「雛祭りの呪い」(8)
Added 2021-03-25 08:38:18 +0000 UTC(8) ブラウスの裾から覗くショーツに、高々と持ち上がったペニスのふくらみ。 しかもそれは、いまだかつてないほどに強烈な勃起であった。体中の血液が亀頭に押し寄せて大きく伸びあがり、ショーツのウエストゴムがおへそから浮いてしまっている。 「何で……これじゃ、まるで……」 陽太は唾とともに、その続きを飲み込む。 (まるで、女の子の服装に昂奮しちゃってるみたいじゃないか――) ぶるぶるっ、と水にぬれた犬のように首を左右に振って、その考えを頭から追い払う。 単に女児服を着せられたり、幼稚園児にさせられたりするのも十分な辱めだが、それらはあくまで外因的な理不尽でしかない。しかし女児服を着せられて昂奮する、いわば内因的な恥辱はまた、彼の心をさらに内側からかきむしった。 「と、とにかく! もうすぐ出かけなくちゃいけないのに、このままじゃ――」 いま上からパンツをはいたところで、かえってふくらみが目立ってしまう。いや、このサイズに達するともはやスカートでさえ隠しきれないだろう。よほどふんわりと膨らんだスカートでもない限り―― 「う……ううっ……」 その考えに至った陽太は、顔を真っ赤にしてうなる。 (い、いや、出かけるのをやめてもらうか、せめてヌいて小さくするまで待ってもらうか――でも母さんが素直に中止してくれるとは思えないし、一回ヌいたところで、出かけた先でまた勃起しちゃったら――) (さっきは完全に「女児」として扱われてたけど――外に出た時にどう見えるのかはわからないし、仮に女児として認識されていても、勃起を見られたらどうなるか――) 一度不安になると止まらない。 陽太はオープンラックの中をしばらく探り、淡い水色のギンガムチェックスカートを取り出した。なるべく水色系で、スカートが大きく広がり、できるだけ裾丈が長く、女の子らしい装飾が少ないもの――無意識のうちに設定した条件に最も適合するのが、この一枚だったのだ。大半がピンクや黄色だったり、胸元に大きなハートがついていたり、大きな花柄だったりスイーツ柄だったりと、抵抗があるものが多かった。ギンガムチェックならぎりぎり、男子が着ていておかしくない柄ではある。しかし、 (うう、これでも肩紐にフリルがついていて、恥ずかしいんだけど……) (――それにしてもこれ、どうやって着ればいいんだろう) ついさっきまで着ていたジャンパースカートは背中から開くようになっていたが、後ろ側にファスナーはない。また肩紐も、考えなしに穿いたら絡まってしまいそうだ。 両手でフリルのついた肩紐をひっかけて見下ろし、どうやって着ればいいのかしばし悩んだ後、肩紐をスカートの左右に落とすようにして持ち直し、左脇のファスナーを開ける。そしてその中に、ゆっくり足を通す―― 「う、くっ……」 先ほどは突然服装が変化してジャンパースカートを着せられてしまっていたが、今こうして自分で足を通すとなると、一段と恥ずかしさを覚える。 (でも、勃起を隠すにはこれしかないんだから――) 陽太は自分に言い聞かせながら、両足を入れ、ウエストまで引き上げて、ファスナーを下ろす。そして肩紐を左、右と順番に肩に引っ掛ければ―― 「はっ、はぁっ……!」 いつの間にか息を止めてしまっていたらしい。陽太は荒い息をついて、改めて自分の体を見下ろす。 丸襟と袖口にフリルのついた長袖ブラウスに包まれた上半身。腰から下は水色のギンガムチェックスカートで、レースのついた裾が、大きく膝まで隠して広がっている。左右に縦に掛かっている肩紐が、ふんわり広がるフリルもあっていいアクセントになっていた。 もっとも、コーディネートが決まったところで陽太にとってはうれしくもなんともない。むしろ羞恥を増すばかりで、むしろこのふんわり広がるスカートをもってしても、股間のふくらみを隠しきれていない方がよほど問題だ。 「ど、どうしよう……まだこのままじゃ、勃起してるのがバレちゃう……何か、上から押さえつけらえるような、ぴったりとした下着なんかは……」 再び下着の入っている引き出しを漁る陽太。しかし求めていたような、勃起を上から押さえつけられるようなものは見当たらない。かわりに―― 「こ、これって、スカートの中に穿くやつ……?」 必要以上にふわふわとした純白のスカートを見て、陽太はその正体に思い至る。 女性用ファッションの知識はほとんどないが、萌え系のアニメで何度か見たことのあるインナー。主にメイド服やロリィタ系のスカートを膨らませるために穿く、いわゆるパニエというものだった。 「うう、こうなったらもう、やけくそだっ……!」 陽太は覚悟を決め、パニエにに足を通す。こちらはウエストゴムタイプなので、ファスナーなど空ける必要はない。水色ギンガムチェックのスカートの下に、白いふりふりのスカートが重なって二重になると、ただでさえ大きく広がっていたのがアンブレラのように広がって、ようやく股間の前にできていた膨らみも目立たなくなった。 「ほっ……恥ずかしいのは恥ずかしいけど、これで、何とか……」 胸をなでおろしていた、その時であった。 「ひなちゃん、ずいぶん時間がかかってるみたいだけど――」 突然ドアが開いて顔を出した母親は、パァッと顔を輝かせ、 「まぁ、まぁまぁ! 可愛いスカートにお着換えだなんて、ひなちゃんもすっかり、女の子になるのが気に入ったみたいね! しかもパニエまで入れてるなんて!」 「ぱ、パニ……? い、いやべつに気に入ったわけじゃなくて……!」 言い訳しかかる陽太だったが、本当の理由を言うわけにもいかず、ぐっと押し黙る。 母親はそれをいいことに、 「ふふっ、何でか言えないなんて、やっぱり気に入ったんじゃない。いいわよ、きっかけはどうあれ、せっかく女の子ってことになったんだもの、精一杯女の子を楽しまなくっちゃね?」 「そ、そうじゃないんだってば……」 改めて言われると、どんどん恥ずかしくなってくる。背筋がくすぐられているようにむずむずして、顔から火が出そうなほどに熱くなってきた。 「ふふっ、それじゃあせっかくお着換えしたことだし、お出かけに行きましょうか。可愛いお洋服をたくさんの人に見てもらいましょうね?」 「み、見られたくないよぉ……」 泣きそうになる陽太だったが、今さら逃げることもできない。いよいよ近づく新たなステージ――女児女装での外出に、羞恥と緊張から早くも心臓を高鳴らせるのであった。 (続く)