「思い出のワンピース」 8.アリス・イン・ハロウィン(3) ハロウィンイベントも無事に済んで、軽い打ち上げでジュースを飲みながらお菓子を食べた後、博希は自宅へと帰りついた。 「はぁ、疲れた……」 「クスッ、お疲れさま。無事に終わったみたいね」 すっかり冬制服姿の愛那が、博希を出迎えてねぎらった。 リビングの母親にも「ただいま」と声をかけてから、愛那とともに自室に向かう。 「うん。ちょっと恥ずかしかったけど……でも、みんなに喜んでもらえたみたいで、よかった」 けっきょく打ち上げで自己紹介をした時に、男子高校生であることもばれてしまった。「アリスのお姉ちゃん」が男だったことに、子供たちは大いに驚いていたが、それでも改めて引率のお礼を言っていた。 「よかったわね。そこも、大丈夫だったでしょ?」 「う……だ、大丈夫だったけど、痛いから、早く外してほしい……」 博希はもじもじと太ももをこすりつけるように階段をのぼりつつ、苦しげな声で哀願する。 今回のイベントでの最大の懸念であった、股間の勃起。 アリスコスプレを着てたくさんの人に見られながら、それでも勃起せずに済んだわけは―― 「お、お願い、愛那――これ、早く、外してっ……!」 博希は階段をのぼり切ったところで、ワンピースのスカートをめくりあげ、さらに下に穿いているドロワーズまでずり下した。 あらわになった剥き出しの男性器には――まるで籠のような金属の円筒がかぶせられ、勃起を阻んでいた。貞操帯と呼ばれる、男性の勃起を抑止する器具であった。 「くすくすっ、こんなところで出すなんて、ヒロったらよっぽど苦しかったのね。でも、もうちょっと待っててね。いま、お部屋に案内するから」 「う、うんっ……って、愛那、どこへ行くの……? そっちは物置部屋だけど――」 自室の前を素通りして、廊下の突き当りに向かう愛那を追いつつ、博希は不審の目を向ける。その先にあるのは、物置部屋――母親が4ヶ月ほど前から整理している、今から思えば、すべての始まりの原因になった部屋だけだ。 しかし愛那は、道を譲るように物置部屋の扉の前に立って、 「ほんとにそうかな? さ、ドアを開けて、確かめてごらん」 「えっ……う、うん」 博希は戸惑いつつも、愛那に誘われるままにドアノブを回して開き―― 一面ピンクの内装に、フリルのついたカーテンにベッドカバー。白や淡いピンクを基調にした少女趣味な意匠の家具と、赤いランドセルが置かれた勉強机。ワードローブにはたくさんの女児服がつるされ、本棚にはぎっしりと少女漫画が詰め込まれている。壁の一面には大きな姿見が置かれ、大きな額縁にはタンポポ色のドレスを着た時の写真が飾られている。 女の子――それも小学校低学年の子が喜びそうな少女趣味の部屋に、博希は思わず言葉を失っていた。 「う、嘘……!?」 「ふふっ、どう? 気に入ってもらえた?」 いつの間にか階段をのぼってきた母親の問いに、博希はコクコクと首を振ってうなずく。 「うん……でも、いつの間に、こんな……!」 「博希が学校に行ってる間に、中のものを整理して、改装を頼んだの。なるべくかわいいお部屋にしようと思ってね。この部屋なら窓も少ないし、可愛いお洋服を着たり、ちょっぴりエッチな格好をしてても大丈夫でしょ?」 「う……うんっ! ありがとう、お母さん! ぼくのために、こんな……!」 潤んだ声に、思わず口元を押さえる。しかし代わりに、今度は視界がにじんできた。溢れる感情は止めることができず、雫が頬を熱く濡らす。 母親と愛那は嬉しそうに笑って、 「ふふっ、喜んでもらえたみたいで、嬉しいわ。それに、お金のことなら心配しないで。今までずっと、おねだりなんてされてこなかったんだもの。このくらい、ぜんぜん大丈夫よ」 「さ、お部屋に入って。そしたら貞操帯を外してあげるから――」 「うんっ」 博希は元気よく返事すると、「少女部屋」の中に足を踏み入れる。 (まるで、夢みたい……!) しかし胸の高鳴りは、彼にこの上ない現実感をもたらしていた。 「それじゃ、ごゆっくり」 母親はそう言って、下に降りて行った。 「クスッ、それじゃ、始めましょっか」 その背中を見送ってから、愛那も「少女部屋」に入り、ブレザーのポケットに手を入れる。取り出したのは、小さな銀色の鍵だ。 「ベッドに座って、スカートをめくって」 「うん」 博希が言われたとおりにすると、愛那は彼の前の床に座り込み、ドロワーズを下ろして、手にしていた鍵で貞操帯についている南京錠を外した。 とたんに魔羅が封印から解かれ、その巨大にして凶悪な本性をあらわにする。充填完了とばかり引き締まった玉袋、手首ほどもの太さに膨らんで表面の皮膚がパンパンになり、無数の血管を浮かべた竿に、危険信号のように赤々と膨らんだ亀頭――可愛らしいアリスコスプレにはあまりにも似合わぬ益荒男ぶりだった。 (続く)