リルのお腹は順中に大きくなり、現在は城で安静にすることが多くなり、リルの奴隷国家計画はロキが主導することにしていた。
貴族の洗脳はリルの得意分野であり、逆に目障りな貴族や金持ちの平民を消すのはロキの役目だった。
そして、今日も生け贄が地下で拷問を受けている。
「ひぃ! ロキ様! お許しをぉぉぉ!」
「や、やめてくれっ! たのむぅ!」
「ははっ! どうした? お前らは他の奴隷がそう叫んだときにどうしたか忘れたのか? ほら! 忘れたなら思い出させてやる!」
悲鳴とともにロキの腕が唸り、手にした鞭がそれにあわせて振り下ろされた。
バチィィィィ!
リルが打てば真っ赤な痣程度だが、男性であるロキの一撃はわけが違う。
本来の鞭の機能である肉を引き裂く、という能力が十分に発揮されてしまうのだ。
「ほら、もう一発!」
バチィィィィ!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「あがぁぁぁぎぃぃぃ!」
打たれた背中から血が滲み、灼熱の痛みを奴隷商とコロシアムの元支配人を襲った。
コロシアムは勅令によって王家の管理下となり、リルとロキによって奴隷に仕立てられた貴族達を見世物にしたり、反逆分子を処刑するための施設へと改造されたのだ。
そして、前支配人と見世物のために奴隷を供給していた奴隷商はロキにとらえられ、いつもの地下室に幽閉されていた。
「あぁ、お前は奴隷印を押させてたな! 確かこうするだっけ?」
笑いながら暖炉に立てていた棒を取り出したロキ。
先端には紋様が彫られ、暖炉に入れられて真っ赤に熱されている。
それをロキは拘束して逃げられない元支配人の背中へ容赦なく押し当てた。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ガチャガチャガチャガチャ!!
「ははっ! お前らクズでも肉の焼ける匂いは悪くないな。 ほら、暴れると印が歪むぞ? あぁ、どうせお前らは廃棄処分予定だから、構わないが」
力一杯、焼き印を押し当てて笑うロキ。
焼き印を奴隷商へと押し当て終えると、再び暖炉で暖めて今度は元支配人の背中へと近づけ--。
ジュワワワ!
「あばばばばば!!」
「どうした? お前らがしたことはこんなもんじゃねぇぞ? もっと苦しませてやるからな! ハハハハハ!」
皮膚が炭化しかねないほど強く焼き印を押し当てて二人の精神もろとも肉体を攻め抜くロキは手加減などしない。
(無抵抗の相手を好きにするのは、楽しいもんだなぁ!)
かつての憎むべき対象へ復讐するロキは心の底から笑っていた。
リルの様な愛情などかけらもなく、ただ苦しむ様が楽しくて、愉しくて、拷問する。
その楽しげな様子を鎖に繋がれたハルトは羨ましげに眺めているのだった。
◆
「ひぁぃひぃ!」
「うぐぅぅぅ!」
「ははっ! この程度じゃ人間が死なないのはわかってるよな? 俺の仲間で散々見ていただろ?」
奴隷商と元支配人を見下しながら、鞭と焼き印を床に投げ捨てたロキはどっかりと椅子に座って冷たく言い放つ。
この二人が戦えなくなった剣奴を変態貴族たちに売り払っていたことは知っていたし、その末路も噂で聞いたことはあった。
その因果応報がここでできるとはな……。
(殺し合った中たが、それなりに知った相手だったからな。あいつらの仇は俺が討ってやる)
存分に苦しめてから、処分してやる。
ロキは黒い感情を沸き上がらせながら、指を鳴らした。
「ミーシャ、口枷をさせろ」
「はい、ロキ様」
カツカツ、とヒールを鳴らして駆け寄ってきたのは、リルにかつて使えていたメイドのミーシャだった。
この部屋のことを知る彼女はこうしてリルとロキの拷問の手伝いもしていたのだった。
ミーシャの両手には奴隷が口で息を出来ないようにするための、特殊な枷が握られている。
「やめ!」
「これ以上は!」
「ミーシャ、クズが煩いから早くしてくれ」
「はい、ロキ様! ほら、口開けなさい! それとも、歯をへし折ってからいれて欲しい?」
「「もががががが!」」
相手は平民である以上、ミーシャが遠慮する道理などない。
二人が苦しむことなどお構い無しに枷を加えさせ、鍵をかけた。
これでどんなに呻こうが、枷を外すことはできない。
同時に鼻でしか呼吸できない二人を待つのは……。
「そら、嗅げ。豚ども」
ロキは具足を脱ぎ捨てると拘束した奴隷商と元支配人の前に素足を突き出した。
反らした足からは湯気が立ち上るほどの熱気が放たれ、そこから臭う異臭は立っていてもわかるほどだ。
当然、至近距離でそれを嗅がされる二人はたまったものではなかった。
「「んー! ん!」」
脂汗の様な汗と具足内の獣臭が混じり、ひどい臭いとなっていた。
目を剥いて暴れまわる二人を拘束具がガチャガチャと押さえつける。
「ははっ! いい臭いだろう? お前らが散々売った奴隷たちが味わったものと同じものだ! ほら、もっと喜べ! その顔はなんだ! 嬉しそうじゃないか?」
「「ふがぁぁ! んごぉ!」」
臭い臭いと悲鳴を上げる奴隷商たち。
「ハハハ! 傑作だな!」
そんな様子を見て大笑いしているロキ。
「「」んごぉぉぉぉ!」」
傍から見ると地獄絵図だが、ロキには愉しくて仕方がない。
武力、権力、財力……あらゆる力で勝る相手を蹂躙するのは実に楽しい。
「さて……次はどうしてやろうか……。あぁ、ミーシャ」
「はい、ロキ様♪」
ロキが指を鳴らすと、ミーシャは壁に掛けてある拷問器具を手に取った。
それは鉄で作られた棘付きの金槌。
ミーシャはそれを手に取ると、二人の頭上で振り上げた。
「ンフ♪ これで殴られたらさぞ痛いでしょうね? 運が悪ければ即死ね? あ、運が良ければ死ねるかしら? 生き延びたら、苦しいみたいだから」
その台詞は幾度もあのハンマーを振るった者の経験から来るものか。
あの赤黒い汚れは犠牲者の--。
これから起こることを察したのか、二人は顔を青ざめさせて、必死に首を振る。
「死にたくないか? ならもっと媚びたらどうだ? あぁ、足は舐めれないんだよな? なら、この臭い足に顔でも擦り付けて惨めったらしく媚びてみろよ」
「んぶぅっっ!」
ロキの言葉に奴隷商は汚れて砂や埃のついた足の裏に必死に顔を押し付けた。
凄まじい臭いと粘りのある熱気はそれだけで全身の産毛を逆立たせる。
(この私がこんな汚いものになど……!!)
「ハハ! 家畜にはお似合いだな? ん? お前はどうした?」
ロキの目が躊躇する元支配人を見据えた。
「ひぃ、すぎぃにぃ!」
慌てて顔を近づけようとした元支配人だが、奴隷に躊躇などロキが許すはずもなかった。
ましてや、慈悲をかけることなどあり得ない相手に対してなど--。
「そうか……お前はいらんな。ミーシャ」
「は~い♪」
「まっ!」
満面の笑みを浮かべたミーシャは、慌てて動こうとした元支配人めがけてハンマーを振り下ろした。
グシャ!
湿った果実が潰れる音とともに奴隷商の顔に鉄臭い血がべったりとかかった。
「ロキ様を不快にさせるなんて万死に値しますわ!」
眦を吊り上げたミーシャは、頭を潰されてピクピクと痙攣する元支配人の肉塊を容赦なく踏みつけた。
「お前もこうなりたくないなら、せいぜい俺を楽しませるんだな?」
「ぶぶぃぃぃひ!」
恐怖は容易く人を壊す。
ましてや、それがよく知る知り合いで、目の前で惨殺され、それがいつ我が身に振りかけるかと思うと、その恐怖は想像を絶するだろう。
ガタガタと止まらない恐怖に震えながら、奴隷商はプライドも何もかも投げ出し、ひたすらロキへと媚を売り続ける。
ほんのわずかに生き延びられる時間を得るために--。
◆
真夜中--。
ロキが拷問し終えた後片付けをしていたミーシャはうっとりとため息をもらした。
あの傲慢な何人にも屈しさない鋼のごときロキのオーラに胸がときめいた。
コロシアムでたまに見せる姿も、奴隷達を拷問する姿も、ミーシャだけではない、他の令嬢も頬を染めて彼にみいっていた。
あぁ、あの匂いは堪らない。
なぜ、奴隷達があの臭いをあそこまで嫌うのか理解できない。
あんな野性的な匂いを--。
ミーシャはうっとりとしながら、地下室を掃除していた。
「ん?」
そんな時に目に入ったのが、ロキの履き潰したブーツだった。
他の靴とは違う、泥だらけで、革がボロボロになった靴。
臭いもかなりキツかった。
これを履いていたのは誰なのか。
それを思うだけで、心臓が高鳴った。
恐る恐ると手を伸ばして、靴を掴む。
持ち上げてみると、ずっしりと重い。
「あ、あ、あん🖤」
鼻先まで持って行くと、濃厚な臭いが嗅覚を刺激してくる。
その瞬間、身体中に電撃が走ったかのような感覚を覚えた。
「あぁ……」
自然とその臭いを嗅いでいた。
いや、顔を履き口に押し付け、臭いを貪っていた。
頭の中にまるで麻薬のように染み込んでくる。
「あぁ……いい……」
気がつけば夢中で臭いを嗅ぎ続けていた。
肺全体を臭いが充満し、脳からは快楽物質が止めどなく噴き出してきた。
(ダメだ……。こんなことしちゃいけない……)
理性では分かっているのに止められない。
(これは……ロキ様の足だ。私の大好きなロキ様の足なんだから……! だからいいよね?)
ミーシャは言い訳をしながら、さらにロキの足に顔を埋めた。
(ああ……やっぱり……すごい……)
濃密な足臭はミーシャの頭の中を犯していく。
その度にミーシャはビクビクと体を震わせた。
腰がガクガクと震え、股間はパンツの下でグッショリと濡れている。
「んんんん!」
ミーシャは下着に手を当てた。
クチュクチュクチュ。
濡れていたパンツがさらに濡れ、厭らしい音が地下に響く。
「んんん……んんんんんん!!」
絶頂に達したミーシャはそのまま意識を失った。
後日、ロキが捨てようと思っていた靴が行方不明になる事件が起きたが、誰が犯人かはロキが知ることはなかった。