(18) 最後にエプロン――袖に腕を通し、ハイウエストの位置でリボンを結んだあと、フリルや前掛けの形を整えてやれば完了である。 詩奈は目を輝かせて、 「わぁ、いいじゃない、キララちゃん! とっても可愛いわよ」 「ふふっ、とても似合ってるわ。これ、もともとは120センチサイズまでしかないものを大きいサイズで作ったものなのよ。詩奈ちゃんに着てもらおうと思ってね。断られたときはどうしようかと思ってたけど、代わりにキララちゃんに着てもらえて、よかったわ」 「う……」 つまりもともとは小学校低学年――もしくはそれより下の子向けの服なのだ。わざとらしくそのことを改めて言い聞かされて、アキラはまた赤くなる。 本音を言えばただただ恥ずかしいばかりで、今すぐ脱いでしまいたくてたまらない。しかし女の子の振りをする以上それらしいことを言わなければならず、 「か、可愛いお洋服を着せてくれて、ありがとう、静お姉ちゃん……」 「ふふっ、どういたしまして。キララちゃん、こっちには一週間くらい、いるのよね?」 「う、うん。そうだけど……」 「ならそのあいだ、可愛いお洋服をたくさん着せてあげるわね。まだまだ、キララちゃんに着せたいものはたくさんあるし――おもらししちゃっても平気なものもあるから、楽しみにしててちょうだい」 「う……うん、ありがとう、楽しみにしてるね……」 アキラは流されるままにうなずく。これから一週間の滞在中、毎日こんな女児服を着せられるかと思うと、それだけでも逃げ帰りたくなるほどだったが―― (い、いや、大学生活のために、我慢、我慢……!) ぐっとこらえて、引きつった笑みを作る。 エプロンそのものの着心地は、肩紐とウエスト部分の締め付けに違和感がある程度。しかし肩紐や前掛けの縁にあしらわれたフリルや、ウエストの後ろで結ばれたリボンを意識せざるを得ず、それがワンピースそのものの着心地と相まって、いっそう女の子らしい格好であることを自覚する。 (なんだか、まるでメイド服を――いや、それよりもひどい、女児用のメイドコスプレ衣装みたいな――) 「ふふっ、この服だと、おトイレに行くのがちょっと大変だけど――万が一おもらししちゃっても、キララちゃんはおむつだから心配いらないわね」 「うん! キララちゃん、おもらししちゃったら、あたしに言ってちょうだいね。すぐに取り換えてあげるから」 「い、いいよ、そのくらい、自分で――っていうか、おもらしなんてしないから――」 「遠慮しないで。あ、でも、あんまり一度にたくさんしちゃうと、さっきみたいに溢れちゃうから――白いおしっこと一緒に、二時間に一度出す感じにしよっか?」 「え……そ、それって、自発的におもらししろってこと……?」 「うん! それならお洋服を濡らしちゃう心配もないでしょ?」 「それは……そう、だけど……自発的におもらしだなんて、できるわけ……」 想像するだけで恥ずかしくなるアキラ。 いっぽうで詩奈の言葉に、静も反応する。 「あら? 白いおしっこって、もしかして……」 「そういえば、静お姉ちゃんにはちゃんと説明してなかったっけ。あのね――」 いたたまれなくなるアキラの前で、これまでの事情を説明する詩奈。 ホームステイに来るアキラのことを、詩奈たちが女の子だと思っていたこと。詩奈の部屋に案内したところで、勃起が見つかったこと。詩奈の安全のために、ホームステイの間は詩奈のおさがりを着て女児になりきり、2時間に一度射精するように言われていること。勃起が目立たないように、おむつを穿いていること。 すべてを聞き終わっても静は顔色一つ変えず、にっこり微笑んだままだった。それはどのような嫌悪や侮蔑よりも、アキラにとっては恐ろしい表情で―― 「ふふっ、そういうこと……ならお姉さんも、協力してあげられそうね。これからは毎日、うちにもいらっしゃい。可愛いお洋服を着せて――それ以上のことも、してあげるから」 「え……あ、ありがとう、ござい、ます……」 いったいどんな服を着せられて、何をされてしまうのか。戦々兢々としながらも、アキラは笑顔で肯くしかなかった。 * 「はぁ、疲れた……」 夜9時。あまりにも目まぐるしい一日が終わり、アキラは用意された「部屋」――詩奈の部屋で、クッションに腰を下ろし、テーブルに上体を倒れ伏しながら呟いた。 けっきょく星山家を辞した後もエプロンドレスを着せられたまま、アキラは午後いっぱいその格好で過ごすことになった。おむつへのおもらしこそ回避したものの、 「せっかくエプロンを付けているんだから、叔母さんのお手伝いしてちょうだいね」 「う、うんっ! キララ、叔母さんのお手伝いするねっ!」 と、美奈に言われて料理や配膳の手伝い。やっと脱ぐことができたのは夜7時過ぎ――美奈、詩奈に続いて、お風呂に入った後の頃だった。 もっとも、まだ完全にくつろげているわけではない。この場に詩奈こそいないものの、可愛らしい内装と、女児用の家具が置かれた女子小学生の部屋にいるだけで落ち着かないし、何より―― 「うぅ、パジャマまで、詩奈ちゃんのおさがりだなんて……」 半袖のパジャマは鮮やかなピンクで、肩周りと、ハーフパンツの裾にフリルがついているだけでも恥ずかしいのに、胸元に描かれているのは日曜朝に放送されている女児向けアニメのプリント。色とりどりの変身ヒロイン衣装を着た女の子たちと、可愛らしいマスコットキャラが描かれている。 「このパジャマも、低学年向けじゃないか――伸縮性があるから何とか着られるけど、サイズもちょっときついし、詩奈ちゃんが着てた感じが……」 ロリコンのケがあるアキラとしては、おさがりの服を着ているというだけでも昂奮しそうになるのだが、さすがにさきほど射精させられたばかりで勃起することもできず、ただ悶々とするばかり。おまけに―― 「さぁ、キララちゃん。お姉ちゃんと一緒におねんねしましょ?」 「う……うん……」 リビングから戻って来た詩奈に言われて、アキラは目を逸らしながら小さくうなずく。彼女はあろうことか、薄手のベビードールを着用していた。淡いピンクで、肩も胸元も丸出しのその姿は、年齢不相応にセクシュアルですらあった。体のラインや下に着たTバックショーツ、乳首までもが透けて浮いていて、アキラは目のやり場に困る。 そして、また―― (なんだろう、この、アンバランスさは……) 「2時間ごとの射精はロリコンのアキラから身を守るための措置」――そう言いながら、詩奈が同じベッドで寝るだけではなく、挑発的なランジェリーを着用していることに違和感を覚えるアキラ。しかしそのことを問いただす度胸はなく、 「おやすみ、キララちゃん」 「お、おやすみ、詩奈お姉ちゃん――」 同じベッドに寝て、互いの息遣いと体温を感じながら、アキラは冴えそうになる目を閉じるのだった。 (続く)
Vardei
2021-09-23 13:13:53 +0000 UTC