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異無
異無

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聖女遊戯 敗北の香り

 

 ドサッ!

 

「うぐっ!」

 

 鎖を外した瞬間、精魂つきたとばかりに床に倒れこむアイゼン。

 

 全身は真っ赤なみみず腫が無数に刻まれ、ピクピクと痙攣するが、まだ生きていた。

 

 ただ、顔は涙と鼻水でグチャグチャになり、勇者の面影すらなくなっていたが……。

 

「フフフ、よく耐えますね。打ち疲れてしまいましたわ」

 

 鞭を机においたマルタの顔は興奮で妖しい色香を放ち、浮かび上がる汗でなんとも言えない淫靡な空気を醸し出していた。

 

(久しぶりに弱い者いじめで楽しませてもらいましたし、そろそろアイゼンには絶望してもらいましょうか🖤)

 

 ガッ!

 

「ぅっ!!」

 

 マルタは虫けらの様に這いつくばり、痙攣するアイゼンの頭を無造作に踏みつけ、

 

「レヴィア様に敗北宣言した負け犬勇者にはやはりこれが一番効果的ですよね?」

 

 ジ、ジジジジジ、ジジジジジジ。

 

 頭に伝わる小さな振動とジッパーの音から何が起きているかわかる。

 

 レヴィアに敗けた時の光景が脳裏に展開され、アイゼンは震えた。

 

 またあのおぞましい行為を。

 

 人間としての尊厳を踏みにじるあの行為をさせられるのか、と。

 

 だが、怒りと羞恥に反し、アイゼンの身体の奥底で違う熱が生まれていた。

 

 マルタの――。

 

 好意をもっていた相手に屈服するのはどんな気分なのか、と。

 

「フフフ、抵抗もできないんですね。憐れですね。負け犬が私に勝てるわけないのに」

 

 マルタの言葉が心を抉る。

 

 ジ、ジジジジジ、ジジジジジジ。

 

 ジッパーの音と石畳と硬いソールに挟まれた痛みが屈辱なのに、遥か高みから見下ろすマルタの顔を見ることすらできないこの状態がもどかしいのに――。

 

 何故かアイゼンの身体をむずかゆい感覚が駆け抜けていた。

 

 ずれた歯車が勝手に元に戻ることなどない。

 

 無理やり回しても亀裂は広がり、ただ壊れていくだけ。

 

 アイゼンの性癖はレヴィアの悪意で歪まされていた。

 

 そして、その歪みにマルタはさらに拍車をかけようとしていた。

 

 二度と出られる深みへと落とすために――。

 

「涼しいですね♪ ずっとブーツを履いていたので蒸れてしまいました」

 

 カポッ、と小気味良い音とともに頭から荷重がなくなる。

 

 同時に黒く輝くブーツが折り重なる様に床に転がり、白く美しい柱がアイゼンの前に聳えていた。

 

 いや、柱じゃない。

 

 マルタの素足だ。

 

「フフフ、どうです? 私の足は。旅の時は見せたことがないですよね。宿の部屋は分けてましたから♪」

 

 男女だからと気を使って部屋を分けていたので、アイゼンはマルタの素肌などほぼ見たことがなかった。

 

 聖女である彼女は普段はローブを着ていたし、素肌などほぼさらさなかったからだ。

 

 そして、いつも靴や靴下を履いている足をこうして眺めることなど当然ない。

 

 真っ白な染み一つ、無駄毛も産毛すらない肌は、弱い地下牢の明かりですら光りを放つようで、芸術品めいた美脚は見た目に反し、強烈な臭いを放っていた。

 

「うっ……」

 

 ぷ~ん、と臭う炎天下でチーズを発酵させた時に漂う異臭に似た悪臭。

 

 聖女とは、美少女とは思えない足の臭さに思わずえずきかけるアイゼンに対し、マルタは意地悪い表情で――。

 

「クスッ……ブーツを履くと蒸れていた分、足が臭いますね。このくさい臭いをなんとかして欲しいですね」

 

 わざとらしい口調でアイゼンの顔を、鼻を見て、

 

「フフフ、いい消臭器がありますし、使わせてもらいますね。ちょうどここに」

 

 マルタはブーツを脱いだ足を上げると、ゆっくりとアイゼンの顔に、鼻の部分に足を乗せた。

 

「嗅ぎなさい。勿論、口呼吸は禁止ですよ。 これは命令ですから」

 

 告げられる残酷な命令。

 

「っ!」

 

 しかもマルタはただ顔を踏んだわけではない、最も垢や汗が溜まっている親指と人差し指でアイゼンの鼻をかるく挟むように足を置いた。


 離れていても発酵させた悪臭を感じのだ。

 

 それを零距離で嗅がされれば――。

 

「─────ッ!!グフッ!!ガホッ!!グホッ……!!」


 アイゼンは呼吸した瞬間、鼻に流し込まれたとてつもない臭気に呼吸を禁止され閉じられた口と、挟まれて満足に酸素を吸えない鼻の穴でむせ返った。

 

 そして咳き込むというとは鼻の穴から空気を放出するということ。そして空気を放出してしまえば、吸い込む必要がある。


 しかも、普通よりも多くの酸素を使ってしまった身体はその分多くの酸素を求めてしまう。

 

 結果――。

 

 スゥゥゥゥ!


「ごほっ! かっは! うぇぇ!」

 

「フフフ、どうしましたか? 息するだけでなんでそんなに苦しいんですか? アイゼンは敵視していたレヴィア様の足に敗けて、臭いを嗅がされて射精してしまう変態ですよね? なら、こうして濃厚なくっさい足を嗅がされるのはとても幸せなはずですよね? ほら、もっと嗅いで下さいよ」

 

「うぐっ!ごほっ! ごほっ!」

 

「噎せながらも、本当はもっと嗅ぎたいんですよね? ほら、変態! もっと鼻を鳴らして嗅いで下さいよ!」

 

 マルタの言葉は鋭利な言葉がアイゼンの精神を容赦なく責め立てた。

 

 敵視していたレヴィアの言葉は屈辱的にアイゼンの精神を抉ったが、好意を持つマルタからの言葉は心を切り刻まれるような痛みと悲しさをアイゼンに与え、一層惨めにさせた。

 

「ごほっ!かっは!うぇぇ!」

 

「フフフ、情けない男ですね。こうやって顔を踏まれても逆らえない。くっさい足を嗅がされるだけで涙なんて浮かべて惨めですね。負け犬の元勇者様♪」

 

 無抵抗のアイゼンをいたぶる優越感にマルタの身体は火照り、下腹部は滾るように熱くなっていた。

 

 あぁ、気持ちいい!!

 

 もっとなぶりたい。苦しめたい。泣かせたい。惨めなアイゼンを見てみたい。

 

 そんな黒々とした欲望の炎は闇に落ちたマルタの本性をさらにエスカレートさせることになっていく。

 

「ねぇ、こうやって臭いを嗅がされているだけじゃ、変態のアイゼンにはもの足りませんよね? やっぱり変態の感じる定番と言えば決まってますよね?」

 

 グリグリグリと鼻先を踏みにじり、臭いを嗅がせながらマルタはニッコリと笑い、さらなる命令を下すのだった。

 

「私の足の臭いを嗅ぎながらオナニーしなさい」

 

 

「う……う……いぁ……め……」

 

 涙目で哀願するアイゼンの言葉はマルタの足の裏で押し潰され、ただの呻き声になってしまう。

 

「どうしましたか? 命令ですよ? 命令に従うのはゲームの前提ですよね?」

 

 マルタの言葉の通り、アイゼンの嫌がる意思に反して、右手は既に自分の股間へと伸びて自らのぺ●スを握りしめていた。

 

 好きな女性の前で顔を踏まれながら、自慰をさせられる。

 

 セックスなどなく、相手は衣服をきたまま同族の女性に、仲間にプライドをズタズタにされている。

 

 しかも、嗅がすことなど普通は躊躇うほどの臭い足を無理やり嗅がされながら、自慰を強制させられる。

 

 アイゼンは屈辱よりも羞恥心が身体を火照らせ、耳までも熱くなっていた。

 

 シコシコシコシコシコ。

 

「はっ! 情けない男ですね。噎せるほど臭い足の臭いを嗅いでるのに、萎えるどころかしごく度に大きくして。やはり、アイゼンは根の部分はドMの変態なんですね」

 

「うぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

「そんなに足が好きなら、もっと踏んであげますよ。その卑屈な顔、私の足の裏で覆ってあげますから」

 

 慕っていたマルタに侮蔑の眼差しを向けられ、鼻で笑われた瞬間、アイゼンの目には涙が浮かんだ。

 

 だが、その悲しみがマルタの伝わることはない。

 

 視界全体を覆い隠す足の裏に遮られ、足汗とともに頬を虚しく流れ落ちただけだった。

 

「クククク、ねぇ、アイゼン。お前って私のことが好きだったの?」

 

 押し殺した様な声で囁くマルタ。

 

 その口調の変化に戸惑うアイゼンだが、それ以上に聞かれた内容に動揺した。

 

「え?」

 

 なんだ?

 

 いきなり?

 

 なんでばれた?

 

 長年秘めていた想いがバレたことに動揺するが、マルタは黙秘を許さなかった。

 

「ほら、正直に答えなさい。これも命令よ」

 

「うっぁぅっ…………好きです」

 

 最悪の告白だった。

 

 好き相手からの命令で、全裸にされ、蒸れた足で顔を踏まれ、挙げ句オナニーさせられながら、無理やり告白させられる。

 

 ……消えたい。

 

 生まれて初めての告白をアイゼンは一生忘れられないだろう。

 

 死にたくなるほどのトラウマになる状況での告白をさせられ、アイゼンはさらに涙がとまらなくなった。

 

「うっ……ひっ……ぅっ……ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

(アハハ! アイゼンったらボロボロ泣いちゃって情けない! もう死にたいですよね? だってずっと私のことが好きで好きでたまらなかったのに、こんな最低の形でそれを、ばらすことになっちゃったんですもの! もう女に告白なんて二度とできない惨めな思い出になりましたよね!)

 

 顔を踏みにじるマルタはアイゼンの嗚咽を噛み締めながらじんわりと股間を濡らしていた。

 

 あぁ、いい。

 

 でも、アイゼンが絶望するのはまだまだ足りない。

 

 マルタはアイゼンの心を完全に壊すべく止めの言葉を紡ぐ。

 

「フフフ、そうでしたか。アイゼンは私のことが好きだったんですね。それはそれは嬉しいですよ?」

 

「え?」

 

 マルタの返答にアイゼンは目を開いた。

 

 まさか……両思いだった!?

 

 絶望の中でも希望とはとても輝く。

 

 それがどれほど含みがあって小さくとも――。

 

「勿論、勇者としてのアイゼンは……ですけどね? 今のお前を誰が愛するんですか? こんな女のくっさい足で発情してオナニーする様なド変態の負け犬のクズを! まさか、私が負け犬を愛するとでも? なんて浅ましいのかしら! 滑稽で笑えますわ! アハハハハハ!」

 

(ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!)

 

 頭上から響き渡る笑い声が脳内をグシャグシャに叩き回り、放たれる一言一言が心をめった刺しにする。

 

 希望の光など偽り、すがり付いた先はさらなる絶望の落とし穴があるのだ。

 

 あまりの絶望にアイゼンの視界が歪む。

 

 もう嫌だ。

 

 生きているのも辛い。

 

 いっそ楽になりたい。

 

 なんで、なんで、なんで、なんで……。

 

 砕けた心は元に戻らない。

 

 もうアイゼンの精神がまともになることはないだろう。

 

 そして、その砕けた心が組み上がる先はマルタにとって理想のアイゼンへと変わる。

 

 アイゼンの顔を踏みつけたまま、ゆっくりマルタは顔を近づけた。

 

 素足に踏まれ歪んでいたアイゼンの顔がさらに荷重で醜く歪むがその姿すらマルタには滑稽だった。

 

「クスッ! でも、そんなどうしようもないクズのアイゼンでも愛してあげられますよ?」

 

 囁くのは悪魔の甘言。

 

 割れそうな痛みの中、塞がれた視界のせいで敏感になった耳にはかかる吐息がゾクリとするほど背筋を駆け抜ける。

 

「私の奴隷になれば――人間ではないですが側においてあげます」

 

「うぁうっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 流し込まれた猛毒が砕けたアイゼンの心を容易く呑み込んだ。

 

 

Comments

コメントありがとうございます。 ぜひ、次回も楽しんでください!

異無

楽しみにしています

千夏

コメントありがとうございます。 次回のさらなる調教をぜひ楽しみにしていてください

異無

すごくいいです!嗅がせた後は、、、 今後の展開楽しみにしています。

イナイナ


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