連載小説「女装強要妄想ノート」(21)
Added 2020-12-15 03:21:17 +0000 UTC4月第1週「?」 (1) 「真弓、学校から書類が届いてるわよ」 朝食のあとで母親に渡された大きな封筒を受け取って、佐々木真弓は怪訝な顔をした。 宛名は「学校法人志路学園 附属女子小学校」。志路学園は真弓と亜弓が通っている私立校だが、真弓が通っているのは高等部。附属女子小学校から送られてくるとすれば、つい昨日まで在籍していた亜弓の方だろう。 しかし宛先は間違いなく、「佐々木真弓様」となっていて―― 「なんで附属小学校が、オレ宛てに……?」 不安に襲われながらも封筒を開き、中身を確認する。その一番上にあるプリントを一読して、真弓の目が驚愕に見開かれた。 「こ、これ、マジ……!?」 「なになに、どしたの? って――」 横から覗き込んだ亜弓も目を丸くして、 「わーぉ、本学高等部在籍の右生徒――つまり兄ちゃんを、附属女子小学校に送る決定? それも、1年生として? つきましては同封書類を記入のうえ、入学式開始までに女子小学校の事務受付までご持参ください――」 「な、なんで!? オレ別に、落第するようなことはしてないのに……!」 「ふふっ、よくわからないけど、学校からの連絡なら仕方ないわね」 高校生の息子が小学校――それも女子小学校に落第したというのに、母親はおっとりと笑って、 「でもよかったわ。ちょうど亜弓ちゃんが卒業して、制服もランドセルも真弓が引き継いだところだったんだもの。ね?」 「う、うん……」 そう言われればその通りなのだが、じっさいに妹のおさがりの制服を着て、ランドセルを背負って学校に行くことになるなんて考えてもみなかった。 いや、例の「女装妄想ノート」には、 「落第して、附属女子小学校に通うことになる――」 そんな一文もあるのだが、実際に通えと言われると現実感がまるでない。 (オレ、本当に女子小学校に通うのか……?) しかし困惑しているのは真弓一人で、母親と妹はどんどん話をすすめてゆく。 「さて、そうと決まったら、小学校に通うための準備をしないとね。まずは――これからはちゃんと、制服を着るようにしないと」 「そうねー。兄ちゃん、けっきょくあれから制服着てないし」 「うっ、それは……さすがにちょっと、恥ずかしくて……」 二人からチクリと言われて、真弓は目を逸らす。 真弓がいま着ているのは、水色の長袖Tシャツにインディゴのスキニーパンツ。シャツのプリントはレースの縁取りがついた女児ブランドロゴに大きなリボンで、一見して女児服とわかるものだったが、下はパンツである。どちらも妹から譲られたおさがりの中では、かなりユニセックスに近いものだった。 先週の「卒業」で、今後は家の中では妹のおさがりで過ごすように言われた真弓。しかし細かな指定まではされていなかったため、自分から可愛いスカートやワンピースを好んで着るのはさすがに恥ずかしく、シャツやパンツ類をメインにしてお茶を濁していたのだった。 赤いラインが特徴的な女子小学生の制服も、先々週以来、着ていない。しかし―― 「ふふっ……でも、今年度から女子小学校に通うんだから、今日からはちゃんと制服を着て、慣れておかないとね」 「は、はい……」 ここまで言われて着ないわけにもいかず、真弓は朝食を食べ終わるとすぐに2階に上がって、自室の壁に掛かる「制服」を見上げた。 高等部の男子制服の隣に並べられた、女子初等部の制服。 紺地に赤いラインと赤いスカーフが結ばれたセーラー上着に、プリーツスカートの一式だ。さらに赤いランドセル、黄色い通学帽子と名札といった小物までそろっている。つい先週まで妹が使っていた女子小学生セットで、 「はぁ……確かにあの時は、このまま女子小学校に通えそうだ、なんて話してたけど……まさか現実になるなんて……」 ぼやきながら、壁にかかったセーラー服を下ろす。 この制服を着て、ランドセルを背負って、女子小学校に通う。しかも1年生ということは、自分よりはるかに――でもないが、10センチ以上は背の低い少女たちの中で過ごさなくてはいけないのだ。 「そっか……オレ、小学1年生の女の子と一緒に、学校でお勉強したり、運動したり――お友達になって、おうちに行ったり、公園で遊んだりすることに――」 具体的に想像すると改めて現実感が湧き上がってきて、真弓は羞恥と興奮に、尿道の内側を先走りに濡らすのだった。 (続く)