短編「JS落第いじめ」(5)
Added 2020-10-12 03:55:53 +0000 UTC(5) 編入がらみの騒動で1時間目の授業はほとんど潰れたため、明衣は2時間目の算数から、いよいよ本格的に勉強に参加することになった。 与えられた席は、東堂秌子の隣。どうやら明衣が着替えている間に、教室でちょっとした席替えが行われ、秌子が自分の隣を明衣の席にしたらしい。 女子小学生たちの真ん中で、サイズの小さな机に座って勉強するのは落ち着かなかったが、すぐにそんなことは言っていられる余裕はなくなった。勉強の進行度そのものはともかく、ペースが速くてついていくのがやっと。とても周囲の状況や、自分の服装に気を配っている余裕はない。 「くすっ、本当にあたしたちと同じくらいなのね」 隣の秌子には笑われたが、反論する余裕もなかった。 3時間目の英語もギリギリで、しかも授業終わりには緊張からか、強い尿意にまで襲われてしまう。 (さ、さすがに落第1日目にお漏らしはまずいから……!) 必死に言い聞かせてなんとか休み時間まで持ちこたえ、すぐにトイレに移動する。と言っても、教室の前のトイレではない。2階の職員室前にある男子トイレだ。男子の彼は、トイレはここを使うように言われていた。 中に入ってからも少し迷って、 (ええと、どっちでしよう。いや、さすがにこの格好で、立ってするわけにもいかないか――) 個室に入り、スカートをめくりあげてショーツを下ろすと、女の子のように座ってする。 (うう、トイレをするだけでも、本当に女の子になっちゃったみたいで、恥ずかしい……!) 思わぬところで羞恥にさいなまれつつも、トイレを済ませて手を洗い、教室へ――地味に4階から2階、それも校舎の端から端までの移動になるため、なかなか大変だ。 そして、教室に戻ったところ。 「あ、あれ……?」 誰もいない。がらんどうの教室を見渡して、数秒思考停止に陥った明衣だったが、 「あっ、音楽の授業……!」 次の時間は音楽、つまりは教室移動だ。慌てて自分のランドセルから音楽の教科書とノート、リコーダーを取り出して、教室の出口に向かう。すでに授業開始直前、音楽室は校舎の逆端だ。すぐに行かなければ―― 扉を開けて廊下に出ようとした次の瞬間、明衣の足にとつぜん何かが絡みついて、バランスを崩した。 「あぁっ!?」 立て直すこともできず、明衣は廊下に勢いよく転倒する。手をついたため顔面強打は免れたものの、教科書とリコーダーは散乱し、スカートも大きくめくれて下着が丸出しになってしまい、慌ててお尻を隠したところへ、 「ちょっとあなた、あぶないじゃない。ぶつかるところだったわ」 「え……?」 挑発的な少女の声に、明衣は頭上を振り仰いだ。 そこに立っていたのは、金髪ロングに青い目をした美少女だった。着ているのはもちろん更科学園女子小の制服だったが、インナーブラウスは豪奢なフリルのついたスタンドカラー。この学校、ブラウスに関してはある程度自由にできるのだ。さらにその背後に3人ほど、取り巻きと思われる少女を連れている。 そして彼女の顔に浮かぶ嘲弄の色を見た瞬間、この少女がわざと自分の足につま先をひっかけて転ばせたのだということを、明衣は理解した。おそらくは、彼がひとりで戻ってきたのを見て、出口で待ち構えていたのだろう。 明衣は慌てて教科書とリコーダーを拾って立ち上がり、頭を下げる。 「ご、ごめんなさい! 教室移動で、急いでるんで……」 「あら、うちのクラスはちょうど自習なの。ちょっと暇だから、遊んでちょうだい。ね?」 彼女がそう言うと、取り巻きの少女たちが明衣を包囲した。 まさか年下の少女を突き飛ばして逃げるわけにもいかず、明衣は身動きが取れなくなる。 「あなた、今日からうちに通うことになった落第生よね? お名前と学年――それから、落第する前の学年、教えてくれる?」 嘲笑の色を隠そうともしない少女に、さしもの明衣も鼻白むが、 「ご、5年1組の、中津川、明衣です。もとの学年は、高校、1年で――」 「中津川?」 金髪少女が聞きとがめたのは、学年ではなく名字であった。その青い目に宿る感情が、ただの嘲弄から明らかな敵意へと変わる。 「へぇ、あなた、もしかして中津川先輩の――」 「…………」 「気が変わったわ。そういえばあなた、さっきチラッと見えたけどずいぶん可愛らしい下着をつけてたのね。もう一度見せてくれる?」 「も、もう一度って……」 「あら、クラスのみんなには、自分でめくって見せてくれたんでしょ? 同じことを、ここでしてちょうだいって言ってるの」 「それは――でも、廊下でそんなことをしたら……」 「大丈夫よ。もし先生に何か言われたら、あたしたちが説明してあげるわ。それとも――あたしたちとは、仲良くなりたくないっていうのかしら?」 嘘だ、と明衣の直感は言っていた。もし先生に見つかったら、この少女たちは自分をかばうどころか「女児用下着を見せつけてきた変態男だ」と訴えるだろう。何しろ彼女たちは、まだ名乗ってすらいないのだから。 明衣が返事に窮して黙っていると、 「あら残念。あたしたちは仲良くしたかったのに。あんまり手荒なことはしたくなかったけど、仕方ないわね」 そう言って、金髪少女は明衣の周りにいる少女たちに目配せした。 とたんに少女たちは、明衣の体にとりつく。背後のひとりが羽交い絞めにし、左右のふたりは腕をつかんで、明衣の動きを封じてしまった。 「な、何を……!」 「中津川さんの可愛い下着――ぜひとも、見せてちょうだいな」 金髪少女は嗜虐的な笑みを浮かべると、明衣のスカートに手を伸ばして、大きくめくりあげた。 (続く)