※ 展開が冗長になりそうだったので改稿しました。こちらから続きますので、ご了承ください。改稿前は「源太と一緒に行っていたらif」で。 (25) 8月が始まって、最初の週末。 ぼくたち一家は父さんの運転する車で、都内から一時間ほどのところにある海水浴場にやってきていた。目の前の駐車場に停まったところで、 「ついたわよ、裕ちゃん。さ、水着姿を見せてちょうだい」 「う……うん」 後部座席で水色花柄のキャミワンピースを脱ぐと、あらかじめ着ていた水着になる。それは旧スクでも、前に着たワンピース水着でもなく―― 「あら、大人っぽくていいじゃない」 「はっはっはっ、背伸びしてる女の子みたいで可愛いぞ、裕一」 「う……あ、ありがとう……」 両親の褒め言葉にすら辱められるその水着は、黒と紫の配色がちょっと大人っぽい、女児用のビキニ水着だった。 トップスは三角ブラで、ボトムスはビキニ。それぞれアンダーバストとウエストにフリルがついていて、辛うじて股間のふくらみは隠せているが、女児用とは思えないきわどいデザインだ。少なくとも、男子中学生が海水浴場に着てくる水着ではない。 着心地も、今までの水着とは別種の恥ずかしさだ。ワンピースタイプの水着は、主に股間の食い込みやふくらみが恥ずかしかったけれど、こちらはわき腹からおへそ、鼠蹊部までもが完全に無防備になっている。なにより三角ブラのビキニはまるで女性用下着のようで、こんな格好で外を歩いていると考えると、とんでもない痴女になったような気分だった。まぁ、変態って点では間違ってないんだけど。 「うっ……やっぱり他の水着にした方がよかったかな……?」 「そんなことないわ。それに、スクール水着やワンピース水着と違ってスカートがついてるから、そこは安心でしょ?」 「う、うん、それはたしかに……」 おちんちんは下向きに押し込んでテープで固定してあり、スカートのフリルのおかげもあって目立たない程度に収まっている。海水浴に行くにあたってこの水着を選んだ、一番の理由だ。 けど、この水着を選んだのにはまだ理由があって―― 「それに――ちょっぴりエッチな格好の方が、いいんでしょ?」 「……うん」 後部座席から外に降りたところで、同じく助手席から降りてきてすぐそばまで来た母さんに小声で言われ、ぼくは真っ赤になってうなずく。 家での、完全女児女装生活。 学校での、制服女装通学。 周囲からはほぼ公認で女装するようになって、女装を毎日楽しめるようになったのはもちろんうれしいんだけど、一方でマンネリに陥っているのも事実だった。 男――それも中学生でありながら、まるで女子小学生が着るような女児服を身につけることへの背徳感。 人に見られる恥ずかしさ。どんな風に思われるだろうかという緊張感。 そんな全身が焼けつくような感覚が、女装が日常化する中で失われ、物足りなさを覚えていたんだ。 けれどいまは、久しぶりのその感覚が戻ってきていた。頭上には照り付ける太陽。肌を撫でる、潮と磯の匂いを含んだ風。そして眼下に広がる水平線と――砂浜の海水浴客たち。 いまからあの海水浴場に、この水着で入っていって、泳ぐんだ――考えるだけで、背筋がゾクゾクしてくる。 そんなぼくに、母さんは羽織ったラッシュガードのポケットからデジカメを取り出して、 「ふふっ、じゃあ、久しぶりに家族で海を楽しみましょうか。写真もたくさん撮ってあげるから、ママに任せてちょうだいね」 「う、うん」 「まずは一枚――ほら、腰に手を当てて、ポーズをとって」 「う……はーい」 ぼくは腰に手を当て、軽く胸を逸らすようにして母さんを見る。 「ふふっ、いいわよ。とってもセクシーだわ」 さっそくシャッターを切る母さん。駐車場にはぼくたち以外にも、車を乗り降りする海水浴客がちらほらいて、中には撮影会を始めたぼくたちを遠巻きに見ている人もいた。男子だとはバレていないだろうけど、ちょっぴり恥ずかしい。 しかも母さんったら、ローアングルの写真まで撮り始めて―― 「ちょ、ちょっと母さん! 下からはなし!」 「え~、せっかくだから、いいでしょ?」 「よくないよ! 下から撮ったら、その……」 おちんちんのふくらみまで写っちゃう――とはいえずにもごもごしていると、 「ふふっ、だからいいんじゃない。女の子にはないものも、しっかり撮っておかないと」 「よくないってばぁ……」 そこへ、車のエンジンを切った父さんも海パン姿で降りて来て、 「よし、久しぶりに泳ぐぞ、裕一。父さんもまだまだ負けないからな」 「もう、パパったら。娘に張り合ってどうするのかしら。ね、裕ちゃん」 「う、うん……でも父さん、男だってバレるから、裕一はやめて欲しい……」 「おっと、そうだった。じゃあ行こうか、裕」 「うん」 ぼくはドキドキしながら、夏の海へと向かう。 階段を降りれば、すぐ目の前は海水浴場だ。近づく水着姿の人々と、ちらほらとぼくに向けられる視線。頼りない水着の着心地とも相まって、ドキドキが止まらない。うん、やっぱりこの水着を選んでよかった。 実はこの水着を選んだのには、もう一つ理由があるんだけど――そっちも、うまくいくといいな。 (続く)