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「変態女装子メイカー」(8)

命令2.変態女装子マミは女子制服で入学する   (3) 「姫川ほむらさん」 「はい」 「船木しずかさん」 「はい」 「変態女装子マミさん」 「は、はいっ」  1年2組を担任する女性教師の呼びかけに、マミは椅子から立ち上がって返事した。  すでに、高校の入学式は始まっていた。  例のアプリでいったいどのような現実改変が行われたのか、マミが通うことになっていた共学校は女子校に変わっている。そしてマミも、掲示板に張り出されたクラス分けの名簿にしっかり名前が書かれていた。 「変態女装子 マミ」 (やっぱり、その名前が本名扱いなんだ……) (これから一ケ月、そんな名前で過ごさなくちゃいけないなんて……)  半ば予期していたこととはいえ、先行き不安になるマミ。  しかし今さら逃げ出す決意もつかずに入学式に案内され――体育館兼用の講堂で、新入生の列に並び、ついに新入生のひとりとして、名前を読み上げられたのだった。  普通の名前が並ぶ中、ひとりだけ「変態女装子マミ」なのは明らかに異常であったが、読み上げた先生も、それを聞いている列席者――新入生、在校生、教師、来賓、保護者たちすらなんとも思わないかのように、淡々と読み上げは続いて行った。 「――以上、1年2組生徒一同、着席」  教諭の言葉に、マミはクラスメイトとともにほっとして着席する。  新入生の名前を読み上げた後は、学校長の式辞、来賓の祝辞と続いてゆく。 (あとはもう、話を聞いているだけでおしまいだな)  舞台横に掛かれているプログラムを見て、マミはほっと息をつく。女子制服で女子校の入学式に参加しているのは落ち着かないが、これで一安心―― 「ねぇ、マミさん」 「は、はいっ?」  気を抜いているところに話しかけられて、マミはびっくりして振り返る。  話しかけたのは、隣に座っていた少女だった。マミより短いショートカットで、童顔でやや吊り上がった眼と、好奇心に輝く瞳が、子猫のような印象だ。 「マミさんって、変態女装子なの? つまり……男子?」 「う……うん……」  あまりにストレートな質問。しかし否定することもできず、マミは赤い顔で肯いた。  少女は笑って、 「すっごーい! 男子なのにこんなに可愛いなんて! 変態ってことは、女装して、エッチなこととかもしたりするの?」 「うっ……うん、する……」  仮借のない質問に、マミはいよいよ真っ赤になってうつむく。 「そうなんだー。くすくすっ、マミちゃんがエッチなことしてるの、みてみたいな。あ、あたしは船木しずか。これからよろしくね、マミちゃん」 「うん。よろしく、船木さん」  しずかの無邪気な笑顔に、マミもはにかんで返事する。 (変態女装子扱いは恥ずかしいけど……仲良くなれて、よかったかも) (今までは入学直後とか、友達がなかなかできなくて苦労したからなぁ)  没個性なマミは、趣味も、特技も大したことが言えず、小柄なことも相まって影が薄い扱いされることが多い。それに比べれば、初日からキャラクターを認知してもらえたのは大きな一歩だった。 (まぁ、「変態女装子」キャラってのはあんまりだけど)  自嘲気味に笑った、その時だった。 「――以上、新入生のお礼の言葉でした。続きましては、本年度入学の特待生、変態女装子マミさんの挨拶です。1年2組、変態女装子マミさん、どうぞ」 「……え?」  ありうべからざる入学式の、ありうべからざるプログラムに、マミは愕然と凍りつく。 「マミさん、立ち上がって返事して」  すぐそばに来ていた担任教師の言葉に、 「は、はいっ」  慌てて返事して立ち上がったはいいものの、なにをすればいいのか、頭が真っ白になる。助けを求めるように担任教師を見ると、 「ごめんなさい。今朝になって決まったプログラムだから、連絡し忘れてたの。舞台に上がって、挨拶してちょうだい」 「挨拶って、何を言えば――」 「これの通りに、読んでくれればいいわ」  そう言って渡されたのは、厚手の表装だった。舞台上で広げ、カンペを読めるようになっているものだ。 「あ、ありがとうございます」 (ほっ……アドリブで話せって言われたら、どうしようかと思った) (たくさんの人の前に出るのは緊張するけど、用意されたものを読むだけなら、まぁ……どうせ、恥ずかしいことが書かれてるんだろうけど……)  表情を硬くしながらも、マミは講堂中央の通路に出て、舞台に向かって歩き出した。  ――マミが朝、確認し忘れていたことがある。  すべての元凶であるアプリ「変態女装子メイカー」の結果表示。「服装」項目の女子制服に気を取られ、そのまま朝食に降りて行ったうえ、登校の準備もあってバタバタするうちに忘れてしまっていたが――「本日の命令」は、ちゃんと存在していたのだ。  入学式を終えた後、ようやく気づいたマミが確認した「命令」は、このようなものだった。 「命令【『変態女装子マミ』として全校生徒の前で自己紹介し、下着とペニスを露出する】」   (続く)

Comments

コメントありがとうございます! 実はこれでもまだ初級モードなんですよ…

十月兔

これもしかして、突然上級モードになりましたね!上級モードはなにをされるか、楽しみにしています!


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