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連載小説「ベビーステイ」(9)

  (9) 「うちの近くには幼稚園もあってね、あたしもむかし通ってたんだ。あと、おとなりの静子お姉さんが、そこで保育士さんをしてるのよ」 「へ、へぇ~、そうなんだぁ~」  詩奈の言葉に相槌をうちながらも、アキラは小心なリスのように周囲を見回す。  ふたりはすでに住宅街を抜け、幹線道路へと出ていた。とうぜん、人の密度は一気に跳ね上がる。休日の昼間とあって住宅街ではほとんど見なかった人の姿も、通りに出ればちらほらいるし、何より片道二車線の通りを、車がどんどん走っている。 (このみっともない姿を、車の中からたくさんの人に見られてるかもしれない――) 考えるだけで、お尻の穴がキュッとなる。一刻も早くたどり着きたいのだが、ミニスカートと、慣れないヒール付きサンダルのせいで歩く速度が鈍るのがもどかしい。  2分ほど歩いたところで、遠くによく見るドラッグストアの看板が見えた時には思わずほっとしたが、それでもまだ結構な距離がある。けっきょく片道5分ほどで、アキラたちは目的のドラッグストアに到着した。その間にどれだけの人に、女児服姿を見られたのかと考えると、今すぐ過去ごと自分の存在を消し去りたいほどの恥ずかしさだった。 「いらっしゃいませー」  店内に入ると、入り口で棚の整理をしていた小柄な女性店員が出迎えた。黒髪を後ろに結わえ、眼鏡をかけた地味な印象だが、眼鏡を外して化粧をすればなかなか化けそうだ。  彼女は二人をちらりと見て、一瞬目を丸くしたものの、すぐに何事もなかったかのように仕事を再開する。 (うう、びっくりされてる……いやでも、スルーしてくれるならありがたいかも) (あとはおむつコーナーを探して、購入するだけ――店内では他の客に見られるだろうし、レジに持っていくのは恥ずかしいだろうけど、そこさえ我慢すれば……)  そう思っていた、アキラだったが。 「お忙しいところ、すいませーん」  すぐ隣の詩奈が、大人びた物言いで、その店員に声をかけたのである。 「はい、なにかしら、お嬢ちゃん?」 「探してるものがあるんですけど、その場所まで案内してもらっていいですか?」 「もちろんですよ。何をお探しですか?」 「それは――ほら、キララちゃん」  ハラハラしながら見守っていたところへ、とつぜん自分に振られて、アキラは心臓が飛び出しそうになるほど驚く。 「オ――き、キララ?」 「キララちゃんのものを買うんだから、当たり前でしょ? ほら、キララちゃん。何が欲しいのか、店員さんにちゃんと言いなさい」 「う、うん……」  まるで、しっかり者の姉に叱られる人見知りの妹である。自分の方が身長が大きいこともあって、情けなさと滑稽さに泣きそうになりながらも、 「あ、あの、キララでも、穿けるくらい、おおきい、紙おむつが、欲しいんですけど……」 「あら、あら」  そんなアキラの姿にも、店員はにっこり笑って、 「かしこまりました。ふふっ、人見知りで恥ずかしがり屋さんなのに、ちゃんと言えてえらいわね、キララちゃん。こっちにあるから、ついて来てちょうだい」 「は、はい! ありがとうございます……」  先に立って歩き始める店員の後を追う、アキラと詩奈。幸い店内の客はまばらだったが、店員が話しかけてくるので気の休まるときはない。 「キララちゃんの方が大きいけど、妹さんなのかしら?」 「ううん。キララちゃん、店員さんに、『自己紹介』してごらんなさい」 「は、はいっ! あ、あの、アキ――キララは、詩奈お姉ちゃんの、いとこで、しょ、小学、二年生です……」 「まぁ、姉妹じゃなくて、いとこだったのね。それに、小学二年生なの。にしてはずいぶん大きいけど――おもらしが治らないなんて、大変ね。詩奈お姉ちゃんは、何年生?」 「あたしは三年生よ。夏休みの間、いとこのキララちゃんが泊まりに来ることになったんだけど――キララちゃん、おむつを忘れちゃったみたいなの。だから買いものに、付き添ってあげてるの。くすくすっ、ちゃんと自己紹介で着てえらいわよ、キララちゃん」  そう言って、詩奈はまたアキラの頭を撫でる。またしてもお尻からせりあがるむずがゆさに、アキラは必死で耐えなければならなかった。 「まぁ、お姉ちゃんは大変ね」  詩奈の語る嘘八百の脚本に、笑いながら応じる店員。アキラにとっては羞恥攻めの極致だったが、それでも話をしている間に、目的の売り場へとたどり着いていた。 「ここが、女の子用の紙おむつ売り場よ。ほら、見覚えのあるパッケージがあるでしょ? キララちゃん、普段はどれを穿いてるのかな?」 「え、ええと……」  そう聞かれても、女児用の紙おむつなんて穿いたことはない。おまけに目の前には、女の子の写真がプリントされたスーパービッグサイズの紙おむつのパッケージが並んでいて、まるで彼女たちに見られているようで落ち着かなかった。  アキラが答えに窮していると、 「キララちゃん、なるべくかわいい紙おむつを選んでおいた方が、怪しまれずに済むわよ」 「うっ……」  詩奈に耳打ちされ、アキラは鼻白む。  しかし彼女の言うこともまたその通りなので、 「え、えっと、これ、ください……」  数あるパッケージの中で、とりわけ可愛いもの――淡いピンクに花柄がプリントされた、深ばきの女児用紙おむつを選んだ。 「ふふっ、これね。かしこまりました。それじゃあ、他に買うものがなければレジにいらっしゃい。お会計してあげるから」 「よろしくお願いします、お姉さん」  アキラが断る暇もなく、詩奈がそう答え――店員はにっこり笑って、レジへと場所を移した。  すでに3人並んでいて、アキラたちはその最後尾につく。背の高い「女の子」が、サイズの合わない女児服を着て、しかも女児用の紙おむつをもって並んでいる姿は当然に人目を惹き、並んでいる客たちからじろじろ見られたが、もはや逃げ出すこともできない。女児おむつのパッケージを前に下げ、股間のふくらみを隠すのが精いっぱいだ。  5分ほど待ったところでようやくレジへと到着し、財布を持っていた詩奈が会計を済ませる。会計してくれたのは、おむつ売り場まで案内してくれた女性店員だった。彼女は清算が済んだおむつのパッケージにテープを張り、 「はい、お買い上げありがとうございます。そうだ、キララちゃん」 「な、なぁに?」  精いっぱい女の子らしい声で受け答えするアキラ。  その彼に、店員はとんでもない爆弾を投下する。 「帰り道でおもらししちゃったら大変でしょう? せっかく買ったばかりの紙おむつがあるんだし――ここで紙おむつに、はき替えて行ったらどうかしら?」   (続く) ※挿絵に英語版を追加しました。Vardei様、ありがとうございます!

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Comments

In order to hide his erection, Akira is brought along to a drugstore to buy diapers. Umm… I would like these flower-pattern disposable diapers, please. Of course. While you're at it, why don't you go ahead and change into them right now?

Vardei


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