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連載小説「ベビーステイ」(11)

  (11) 「はぁっ、は、恥ずかしかった……」  叔母の家に帰りついたところで、アキラはぐったりとその場にくずおれた。 「くすくすっ、ちゃんとお買い物できてよかったわね、キララちゃん。まぁ――たくさんの人に、おむつっ子だって思われちゃってたみたいだけど」  アキラは揶揄われていると判っていながらも、顔を真っ赤にする。  ドラッグストアでおむつを購入し、その場で穿きかえさせられてから、アキラはその手に紙おむつのパッケージと、透明な袋に入れた女児用ショーツを下げて、帰宅したのだった。その姿はまるで、おもらししてしまった少女が「お土産」を持って帰るがごとく、通行人の目を引いた。「あんなに大きいのにおもらししちゃって、ドラッグストアでおむつを買って帰ることになった女の子」という目で見られ、通りすがりにくすくす笑われて、アキラの心はすでにボロボロだ。 「アキラちゃんったら、ドラッグストアに行って帰ってきただけなのにへとへとになっちゃうなんて。体力も小学生並なのね」 「ち、違う……もん……さ、サンダルが、歩きにくかったから……」 「くすくすっ、じゃあこれから慣れるために、いっぱいお出かけしないとね。それはともかく、あんまりゆっくりしてたら日が暮れちゃうわ。キララちゃんのおちんちんを隠すおむつも買えたことだし、お隣さんへの挨拶に行くわよ」 「う……うん……」  ようやく息が整ってきたアキラは、改めて立ち上がろうとする、が。 「でもその前に――ちょっと汗をかいちゃったわね。いったん着替えるから、部屋に戻りましょ。どうせなら、ちゃんとした格好の方が良いもんね」 「き、着替え……うん、わかった……」  アキラは素直にうなずいて、サンダルを脱ぐ。 (いま着てるこの格好に比べたら、どんな服だってましだろう――)  そう、思っていたのだが。 「き、キララ、この格好で、挨拶回りに……!?」  上品なパフスリーブのブラウスに、エンジの細い紐リボン。紺のプリーツスカートには肩紐がついていて、足元はレースのついた白いショートソックスと、いかにも女子小学生の制服、あるいはフォーマルな女児服だ。  ただし――やはりサイズが少し小さく、ブラウスの胸元や肩回りはピチピチだし、スカートの丈も短くなってしまっている。ちょっとでも動くと、下に穿いているおむつが見えそうだ。  青ざめるアキラだったが、詩奈はご満悦で、 「うんうん、お上品でいいじゃない、キララちゃん。これならどこにお出かけしても、恥ずかしくないわね」 「う……うん……」  どこに出ても恥ずかしくないどころか、こうして立っているだけでも辱めの極みなのだが、逆らう気力も、度胸もない。そのまま玄関で、これまた女児用の黒のストラップシューズを穿かされて、外に連れ出された。  再び青空の下で陽光を浴びつつ、しかしアキラの表情は曇っていた。 (この服装、見せられた時は、さっきのより露出が少ないからまだましだと思ってたけど、思ってた以上に恥ずかしい……) (ブラウスが窮屈だから、ちょっとでも動くと生地が肌をこするし、ピッチピチになっちゃうし……意外としっかりした袖口も、腕に当たって落ち着かないし……) (なによりこの、プリーツスカート……短くてすぅすぅして頼りないだけじゃなくて、ちょっとでも動くとすごい揺れて、落ち着かない……! 短いから、太ももの上の方……ほとんど股下ぎりぎりのところをこするし……) (おまけに中に穿いている紙おむつが、ちょっときつくて、動きにくい……! ストラップシューズは、歩きやすくていいんだけどな……)  内心で愚痴をこぼしつつも、詩奈の後について向かったのは右隣――「天野川」の表札がかかる家だった。大きさとしては月潟宅と同じくらいだったが、デザイナーによるものなのか凝った外見だ。  詩奈がチャイムを鳴らして、 「すみませーん、お隣の月潟です。うちにいとこが来ることになったので、ご挨拶に伺いました」 『あら、詩奈ちゃん? わざわざ悪いわねぇ。ちょっとまってね、いま、銀子を出すから』  インターフォンからの返事に、アキラの胸中で不安が膨れ上がる。今からこの姿で、お隣さんに挨拶しなければならないのだ。  詩奈はくすくす笑って、 「大丈夫よ、キララちゃん。このうちの子――銀子は、あたしの幼馴染で、親友なの。きっと、キララちゃんとも仲良くなれるわ。キララちゃんがいい子にしてたら、ね」 「う、うん……」  会話をしている間に、玄関が開いて一人の少女が出てきた。 (た、高いっ――!)  まずアキラの目を引いたのは、その背の高さだった。160センチ以上、アキラより10センチ以上も高い。きりりと引きしまった顔立ちは、女児服すら似合ってしまうアキラよりもはるかに男前で、「イケメン」とさえ評していいほどだった。前髪を左右に分けて、高等部の高い位置で結ったポニーテールも、凛々しい印象を際立たせる。  着ているのはサックスのポロシャツと、デニムのショーパンで健康的に引き締まった手足がすらりと伸びていた。  彼女はにっこりと、意外なほど女の子らしい笑顔でアキラたちの前までやってくると、外門を開けながら話しかけてくる。 「詩奈ちゃん、やっほー。ちょうどいま、千香子と遊んでるところだったんだ」 「あ、千香子も来てるんだ。じゃ、ちょうどいいね。千香子にも紹介しかったから。銀子、この子がうちに来ることになった、いとこのキララちゃん。仲良くしてあげてちょうだい」 「へぇー、この子が」  銀子は腕を組んで、遠慮のない視線をアキラに向け、唇の両端を微かに吊り上げた。  アキラはたちまち射すくめられる。相手が年下の女子小学生だと判っていながらも、上から見下ろされると委縮する。まして女児服に紙おむつという姿では、本当に年下の少女になってしまった気分だ。 「初めまして、あたしは天野川銀子。小学5年生だけど、詩奈とは親友で、よく一緒に遊んでるの。よろしくね」 「よ、よろしく、おねがいします……あの、あ、あたし……日下部、キララ、です……し、詩奈お姉ちゃんの、いとこで、小学、に、二年生……です……」 「2年生……? ずいぶん背が高いのね。ま、あたしが言うことじゃないけど。ふふっ、よろしくね、キララちゃん」  銀子はそう言ったところで、頭上から照り付ける太陽をちらりと見上げ、 「こんなところで立ち話もなんね。もうちょっとお話したいから――二人とも、あたしの部屋に上がっていってよ」   (続く) ※英語版を追加しました。Vardei様、ありがとうございます。

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Dressed from top to bottom in a girlish uniform, Akira went around to greet everybody. At the house he visited, he met a girl who was taller than him. I'm Ginko Amanogawa, I'm in the Fifth grade, I'm Shiina's best friend. I-I'm… Kirara… Kusakabe…. I'm Shiina-oneechan's cousin…. I'm in the… Second grade… Heehee, nice to meet you, Kirara-chan. Why don't you come upstairs so we can have a chat?

Vardei


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