「変態女装子メイカー」(6)
Added 2021-04-05 08:01:48 +0000 UTC命令2.「変態女装子マミは女子制服で入学する」 (1) 初登校と初ブラジャー その朝、スマホに表示された「結果画面」に、少年は顔をひきつらせた。 「服装【都立**高校女子制服、ティーンズ用ブラショーツ(自由)】」 「…………」 無言で視線を動かし、壁に掛かる「制服」を見る。アプリを始める前までそこに吊るされていた都立校の男子制服は、リボンとスカートの女子制服に変わっている。よく見ればブレザーやシャツのボタンも左前、つまりは女子用だ。 じゅうぶん予想していたこととはいえ、改めて突き付けられると緊張する。すなわち、 「入学式の日にこの服装ってことは、やっぱり、女子制服で通学しなきゃいけないのか……」 部屋のカレンダーには、今日の日付に「入学式」と書き込まれている。あと2時間ほどで、彼は初めての登校――そして入学式に臨むことになっていた。 「高校生になったら、いろんなことをしようと思っていたのに――まさか入学式の日から、女子制服で通学する羽目になるなんて……」 マミは大きくため息をつくが、 「いや、ちょっと待て。もしかして女子制服よりとんでもない格好で通学する羽目になったり……? うう、考えたくもないけど、ありえないといえないのが怖い……とにかく、早く着替えよう……」 戦々恐々としながらも、パジャマ代わりのランジェリー――黒の総レースベビードールとセットのオープンクロッチショーツを脱いで、引き出しの中からティーンズ向けのブラショーツを出した。 ――出来心で現実改変アプリ「女装子メイカー」を始めてから、3日が経過していた。 初日からランジェリーというとんでもない格好で、鏡の前での「自己紹介」からオナニーを命令されたマミだったが、その後二日間も羞恥に満ちた服装と命令が指示されていた。 (おとといは女子用の旧式スクール水着で、胸元のゼッケンに「変態女装子マミ」って書き入れさせられたり、ご近所さんに回覧板を届けに行かされたりさせられて……) (昨日はちょっとレトロな感じの水色の清楚系ワンピースで、ほとんどパンチラしそうなミニ丈のせいでただでさえ恥ずかしかったのに、下はブラもショーツも大事な部分にスリットの入ったエロ下着で、「行きつけの美容室でボブカットにしてもらいなさい」って命令だったし……) 髪形自体はほどんど変わらないボブカットなのだが、女装してカットしてもらうのはまた別の恥ずかしさがある。しかも短いスカートは、座ると太ももやお尻が丸見えになってしまうのだ。 だが、そんな二日間の生活は、逆に得るものもあった。現実主義者のマミも、今ではすっかりアプリの力を理解していたのである。 (もしオレが女子制服で学校に行っても、誰もおかしいとは思わないんだろうな……) 一昨日はスクール水着で、ご近所さんに回覧板を届け。 昨日はミニワンピースで、美容室でカットしてもらい。 どちらも普通であればあまりに異常で、変な目で見られたり、怒られたり、最悪通報されたりするようなシチュエーションであるにもかかわらず――ご近所さんも美容師さんも、マミが「変態女装子」であることを、ごく当たり前に受け入れた対応を見せたのである。 「あら、変態女装子マミちゃん。回覧板届けてくれたの? ありがとうね。そのスクール水着、とっても良く似合ってるわよ」 「変態女装子マミちゃん、いらっしゃい。ふふっ、ワンピースは清楚なのに下着はエッチなんて、とっても素敵ね。それで、今日はどんな風に――ボブカットね、かしこまりました」 そんな対応に、マミは改めてアプリの「現実改変」が誇張ではないことを思い知ると同時、 (オレ、もう誰からも「変態女装子マミ」として扱われるようになっちゃってるんだ……) 「少年」としての自分を知る人が一切いない現実に絶望したのだった。 「はぁ……」 深いため息をつきながら、マミは水色の星とダイヤがプリントされたブラショーツセットを取り出して、身につける。 「そういえば、一昨日はスクール水着で、昨日はエロ下着だったから、ブラショーツを付けるのは初めてだな……ううっ、何で男のオレが、ブラジャーなんて……」 ぼやきつつも、ブラのわっかに腕を通してカップを胸元に当て、後ろ手にホックを留める。ショーツも穿くと、股間は男物のトランクスとは違うフィット感に包まれた。 「はーっ、はーっ……」 早くも勃起しそうになるのを深呼吸で押さえつつ、壁に掛かっている女子制服のハンガーを下ろして、紺のブレザー、赤系ストライプのスクールリボン、オフホワイトの長袖ブラウスと外してゆく。さらに別のハンガーから、赤系チェックのスカートも下ろして、 「これを、着て、学校に……」 念願の高校生活、その記念すべき初日である入学式に、女装して通学する――アプリの現実改変で、具体的な問題や不安はないとしても、やはり恥ずかしいことには違いないし、 「ううっ、せっかくの、高校生活が……」 憧れの青春が恥辱と劣情にまみれたものになるであろう不吉な予感に、身震いするマミ。 しかし、 (でも、普通なら絶対送れないような、「変態女装子」高校生生活は、ほんの少しだけ――) 「っ……!」 ぶるぶるっ、とマミは首を振り、急いでブラウスに袖を通した。 (続く)