はな。それよりテムズは無事か? 骨折とかはないか?」
「うん、大丈夫だよ。でも、なんか臭いかも」
「そうだな。あの女……」
アルトは憎らしげに外を見上げているが、高い壁はどうやっても脱出は不可能だろう。
通気性の低い虫かご内には、前に隠れていた部室など比較にならないほどの悪臭が立ち込めているのだ。
それはこの部屋の主である美琴には関係のないことだが……。
「ねえ、これからどうなるんだろ……?」
「………………」
不安げに呟くテムズだったが、答えられるわけがない。
自分たちはこの小さな世界で飼われるしかないのだから。
そして、そんな二人の気持ちを知ってか知らずか、再び扉が開かれる音が響いた。
「さて、着替えたし学校にいこうかしら♪ 今日は~一匹はお留守番よ♪」
(留守番!)
その言葉はまさに救いを感じる言葉だった。
半日程度とはいえ、あの悪魔から逃れられる。
でも、同時に片方が地獄を見るのだ。
それなら……。
「僕が--」
「なら、私を連れていけ!」
テムズを遮ったのは姉のアルトだった。
「へぇ……弟を庇うんだ。麗しい姉弟愛かしら?」
「姉が弟を守るのは当然だ!」
「お姉ちゃん……」
「虫けらの分際で人間みたいな台詞は虫酸が走るわね~♪ 虫けららしく互いを売りあったら面白いのに」
本当に悪魔だ。
どこまでも小人にとって巨人とは邪悪な存在であり、天敵でしかない。
美琴は退屈そうに二人の小人を見下ろしていたか、やがて悪戯を思い付いた様な笑みを浮かべ、
「その生意気さに免じて休ませてあげるわ♪ お姉ちゃん♪」
「なっ!? よせっ!」
美琴の言葉を察したアルトが叫ぶ。
その声が逆に美琴を興奮させるスパイスになってしまうのに--。
「フフフ、今日は弟君を履いていくわ♪」
履いていく!?
テムズは透明な虫かごを越しに見える美琴のセーラー服。
そして、そこから下へ見えるのは、スカートと白い太腿。
そして、それを包むこむのは、昨日のおぞましい記憶を植えつけた紺色の牢獄だった。
「い、いいぁ……」
昨日の痛みと熱気と臭いが思いだされ、身体が硬直してしまう。
「よせっ!」
慌ててテムズを庇ったアルトに美琴は目を細めると、指を動かした。
「邪魔よ、バカ女」
ドゴッ!
「あがっ!」
指一本が動き--デコピンの一撃がアルトの身体をトラックに跳ねられたかの様な勢いで吹き飛ばした。
「お姉ちゃん!?」
壁に激突したアルトは衝撃で蹲り、呻く。
「ほら、お前はこっちよ♪」
「お姉ちゃん--!!」
「テ、テムズ!!」
手を伸ばす姉弟の手は虚しく空を切り、アルトは虫かごの底へ、テムズはそのまま高く宙へと運ばれる。
「じゃ、いくわよ♪ 安心しなさい。今日は靴下の中じゃないから♪」
そう囁いた美琴の笑顔はまったく安心できない。
その顔には圧倒的な優越感と弱者を痛めつける嗜虐心と愉悦の色がありありと浮かんでいるのだ。
「や、やめ……」
「その顔、たまらないわ~♪ でも、残念ね。お前達には意思なんて必要ないのよ。私を楽しませてくれれいいんだからね🖤」
美琴はそう言うとテムズを掴んでいた手をひっくり返した。
「わっ……」
不意に訪れたのは無重力感。
そして、次にテムズを襲ったのは重力と言う自然の理だった。
「あぁぁぁぁぁ!」
虚しく空中で手足をばたつせるテムズはそのまま真っ逆さまへと滑り落ちていく--。
「お前の居場所は今日はここよ🖤」
美琴のパンツの中へと--。