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連載小説「通販カタログから」(34)

  (34) 「こんにちは。今日はよろしくお願いしますね」 「よ、よろしくお願いします!」  母さんとぼくが挨拶すると、日奈ちゃんのお母さん――斎藤さんは目を丸くして、 「まぁ、まぁ、裕ちゃん? 話には聞いてたけど、すっかり大きくなっちゃって」  そう言った斎藤さんの目線が注がれていたのは――ひさしぶりに紺のセーラー服を着たぼくの胸元だった。 「F? G? もうそのくらいあるんじゃない?」 「は、はい……その、先週はかってもらった時は、そろそろHカップになるって……」 「まぁまぁ。ふふっ、来年から小学生だなんて、信じられないわねぇ」  そこまで言ったところで、斎藤さんはようやく気付いたようにポンと手を叩き、 「あらやだ、私ったら、大事なことを忘れてたわ。卒業おめでとう、裕一くん。それと――初等部進学も、ね」 「は、はい。ありがとうございます」  時は過ぎ、3月下旬。今は卒業式を終えた日の午後だった。  さすがに卒業式のようなセレモニーの場を乱すわけにはいかないので、今日ばかりは他の生徒と同じ制服――と言っても女子制服で、女子としての出席だったけど。ちなみに亮と明春も、セーラー服での卒業である。  そしてぼくは、聖ジョアンナ女学園初等部への入学を決めていた。女子小学生になるにあたり、学校から渡された薬も服用を始めていて、すでに男性機能はほとんどなくなっている。  いや、それは覚悟の上だったからいいんだ。問題は、薬の「副作用」が予想以上に強く出てしまっていること。服用を始めてから半年足らずの間に、ぼくの胸はクラスの女子の誰よりも大きい、G~Hカップにまで成長してしまっていた。母さんも大きいし、たぶん女の子だったら巨乳に育つ遺伝子があったのだろう。  今こうしていても、胸が重い。ブラジャーのストラップが肩に食い込んで、「胸が大きい人は肩が凝りやすい」を実感しているところだった。薬の影響もあって背中まで伸びた髪は、三つ編みにして胸元に垂らしている。  斎藤さんは心得たようにうなずいて、 「それで今日は――卒業記念写真の撮影かしら?」 「はい、お願いします」  いまぼくたちがいるのは、斎藤さんの経営するフォトスタジオ。こじゃれた感じの一軒家の、エントランスホールに当たる場所だった。まずはここで、撮影の受付と打ち合わせをするのだ。  軽い打ち合わせの後、白背景のスペースで撮影することになった。セーラー服で卒業アルバムを入れた筒を持ち、ちょっと澄ました表情と、ポーズをとって撮影してもらう。 「ふふっ、胸が大きいから、本当に女の子にしか見えないわね。小学生にしては、ちょっと大きすぎるけど」 「は、はい……」  実のところ、そこはちょっと悩みの種だ。初等部の制服はすでに届いていて試着も済ませているんだけど、ジャケットの胸元がかなり前にせり出して開いてしまっているし、ランドセルを背負うといっそう強調される。巨乳系モデルの制服グラビアのような状態だ。  でもそのくらいで、めげてはいられない。これから6年間、Hカップの女子小学生として生活しなくちゃいけないんだ。 「うん、セーラー服はこれでいいわね。それじゃあ次の服、着替えてちょうだい」 「はい」  ぼくはうなずくと、別室でセーラー服を脱ぎ、もちこんでいたもう一つの卒業スタイル――ワンピースにセーラー襟ボレロの、卒服スタイルに着替えた。 「う……胸が、きつ……!」  一応一番大きい165サイズを選び、身長的には問題ないものの、胸元がきつい。ダーツで立体感のあるワンピースでさえピチピチで、上に羽織るボレロにはカーテンが出来てしまっている。 「ぼく、男子なのになぁ……」  三つ編みにしていた髪は、ほどいてロングヘアのまま後ろに垂らせば―― 「あらあら。まるで小学校の卒業スタイルね。来年から小学生なのに」  別室から出てきたぼくを見た斎藤さんが、おかしそうに言ったとおりの状態になってしまう。 「は、はい。その……中学生から、小学生に逆戻りする感じにしたいので……」 「ふふっ、わかったわ。それじゃあさっきと同じように、ポーズをとってちょうだい」  と、撮影再開。先ほどよりも笑顔を無邪気な感じに、小学生の女の子らしさをイメージした表情を作る。  卒業記念の写真撮影は、これで終わり――だけど。 「さぁ、最後の着替え、してちょうだい」 「はーい!」  ぼくは元気よく答え、再び別室で着替え始めた。  襟にも袖にも前立ての左右にも、フリルがたっぷりついた丸襟のブラウス。淡いピンクのジャケットと三段フリルスカートも、襟や裾にフリルがついている。襟元には赤系チェックのリボン、胸元にはコサージュ、足元はレースのついたショートソックスと、ピンクのエナメルシューズ。  入学式用の、ピンクの女児スーツ――もちろん実際の入学式では初等部の制服を着るため、このスーツでの出席はできない。なので卒業写真を撮影するついでに、入学スーツの記念写真も撮っておこうというわけなのだった。 (こんなふりふりの女児スーツの150センチサイズ、母さんどこで見つけてきたんだ……)  入学スーツなんて普通なら130、せいぜい140センチまでしかないことは、女児服カタログを見て確認していたぼくはよく知っている。150センチでもじゅうぶんにおかしいくらい大きいんだけど、それでも160近いぼくにとってはちょっと小さい。スカートの丈はかなり短くなって太腿が半分以上出ているし、肩や袖まわりもちょっと苦しい。なにより胸元はかなりピチピチになっていて、大きく開いたジャケットの間から言えているブラウスのボタンは、いまにもはちきれそうだった。  あまりにも恥ずかしい「入学」スタイル――半年前だったら、スカートの下でおちんちんを大きくしちゃっていたところだけど、いまはその心配もない。勃起を心配せずに女の子の格好ができるのは、これはこれでメリットだ。  最後に髪をリボンでツインテールにして、ランドセルを背負ってスタジオに戻ると、 「あらあら、さすがにちょっと小さいみたいね。ふふっ、でもとっても似合ってるわよ、裕ちゃん。日奈の入学式を思い出すわ」 「あ、ありがとうございます! 撮影、お願いします!」 「ええ、任せてちょうだい。裕ちゃんの入学記念写真、ちゃんと可愛く撮ってあげるからね」  ぼくは精いっぱい、本当に女子小学生のように無邪気な笑顔を作り、撮影してもらう。それは中学生から小学生へ――本格的に始まる女児生活の第一歩を記念する写真だった。   (続く?)

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