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「変態女装子メイカー」(7)

命令2.変態女装子マミは女子制服で入学する   (2)  ブラウスを羽織ってボタンを留めに掛かるマミだったが、 「う……なんか、ちょっときついし、ボタンも留めにくい……」  肌触りは男子用と変わらないはずのブラウス。しかし細かな違和感が、マミの中にある少年の心を辱める。裾から覗く星柄ショーツのふくらみも変態的な光景で、 「は、早く、隠さなきゃっ……!」  マミは急いで、赤系チェックのプリーツスカートを、ハンガーのクリップから外す。 「でも……けっきょくスカートを、穿かないといけないのか……」  げんなりと呟く。変態女装プレイの妄想でヌいていただけあり、まるきり女装に興味がないと言えば噓になるのだが、オナニー中でもないのに女装させられるのは恥ずかしい。まして、 「このスカートをはいて、女子制服を着て――高校に、通わなくちゃいけないなんて……!」  恥辱の予感に顔をゆがめるマミだったが、アプリに逆らうわけにはいかない。  スカートの左脇のホックを外し、ファスナーを下げて、大きく広げたその中に足を入れる。足を撫でるプリーツの感覚に息を詰まらせながらも、勢いのままに腰まで引き上げると、 「う、うわぁ……」  制服スカートの穿き心地に、マミは声を震わせた。 「ちょ、ちょっとこのスカート、短すぎない……? 昨日のワンピースも短かったけど、これじゃ、パンツ一枚とほとんど変わらないじゃん……!」  まるでコギャルかグラビアのような、下着が見えるか見えないかギリギリのスカート丈。恥ずかしさをこらえて鏡に映してみれば、立っているときは見えずに済むものの、歩いたり座ったりすれば見えそうだし、まして階段で下から見上げられようものなら、間違いなく見えてしまうだろう。  そして戦慄すべきもう一つの事実は、 「でもこのスカート、ここに並んでる中だと一番丈が長いんだよな……ううっ、他のはもう、パンツ丸出しなんじゃないのか……?」  青ざめるマミだったが、実際に穿いて確かめるような度胸もない。頭から振り払って、制服の残り――赤系ストライプのリボンを襟元に留め、ブレザーを羽織る。  最後に、白いウサギの刺繍が入った紺のハイソックスを履いて―― 「はぁっ、はぁっ……は、はは……」  顔をあげて鏡を見たマミの口から、虚ろな笑い声が漏れた。 「お、オレ……制服で、女装しちゃってる……」  定番のブレザー系女子制服。本来は異性がまとうべき制服を着た自分の姿に、マミはミニスカートからは細い脚がすらりと伸びて、いまにも下着が見えそうなほどだ。少年にしては華奢な骨格と繊細な容貌のマミとはいえ、やはり肩幅と、胸元の淋しさには違和感がある。 「無理無理、無理だって! こんな格好で、高校生活なんて――」  女装だとバレても問題はないだろう。むしろ高校でも、「変態女装子マミ」と呼ばれ、女装しているとの認識で生活することになるはずだ。問題は、ただただ恥ずかしいことで―― 「うう、一ケ月、一ケ月の我慢なんだ……!」  今すぐ制服を脱ぎたくなる衝動をこらえ、マミは自分に言い聞かせる。 「恥ずかしいかもしれないけど、普通に友達を作って、仲良くなって、このアプリの効力が終わった後から普通の高校生活を送れるように――」  そう考えると、少しは気分が楽になってきた。マミは改めて、鏡に映る女子高生姿の自分を見据えてうなずくと、 「よし、頑張ろう――!」  そう言って、朝食のために下に降りていくのだった。  ――まだこの時まで、マミは「変態女装子メイカー」の現実改変能力を甘く見ていた。  マミが新しく通うことになっている高校は、電車で一本のところにあった。  駅まで徒歩10分。そこから隣駅まで電車に乗り、駅からまた5分である。それなりの神学校であることはもちろん、通学しやすいのも、この学校を決めた大きな理由だった。 (でも、女子制服での通学電車は恥ずかしすぎる……!)  高校の最寄り駅で降りたマミは、早くも疲労の色をにじませていた。  改札前の雑踏で、太ももやお尻を舐めまわされるように見られたり。 下り階段で、前方から登ってくる女子高生のグループに指を指されて笑われたり。  さらに満員に近い電車でスカートの中に手を入れられ、お尻から太ももの間に指を入れられ、ショーツの中のふくらみを撫でまわされたり。 (うう、あれぜったい、オレが男だってわかって触ってただろ……!)  もちろん痴漢に遭うのは生まれて初めて。「怖くて声が出せない」という、痴漢被害者の気持ちがよく分かったマミであった。背後をチラ見した時ににやりと笑った女子大生が犯人なのだろうが、高校入学初日に幸先が悪いことこの上ない。 (もしも「女性攻め」モードを見つけてなかったら、男に痴漢されてたのかな……ううっ、考えたくもない……)  想像に身震いしながら、マミは学校への道を歩いていく。通勤通学時間帯の駅前とはいえ、目抜き通りを離れると人波は一気に少なくなり、代わりにマミと同じ制服を着た女子高生ばかりになる。 (ん……?)  その光景に、マミは違和感を覚え――すぐに、その正体は判った。 (なんで――女子ばっかりなんだ?)  通う予定になっている高校は、もちろん共学だ。もとは公立女子校だったが、戦後すぐに共学化された。  前を見渡し、後ろも振り返る。しかしどこを見ても、プリーツスカートをはいた女子ばかりで、男子の姿は全く見当たらない。 (まさか、いくら現実改変アプリでも、そんな滅茶苦茶なことが――)  信じられない気持ちで、マミは足早に学校へと向かう。  そして、最後の角を曲がった先に―― 「令和*年度 都立**女子高等学校 入学式」 「う……嘘だろ……」  目の前に現れた女子高の入学案内看板に、マミはその場に立ち尽くした。   (続く)


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