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連載小説「通販カタログから」(33)

  (33) 「受験番号1707、瀬川裕一です。よろしくお願いします」  10月半ばの筆記試験と体力試験を無事パスして(幼稚園の制服を着て、幼稚園児たちと一緒にテストを受けるのは恥ずかしかったけど、それはまた別のお話だ)、11月初旬、ぼくは初等部事務棟の会議室と思われる一室で「面接」に臨んでいた。  部屋の奥側には長いテーブルと、椅子に座った3人の面接官――左から年配の女性、若い女性、そして5年生くらいの女子児童。それぞれの前に、「学校長」「1年担任」「児童会長」の札が立ててある。  そして3人と向かい合うようにして椅子が置かれていて、 「どうぞ、着席ください」 「はい、ありがとうございます」  ぼくは一礼すると、その椅子の前に立ち、スカートをさばき膝をそろえて座った。  その様子に、児童会長の女子はくすくす笑って、 「ふふっ、似合ってますよ、附属幼稚園の制服」 「あ、ありがとうございます! この制服とっても可愛くて、ぼくも気に入っています」  自分の姿を見下ろし、恥ずかしがりながらそう答える。  丸襟で、襟の縁と袖口にフリルがついた長袖ブラウスに、赤無地の吊りスカートと、紺のダブルボタンイートンジャケット。襟もとには真紅のリボンを結び、胸元には赤いチューリップの名札、足元はレースのついたショートソックスを履いている。  どこからどう見ても幼稚園児の制服――しかしそれを着ているのは、そろそろ身長160センチになろうかという少年である、ぼく自身の体である。冷静に考えると冗談のような光景だったけど、面接官たちは特に驚いた様子もない。  児童会長の女子もごく普通に、 「その制服は、いつも着てるのかな?」 「はい! 受験しようと決めてから、毎日着て生活しています!」 「そうなんだ。瀬川さんは、本当は中学生だったわよね? 中学校でも、その制服を?」 「……は、はい。最初は、校則違反になるからと思っていたんですけど、お友達が、この制服で通学したらいいって言ってくれて……学校も、特別に認めてくれたので、幼稚園の制服で、中学に通っています。学校以外では、水色のスモックの、遊び着を着ています」 「まぁ、まぁ。ふふっ、いいお友達に恵まれたのね」 「はい。みんなには、感謝しています」  ぼくの答えに、児童会長は満足したようだった。  じっさい、本当なら学校にまで着ていくつもりはなかった。けれど、ちょうど幼稚園の制服が届いたその日、凛や桃花をはじめとするクラスメイト達も遊びに来ていて、彼らの前で着て見せることになったのだ。そしてその流れのまま、「学校にもその制服出来たらいいんじゃない」という話になって――ぼくは幼稚園の女児制服を着て、中学校に通っている。  続いて「担任」の女性教諭が、 「それじゃあ、自己紹介してくれる?」 「はい!」  ぼくは改めて、 「**市立第二中学校3年生、瀬川裕一です。15歳の男子ですけど、可愛いお洋服や女の子らしいものが大好きで、女子小学生になりたいと思っています」 「女の子の格好は、いつからしてるのかしら?」 「ええと、5月くらいに女子小学生の制服を買ってもらってから、友達に女児服をもらって、中学にも女子用のセーラー服で通うようになって……それからはずっと、女の子の服を着て生活しています」 「なるほど。ほかに、女の子らしくなるためにしていることは?」 「あとは……女の子向けの雑誌を読んだり、アニメを見たり、あと近所の『お姉ちゃん』たちに、ゴム飛びや一輪車を教わったりしています。あと、近所の教室でバレエを習ってます」  幼稚園の制服を着ていることは、すぐに日奈ちゃんと月乃ちゃん、そしてその友達数人にも知られてしまった。それからというもの、ぼくは彼女たちのことを「お姉ちゃん」と呼んで、まるで年下の子のように扱われている。 「裕ちゃん、日奈たちといっしょに縄跳びしよう!」 「来年から小学校でしょ? 月乃がお勉強、教えてあげるね!」 「日奈お姉ちゃん、月乃お姉ちゃん、ありがとう!」  幼稚園の女児制服を着て、女子小学生二人から年下扱いされると、ずっと体の大きい自分が本当に幼稚園児になってしまったかのような、そんな奇妙な錯覚に陥ってしまう。  他にいくつか中学校での成績のことなどを聞かれた後、女性教諭からの質問も終わり、最後に学校長から―― 「さて、ここまでの面接試験の内容としては、問題なく合格です。ですので改めて『再教育制度』について、非公式の部分も交えたうえで説明したいと思います」 「は、はい。お願いします」 「あなたには来年度から女子小学生として通っていただくわけですが、もちろん女子児童たちの安全というものもあります。男子と女子のことですから、わかりますよね?」 「は――はい」  なんとなくわかる。男子を女子小学校に入学させて、もしもその男子が女子小学生たちに欲情したら、大問題になる。ぼく自身も、「もし学校で勃起したらどうしよう」と不安だったのだ。  すると学校長は、スーツの胸ポケットから小さな瓶を取り出した。中には白いカプセル錠が詰め込まれている。 「ですから入学が決定した時から、あなたにはこの薬を飲んでもらいます。詳細は省きますが――これを飲むことによって男性能力をなくし、成長を抑制し、また女の子らしい体つきになるのです」 「そんな薬が……」 「ええ。胸が大きくなる副作用はありますが、その程度は許容範囲内です。そしてこの薬を、本校を卒業するまで服用してもらいます。つまり初等部、中等部、高等部、さらに大学に進むなら、合計16年の間、男性機能と成長を止めることになります。いえ、副作用で男性機能が回復しないことも、十分あり得ますね」 「…………」 「どうですか? この薬を飲んで、本校に入学しますか?」 「……………………」  男性機能を抑制――つまりはその薬を飲んでいる間、女装オナニーできないということだ。さらに学校長の言うとおり、回復しない可能性も高い。もとはと言えばオナニーのために女装を始めたようなぼくにとっては、あまりにも大きな選択だった。  もちろんここでやめてもいい。女子小学生になれずとも、普通の高校生活を送りながら家では女児女装して、オナニーを楽しむことだってできる。怪しげな薬で男性機能を失って、女子小学生として生きなおすより、そっちのほうがずっと「まとも」な人生を送れるだろう。  そんなぎりぎりの選択に、ぼくは――   (続く)

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