SS「休日メイド」
Added 2020-10-17 04:24:53 +0000 UTCお休みの日、ぼくはメイドさんになる。 うちは両親が共働きで、ぼくもまだ小学4年生。勉強もあるし、平日は遊びたいしで、とても家事には手が回らない。だから休日はママのお手伝いで、一週間分のお掃除やお洗濯を手伝うのだ。そしてその代わりに、お小遣いがもらえるというわけだった。 でも――何でメイドさん? 「家事をするなら、メイドさんでしょ? エプロンがあるから便利だし、汚しても問題ないんだし」 ママはそういうけど、それなら着古しでいいんじゃないかと思わないでもない。多分ママの趣味もかなり入っていると思う。 そんなわけで、ぼくはお休みの日になるとメイド服――黒の長袖ロングワンピースに、白いフリルエプロンを重ね、頭にはキャップをかぶった姿で、家事に励むのだった。 まずは朝食の配膳と、お皿の片づけ。 洗濯物をベランダに干して、廊下や玄関、お風呂の掃除。 さらに、お買い物まで―― 「あら、今日もママのお使い? えらいわねぇ」 ご近所さんに見られると、すごく恥ずかしい。もちろんご近所さんは、お休みの日にぼくがメイドさんになってお手伝いをしていることを知っている。それでからかわれたりすることはないんだけど、でもやっぱり恥ずかしいのだ。 お昼ご飯はぼくも作るのを手伝って、午後は小休憩。ただしメイド服を脱ぐことはできないため、部屋でゴロゴロするにしても、ゲームをするにしても、なんとなく落ち着かない。 それよりも、このメイド服がだいぶ窮屈になってきた。120センチの女児用サイズだから、130センチを超えたぼくにはちょっと小さいんだ。 ママにはそのことは、ちょっと前に伝えてある。これでもう、お手伝いはともかくメイド服からは解放されるといいんだけど―― 「ちょっといい?」 部屋でゲームしてると、ママが入ってきた。何やら紙袋を持っている。 「前に、そのメイド服はちっちゃいって話してたわよね?」 「う、うん。だから、もう――」 メイド服じゃなくしてほしい。そう言いかけたぼくに、 「だから、はい! 新しいメイド服、買ってきてあげたわよ!」 そういってママが紙袋から取り出したのは、真新しいピンクのメイド服――もう、汚していいようにとかそんな建前さえ吹っ飛んでいる。しかもスカートは短くて、フリフリで、襟にも袖口にもレースがついていて、肩のところがふんわり膨らんでいて……! 「な、何でそんな女の子っぽいのにしたの!?」 「ふふっ、せっかくメイドさんになってもらうなら、可愛いほうがいいかと思ったの。さ、着替えてちょうだい。今度からはキャップじゃなくてヘッドレス、ソックスもオーバーニータイプになるから、間違えないようにするのよ」 「うぅ、はーい……」 ぼくは顔を真っ赤にしながら、言われたとおりに着替える。ちなみに下着も、メイドさんの時は女の子用のを着せられていた。 キャップ、ショートソックス、エプロン、黒のロングワンピースを脱ぎ。 ヘッドレス、オーバーニーソックス、ピンクのミニワンピース、そしてエプロンを身に着ける。 「ねぇ、ママ……これ、スカートが短すぎない……?」 太ももどころかパンツすらも見えそうなミニスカートに、ぼくは思わず抗議するが、 「うんうん、いいじゃない。クラシカルなロングメイドもいいけど、ポップなミニメイドもいいわよねぇ」 ぜんぜん話を聞いていない。こうなったら何を言っても無駄だ。ぼくは今後、休日はこのメイド服を着て家事を手伝うことになるんだろう。 この格好で洗濯や、掃除をして、さらにおつかいまで―― ピンクのふりふりメイド服で近所のスーパーにお買い物に行き、ご近所さんたちに見られることを想像して、ぼくはぞっと身震いしたのだった。 (終わり)