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「変態女装子メイカー」(2)

命令1.変態女装子マミはランジェリー姿で一日を過ごす   (2) 規約はきちんと読みましょう  マミはスマホを放り出すと、ベッドから降りて、改めて自分の姿を見下ろす。  左右の胸元は、三角形のブラジャーのようなものに覆われ、その下からスカートのように生地が下がっている。生地は薄く、肌や乳首が透けているうえ、肩紐やブラのふち、裾にフリルがあしらわれ、その裾も太ももに届くかとどかないかといったところ。 (ま、間違いない……「ベビードール」って呼ばれてるランジェリーだ……!)  さらに股間を包むのはベビードールとセットと思われるショーツで、股間を隠す布の面積が極端に小さいうえ、お尻側はTバックになっていた。 「うっ……!」  生まれて初めての女装――それもセクシーランジェリーを着せられて、マミの股間がいっそう疼く。勃起していないためまだ小さく、小さなショーツの中にも納まっているが、勃起すれば確実に飛び出してしまうことだろう。 「なんでこんな――と、とにかく着替えを……」  アプリへの詮索も後回しに、マミはクローゼットへと駆け寄り、音を立てて開く。その中には、とうぜん男物の服や下着が入っている――その、はずだった。 「え――えぇっ!?」  中の服を見たマミは、再び悲鳴を上げる。  安っぽい、黒と白のメイド服。  上下とも明らかに丈の短いセーラー服。  紺や白のスクール水着に、臙脂色の体操服とブルマー。  ハイレグ気味のレオタード。  肌にぴったりとする、派手な色のワンピース――いわゆるボディコン。  ほかにもOLの制服に、バニースーツに、チャイナドレスに、チア服、皮紐とレースを組み合わせたレースリミテーションと呼ばれるものまで。 「なんだよ……女物の、それもエッチなコスプレばっかりじゃないか……」  マミはしばし、クローゼットの前で呆然としていた。下から母親が呼んでいるような気がするが、とても構っている余裕はなく――ふとその視点が横に流れ、観音開きの扉の内側に貼られているミラーを見てしまう。 「や、やばい、これ……!」  ピンクの透け透けランジェリーを着た自分の姿を直視してしまい、マミは背筋を凍らせる。  もともと少年としては小柄な身長150センチ足らず、華奢で体つきで体毛も薄いため、見苦しさはない。顔立ちも女の子っぽいとよく言われ、小中学校と通じて女の子に間違われたり、女装させられそうになったりしことは数えきれない。恥ずかしさから女装を拒絶してきたものの、秘かな願望が高じて変態女装妄想をオカズにするようになってしまったのだが、それはさておき。  髪形は艶やかに整った前下がりのボブカット。ほっそりとした体をベビードールに包んだその姿は、自分でも背筋が寒くなるほどに、似合ってしまっていたのである。 「っ!」  マミは反射的に、クローゼットを閉じる。 「や、ヤバい……これ以上見てたら、ヤバい扉を開けちゃいそう……!」  大きく肩で息をつき、 「そうだ、制服……! 学校の制服を壁にかけておいたはずだから――」  最後の希望を思い出し、勉強机の横の壁を振り返るマミ。  そこには確かに、「学校の制服」がかかっていたが―― 「何で……どうして、女子制服になってるんだよぉ!」  この春から通う高校の制服――しかしついさっきまで掛かっていた男子制服ではなく、紺のブレザーに赤系チェックのプリーツスカート、赤系ストライプのリボンという、女子用の制服に変わってしまっていた。  しかもその制服の横には、色柄違い、丈違いで、たくさんのプリーツスカートが吊られている。いちばん長いのは紺無地で、グレー系チェック、青系チェック、ピンク系チェックとどんどん短くなっていた。  ありえないことの連続に、マミは「制服」を見つめたまま固まっていたが――その目が、ベッドに投げ置かれたスマホの画面に向く。 「これって……絶対あのアプリのせいだよな……?」  アプリで表示されたとおりの髪型と服装になってしまったのだ。どう考えても、原因はこれしかない。 「ま、まさかこれって――」  震える指でスマホを拾い、改めて、「アプリ説明」へのリンクを開く。 「このアプリは、入力したお名前と、ステージごとにランダムに生成される結果に基づいて、現実を改変するアプリです。プレイの際は、じゅうぶんにご注意ください……?」  冒頭に赤大文字で書かれた注意喚起を読み、マミは戦慄する。 「現実を、改変……? つまりオレ……ほんとに……?」  その先を言葉にするのが恐ろしいあまり口ごもった、その瞬間だった。  ふいにドアが開いて母親が姿を現し、ふりふりランジェリーを着た息子を見て、 「マミちゃん、お昼よ。さっきから何度も呼んでるでしょ? 早く下りてらっしゃい」 「え……あの……ま、マミ……って、まさか……?」  まったく驚いた様子もない母親の態度と、何よりもその呼びかけに、マミは絶句して――すぐに、先ほど言いかけた続きが真実であることを悟った。 「ほんとにオレ――『変態女装子マミ』に、なっちゃったのか……?」   (続く)


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