「思い出のワンピース」 8.アリス・イン・ハロウィン(2) 「それじゃあみんな、出発してちょうだい。ルートは一番大きいアリスのお兄――お姉ちゃんが教えてくれるから、ちゃんとついていくのよ?」 「はーい!」 話を振られて、博希は慌てて子供たちに号令をかける。 「はーい、みんな。アリスのお姉ちゃんだよ~! これからお姉ちゃんと一緒に、ハロウィンに行きましょうね~!」 「はーい!」 博希は赤面しながらも、子供たちに向かってそう言い――いよいよハロウィンイベントが、始まったのだった。 住宅街に子供たちを連れて繰り出す博希。気分はハロウィンと言うより、ハーメルンの笛吹き男だった。 (えっと、20軒くらいの家を順番に回るんだったよね。間違えたり、子供がはぐれたりしないように、気を付けなくちゃ) (それにしても、やっぱりじろじろ見られるな……ううっ、恥ずかしい……) 何しろ博希ひとりだけ、頭一つ抜け出している。先導役の年長者だということは判ってもらえるだろうが、それにしても丈の短いスカートでのアリスコスプレは、少年にとって恥ずかしいのだ――たとえそれが、気持ちよかったのだとしても。 (まぁ、あれのおかげで勃起する心配はないから、いいんだけど――でも、ちょっと痛い……!) などと考えている間に、さっそく1枚目のポスターを発見する。地図と照らして間違いがないか確認したのち、博希はチャイムを鳴らした。 すぐに玄関が開いて、現れたのは数名の女子高生。そのメンツに、博希はギョッと目を丸くする。彼女たちはいずれも、博希が中学時代の同級生だったのだ。 「トリック・オア・トリート!」 「はーい、いらっしゃい! お菓子をどうぞ、妖精さん!」 「わぁっ、お姉ちゃん、ありがとー!」 すぐにお菓子を渡す女子高生に、子供たちは大はしゃぎでお礼を言う。ランたち3人もキャンディーをもらってうれしそうだ。 博希は少し遠巻きにその様子を見ていたが、 「くすくすっ、楽しんでるみたいね、ヒロくん」 「うっ……」 気付けば女子高生たちは、お菓子に夢中な子供たちではなく、博希を囲むように話しかけていた。 「女装趣味があるって話は聞いてたけど、ハロウィンイベントにまで女装で参加するなんて、なかなかやるじゃない」 「こ、これは引率を頼まれたからで――」 「ほんとー? でも楽しんでるんでしょ?」 「……うん」 素直に答えると、少女たちは声をそろえて笑った。決して嫌な笑い方ではなかった。 「でもほんと、可愛くなっちゃってまぁ。むしろあたしたちの方が、イタズラしたくなっちゃうくらい」 「アハハッ、いいわね。可愛いアリスちゃんに、みんなでちょっとエッチないたずらを――」 怪しく笑い交わす元同級生たちに、 「あ、ありがとうございました! みんな、次に行くよ~!」 「はーい!」 「あ、こら、逃げるなー!」 叫びを無視して子供たちを連れ、博希は次の家に向かうのだった。 (続く)