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連載小説「通販カタログ」(18)

  (18)  6月に入り、制服は完全に夏服に移行していた。  登校前、ぼくは女子小学生用の制服――丸襟ブラウスと襟元のリボン(先月買ってもらった、女児ジャンパースカートのセットについていたものだ)、夏用吊りスカートを脱いで下着姿になる。さらにキャミソールとショーツも脱ぐんだけど、その理由は一つ。 「う……」  クローゼットから取り出したそれを広げて、ぼくはちょっと鼻白む。  ティーンズ向けのブラショーツセット。色は赤系のギンガムチェックで、ブラはカップの周りやストラップ、ショーツのフロントに花レースがあしらわれている。ブラジャーはワイヤーとパッド入りで、サイズはB75だった。  クローゼットには、この他にも色違い、柄違いで、何着かブラショーツセットが入っていた。いずれも先週末、母さんと一緒に買いに行ったものだ。 「中学生なんだし、ブラジャーもつけないとね。特に夏セーラーは短いから、お腹が見えた時にキャミソールが見えたら恥ずかしいでしょ?」 「そ、そこまでしなくても……せめて、通販で……」 「ダメよ。やるならちゃんとやらないと、みっともないわ。それに最初くらいきちんとフィッティングしないと、肌にこすれて痛くなったりしちゃうからね」  というわけで、セーラー服で連れて行かれた先の専門店でアンダーバストを測ってもらったんだけど―― 「へぇー、学校にも女子制服で通ってるから、それに合わせた下着を……ふふっ、かしこまりました。なら、クラスメイトに見られても恥ずかしくないくらい、可愛いのを選びましょうね」  ぼくが男子だと判ったうえで測ってくれた店員さんもうきうきだった。男子に女装させるのが好きな女性、意外と多いんだろうか?  さらに店員さんは、店の奥からとんでもないものを取り出してきた。 「せっかくだからこちらのパッドやヌーブラはいかがでしょう? こちらをつければ、もっと大きなカップにもできますよ」 「い、いりませんっ!」  見せられたシリコン製の乳房に、ぼくは引きつった声を上げた。ちょっと心が動かなかったと言えば嘘になるけど、さすがにそこまでするのは恥ずかしい。  ともかく、中学の制服を着るときは、新しく買ったティーンズ向けのブラショーツを着るよう言われたのだった。 (ストラップに腕を通して、カップを胸元に当て、背中のホックを後ろ手に留める――うう、こんな女の子らしい仕草を、まさか自分がすることになるなんて……)  これだけで、昂奮して勃起しそうになってしまうのをこらえつつ、セットのビキニショーツも穿く。女児用のインゴムショーツと違い、硬い感じの生地と、ぴったりした穿き心地で、これはこれで恥ずかしいけど、勃起を目立たなくしてくれるのはありがたかった。  さらに半袖セーラーと夏スカート、水色のスカーフを襟元に結べば、着用完了なんだけど――これが、冬服以上に違和感が強かった。  まず夏スカートは冬スカート以上に軽く、しかも丈が短いために、ちょっとでも動くとすぐにめくれそうで落ち着かない。半袖のセーラー上着も、母さんが言っていた通り丈が短く、ちょっと油断するとお腹が見えそうになってしまう。  とどめに、その下のブラジャー。ワイヤーが入っているせいで、アンダーバストに当たるのに違和感が残るのだ。  念のために鏡を見ると、ちょっと髪も伸びてすっかり女の子めいた自分の姿が。ブラのおかげで、セーラー服の胸元もちょっと膨らんで見える。 「うう、でもやっぱり、ブラジャーは慣れないな……まぁいいや、とにかく着替えは終わったし、今日の授業に必要なものは――あっ」  時間割を見て、今日から始まる授業で必要なものに、ぎくりと固まる。 「そっか……今日から……ってことはやっぱり、アレを持ってかないとダメだよな……っっていうか、アレで大丈夫なのか……?」  とはいえ、あれの代わりに本来持っていくべきものは、とっくに母さんに処分されてしまっている。他に選択肢はなく、ぼくはアレを入れたバッグを持って、家を出た。  学校では、もはやぼくの女子制服姿を見ても誰も驚くようなことはなかった。ぼく自身よりも、むしろ同級生達の方が、ぼくの女装通学に慣れてしまっている。  すれ違うクラスメイトと適当に挨拶しつつ、自分の席に通学鞄を置くと、 「裕ちゃん、おはよー」 「おはよう。暑いねー」 「ふたりとも、おはよう。うん、今日も暑いね」  隣の席の凛と桃花(先週から呼び捨てにするよう言われた)に挨拶する。二人とももちろん、ぼくと同じ半そでの夏セーラーだ。 「ねー。でも今日からプールだし、それはちょっと楽しみ」 「あ、あはは……そ、そうだね」 「裕ちゃんも、とうぜん女子用の水着だよね?」  ぎくっ。持ってきたバッグの中に入っているもののことを思い出して、ぼくは身を竦め――周りのクラスメイト達が、一斉に反応する。 「え? 裕ちゃん、水着も女子用なの?」 「ねーねー、それってもしかして、持ってるって言ってた、旧式の……?」 「マジ? 楽しみー!」  盛り上がる女子たちの姿に、ぼくのこめかみに冷汗が伝う。  そう。通学鞄とは別に持ってきている、プール用バッグ。その中に、タオルやゴーグルと一緒に入っている水着は――女子用のスクール水着、それも胸元にゼッケンをつけた、旧式のラン型ワンピース水着なのだ。 (今日の4時間目は、アレを着て、水着の授業を受けるんだ……)  緊張と興奮の予感に、ぼくの背筋に戦慄が貼りついているようだった。   (続く)

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