(10) 「え……こ、ここでっ!?」 「ええ。スカートだから、パンツを脱いでおむつを穿きなおすのも簡単でしょう?」 「そ、それはそうだけど、でも……」 「あら、あらあら」 店員は意地悪く笑い、 「キララちゃんはずいぶんおませさんなのね? パンツを脱いだり、スカートの中を見られたりするのがそんなに恥ずかしいのかな? まるで――小学二年生の女の子じゃ、ないみたい」 「うっ……!」 巧みに退路をふさがれて、アキラは言葉に詰まる。 それでもなんとか言い訳を考えて口に出そうとしたところへ、 「そんなことないわよね、キララちゃん? 確かにちょっと背が高くて、体格もよくて、大人びたところもあるけど、本当に小学二年生の女の子だもん。人前でおむつに穿きかえたって、恥ずかしくなんて思わないわよね?」 とどめとばかりに詩奈に釘を刺され、さらに周囲のお客たちからも注目を浴びていることに気付いたアキラには、 「う……うぅ……うん……き、キララ、おむつに、穿きかえる……」 そう答えるよりほかに道はなかった。 「くすくすっ、やっぱりキララちゃんは、2年生の女の子だったのね。じゃあ、そこで穿きかえてちょうだいね」 店員がそう言って指さしたのは、レジの横――買ったものをカートから袋に詰め替えるために用意されたスペースとの、中間地点に当たる場所だった。ちょうど畳一畳分ほど、空白になっているスペースがある。 しかし当然、他の客の視線を遮るものなど何もない。むしろ入り口にも、レジにも近く、最も他の客からの視線を集める場所であった。 「ありがとうございます。さ、キララちゃん。おむつのパッケージを持っていてあげるから、まずはパンツを脱いじゃって」 「は、はーい……!」 他の客の目を気にして、アキラは精いっぱい女の子らしい声を出す。 (脱ぐ……ここで、パンツを……!?) 内心では冷や汗を流しながら、それでもなるべく自然に見えるよう、詩奈におむつのパッケージを渡して、ショーツの中に手を入れる。じりじりと背を焼くような、文字通りの焦燥感に指先を震わしつつ、中のショーツをゆっくり下ろす。 フロントにピンクのリボンがついているだけの、純白のショーツ。それは詩奈がふだん履きにしているものであり、つい数時間前からアキラが穿いているものであり――公開オナニーで飛び散った精液を拭きとったものでもある。アキラにとっては羞恥と罪悪の象徴のような一枚であり、穿いているだけでも十分な辱めだったが―― (ぬ、脱いで、中のおちんちんが見えたら、どうしよう……!?) もはや彼の陰部を隠しているのは、太ももの半ばにも足りない女児用スカート一枚だけ。下から覗きこまれる心配はないにせよ、大きく足を上げてめくれたり、転んだりしたら、股間に生えている少年の証が丸見えになってしまう。 足を上げすぎないよう、前かがみになって。万が一にもバランスを崩さないよう、慎重にサンダルから足を持ち上げて、足先からショーツを抜き取る。サンダルにヒールがついているため、一瞬も気を抜けない。他のお客たちに向けているお尻を大きく突き出して左右に振る、みっともない姿になってしまっている自覚はあったが、他にどうしようもなかった。 「はっ、はぁっ……パ、パンツ、脱げたよ、お姉ちゃん……」 「くすくすっ、よくできました。それじゃあパッケージを開けて、おむつを取り出してね」 「う……うんっ」 詩奈は用意よく持ってきていた透明なビニール袋にアキラのパンツをしまい、かわりに買ったばかりのおむつをパッケージごと渡す。 (うう、せめて、出して渡してくれればいいのに……ノーパンのままでおむつを開けて取り出すなんて、恥ずかしすぎるよ……) 泣きそうになりながら、それでもパッケージを破り、中から紙おむつを一枚取り出す。 淡いピンクに花柄の、女の子らしいデザイン。手触りは綿のようにモコモコとしていて、かなり厚手だ。パッケージを見れば「大容量で夜でも安心!」と書かれていて、おむつを当てていることが目立たないようなるべく薄手の設計にする他の商品とは、一線を画するコンセプトらしい。 (これ、スカートの上からでも目立っちゃうんじゃ……?) 今さらながらに、軽率に選んでしまったことを後悔するアキラだったが、もはややめるわけにもいかない。前後ろを確かめて両手で広げると、パンツを脱ぐときと同様、慎重に足を上げて穿いていく。 「う、くっ……」 紙おむつの構造は、伸縮性のある紙パンツにの股間からお尻側にかけて、たっぷりとした吸水ポリマーの帯が貼り合わされ、特に股下の部分にはその左右に横漏れ防止用のシートが立ててある。さらに「いっぱい動いても安心」が売りのこのおむつは、おへそから下まですっぽりと包むハイウエスト構造だった。 その紙パンツのゴワゴワとした感触が、まずはふくらはぎから太ももへと脚をこすりあげる。特に内側にはしっかりとした吸水パッドが入っているため、余計に違和感があった。それでもようやく下腹部に達しようというところまで来て、アキラはようやく気付く。 (こ、これ、スカートを脱がないと、ちゃんと穿けないじゃん……!) 普通のおむつであればめくりあげれば済むところを、これはおへそまで隠れるハイウエスト。しかもスカートも伸縮性のないタイプのため、裾から引き上げることすらできない。 そのことに、すぐ横で見ていた詩奈も気が付いたようで、 「くすくすっ、そのままだとおむつを穿けないわね。アキラちゃん、スカートをいったん脱いで、おむつを穿いちゃいなさい。恥ずかしくないでしょ?」 「う、うんっ……」 そう言われては断れず、アキラはスカートの左脇のファスナーをおろすと、泣きそうになりながら足元に落とす。 ドラッグストアの一角――たくさんの客と、レジの店員が見ている前で、おむつ一枚の下半身を露わにする。幸いなことに、緊張で委縮しきったペニスはおむつの上からだとほとんど目立たず、男だとバレる最悪の展開こそなかったが、 (あらやだ。あの子、こんなところでおむつに穿きかえてるだなんて) (あんなに大きいのに、まだおもらしが治らないのかしら。かわいそうねぇ) そんな嘲笑と揶揄の小波が伝わってくるようで、恥ずかしいことに変わりはなかった。 (でも、あともう少し……!) アキラはハイウエストをおへその上まで引き上げて、ようやく着用に成功する。 とたんに、上向きになっているペニスの裏側から陰嚢、会陰部そしてお尻にかけて分厚い吸水パッドが当たり、また別の羞恥に襲われる。特に両足の間に、もこもことした綿のような質感が当たる違和感は相当なもので、ショーツを穿いた時と同様、「おむつを穿いている」という認識に辱められる。 それでもこれで、何とか着用完了だ。急いでスカートを穿きなおして、 「はっ、はぁーっ……は、穿き終わったよ、詩奈お姉ちゃん……」 「くすくすっ、ちゃんと一人で穿けて偉いわね、キララちゃん。もう二年生なだけあるわね」 「え、えへへ……」 引きつったように笑って見せるアキラの頭を、詩奈の手が撫でる。再三にわたる辱めにすっかり傷だらけになった胸に、偽りのものとわかっていても優しさがしみて、思わず涙ぐみそうになるのをこらえなければならなかった。 そこへ、レジの手が空いたのかちょうど先ほどの女性店員がやってきて、 「よかったわね、キララちゃん。これでおもらししても安心ね」 「う……うん……お姉さんも、ありがとう、ございました……」 いろいろな意味で真っ赤に染まった顔で、お礼を言うアキラ。しかし、 「それで――本当はキミ、男の子でしょ? いくつなの?」 すぐ近くに来た店員が小声で尋ねた言葉に、一転、血の気が引いて真っ青になる。 「ひっ……!? あ、あの、その……高校、三年生、です……」 「あははっ、やるじゃない。高校三年生の男の子が、女子小学生から年下扱いされて、女児用のおむつを買いに来るだなんて。もしかしてキミ、そういう趣味なの?」 「ち、違います、これは――」 「あら、アキラお兄ちゃん。いいの? 本当のことを言っちゃって」 「う、うくっ……」 「ふふっ、なんだか複雑な事情がありそうだけど、今は仕事中だからまた今度、機会があったらゆっくり聞かせてもらうわ。じゃあね、キララちゃん」 「う、うう……はい……」 男だとバレていたと知り、いっそう恥ずかしくなるアキラ。すでに心のHPはゼロで、今すぐ家に帰りたい気持ちでいっぱいだったが、ここは実家から遠く離れた東京。むしろまだまだ試練は始まったばかりで―― 「さ、キララちゃん。これでもう安心ね。いったんおうちに帰って――ご近所さんへの挨拶回りをしようね」 詩奈にそう言われて、アキラは本当に幼い少女になってしまったかのように、こくりと肯くよりほかないのだった。 (続く) ※挿絵に英語版を追加しました。Vardei様、ありがとうございます!
Vardei
2021-09-08 12:43:22 +0000 UTC