短編「JS落第いじめ」(4)
Added 2020-10-10 01:22:11 +0000 UTC(4) 明衣は改めて、5年1組の教室の前まで戻る。男子制服は保健室で預かってもらったため手ぶらだ。歩いてみると、女子制服の着心地が肌身に染みた。揺れるスカートの頼りなさもそうだが、上半身をぴったりと包むジャンパースカートとボレロ、そして襟に結ばれたリボンが、これほどまでに落ち着かないとは。 それでも今さら引き返せず、トントン、とノックして扉を開け、 「し、失礼します……」 恐る恐る声をかけて、女子小学生たちが居並ぶに入る。 高校の男子制服から、彼女たちと同じ女子小学校の制服に着替えた明衣を少女たちの視線が出迎え、 「へぇ……」 「ふぅん……」 少女たちの口から、驚き、感心し、あきれたような声が漏れた。続いて、 「あははっ、可愛い~!」 「さっきの制服よりずっと似合ってるわよ、明衣ちゃん」 称賛とも嘲笑ともつかないヤジに、明衣はますます赤くなる。しかし恥ずかしさをこらえ、再び教室の前まで行って、 「い、言われたとおり、みんなと同じ、女子制服に、着替えてきました……」 「くすくすっ、いいじゃない」 秌子は席に着いたまま明衣を眺めまわしていたが、 「やっぱり同じ服装のほうが、あたしたちもお友達として受け入れやすいしね。でも――頭がちょっと寂しいわね」 そう言って立ち上がると、明衣のすぐそばまでやってくる。思わず身構える彼の頭に手を伸ばすと、その髪のひと房を、持っていたヘアゴム――彼女とおそろいの、赤いギンガムチェックのリボンがついたヘアゴムでくくってしまった。 「これでよしと。くすっ、似合ってるわよ、明衣ちゃん。それ、今日の記念にあげるから、明日からもつけてくるといいわ」 「あ、ありがとう、ございます……」 女子小学生の制服や、女児向けのヘアゴムがが似合っている――そう言われて、男子高校生が素直に喜べるはずもない。 そんなことは判っているはずなのに、秌子は不満そうに鼻を鳴らして、 「もうちょっと喜んでくれてもいいのに。まぁいいわ。それよりも、あたしがあげた下着、ちゃんと穿いた?」 「っ……は、はい、穿いて、きました……」 答えた途端に、どっと笑いが湧いた。 「うわぁ、ほんとうに穿いてきたんだぁ」 「高校生のお兄ちゃんが、女の子用の下着を……」 「しかも、東堂さんの穿き古しでしょ?」 「くすくすっ、ヘンターイ」 女子小学生たちの嘲笑に、明衣は真っ赤になってうつむくが――秌子の追及は止まらない。 「ほんとうに穿いてきたの? なら、あたしたちに証明してごらんなさい」 「しょ、証明っ……!? ど、どうやって……」 「簡単なことよ」 秌子は意地悪な笑みを深くして、 「そこでスカートをめくって下着を見せれば、ちゃんと穿いてきたかどうか、一目瞭然でしょ?」 「す、スカート、を……」 愕然と凍りつく明衣。 教卓の横で今まで存在を忘れられていた片瀬教諭が、「東堂さん、それは」とたしなめようとしたが、 「先生は黙っててください」 あっさりと一蹴され、女子児童たちはおろか、明衣からさえも顧みられることはなかった。 「さぁ、自分の手でスカートをめくって、下着まであたしたちとおそろいになったことを証明してちょうだい。それとも、あたしがめくってあげましょっか?」 「……じ、自分で、めくります……」 明衣は泣きそうな声で言うと、ジャンパースカートの前の裾をつかんで持ち上げる。女子小学生にも負けないほど細く、白い太ももが次第にあらわになってゆき、 「ごくっ……」 女子小学生たちは生唾を飲んでその光景を見守る。まるで男女が逆転したかのようだった。 そしてついに、両手が骨盤のあたりまで持ち上がって、純白の逆三角形――いや、少年のふくらみによってやや丸みを帯びたシルエットがあらわになると、 「あははっ、ほんとに穿いてる~!」 「やだぁ、アレのせいで膨らんでるじゃん」 「女の子用下着の穿き心地はどうかしら~?」 再び沸き起こる、爆笑の渦。 明衣は唇を噛んで耐え忍んでいたが、秌子はそんな彼を意地悪く追い詰める。 「くすくすっ、ダメでしょ、明衣ちゃん。クラスメイトからの質問にはちゃんと答えないと、仲良くなれないわよ? 穿き心地はどうかって」 「う……は、はい。サイズが小さくて、ちょっときついけど、柔らかくて、肌触りも、いいです……」 明衣の答えに、さらに爆笑が湧く。 それが落ち着いてきたところで、 「じゃあ――改めて自己紹介してちょうだいね、明衣ちゃん。スカートは、めくったままね」 「は、はい……」 うなずいた明衣に、秌子は満足げにうなずいて席に戻り―― 「は、初めまして、今日からこのクラスに通うことになった、中津川、明衣です……」 スカートをめくり、クラスメイト達の少女たちにパンツを見せたままで、改めて「自己紹介」が始まるのだった。 (続く)