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SS「パンチラの呪い」(2)

  (2)  学校に行く間も、もちろん呪いからは逃れられない。  むしろ本領発揮とばかり、家を出た瞬間に風が吹くわ、バス待ちの間もスクールバッグでスカートがめくれてるわ、駅の階段でもとうぜん上り下りするたびに下から見られるし、電車の中でも気づけば他の客に押されて、下着があらわになっている。たんに女子制服で通学するだけでも恥ずかしいのに。  クラスメイトに遭おうものなら最悪だ。挨拶の呪いは友達相手にも健在で、「よっす」程度の軽い挨拶の時でさえ、手が勝手にスカートをめくりあげている。  また、ショーツが見えているということは、とうぜんその前方にあるふくらみも見えている。ただ、時に「ねぇ、あれ、男の子?」「みたいね。さっきパンチラしてて、ショーツが膨らんでるの見えちゃった」などとささやかれることもあったが、表立って騒がれることはなかった。もちろん、恥ずかしいことに変わりはないんだけど。  さらに痴漢されたり、まして襲われたりすることもない。パンチラを起こす代わりに、あくまでプレイとしてはパンチラにとどまる――そんな呪いなのかもしれなかった。  学校でも、パンチラの連続だ。  まずは知り合いに出会って挨拶するたび、自分でスカートをめくる動きが発動する。しかも授業前後の「起立、気を付け、礼」でも起きるため、クラスメイトが普通にお辞儀する中で、ひとりスカートをめくってお辞儀をするという、羞恥プレイか罰ゲームのような状態になってしまうのだ。  ほかにも下駄箱でかがんだり、板書のために背伸びしたりすればお尻側が見えるし、体育の時もハーフパンツが穿けないため、ひとりだけスカートのまま。サッカーやバスケットボールならまだましな方で、鉄棒やマット運動などはパンチラの連続をクラスメイト達に見られ続けることになる。マラソンもとうぜんスカートのままだろうし、ひとりだけミニスカートで学校近くの河原を走るのかと思うと、いまから気が重かった。いやその前に水着はどうなるんだろう。スカート付きの女子用水着? パレオ? さすがに着衣水泳にはならないと信じたい。  パンチラによる羞恥と気疲れの連続でぐったりしつつも、学校の授業が終わった後は帰り支度を始める。玄関から校門までの道を歩き始めたところで、 「ふふっ、私のかけた呪い、順調にきいてるみたいですね」 「藤島さん……!」  俺は立ち止まって、玄関横の自転車置き場からふらりと現れた少女の名を呼ぶ。  黒髪を三つ編みにして眼鏡をかけた、地味な少女――彼女こそ、俺にこの「パンチラの呪い」をかけた張本人だった。一か月前、バッグに引っかかってスカートが持ち上がっていた彼女の下着を俺が見てしまい、それに気づいた彼女が、こんなふざけた呪いをかけたのだ。 「いい加減に、この呪いを解いてくれよ。恥ずかしいのはいやってほど判ったからさ……」 「うーん、それなんだけどね」  藤島さんは本心のつかめないとぼけた表情で、 「あたしもその呪い、解き方がわからないんだ」 「え――っ!?」 「ほらー、適当にがっちり結び目を作ったら、あとからほどけなくなること、あるでしょ? あれこれ条件つけて即興で作った呪いだから、どこからどうやって解けばいいのか、もうわからないんだー」 「そんなっ……!」  ずっとこのまま、女装してパンチラする日々を送らなければならないのか。愕然とする俺に、 「あっ、でも、別の呪いをかけることで何とかすることはできるかもー」 「ほ、ほんとに!?」 「うん。要は、女装してパンチラする呪いがかかったままでも、問題が起きなければいいんだよね? だったら――」  期待を込めて見守る俺に、藤島さんは告げる。 「うーん、女体化の呪いはまだちょっと難しいから、半女体化くらいかな。おっぱいを作って、体つきを女の子っぽくして、ヒゲも生えないようにして、髪も伸びやすくして――おちんちんを消すのは難しいから、そのままになっちゃうけど。関係変化の呪いも入れて、あたしの妹ってことにして、小学生の女の子として学校に通わせて――妹さん、確か私立小学校の4年生だったよね? おそろいの制服を着て、一緒の小学校に通ったら、楽しそうじゃない? もちろん元々の呪いは消えないままだから、ずっとパンチラしちゃうけど、これなら問題ないでしょ? ね?」 「あ、あ……!」  問題しかない。  藤島さんの妹として、妹とおそろいの女子小学校制服で、妹のクラスメイトに? 悪い冗談にもほどがある。 「さ、そうと決まれば、善は急げね。おっぱいはとりあえずGカップくらいにして、おちんちんだけ残した半女体化の呪いをかけて――関係性の呪いであたしの妹、女子小学生ってことにして、老化遅延の呪いもかけて――大丈夫、催眠暗示の類はかけないから、あなたはちゃんと、男子高校生としての自意識を持ったまま。おちんちんも生えたまま。ただ巨乳の女子小学生として、パンチラ生活を送るだけなんだから……」  悪夢だ。これはきっと、悪夢に違いない――そう自分に言い聞かせている間にも、俺の意識は次第に遠くなっていって……   (終わり)

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